足立慶友医療コラム

おしりの付け根が痛い時のストレッチ|原因別の改善メニュー

2026.06.11

おしりの付け根あたりがズキッと痛むと、歩くのも座るのも憂うつになりますよね。その痛みの原因は1つではなく、梨状筋の緊張や股関節まわりの筋肉のこわばりなど、複数の要因が隠れていることが多いです。

この記事では、股関節の診療に20年以上携わってきた経験をもとに、おしりの付け根が痛い時に自宅でできるストレッチを原因別にご紹介します。痛みの正体を見きわめながら、無理なく取り組める改善メニューを一緒に確認していきましょう。

おしりの付け根が痛い原因は「筋肉」と「関節」の2つに分かれる

おしりの付け根に痛みが出るとき、大きく分けて「筋肉由来」と「関節由来」のどちらかが関係しています。どの組織が痛みを生んでいるのかを把握することが、効果的なストレッチ選びの第一歩です。

梨状筋やハムストリングスなど筋肉が硬くなって起こる痛み

おしりの奥には梨状筋(りじょうきん)という小さな筋肉があり、この筋肉が緊張すると坐骨神経を刺激して、おしりの付け根から太ももの裏にかけて痛みやしびれが走ることがあります。デスクワークが長い方や、運動不足で股関節まわりを動かす機会が少ない方に多い傾向です。

また、ハムストリングス(太ももの裏の筋肉)の付け根部分が硬くなると、坐骨結節(ざこつけっせつ)という骨のあたりに引っぱられるような痛みが生じます。ランニングや自転車など、股関節を繰り返し曲げ伸ばしする動作で負担が蓄積しやすいでしょう。

股関節の関節唇や軟骨が傷んで起こる痛み

股関節内部の関節唇(かんせつしん)や軟骨がすり減ると、おしりの付け根のあたりに鈍い痛みが出ることがあります。変形性股関節症の初期段階では、股関節の前面だけでなく臀部(でんぶ)に痛みを感じるケースも少なくありません。

この場合は、むやみにストレッチで伸ばすと逆効果になるリスクがあるため、まずは整形外科で画像検査を受けてから運動メニューを決めることが大切です。

筋肉由来と関節由来の痛みの見分け方

項目筋肉由来の痛み関節由来の痛み
痛む場所おしりの奥・太もも裏股関節の前面・鼠径部
動作との関係長時間の座位で悪化歩行・階段で悪化
ストレッチ時伸ばすと軽減しやすい伸ばすと痛みが増す場合あり

坐骨神経が圧迫されて「おしりの付け根から足にかけて」しびれる場合

坐骨神経はおしりの奥から太ももの裏、ふくらはぎへと通る太い神経です。梨状筋の緊張や椎間板の問題でこの神経が圧迫されると、おしりの付け根だけでなく足先までしびれや痛みが広がることがあります。

足のしびれが強い場合や、排尿・排便に異常がある場合は早急に医療機関を受診してください。ストレッチだけで対処しようとせず、専門医の判断を仰ぐことが安全です。

おしりの付け根の痛みをストレッチで和らげる前に確認したい3つのこと

ストレッチは正しく行えば痛みの軽減に役立ちますが、やみくもに始めると悪化を招く恐れがあります。安全に取り組むためのチェックポイントを押さえておきましょう。

痛みの「場所」と「タイミング」を記録してからストレッチを選ぶ

おしりの付け根といっても、痛む場所は人によって微妙に異なります。「座っているときに痛いのか」「歩き出すときに痛いのか」を把握するだけで、どの筋肉が原因なのか推測しやすくなるでしょう。

1週間ほど痛みの出るタイミングをメモしておくと、整形外科を受診した際にも役立ちます。自己判断だけに頼らず、記録を持参して専門医と相談するのが賢明です。

「伸ばすと痛い」ストレッチは無理に続けない

ストレッチ中に鋭い痛みを感じたら、それは筋肉が伸びている感覚ではなく、組織を傷めている警告かもしれません。とくに股関節の関節唇損傷や変形性股関節症がある方は、強い伸張が症状を悪化させる可能性があります。

「気持ちいい」と感じる範囲でとどめ、痛みが出たらすぐに中止する。これがストレッチの鉄則です。

受診のタイミングを見逃さない

おしりの付け根の痛みが2週間以上続く場合や、夜間に痛みで目が覚める場合は、筋肉の問題だけでは説明がつかない可能性があります。股関節の骨や軟骨に問題が起きているケースも考えられるため、早めに整形外科を受診してください。

発熱を伴う場合や、急に体重が減った場合は感染症や腫瘍の可能性も否定できません。ストレッチよりも医療機関での精査が優先されます。

ストレッチ前の安全チェックリスト

チェック項目問題なし受診推奨
痛みの持続期間2週間未満2週間以上
しびれの範囲おしり周辺のみ足先まで広がる
夜間の痛みなし痛みで目が覚める

梨状筋症候群が原因のおしりの付け根の痛みに効くストレッチ3選

梨状筋症候群(りじょうきんしょうこうぐん)は、おしりの深部にある梨状筋が硬くなり坐骨神経を刺激する状態です。以下のストレッチで梨状筋をゆっくりほぐすと、痛みが和らぐことが多いです。

仰向けで行う「膝かかえストレッチ」

仰向けに寝て、片膝を胸に引き寄せながら反対側の肩方向へゆっくり倒します。おしりの奥に心地よい伸びを感じたら、その姿勢を20秒から30秒キープしてください。

呼吸を止めずに、ゆっくり吐きながら伸ばすのがポイントです。反動をつけずにじわっと伸ばすことで、梨状筋が安全にゆるみやすくなります。

椅子に座ったまま行う「足組みストレッチ」

椅子に腰かけた状態で、痛い側の足首を反対の膝の上に乗せます。そのまま背筋を伸ばしながら上体を前に倒すと、おしりの付け根あたりがじんわり伸びるのを感じるでしょう。

デスクワークの合間に取り入れやすいストレッチなので、1時間に1回、20秒を目安に行ってみてください。座りっぱなしの時間が長い方ほど効果を実感しやすい傾向があります。

梨状筋ストレッチの種類と特徴

ストレッチ名体勢主なターゲット
膝かかえストレッチ仰向け梨状筋・深層外旋六筋
足組みストレッチ座位梨状筋・中殿筋
うつ伏せ外旋ストレッチうつ伏せ梨状筋・内閉鎖筋

うつ伏せで行う「外旋ストレッチ」

うつ伏せに寝て、痛い側の膝を90度に曲げます。そこから足先を外側にゆっくり倒していくと、おしりの深い部分が伸びる感覚を得られるでしょう。

このストレッチは股関節の外旋(がいせん)方向に梨状筋を伸ばすため、座位のストレッチでは伸びにくい角度をカバーできます。左右それぞれ20秒ずつ、2セットから始めてみてください。

ハムストリングス付着部の痛みにはこのストレッチが効果的

おしりの付け根、とくに坐骨結節のあたりが痛む場合は、ハムストリングスの付着部(近位ハムストリング腱)に負担がかかっている可能性があります。やさしいストレッチと段階的な負荷コントロールを組み合わせるのが回復への近道です。

坐骨結節まわりの痛みにやさしい「壁を使った脚上げストレッチ」

仰向けに寝て、壁に片足のかかとをつけます。膝を軽く曲げた状態から、壁沿いにゆっくり脚を伸ばし、太もも裏にほどよい張りを感じたところで止めてください。

深い前屈で無理にハムストリングスを伸ばすと、坐骨結節への圧迫が強まり、かえって痛みが増す恐れがあります。壁を使えば伸張の角度を微調整しやすいので、痛みをコントロールしながら安全にほぐせるでしょう。

立位で行う「片脚乗せ前屈ストレッチ」

台やイスの座面に片足のかかとを乗せ、膝を軽く伸ばした状態で上体をゆっくり前に倒します。背中を丸めず、骨盤から前傾させるように意識するのがコツです。

このとき、痛みのない範囲で止めることが何よりも大切です。太もも裏が「つっぱる」程度の軽い伸びを15秒から20秒キープし、左右2セットずつ行いましょう。

痛みが強い時期は「ストレッチよりも等尺性収縮」を優先する

近位ハムストリング腱炎の急性期には、ストレッチで伸ばすこと自体が腱への刺激になりやすいです。痛みが強いうちは、仰向けでかかとを床に押しつける「等尺性収縮(とうしゃくせいしゅうしゅく)」から始めてください。

筋肉を伸ばさず、力を入れたまま長さを変えない運動です。そのため腱への負担を抑えつつ、筋力を維持できます。痛みがおさまってきたら、ゆるやかなストレッチへ段階的に移行しましょう。

ハムストリングス付着部痛の回復段階と運動の目安

回復段階推奨する運動注意点
急性期(痛み強い)等尺性収縮深い前屈は避ける
回復期(痛み減少)軽いストレッチ伸張角度を控えめに
復帰期(ほぼ痛みなし)段階的な負荷トレーニング再発予防を意識

股関節まわりの筋力低下が原因ならストレッチと筋トレを両立させる

おしりの付け根の痛みが筋力低下から来ている場合、ストレッチだけでは根本的な解決にはなりません。柔軟性を高めると同時に、股関節を支える筋肉を強化することで、痛みの再発を防ぎやすくなります。

中殿筋を鍛える「横向きクラムシェル」でおしり周辺を安定させる

横向きに寝て、両膝を90度に曲げます。かかとをつけたまま上の膝をゆっくり開閉する動作を10回繰り返してください。おしりの横にある中殿筋に効いている感覚があれば正しいフォームです。

中殿筋が弱くなると、歩行時に骨盤がぐらつき、おしりの付け根に余計な負担がかかります。1日2セットから始めて、慣れてきたらゴムバンドで負荷を足していくとよいでしょう。

ブリッジ運動で大殿筋とハムストリングスを同時に鍛える

仰向けに寝て、両膝を立てた状態でおしりをゆっくり持ち上げます。肩から膝まで一直線になるところで2秒キープし、ゆっくり下ろしてください。

  • 1セット10回を目安に、1日2セット行う
  • おしりを上げたときに腰が反りすぎないよう注意する
  • 痛みが出たら回数を減らすか、一時的に休止する

ストレッチと筋トレの順番を間違えると逆効果になることも

筋トレの前にストレッチをしすぎると、筋力発揮が低下するという報告があります。おしりの付け根の痛みケアでは、軽いウォーミングアップ→筋トレ→仕上げにストレッチという順番が安全です。

ただし、朝起きたときに強いこわばりを感じる場合は、活動前に軽いストレッチを挟むのも有効でしょう。自分の体の状態に合わせて柔軟に調整してみてください。

日常生活でおしりの付け根の痛みを悪化させないための習慣づくり

ストレッチや筋トレを続けていても、日常動作のクセが痛みを再発させる原因になることは珍しくありません。毎日の過ごし方を少し変えるだけで、おしりの付け根への負担はぐっと減らせます。

長時間の座り方を見直すだけで痛みは軽くなる

柔らかすぎるソファに深く沈み込む姿勢は、おしりの付け根にある坐骨結節やハムストリングスの付着部を圧迫します。座面が硬めの椅子にクッションを敷いて、骨盤をやや前傾させた姿勢を意識してみてください。

30分に1度は立ち上がり、軽く股関節を動かすだけでも筋肉の緊張をリセットできます。タイマーを活用するなど、座りっぱなしを防ぐ工夫を取り入れましょう。

寝るときの姿勢も痛みに影響する

横向きで寝るとき、上側の脚が下に落ちると股関節が内転し、中殿筋やおしりの付け根に負担がかかります。両膝の間にクッションや枕を挟むと、股関節がニュートラルな位置に保たれて痛みを感じにくくなるでしょう。

仰向けで寝る場合は、膝の下に丸めたタオルを入れて軽く膝を曲げると、腰や股関節への負荷が軽減されます。

歩き方のクセが痛みを長引かせている場合がある

足を外側に開いて歩く「がに股歩き」や、左右のどちらかに体重を偏らせる歩き方は、おしりの付け根に不均等な力をかけ続けます。鏡の前で歩いてみて、左右の揺れが大きいと感じたら、理学療法士に歩行指導を受けるとよいかもしれません。

正しい歩行パターンを身につけるだけで、ストレッチの効果が格段に長持ちするようになります。

痛みを悪化させやすい日常動作と改善案

悪化させやすい動作改善案
柔らかいソファに長時間座る硬めの椅子+クッション
脚を組んだ座り方両足を床につける
横向き寝で脚が落ちる膝の間に枕を挟む

おしりの付け根のストレッチを続けても改善しない時に考えたい受診の判断基準

セルフケアのストレッチを2週間以上続けても痛みが変わらない、あるいは悪化している場合は、筋肉だけでなく関節や神経に問題がある可能性があります。無理に我慢せず、適切なタイミングで専門医を頼りましょう。

ストレッチで一時的に楽になるが翌日にはぶり返す場合

  • 関節唇損傷や変形性股関節症の初期が隠れている可能性
  • ストレッチの方法や強度が合っていない可能性
  • 姿勢や歩行パターンの改善が追いついていない可能性

股関節専門の整形外科で受けられる検査と治療

整形外科ではレントゲンやMRIで骨・軟骨・腱の状態を詳しく調べられます。梨状筋症候群が疑われる場合には、超音波ガイド下での注射やリハビリテーション指導が行われることもあるでしょう。

ストレッチは医師の診断結果を踏まえて行うのが安全です。自己流のケアに固執せず、専門家のアドバイスを取り入れることで回復はぐっと早まります。

リハビリテーションとストレッチの違いを知っておく

自宅でのストレッチは「柔軟性の維持」が主な目的ですが、リハビリテーションは「原因に対する包括的な治療プログラム」です。理学療法士が個別の筋力評価や動作分析を行い、ストレッチ・筋トレ・動作修正を組み合わせたオーダーメイドのプランを作成してくれます。

痛みが長引いている方は、ストレッチだけでは不十分なケースが大半です。リハビリテーションを並行して進めることで、より根本的な改善が見込めるでしょう。

よくある質問

おしりの付け根が痛いときのストレッチは1日に何回行えばよいですか?

おしりの付け根のストレッチは、1日2回から3回を目安に行うのがおすすめです。朝の起床後と夜の入浴後は筋肉が温まりやすく、伸びを感じやすいタイミングといえます。

ただし、回数を増やすほど効果が上がるわけではありません。1回あたり20秒から30秒のキープを丁寧に行うことのほうが大切です。痛みが強い日は回数を減らし、無理のない範囲で継続してみてください。

おしりの付け根の痛みにストレッチが効かない場合はどうすればよいですか?

ストレッチを2週間ほど続けても痛みが変わらない場合は、筋肉以外の組織に問題がある可能性があります。股関節の関節唇損傷や変形性股関節症など、画像検査でなければ見つけられない原因が潜んでいるかもしれません。

整形外科を受診してレントゲンやMRIで状態を確認し、医師の指示のもとでリハビリテーションを行うことをおすすめします。自己判断でストレッチの種類や強度を変えるよりも安全で確実です。

おしりの付け根が痛いときにやってはいけないストレッチはありますか?

痛みの原因が近位ハムストリング腱炎の場合、深い前屈のストレッチは坐骨結節への圧迫を強めるため避けたほうが安全です。ヨガの「前屈のポーズ」や「開脚ストレッチ」で無理に伸ばすと、腱の炎症を悪化させるリスクがあります。

また、梨状筋症候群の方が強い力で股関節を内旋させるストレッチを行うと、坐骨神経への圧迫が増すことがあります。どの種目でも「心地よい伸び」の範囲を超えないことが原則です。

おしりの付け根のストレッチはどのくらいの期間で効果を実感できますか?

筋肉の緊張が原因の場合、毎日ストレッチを継続すれば1週間から2週間ほどで痛みの軽減を実感する方が多い印象です。ただし、慢性的に硬くなっている筋肉をしっかりほぐすには、4週間から8週間程度の継続が目安になります。

効果の出方には個人差がありますので、焦らず続けることが何よりも大切です。2週間を過ぎても変化が見られなければ、ストレッチの方法自体を見直すか、専門医に相談してください。

おしりの付け根が痛いときにストレッチと一緒にウォーキングをしてもよいですか?

おしりの付け根に軽い痛みがある程度であれば、平地でのウォーキングは問題なく行えるケースがほとんどです。歩行は股関節まわりの血流を促進し、筋肉の柔軟性維持にも効果があります。

ただし、歩くたびにズキッとした鋭い痛みが出る場合は一時的に距離を短くするか、痛みがおさまるまで休止してください。ストレッチで筋肉をほぐしてからウォーキングに出かけると、股関節がスムーズに動きやすくなるでしょう。

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Author

北城 雅照

医療法人社団円徳 理事長
医師・医学博士、経営心理士

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