スクワットで膝が鳴る原因|ポキポキ音の対処法と注意すべきサイン
スクワットのたびに膝からポキポキ、パキパキと音がすると、「どこか壊れているのでは」と不安になるかもしれません。実は膝の音の多くは、関節液の気泡がはじけるだけの無害な現象です。
ただし、痛みや腫れを伴う音は放置すべきではありません。この記事では、音が鳴る仕組みから、自分でできる対処法、そして整形外科を受診すべき判断基準までをわかりやすくお伝えします。
20年以上にわたり膝関節の診療に携わってきた経験をもとに、読者の皆さまの不安を少しでも和らげられれば幸いです。
目次
スクワット中に膝がポキポキ鳴るのは本当に危険なのか
結論から申し上げると、痛みを伴わない膝の音は、ほとんどの場合心配いりません。膝のポキポキ音は「クレピタス」と呼ばれ、関節を動かすときに誰にでも起こりうる生理的な現象です。
膝の音の大半は心配いらない「生理的クレピタス」
クレピタスとは、関節を曲げ伸ばしするときに聞こえるパキッ、ゴリゴリ、プチプチといった音や感覚を指す医学用語です。膝だけでなく、肩や股関節など体中のあらゆる関節で生じます。
音が鳴るだけで痛みがない場合、これは「生理的クレピタス」に分類されます。関節の構造上、動かせば音が出るのはむしろ自然なことです。
関節液の気泡がはじけるだけなら痛みは出ない
膝関節の内部は「滑液(かつえき)」と呼ばれる潤滑液で満たされています。関節に圧力がかかると、この液体の中に小さなガスの泡が発生し、それが弾けるときにポキッという音が鳴ります。
指の関節をポキポキ鳴らすのと同じ原理です。ガスの泡が弾けるだけなので、軟骨や靭帯には一切ダメージを与えません。
膝の音の種類と特徴
| 音の種類 | 原因 | 心配の有無 |
|---|---|---|
| ポキッ・パキッ | 関節液のガス泡の破裂 | 痛みがなければ心配なし |
| パチン・カチッ | 腱や靭帯が骨を乗り越える | 痛みがなければ心配なし |
| ゴリゴリ・ジャリジャリ | 軟骨の表面が粗くなっている | 痛みがあれば受診を推奨 |
実は99%の膝が何らかの音を出している
1987年にMcCoyらが行った研究では、膝に痛みのない健常者の99%が何らかの膝の音を発していたと報告されています。つまり、膝から音がしない人のほうがむしろ珍しいといえるでしょう。
また、2025年に発表された大規模なシステマティックレビューでも、一般集団の約41%が膝のクレピタスを自覚しているとされています。膝の音は決して特別な症状ではありません。
スクワットで膝が鳴る原因を関節の構造から読み解く
膝の音にはいくつかの発生パターンがあり、それぞれ異なる組織が関与しています。原因を正しく知ることで、むやみに不安を感じる必要がなくなるでしょう。
関節液に溶けたガスが弾けてポキッと鳴る
スクワットで膝を深く曲げると、関節内の圧力が変化します。すると滑液に溶け込んでいた二酸化炭素や窒素がガスの泡として現れ、その泡が潰れる瞬間にポキッという音が発生します。
この現象は「キャビテーション」と呼ばれ、一度音が鳴ると同じ関節からしばらく音が出にくくなるのが特徴です。数十分ほど経つとガスが再び溶液に溶け込み、再度音が鳴ることもあります。
靭帯や腱が骨の突起を乗り越えるスナッピング音
膝の周囲には複数の靭帯と腱が走っています。スクワットで膝を屈伸する際、これらの組織が骨の出っ張りを乗り越えるときにパチンとゴムが弾けるような音を出すことがあります。
これを「スナッピング」と呼び、とくに腸脛靭帯(ちょうけいじんたい)や膝蓋腱がよく関与します。痛みがなければ治療の必要はなく、ストレッチで軽減できるケースも少なくありません。
膝蓋骨と大腿骨がこすれ合うゴリゴリ音
膝蓋骨(しつがいこつ=いわゆる「お皿」)は大腿骨の溝に沿って上下にスライドしています。この軟骨の表面が加齢や使いすぎで少し粗くなると、曲げ伸ばしのたびにゴリゴリ、ザラザラという感触が生じます。
ゴリゴリ音は「膝蓋大腿関節」のクレピタスとして知られ、軟骨の状態を反映しやすい特徴があります。音だけであれば経過観察でよいケースも多いですが、痛みが加わった場合は医師に相談するのが賢明です。
スクワット時に膝が鳴りやすい動作パターン
| 動作の特徴 | 音が出やすい理由 | 対策 |
|---|---|---|
| 膝がつま先より内側に入る | 膝蓋骨の軌道がずれやすい | つま先と膝の向きを揃える |
| 急にしゃがみ込む | 関節内の圧力が急変する | ゆっくり動作を行う |
| かかとが浮く | 重心が前にかかり膝蓋骨に負荷集中 | かかとを床につけたまま動く |
「痛みがないから大丈夫」とは限らない|放置してよい音と受診が必要な音
痛みのないクレピタスの大部分は無害ですが、一部のケースでは早めの受診が望ましいこともあります。自分の膝の状態を正しく判断するための基準を押さえておきましょう。
痛みや腫れがなければそのまま運動を続けて問題ない
スクワットで音が鳴っても、痛み・腫れ・引っかかり感がなければ基本的に心配はありません。音を気にして運動をやめてしまうと、かえって筋力が低下し膝を支える力が弱くなってしまいます。
メイヨー・クリニックの専門家も「クレピタス単独であれば特別な治療は必要ない」と述べています。音が鳴ること自体は、膝にダメージを与えているサインではないのです。
こんな症状が加わったら膝関節のSOSサイン
音とともに次のような症状がある場合は、関節内部で何らかの問題が起きている可能性があります。とくにスクワット後に膝が熱を持ったり、腫れが引かない場合は早めに整形外科を受診してください。
痛みの場所が膝の前面に集中している場合は膝蓋大腿関節の問題が疑われ、内側や外側に痛みがある場合は半月板の損傷を考慮する必要があるでしょう。受傷時に「ガクッ」と大きな音がした場合は靭帯損傷の可能性もあります。
放置してよい音と受診すべき音の見分け方
| 項目 | 心配のない音 | 受診が必要な音 |
|---|---|---|
| 痛みの有無 | まったく痛みがない | 音と同時に痛みがある |
| 腫れの有無 | 見た目に変化なし | 膝が腫れている・熱い |
| 動きの制限 | 普段通りに曲げ伸ばしできる | 引っかかりやロッキングがある |
変形性膝関節症の初期サインとして見逃せないクレピタス
2018年にLoらが発表した大規模研究では、膝のクレピタスを自覚している人は、そうでない人に比べて将来的に変形性膝関節症を発症するリスクが高いことが報告されています。
もちろん、クレピタスがあるからといって全員が変形性膝関節症になるわけではありません。しかし45歳以上で膝の音に加えて朝のこわばりや階段の上り下りでの違和感がある方は、一度レントゲン検査を受けておくと安心です。
スクワットのフォーム改善で膝のポキポキ音は減らせる
スクワットの動作を少し修正するだけで、膝の音が軽減するケースは珍しくありません。フォームの見直しは膝への余計な負担を防ぐうえでも非常に有効です。
つま先と膝の向きを揃えるだけで膝蓋骨の軌道が安定する
スクワットでしゃがむとき、膝がつま先より内側に入ってしまう「ニーイン(膝の内側倒れ)」は、膝蓋骨が正しい溝からずれやすくなる原因の一つです。足の指先と膝頭がつねに同じ方向を向くよう意識するだけで、膝蓋骨の動きが安定します。
鏡の前で自分のフォームを確認しながら練習すると効果的でしょう。とくに疲れてくるとフォームが崩れやすいので、後半のセットほど意識を高めてください。
しゃがむ深さを調整して膝への負担を減らす
フルスクワット(太ももが床と平行より深くなるまでしゃがむ動作)は、膝蓋大腿関節への圧力が大きくなりやすい動作です。膝から音が鳴って気になる方は、まずハーフスクワット(膝を90度程度まで曲げる範囲)から始めてみましょう。
痛みや音が改善してきたら、少しずつ可動域を広げていくのが安全な進め方です。無理に深くしゃがむ必要はなく、自分にとって快適な深さで十分なトレーニング効果を得られます。
足幅と重心の位置を変えるだけで音が消えることもある
足幅を肩幅よりやや広めに開き、つま先を少し外側に向けると、膝蓋骨にかかる力の方向が変わり音が出にくくなる場合があります。また、お尻を後ろに引くイメージでしゃがむと、体重が膝前面に集中しにくくなります。
重心がかかとからつま先まで均等に分散されるよう意識すると、膝蓋骨への負荷が軽減されます。靴の選択も影響するため、底が平らでグリップのよいシューズを履くことも一つの工夫です。
フォーム改善チェック項目
| チェック項目 | 理想の状態 | NGの例 |
|---|---|---|
| 膝の向き | つま先と同じ方向 | 内側に倒れている |
| かかと | 床にしっかり接地 | 浮いている |
| 上体の傾き | やや前傾で背筋が伸びている | 猫背で前のめり |
膝がポキポキ鳴る人に試してほしいセルフケアとストレッチ
膝周りの筋力と柔軟性を高めることは、クレピタスの軽減だけでなく将来の膝トラブル予防にもつながります。自宅で手軽にできるケアを日常に取り入れてみましょう。
大腿四頭筋の強化が膝蓋骨のぐらつきを抑える
太ももの前面にある大腿四頭筋(だいたいしとうきん)は、膝蓋骨を正しい位置に保つための要となる筋肉です。この筋肉が弱いと膝蓋骨がぐらつきやすくなり、クレピタスが増える傾向にあります。
椅子に座った状態で片脚をまっすぐ前に伸ばし、5秒間キープしてからゆっくり下ろす「レッグエクステンション」は、膝に大きな負担をかけずに大腿四頭筋を鍛えられる簡単なエクササイズです。1セット10回を1日2〜3セット行うのが目安となります。
ハムストリングスと腸脛靭帯の柔軟性を取り戻すストレッチ
太ももの裏側のハムストリングスや外側を走る腸脛靭帯が硬くなると、膝蓋骨の動きに影響を与えます。床に座って片脚を伸ばし、つま先に手を伸ばすストレッチを左右各30秒ずつ行いましょう。
腸脛靭帯のストレッチは、立った状態で脚をクロスさせ、体を反対側に傾ける方法が効果的です。息を止めずにゆっくりと伸ばすのがコツで、毎日続けることで徐々に柔軟性が戻ってきます。
セルフケアの種類と効果の目安
| セルフケア | 主な効果 | 推奨頻度 |
|---|---|---|
| レッグエクステンション | 大腿四頭筋の強化 | 1日2〜3セット |
| ハムストリングスストレッチ | 太もも裏の柔軟性向上 | 毎日30秒×左右 |
| 腸脛靭帯ストレッチ | 膝外側の緊張緩和 | 毎日30秒×左右 |
| フォームローラー | 筋膜リリースによる柔軟性改善 | 週3〜4回 |
たった5分のウォームアップが膝の音を劇的に変える
運動前に5分間のウォームアップを行うだけで、関節液の粘度が下がり膝の動きが滑らかになります。軽いウォーキングや膝の屈伸を繰り返すことで、関節内の潤滑が促進されるのです。
冬場やデスクワーク後など、体が冷えている状態でいきなりスクワットを始めると音が出やすくなります。ウォームアップは「膝を起こす儀式」だと考え、面倒でも省略しないようにしましょう。
「膝が鳴るから運動をやめよう」は逆効果になる
膝の音を恐れて運動を控えてしまう方は少なくありませんが、実はその行動こそが膝を弱くする原因になり得ます。適度な運動は関節を守るために必要なものです。
恐怖回避行動が筋力低下と関節の悪化を招く
2017年にRobertsonらが発表した研究では、膝のクレピタスを「関節が壊れているサインだ」と信じた患者が、音を避けるために運動量を減らし、結果として筋力低下や身体機能の低下を招いたことが報告されています。
音に対する過度な恐怖は「恐怖回避行動」と呼ばれ、痛みの有無にかかわらず日常動作を制限してしまう悪循環につながりかねません。膝の音=ダメージという思い込みを手放すことが、膝の健康を守る第一歩です。
痛みのない範囲で動き続けることが関節を守る
関節軟骨は血管を持たないため、栄養は関節液から供給されます。関節を動かすことで関節液が循環し、軟骨に栄養が届きやすくなるのです。じっとしていると関節液の流れが滞り、かえって軟骨の栄養状態が悪化します。
ウォーキング、水泳、自転車など、膝への衝撃が少ない有酸素運動は関節に優しい選択肢です。痛みが出ない範囲で体を動かし続けることが、長期的に膝を守る鍵となります。
不安を感じたら専門家と二人三脚で運動計画を立てよう
「自分の膝で本当にスクワットをしていいのか」と迷ったときは、整形外科医や理学療法士に相談するのがもっとも確実です。専門家が膝の状態を評価したうえで、安全な運動メニューを組み立ててくれます。
自己判断で運動を完全にやめてしまうより、専門家のアドバイスを受けながら段階的に負荷を調整するほうがはるかに効果的です。膝の音に対する不安も、正しい知識と専門家のサポートがあれば和らいでいくでしょう。
- 整形外科で膝の状態を評価してもらう
- 理学療法士に個別のリハビリメニューを作成してもらう
- 痛みが出ない範囲でウォーキングや水泳から再開する
- 定期的に通院して経過を確認しながら運動強度を上げていく
膝の音が気になったら整形外科へ|受診の目安と検査の流れ
膝のクレピタスの大半は問題ありませんが、一定の条件に当てはまる場合は整形外科での検査が望ましいでしょう。受診すべきタイミングと代表的な検査について整理しました。
2週間以上続く痛みや腫れは早めの受診が正解
スクワット時の膝の音に痛みが伴い、それが2週間以上改善しない場合は、半月板損傷や軟骨のすり減りなどの問題が隠れている可能性があります。「様子を見よう」と先延ばしにするほど、治療の選択肢が限られてしまうケースも否定できません。
とくに50代以上の方で、膝の音とともに階段の上り下りで痛みが出る場合は、変形性膝関節症の初期段階である可能性も考慮すべきです。早期発見は早期対応につながりますので、気になったタイミングで受診するのが賢明です。
- 音と同時に痛みが2週間以上続いている
- 膝が腫れている、または熱を帯びている
- 膝の曲げ伸ばし時に引っかかる感じがある
- 外傷後に急にポキッと大きな音がした
- 膝くずれ(力が抜ける感覚)が起きる
レントゲン・MRI・関節エコーでわかる膝の状態
整形外科を受診すると、まずレントゲン(X線)で骨の変形や関節の隙間を確認します。レントゲンだけでは軟骨や靭帯の状態は評価しにくいため、必要に応じてMRI検査が追加されるでしょう。
MRIは半月板、軟骨、靭帯などの軟部組織を詳細に映し出すことができ、クレピタスの原因特定に大きく役立ちます。最近は超音波(関節エコー)を用いて、診察室でリアルタイムに関節内の状態を確認できる施設も増えています。
受診前に整理しておきたい症状メモ
医師に正確な情報を伝えるためには、受診前に症状を簡単にメモしておくと診察がスムーズに進みます。「いつから音が鳴り始めたか」「どんな動作で音がするか」「痛みの有無と場所」の3点は最低限整理しておきたいポイントです。
過去にスポーツで膝を怪我した経験がある方は、その情報も伝えてください。膝の既往歴は現在のクレピタスとの関連を判断するうえで重要な手がかりとなります。
よくある質問
スクワットで膝がポキポキ鳴るのは軟骨がすり減っているサインですか?
必ずしもそうとは限りません。膝の音の多くは関節液のガス泡が弾ける「キャビテーション」という生理的な現象で、軟骨の摩耗とは無関係です。
ただし、ゴリゴリと擦れるような音が継続的に聞こえ、痛みを伴う場合は軟骨の変性が始まっている可能性も否定できません。痛みがある場合は整形外科で画像検査を受けることをおすすめします。
スクワットで膝が鳴る場合、運動を中止したほうがよいですか?
痛みを伴わないのであれば、運動を中止する必要はありません。音を恐れて運動量を減らすと、膝を支える筋力が低下し、かえって膝のトラブルを招くおそれがあります。
痛みや腫れがある場合は一旦運動を控え、整形外科を受診してから再開の判断をしてください。専門家の助言を受けながら運動を継続するのが、膝にとって理想的な対応です。
膝のポキポキ音はストレッチやウォームアップで予防できますか?
ストレッチやウォームアップによって、膝の音が軽減するケースは多く報告されています。運動前に5分ほど軽いウォーキングや膝の屈伸を行うと関節液の循環が促され、膝の動きが滑らかになります。
大腿四頭筋やハムストリングスのストレッチを日課にすることで、膝蓋骨の安定性が高まり音が出にくくなるでしょう。完全に音をなくすことは難しい場合もありますが、頻度や大きさの軽減は十分に期待できます。
スクワット時に膝が鳴りにくいフォームのポイントは何ですか?
もっとも大切なのは、つま先と膝の向きを揃えることです。膝が内側に入る「ニーイン」の状態はお皿の骨の軌道を乱し、音が出やすくなります。足幅を肩幅より少し広めに取り、つま先をやや外側に開くと膝蓋骨への負荷が分散されます。
かかとを床につけたままお尻を後ろに引くようにしゃがむと、重心が前方に偏りにくくなるでしょう。鏡の前でフォームを確認する習慣をつけると、左右差にも気づきやすくなります。
膝のクレピタスは年齢とともに悪化していきますか?
加齢に伴い関節軟骨の表面が少しずつ変化するため、クレピタスの頻度が増えることはあります。しかし、音が増えたからといって必ず症状が悪化するとは限りません。
適度な運動で膝周りの筋力を維持し、体重を適正範囲に保つことで、加齢による膝の変化を緩やかにすることが期待できます。定期的な運動習慣がある方は、そうでない方に比べて膝の機能を長く保てる傾向にあります。
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