足立慶友医療コラム

腰痛の筋トレ|やっていいトレーニングとNGな運動

2026.07.26

腰痛があるからといって、すべての筋トレを避ける必要はありません。むしろ適切な筋力トレーニングは、腰まわりの筋肉を強化して痛みの軽減や再発予防に役立つことが多くの研究で示されています。

大切なのは「どの筋トレをやるか」と「どの筋トレを避けるか」の見極めです。腰に過度な負担がかかるトレーニングは症状を悪化させる危険がありますが、体幹を安定させるエクササイズや低負荷の筋トレは、むしろ痛みを和らげる方向に働きます。

この記事では、腰痛のある方がやっていいトレーニングとNGな運動を、医学的根拠にもとづいて具体的に解説します。自宅でできる筋トレメニューや正しいフォーム、頻度の目安まで丁寧にお伝えしますので、安心して取り組める運動を見つけてください。

腰痛でも筋トレしていい?やっていいトレーニングの判断基準

結論から言えば、腰痛があっても多くのケースで筋トレは可能です。ただし、痛みの原因や程度によって「やっていいトレーニング」と「避けるべき運動」が変わるため、自己判断だけで進めるのはおすすめできません。

腰痛持ちが筋トレを始める前に確認すべきこと

筋トレを始める前に、まず痛みの原因を医療機関で確認することが大切です。腰椎椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)など、特定の疾患がある場合は運動の種類や強度を制限する場合があります。

一般的な非特異的腰痛(はっきりした原因が見つからない腰痛)であれば、安静にするよりも適度に体を動かすほうが回復を早めるとされています。かつては「腰が痛いならベッドで安静に」という考え方が主流でしたが、現在の医学では過度な安静がむしろ回復を遅らせることが明らかになっています。

痛みが強い急性期には無理をせず、症状が落ち着いてから段階的に始めましょう。かかりつけの整形外科医やリハビリ担当の理学療法士に相談しながら進めると、より安心です。

やっていいトレーニングに共通する3つの条件

腰痛がある方に適した筋トレには共通点があります。腰椎(ようつい)に過度な圧縮や回旋の力がかからないこと、正しいフォームを保ちやすいこと、そして痛みなく実施できることの3つです。

条件具体的な目安
腰椎への負荷背骨を中立位に保てる種目を選ぶ
フォームの安定性鏡で姿勢を確認しながら行える
痛みの有無動作中も動作後も痛みが増さない

上記の条件を満たす種目としては、仰向けで行うドローイン、四つ這いで行うバードドッグ、横向きで行うサイドブリッジなどが挙げられます。いずれも体幹を安定させながら行うため、腰への負担が比較的少ない運動です。

筋トレを中断すべきサインとは

運動中に鋭い痛みやしびれが出た場合は、すぐに中断してください。鈍い筋肉痛程度であれば許容範囲ですが、足のしびれや力が入りにくい感覚がある場合は神経への影響が疑われます。そのような症状が現れたら、速やかに整形外科を受診しましょう。

腰痛を悪化させるNGな筋トレ・やってはいけない運動

「良かれと思ってやった筋トレが、かえって腰痛を悪化させてしまった」という声は診察の場でも珍しくありません。腰椎に過度な負荷をかける種目や、急激な動きを伴う運動は避ける必要があります。以下の種目は特に注意が求められます。

腰に負担が大きいNGな筋トレ種目

デッドリフトやスクワットなどの高重量トレーニングは、正しいフォームを維持できないと腰椎への圧縮力が急激に高まります。とくにデッドリフトは背中が丸まった状態で行うと、椎間板(ついかんばん)への圧力が大幅に増加するため、腰痛がある方には推奨できません。

レッグプレスも足の位置や角度によっては骨盤が後傾して腰に負担がかかりやすく、注意が必要です。

腹筋運動でも「シットアップ」は要注意

従来型の腹筋運動であるシットアップ(上体起こし)は、腰痛のある方にとってリスクの高い運動といえます。上体を起こす際に腰椎が繰り返し屈曲し、椎間板への圧力が増すためです。

腹筋を鍛えたい場合は、腰椎を動かさずにお腹に力を入れるプランクやドローインのほうが安全でしょう。上体を大きく起こす動作を含む腹筋運動全般は避けたほうが賢明です。

反動を使う運動・ひねりを伴う運動のリスク

腰を大きくひねるロシアンツイストや、反動を使ったバリスティックな動きは、腰椎の関節や靭帯(じんたい)に過剰なストレスを与えます。ゴルフのスイング練習やバットの素振りなども、腰痛が強い時期には控えてください。

NGな運動避ける理由
シットアップ腰椎の屈曲を繰り返し椎間板に負担
デッドリフト(高重量)フォーム崩れで腰椎圧縮力が急増
ロシアンツイスト腰椎の回旋が関節・靭帯を傷める
レッグレイズ(両脚)腰が反りやすく腰椎前弯が増強

痛みを我慢して筋トレを続けると起こること

痛みを無視してトレーニングを続けると、体は無意識に痛みを避ける動作パターンを身につけます。その結果、本来使うべき筋肉が十分に働かず、代わりに別の部位が過剰に緊張して、二次的な痛みが発生するケースも少なくありません。「痛みは体からの警告」と考え、無理をしないことが長期的な回復への近道です。

腰痛改善に効果が期待できる筋トレメニュー

体幹の安定性を高める筋トレは、腰痛の軽減と再発予防の両方に効果が期待できます。複数の研究で、体幹トレーニングや低負荷のレジスタンス運動が慢性腰痛の痛みと機能障害を改善したと報告されています。自宅でも手軽に始められる種目を中心にご紹介しますので、ご自身の体調に合わせて取り入れてみてください。

ドローイン・腹横筋を意識した体幹トレーニング

ドローインは、仰向けに寝て膝を立てた姿勢でおへそを背骨に向かって引き込むように力を入れる運動です。腹横筋(ふくおうきん)というコルセットのような深層筋を鍛えることで、腰椎を内側から支える力が高まります。

10秒間お腹をへこませた状態を維持し、ゆっくり戻す動作を10回1セットで、1日2〜3セット行うとよいでしょう。呼吸を止めずに行うことがポイントです。

プランクで体幹全体の筋力を底上げする

プランクは、うつ伏せの状態から前腕とつま先で体を支え、頭からかかとまで一直線に保つ運動です。腰椎を動かさずに体幹の筋肉全体を鍛えられるため、腰痛のある方にも取り組みやすい種目といえます。

最初は15〜20秒のキープから始めて、徐々に時間を延ばしていきましょう。腰が反ったりお尻が上がったりしないよう、鏡で姿勢を確認しながら行うことが大切です。

バードドッグで背筋と臀筋をバランスよく強化

四つ這いの姿勢から対角線上の手と脚を同時に伸ばすバードドッグは、背筋群と臀筋(でんきん)を同時に鍛えながら体幹の協調性を高める運動です。動作中に腰がぶれないよう意識することで、脊柱を安定させる深層筋にも効果が及びます。

左右交互に10回ずつ、2〜3セットを目安に行ってください。手足を伸ばしきったところで2〜3秒キープすると、より効果的です。

ヒップリフトで臀部と背面の筋力を養う

仰向けで膝を立て、お尻を持ち上げるヒップリフト(グルートブリッジ)は、臀筋とハムストリングスを鍛えられる安全な筋トレのひとつです。腰を反らせすぎないように骨盤を水平に保つ意識が欠かせません。

  • 仰向けで膝を90度に曲げ、足裏を床につける
  • お尻を締めながらゆっくり持ち上げる
  • 肩から膝までが一直線になったら3秒キープ
  • ゆっくり下ろして10〜15回繰り返す

この運動は腰を過度に反らせなければ腰椎への負荷が少なく、初心者でも無理なく始められます。

自宅でできる腰痛向け筋トレの正しいフォームと手順

腰痛改善のための筋トレは、ジムに行かなくても自宅で十分に実践できます。道具がなくても自体重だけで行える種目が多い点が、腰痛向けトレーニングの利点です。

初心者が守るべきフォームの原則

どの種目にも共通するフォームの基本は、腰椎のニュートラルポジション(自然なカーブ)を崩さないことです。背中が丸まりすぎたり、反りすぎたりすると椎間板や関節にかかる力が偏ります。

動作はゆっくり行い、息を止めないようにしてください。息を止めると腹腔内圧が急上昇し、血圧も上がるため体に余計な負担がかかります。

段階的に負荷を上げるための考え方

筋トレの効果を高めるには、少しずつ負荷を上げていく「漸進性過負荷(ぜんしんせいかふか)」の原則を守ることが大切です。いきなり回数やセット数を増やすのではなく、まずは正しいフォームで規定回数をこなせるようになってから次の段階に進みましょう。

段階内容の目安
第1週〜2週各種目10回×1セット、フォーム習得を優先
第3週〜4週各種目10回×2セット、キープ時間を延長
第5週以降各種目12〜15回×2〜3セット、応用種目追加

腰痛持ちがトレーニング前後に行うべき準備運動

トレーニング前には軽いウォーキングやその場足踏みで体温を上げ、筋肉と関節の動きをなめらかにしておきましょう。いきなり筋トレを始めると筋肉が硬いまま負荷がかかり、痛みの原因になりかねません。

トレーニング後は、腰まわりや太もも裏のストレッチを30秒ずつゆっくり行います。筋肉の緊張をほぐし、翌日の筋肉痛や張り感を軽減する効果があります。

腰痛の筋トレで効果を出すための頻度と注意点

週に2〜3回の頻度で筋トレを継続することが、腰痛改善には効果的とされています。毎日行う必要はなく、筋肉の回復日を設けることで、かえって効率よく筋力が向上するでしょう。

週2〜3回が推奨される医学的な根拠

複数の研究において、体幹トレーニングを週2〜3回の頻度で6〜12週間続けた群で、痛みの軽減と機能改善が確認されています。毎日トレーニングすると疲労が蓄積し、フォームが崩れやすくなるため、1日おきの実施が現実的な目安です。

効果を実感するまでにかかる期間

筋トレの効果は開始直後には感じにくいかもしれません。多くの方は4〜6週間ほど続けると、腰の安定感や日常動作のしやすさに変化を感じ始めます。痛みの程度も徐々に和らぐケースが多いですが、改善のスピードには個人差があるため、焦らず取り組むことが大切です。

3か月以上継続した方のほうが効果が持続しやすいというデータもあります。短期間での劇的な変化を期待するのではなく、習慣として定着させることを目標にしましょう。

筋トレと日常生活の姿勢改善を組み合わせる

せっかく筋トレで体幹を鍛えても、日常生活でつねに猫背のままでは効果が半減してしまいます。デスクワーク中は1時間に1回は立ち上がり、軽い伸びや歩行を挟むようにしましょう。

椅子に座る際は骨盤を立てて背もたれに軽く寄りかかり、足裏を床につけた姿勢を意識してください。筋トレと姿勢改善の両方に取り組むことで、腰痛の改善スピードが高まります。

  • デスクワークは1時間ごとに立ち上がって体を動かす
  • スマホ使用時は目の高さまで端末を持ち上げる
  • 重い荷物は膝を曲げて腰を落としてから持つ

ストレッチ・ヨガ・ウォーキングは腰痛の筋トレ代わりになるか

ヨガやウォーキングは腰痛に対して一定の効果が認められていますが、筋力トレーニングの完全な代替にはなりません。それぞれ異なる効果を持つため、組み合わせて活用するのが望ましい方法です。

ヨガが腰痛に与える効果とエビデンス

ヨガは柔軟性の向上だけでなく、体幹の筋力強化や心理的ストレスの軽減にも寄与します。ある大規模な非劣性試験では、ヨガが理学療法と同等の痛み改善効果を示したと報告されました。心身のリラクゼーション効果もあり、痛みへの恐怖心が強い方には有益な選択肢となるでしょう。

ただし、腰を大きく反らせるポーズや深いねじりのポーズは、腰椎に過度な負荷をかける場合があります。インストラクターに腰痛があることを伝え、無理のないポーズに修正してもらうことが安全に楽しむコツです。

ウォーキングが腰痛予防に果たす働き

ウォーキングは腰椎への衝撃が少なく、全身の血流を改善して筋肉のこわばりをほぐす効果があります。特別な道具も場所も必要なく、日常生活に取り入れやすい運動として多くの方に推奨されています。1日30分程度の歩行を習慣にするだけでも、慢性腰痛の再発リスクを下げられる可能性があるでしょう。

歩く速度は「少し汗ばむ程度」が目安です。ランニングは着地時の衝撃が腰に伝わりやすいため、痛みが強い時期は避けてウォーキングにとどめてください。

水中運動・ピラティスという選択肢

水中での運動は浮力によって腰への重力負荷が大幅に軽減されるため、陸上での筋トレがつらい方にも取り組みやすい選択肢です。水中ウォーキングや水中エクササイズでは、水の抵抗が自然な負荷となり、筋力の維持と向上に役立ちます。

ピラティスは体幹の深層筋を重点的に鍛えるプログラムで、腰痛の緩和に関して複数のシステマティックレビューで肯定的な結果が得られています。呼吸と動作を連動させるため、筋トレに苦手意識がある方でも取り組みやすいかもしれません。

運動の種類主な効果腰痛がある方への適性
ヨガ柔軟性・ストレス緩和ポーズを選べば適性あり
ウォーキング血流改善・持久力向上ほぼすべての方に適する
ピラティス体幹深層筋の強化腰痛改善のエビデンスあり

よくある質問

腰痛があるときに腹筋を鍛えても大丈夫ですか?

腹筋を鍛えること自体は腰痛の改善に役立ちますが、鍛え方に注意が必要です。従来のシットアップ(上体起こし)は腰椎に繰り返し屈曲の力がかかるため、腰痛がある方には推奨されていません。

代わりにプランクやドローインなど、腰椎を動かさずに腹筋へ刺激を入れるアイソメトリック(等尺性)運動を選んでください。これらの種目であれば、腰に負担をかけずに腹筋群を効率よく強化できます。

腰痛の筋トレはどのくらいの期間で効果が出ますか?

個人差はありますが、週2〜3回の体幹トレーニングを4〜6週間ほど継続すると、腰の安定感や動きやすさに変化を実感される方が多い傾向です。痛みの強さについても、6〜12週間の継続で軽減したとする研究報告があります。

短期間で劇的な変化を期待するよりも、正しいフォームで地道に続けることが、結果的に早い改善につながります。途中で痛みが増した場合は無理をせず、医療機関に相談してください。

腰痛の筋トレ中にやってはいけない動作はありますか?

腰を急激にひねる動作、重いものを勢いよく持ち上げる動作、そして背中を丸めたまま負荷をかける動作は避けてください。これらは椎間板や腰椎の関節に過度なストレスを与え、痛みを悪化させるおそれがあります。

動作中に息を止めることも禁物です。呼吸を止めると腹腔内圧と血圧が急上昇し、体に余計な負担がかかります。すべての動作は「ゆっくり」「呼吸を続けながら」行うことを心がけてください。

腰痛にはスクワットをやっていいですか?

スクワットは正しいフォームで行えば、臀筋や太ももの筋力強化を通じて腰への負担を減らせる運動です。ただし、バーベルを担いだ高重量のバックスクワットは腰椎への圧縮力が大きくなるため、腰痛のある方にはリスクが高いといえます。

自体重のハーフスクワットやゴブレットスクワット(軽いダンベルを胸の前に持つ方法)であれば、腰への負担を抑えながら下半身を鍛えられるでしょう。膝がつま先より極端に前に出ないよう注意し、背中はまっすぐ保ってください。

腰痛の筋トレとストレッチはどちらを先にやるべきですか?

一般的には、軽いウォーミングアップのあとに筋トレを行い、トレーニング後にストレッチを行う順番が望ましいとされています。筋トレ前に長時間の静的ストレッチを行うと筋力発揮が一時的に低下する可能性があるためです。

トレーニング前は、その場足踏みや軽い体側伸ばしなどの動的ウォーミングアップで体をほぐし、トレーニング後にじっくりとした静的ストレッチで筋肉の緊張を解放する流れがおすすめです。

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Author

北城 雅照

医療法人社団円徳 理事長
医師・医学博士、経営心理士

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