足立慶友医療コラム

おしりの付け根が痛い原因|股関節・坐骨神経痛との関係と対処法

2026.06.10

おしりの付け根あたりに鈍い痛みや重だるさを感じて、不安になっていませんか。この痛みは股関節のトラブルや坐骨神経痛が原因であるケースが多く、放置すると歩行や日常動作に支障をきたすこともあります。

この記事では、おしりの付け根が痛くなる代表的な原因と、股関節・坐骨神経痛との関係をわかりやすく解説します。自宅でできる対処法や受診の目安もあわせてお伝えしますので、ぜひ最後までご覧ください。

おしりの付け根の痛みは股関節や坐骨神経と深くつながっている

おしりの付け根に生じる痛みの多くは、股関節の構造的な問題か、腰から出る坐骨神経への刺激が原因です。どちらも日常生活の動きと密接に関わっているため、早めに原因を見きわめることが大切といえます。

おしりの付け根はなぜ痛みが出やすいのか

おしりの付け根には股関節という大きな関節があり、体重を支えながら立つ・歩く・座るといった動作をこなしています。そのうえ坐骨神経が骨盤の内側からおしりの深部を通って太ももの裏へ下りていくため、筋肉や骨のわずかな異常でも痛みが出やすい部位です。

加齢による軟骨のすり減りや、長時間のデスクワークで股関節まわりの筋肉が硬くなることも、痛みの引き金になります。おしりの付け根の痛みは、こうした複数の要因が重なって生じるケースが大半でしょう。

股関節由来の痛みと坐骨神経由来の痛みは症状が違う

股関節が原因の場合、鼠径部(足の付け根の前側)からおしりにかけて鈍い痛みを感じやすく、動き始めに痛むことが多い傾向があります。一方、坐骨神経痛では、おしりから太ももの裏、ふくらはぎ、さらには足先にかけてしびれや鋭い痛みが走ることが特徴です。

ただし実際には、両方の原因が同時に存在することも珍しくありません。痛みの場所や広がり方を丁寧に確認することで、原因の見当がつきやすくなります。

痛みの場所と原因の見分け方

痛みの特徴股関節由来坐骨神経由来
痛みの部位鼠径部~おしりの外側おしり~太もも裏~足先
痛みの質鈍痛・こわばり鋭い痛み・しびれ・灼熱感
悪化する場面歩き始め・階段の昇降前かがみ・長時間の座位

放っておくとどうなるのか

痛みを我慢しながら日常生活を送ると、無意識のうちに痛い側の足をかばう歩き方になりがちです。その結果、反対側の股関節や膝、腰にまで負担がかかり、別の場所にも痛みが広がる悪循環に陥ることがあります。

とくに坐骨神経の圧迫が長引くと、筋力の低下や足のしびれが残る場合もあるため、早い段階で適切なケアを始めるのが望ましいでしょう。

おしりの付け根が痛いときに疑われる代表的な病気

おしりの付け根の痛みを引き起こす疾患は一つではなく、年齢や生活習慣によって原因が異なります。以下では、医療機関でよく診断される代表的な病気を整理してお伝えします。

腰椎椎間板ヘルニアによる坐骨神経痛

腰の骨と骨のあいだにあるクッション(椎間板)が飛び出し、坐骨神経の根元を圧迫することで、おしりから足にかけて痛みやしびれが走ります。20代から50代の比較的若い世代にも多く、前かがみの姿勢やくしゃみで痛みが強まることが典型的です。

多くの場合は3か月ほどの保存療法(薬・リハビリ)で改善しますが、筋力低下や排尿障害がある場合には手術を検討することもあります。

変形性股関節症(股関節の軟骨がすり減る病気)

股関節の軟骨が年齢とともに徐々にすり減り、骨どうしがぶつかって痛みが出る病気です。日本では生まれつき股関節の受け皿が浅い「臼蓋形成不全」がある方に多くみられます。初期には動き始めの痛みが中心ですが、進行すると安静時にも痛むようになります。

痛みの場所は鼠径部が中心ですが、おしりの付け根や太ももの前面に広がることも珍しくありません。体重管理や運動療法で進行を遅らせることが可能です。

梨状筋症候群(おしりの筋肉が坐骨神経を挟む)

おしりの奥にある梨状筋という筋肉が、硬くなったり腫れたりして坐骨神経を圧迫し、おしりの付け根から太ももの裏にかけて痛みやしびれを生じさせる状態です。長時間の座り仕事やランニングなどが引き金になりやすいといわれています。

梨状筋症候群は画像検査だけでは診断が難しく、特定の姿勢で痛みを再現する理学所見を組み合わせて判断します。ストレッチや注射による保存療法が第一選択となるケースがほとんどです。

仙腸関節障害(骨盤のつなぎ目のトラブル)

骨盤の後ろにある仙腸関節(仙骨と腸骨のつなぎ目)に炎症やゆるみが生じると、おしりの付け根や腰に痛みが現れます。出産後の女性や、長時間同じ姿勢をとることが多い方に多い印象です。

仙腸関節の痛みは坐骨神経痛と症状が似ているため見逃されがちですが、骨盤を押さえるテストで痛みが再現されれば診断の助けになります。

疾患名好発年齢痛みの広がり方
腰椎椎間板ヘルニア20~50代おしり→太もも裏→足先
変形性股関節症50代以降鼠径部→おしりの外側
梨状筋症候群30~60代おしり奥→太もも裏
仙腸関節障害出産後・中高年骨盤後面→おしり

坐骨神経痛がおしりの付け根に痛みを出すしくみ

坐骨神経痛とは病名ではなく「坐骨神経に沿って痛みやしびれが出る状態」の総称であり、原因は腰椎や骨盤まわりにあります。そのしくみを知っておくと、自分の痛みがどこから来ているのか理解しやすくなるでしょう。

坐骨神経は腰からおしり、足先まで走る人体で一番太い神経

坐骨神経は腰椎の下部(L4~S3)から出る神経の束が合流してできた、直径約1cmにもなる人体で最も太い末梢神経です。骨盤の中を通り、おしりの深部から太ももの裏側を下って膝の裏で枝分かれし、ふくらはぎや足先にまで達しています。

この長い経路のどこかで神経が圧迫されると、おしりの付け根を含む広い範囲に痛みやしびれが広がるわけです。

神経が圧迫される場所によって症状の出方が変わる

腰椎で神経が圧迫されるケースでは、前かがみの動作で痛みが増し、太ももの裏からふくらはぎにかけて鋭い痛みが走ることが多い傾向にあります。一方、おしりの深部(梨状筋や殿部の組織)で圧迫されるケースでは、座っているときに痛みが強くなり、歩行で多少楽になることもあります。

どの場所で神経が障害されているかによって治療方針が変わるため、痛みの出方やタイミングを医師に正確に伝えることが重要です。

坐骨神経の圧迫部位と主な症状

圧迫部位代表的な原因特徴的な症状
腰椎(背骨)椎間板ヘルニア・脊柱管狭窄症前かがみや咳で悪化・足先まで響く痛み
おしり深部梨状筋症候群・深殿部症候群座位で悪化・太もも裏中心のしびれ
骨盤内腫瘍・子宮内膜症など安静時にも続く鈍痛

片側だけ痛むケースが多い理由

坐骨神経痛は左右どちらか片側に出るのが一般的です。これは椎間板ヘルニアが左右どちらか一方に飛び出すことが多いためです。両側同時に痛む場合や、排尿・排便のコントロールが難しくなった場合は「馬尾症候群」という緊急性の高い状態の可能性があり、すぐに受診してください。

深殿部症候群という新しい考え方

従来「梨状筋症候群」とひとまとめにされていたおしり深部での坐骨神経の圧迫は、近年「深殿部症候群」という幅広い概念で捉えられるようになりました。梨状筋だけでなく、内閉鎖筋や線維性の索状物なども神経を締めつける原因になり得ることがわかってきたためです。

診断にはMRIや神経伝導検査が役立つことがあり、正確な原因の特定が治療効果を大きく左右します。

股関節の異常がおしりの付け根の痛みに変わる理由

股関節は体の中心に位置する大きな関節で、少しでも構造が乱れるとおしりの付け根を含む広い範囲に痛みを生みます。股関節の痛みは坐骨神経痛と混同されやすいため、両者を区別する視点が欠かせません。

股関節の構造は「ボールと受け皿」で成り立っている

股関節は大腿骨の先端にある丸い骨頭(ボール)が、骨盤のくぼみ(受け皿・臼蓋)にはまり込む構造です。この関節面を覆う軟骨と、周囲を支える靱帯・筋肉の協調によって、前後左右さまざまな方向にスムーズに動くことが可能になっています。

受け皿が浅かったり軟骨がすり減ったりすると、関節の安定性が崩れ、周囲の組織に余計な負担がかかっておしりの付け根に痛みが出るのです。

変形性股関節症はおしり側にも痛みが広がる

変形性股関節症の痛みは鼠径部が中心と思われがちですが、実際にはおしりの付け根や太ももの前面に痛みが放散するケースも多く報告されています。とくに股関節の後方に負荷がかかる階段の下りや、椅子から立ち上がる瞬間に痛みを自覚しやすいでしょう。

この痛みパターンは坐骨神経痛ときわめて似ているため、レントゲンやMRIによる画像評価が鑑別に役立ちます。

関節唇損傷やFAI(大腿骨臼蓋インピンジメント)も原因になる

関節唇とは股関節の受け皿のふちを覆うリング状の軟骨組織で、これが傷つくと鋭い引っかかり感や痛みが出ます。FAI(大腿骨臼蓋インピンジメント)は骨の形の問題で関節唇が繰り返し挟み込まれる状態であり、若い世代やスポーツをする方に多くみられます。

これらの疾患も痛みがおしりの付け根に及ぶことがあるため、股関節の専門的な検査を受けることが望ましいでしょう。

  • あぐらや深いしゃがみ込みで股関節に引っかかり感が出る
  • 長距離を歩いた後におしりの付け根が重だるくなる
  • 靴下を履く動作やしゃがむ動作で鼠径部からおしりにかけて痛む

おしりの付け根が痛い場合に自分でできる対処法

病院に行く前に、あるいは治療と並行して、自宅でできるセルフケアを取り入れると痛みの軽減に役立ちます。ただし痛みが強い場合や2週間以上続く場合は、自己判断に頼らず医療機関を受診してください。

おしりまわりの筋肉を無理なくほぐすストレッチ

おしりの付け根の痛みには、梨状筋や大殿筋など股関節まわりの筋肉の柔軟性を保つストレッチが有効です。仰向けに寝た状態で片膝を胸に引き寄せ、反対側の肩の方向へゆっくり倒す「梨状筋ストレッチ」は、痛みの出ない範囲で行えば安全に取り組めます。

呼吸を止めず、20秒から30秒かけてゆっくり伸ばすのがポイントです。反動をつけたり、痛みを我慢して無理に伸ばしたりするのは逆効果になるため避けてください。

冷やすべきか温めるべきか迷ったときの判断基準

炎症が強い急性期(痛み始めから2~3日)には、患部をアイスパックなどで15分程度冷やすと痛みが和らぎやすくなります。一方、慢性的な痛みやこわばりには入浴や温タオルで温めるほうが血行が促され、筋肉の緊張がほぐれやすいでしょう。

判断に迷ったら「痛みがズキズキ脈打つようなら冷やす、じんわり重だるいなら温める」を目安にしてみてください。

急性期と慢性期の対処法の違い

時期推奨される対処避けたい行動
急性期(2~3日)冷却・安静・鎮痛薬激しい運動・長時間の入浴
慢性期(1週間以降)温め・軽いストレッチ・適度な運動安静にしすぎること

座り方と姿勢を見直すだけでも負担は減る

デスクワーク中はつい足を組んだり浅く腰掛けたりしがちですが、こうした姿勢は骨盤の傾きを偏らせ、おしりの付け根への負荷を増大させます。骨盤を立てて座面に深く腰掛け、膝が股関節よりやや低い位置にくる高さに椅子を調整すると、おしりの付け根にかかる圧力を軽減できます。

30分に1度は立ち上がって軽く足踏みをするだけでも、血流が改善され筋肉のこわばりを予防できるでしょう。

病院を受診すべきタイミングと検査・治療の流れ

セルフケアで改善しない痛みは、早めに医療機関で原因を特定してもらうことが回復への近道です。受診のタイミングとよく行われる検査・治療について解説します。

こんな症状があったら早めに整形外科を受診する

おしりの付け根の痛みが2週間以上続く場合や、日に日に痛みが強くなる場合は整形外科の受診をおすすめします。加えて、足のしびれが広がっている場合や、足首や足の指に力が入りにくくなっている場合は神経の障害が進んでいるサインです。

とくに排尿・排便のコントロールが難しくなったときは、馬尾症候群の疑いがあり、一刻も早い受診が求められます。

レントゲン・MRI・血液検査でなにがわかるのか

レントゲンでは骨の変形や関節の隙間の狭まりを確認でき、変形性股関節症の有無を判断するのに役立ちます。MRIは椎間板ヘルニアや関節唇損傷など、軟部組織の異常を描出するのに優れた検査です。

血液検査は関節リウマチや感染症による股関節炎を除外する目的で行われることがあります。

保存療法から手術まで治療はどう進むのか

原因がわかったら、まずは投薬(消炎鎮痛薬や神経の痛みを抑える薬)やリハビリテーションなどの保存療法から開始するのが一般的です。改善が乏しい場合には、注射療法(ブロック注射やステロイド注射)が検討されます。

それでも症状が続く場合に限り、椎間板ヘルニアの手術や股関節の人工関節置換術といった外科的治療に進むことがあります。手術は保存療法を十分に試したあとの選択肢であり、医師との相談のうえで慎重に判断することが大切です。

  • 2週間以上続くおしりの付け根の痛みは受診の目安
  • 足のしびれや筋力低下は神経障害の警告サイン
  • 排尿・排便の異常が出たら緊急受診が必要

二度と繰り返さないために今日から始める生活習慣

一度おしりの付け根に痛みが出た方は、再発を防ぐための習慣づくりがとても大切です。日常生活のちょっとした工夫が、股関節や坐骨神経への負担を大きく減らしてくれます。

体重を適正に保つことが股関節を守る第一歩

体重が1kg増えると、歩行時に股関節にかかる負荷は約3kg増えるとされています。つまり5kgの体重増加は股関節に15kg分の余分な圧力をかけているのと同じです。

体重の変化股関節への追加負荷日常動作への影響
+3kg約9kg長時間歩行で痛みが出やすくなる
+5kg約15kg階段の昇降がつらくなる
+10kg約30kg安静時にも違和感を覚えることがある

過度なダイエットは筋肉量まで落としてしまうため、バランスの良い食事と適度な運動で少しずつ減らすのが理想です。

股関節まわりの筋力トレーニングで安定性を高める

股関節を支える中殿筋や大殿筋を鍛えると、関節の安定性が向上し、おしりの付け根への負担が軽減されます。横向きに寝て上の脚を30度ほど持ち上げる「ヒップアブダクション」は、自宅で手軽に取り組めるトレーニングの一つです。

回数の目安は片側10回×3セット程度で、痛みのない範囲で行ってください。トレーニングの頻度は週3~4回で十分効果が期待できます。

長時間座りっぱなしの習慣を断ち切る工夫

座りっぱなしはおしりの付け根の筋肉を圧迫し、血行不良を招きます。仕事中にタイマーを30分ごとに設定して立ち上がる習慣をつけるだけでも、おしりの付け根の痛みの再発率はぐっと下がるでしょう。

スタンディングデスクの活用や、通勤時にひと駅分歩くといった小さな変化を積み重ねることが、股関節を長く健康に保つ秘訣です。

よくある質問

おしりの付け根の痛みは整形外科と整骨院のどちらに相談すればよいですか?

まずは整形外科を受診されることをおすすめします。レントゲンやMRIなどの画像検査で原因を正確に特定できるのは医療機関だけです。

原因がはっきりしたうえで、医師の指示のもとにリハビリや整骨院でのケアを併用するのが安全な進め方といえます。自己判断で施術を受けると、かえって症状を悪化させてしまう場合もあるため注意が必要です。

おしりの付け根の痛みと坐骨神経痛は同時に起こることがありますか?

はい、同時に起こることは珍しくありません。たとえば変形性股関節症で股関節自体に痛みがあり、さらに腰椎の問題で坐骨神経痛も併発しているケースがあります。

このような複合的な原因を見落とすと治療効果が上がりにくくなるため、痛みの範囲やしびれの有無を医師に詳しく伝えることが大切です。

おしりの付け根の痛みにロキソニンなどの市販鎮痛薬は効きますか?

ロキソニン(ロキソプロフェン)をはじめとする非ステロイド性消炎鎮痛薬は、炎症をともなうおしりの付け根の痛みに対して一定の効果が期待できます。急な痛みで動けないときの一時的な対処としては有用でしょう。

ただし、市販薬で痛みが治まっても原因そのものが解決したわけではありません。1週間以上服用しても改善しない場合は、医療機関で原因を調べてもらうことをおすすめします。

おしりの付け根が痛いときにやってはいけないストレッチはありますか?

痛みが強い急性期に、おしりの付け根を無理に伸ばすストレッチは避けてください。とくに前屈で太ももの裏を強く引っ張る動作は、坐骨神経をさらに刺激して症状を悪化させるおそれがあります。

痛みの出ない範囲でゆっくり動かす程度にとどめ、炎症が落ち着いてからストレッチの強度を少しずつ上げていくのが安全なやり方です。

おしりの付け根の痛みが長引く場合、手術が必要になることはありますか?

原因によっては手術を検討する場合があります。たとえば変形性股関節症が進行して軟骨がほぼなくなっている状態では、人工股関節置換術が有力な選択肢になります。坐骨神経痛の原因が大きな椎間板ヘルニアであれば、神経の圧迫を取り除く手術で劇的に改善する方も多くいらっしゃいます。

ただし、手術は保存療法で十分な効果が得られなかった場合に限って行われるのが原則です。まずは薬やリハビリを数か月試してから、担当医と一緒に判断していきましょう。

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Author

北城 雅照

医療法人社団円徳 理事長
医師・医学博士、経営心理士

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