膝の骨の痛みが続くとき – 原因と対処法
膝の骨に痛みが続くと、日常生活に大きな影響が出ることがあります。「年のせいかな」「そのうち治るだろう」と自己判断せず、痛みの原因を理解し、適切に対処することが大切です。
この記事では、膝の骨が痛む主な原因、ご自身でできる対処法、そして痛みを悪化させないための生活習慣について、わかりやすく解説します。
痛みのサインを見逃さず、健やかな毎日を取り戻すための一助となれば幸いです。
目次
膝の骨の痛みが続くとは?放置するリスク
膝の骨の痛みが一時的ではなく、数週間から数ヶ月にわたって続く場合、それは身体からの重要なサインかもしれません。
単なる筋肉痛や一時的な疲労とは異なり、関節やその周辺組織に何らかの問題が生じている可能性があります。
この痛みを「いつものこと」と軽視してしまうと、症状が悪化し、日常生活に支障をきたすこともあります。
痛みの種類と特徴
膝の痛みは、その現れ方によって原因が推測できる場合があります。痛みの感じ方、痛むタイミング、痛む場所などを注意深く観察することが、原因究明の第一歩となります。
膝の痛みの多様な側面
痛みの種類 | 主な特徴 | 考えられる状態の例 |
---|---|---|
ズキズキする痛み | 炎症が起きている可能性。安静時にも痛むことがある。 | 関節炎、靭帯損傷の急性期 |
鈍い痛み・重い痛み | 慢性的な負担や変性が原因のことが多い。動かすと悪化することも。 | 変形性膝関節症の初期~中期 |
鋭い痛み・刺すような痛み | 特定の動作で急に生じることが多い。 | 半月板損傷、遊離体(関節ねずみ) |
熱感や腫れを伴う痛み | 炎症が強く起きているサイン。 | 関節リウマチ、痛風、感染症 |
痛みが続く場合に考えられること
膝の痛みが長引く場合、単なる使いすぎだけでなく、関節内部の構造的な問題や、全身性の疾患が関わっている可能性も考慮する必要があります。
代表的なものとしては、加齢に伴う変形性膝関節症、スポーツや事故による半月板損傷や靭帯損傷、あるいは関節リウマチのような自己免疫疾患などが挙げられます。
これらの状態は、自然治癒が難しい場合も多く、専門的な評価と対応が求められます。
放置した場合の進行と影響
初期には軽い痛みや違和感程度でも、適切な対処をせずに放置すると、症状は徐々に進行することが一般的です。
例えば、変形性膝関節症の場合、軟骨のすり減りが進み、骨同士が直接こすれ合うようになると、痛みはより強くなり、関節の動きも悪くなります。そうなると、歩行が困難になったり、階段の上り下りができなくなったりと、日常生活の質が著しく低下する恐れがあります。
また、膝をかばうことで他の部位(腰や股関節など)に負担がかかり、新たな痛みが生じることもあります。
早期対応の重要性
膝の痛みが続く場合、早期にその原因を特定し、適切な対応を開始することが、症状の悪化を防ぎ、回復を早める上で非常に重要です。
初期の段階であれば、保存的な治療法(薬物療法、運動療法、物理療法など)で症状の改善が期待できるケースが多くあります。
しかし、進行してしまうと、より大掛かりな治療が必要になったり、回復までに時間がかかったりする可能性が高まります。
痛みを我慢せず、早めに専門機関に相談する勇気が、将来の膝の健康を守る鍵となります。
膝の骨が痛む主な原因
膝の骨の痛みは、さまざまな要因によって引き起こされます。原因を正しく理解することが、適切な対処への第一歩です。ここでは、主な原因をいくつかのカテゴリーに分けて解説します。
加齢による変化
年齢を重ねるとともに、膝関節にも変化が現れます。これは誰にでも起こりうる自然な現象ですが、痛みの原因となることがあります。
変形性膝関節症
変形性膝関節症は、加齢による膝の痛みの最も代表的な原因の一つです。関節のクッションの役割を果たす軟骨がすり減り、骨の変形が生じることで、痛みや腫れ、動きの制限などが現れます。
初期には動き始めに痛む程度ですが、進行すると安静時にも痛むようになり、歩行が困難になることもあります。
変形性膝関節症の一般的な進行段階
進行段階 | 主な症状 | レントゲン所見の例 |
---|---|---|
初期 | 立ち上がりや歩き始めの軽い痛み、こわばり。休むと軽快する。 | 軟骨のわずかな摩耗、関節の隙間が少し狭くなる。 |
中期 | 階段昇降や正座が困難になる。膝に水がたまることがある。 | 軟骨のすり減りが進行し、骨棘(こつきょく)が見られる。 |
末期 | 安静時にも痛みが続く。関節の変形が著しく、歩行が困難になる。 | 関節の隙間がほぼ消失し、骨の変形が著しい。 |
関節軟骨のすり減り
関節軟骨は、骨の表面を覆い、衝撃を吸収し、関節の滑らかな動きを助ける重要な組織です。
しかし、軟骨には血管が通っていないため、一度すり減ってしまうと自然に再生することは難しいとされています。
長年の使用や体重の負荷などにより、この軟骨が徐々に摩耗していくことが、痛みの直接的な原因となります。
スポーツや外傷によるもの
スポーツ活動中の急な動きや、転倒などの事故によって、膝の組織が損傷し、痛みが生じることがあります。若い世代にも多く見られます。
スポーツや日常生活で注意したい膝の怪我
- 半月板損傷
- 靭帯損傷(前十字靭帯、後十字靭帯、内側側副靭帯、外側側副靭帯など)
- 膝蓋骨脱臼(膝のお皿の脱臼)
- 骨軟骨骨折
半月板損傷
半月板は、膝関節の大腿骨(太ももの骨)と脛骨(すねの骨)の間にあるC型をした軟骨様の組織で、クッションの役割と関節の安定性を高める働きをしています。
スポーツ時の急な方向転換やジャンプの着地、あるいは体重がかかった状態でのひねり動作などで損傷することがあります。
損傷すると、膝の曲げ伸ばし時の痛みや引っかかり感、腫れなどが生じます。
靭帯損傷
膝関節には、前後左右の安定性を保つための重要な靭帯が複数あります。
スポーツ中の接触プレーや、交通事故などで強い外力が加わることで、これらの靭帯が断裂したり、伸びたりすることがあります。
代表的なものに前十字靭帯損傷があり、受傷時には「ブチッ」という断裂音を感じることもあります。靭帯が損傷すると、膝の不安定感(膝くずれ)や痛み、腫れが生じます。
骨折・脱臼
強い衝撃によって、膝関節を構成する骨(大腿骨、脛骨、膝蓋骨)が折れたり、関節が外れたり(脱臼)することがあります。
これらは激しい痛みと腫れ、変形を伴い、緊急の対応が必要です。特に膝蓋骨(膝のお皿)は脱臼しやすい部位の一つです。
病気によるもの
全身性の病気が原因で、膝に関節炎が生じ、痛みや腫れを引き起こすことがあります。
関節リウマチ
関節リウマチは、免疫システムの異常により、自分自身の関節を攻撃してしまう自己免疫疾患です。
手足の指の関節に症状が出やすいですが、膝関節にも炎症が生じ、痛み、腫れ、こわばりなどが現れます。朝のこわばりが特徴的で、進行すると関節の変形をきたすこともあります。
変形性膝関節症と関節リウマチの主な違い
項目 | 変形性膝関節症 | 関節リウマチ |
---|---|---|
主な原因 | 加齢、体重、使いすぎなどによる軟骨の摩耗 | 免疫異常による関節の炎症 |
好発年齢 | 中高年以降に多い | 30~50代の女性に多いが、幅広い年齢層で発症 |
特徴的な症状 | 動き始めの痛み、進行すると安静時痛、O脚変形など | 朝のこわばり、複数の関節の腫れ・痛み、対称性 |
痛風・偽痛風
痛風は、血液中の尿酸値が高い状態が続くことで、尿酸の結晶が関節内に沈着し、急性の関節炎を引き起こす病気です。
足の親指の付け根に激痛が生じることが多いですが、膝関節に起こることもあります。偽痛風は、ピロリン酸カルシウムの結晶が沈着することで同様の関節炎を起こします。
細菌感染(化膿性関節炎)
稀ではありますが、細菌が膝関節内に侵入し、感染(化膿性関節炎)を起こすことがあります。この場合、激しい痛み、腫れ、熱感、発赤に加え、発熱などの全身症状を伴うことがあります。
緊急の治療が必要な状態です。
生活習慣との関連
日々の生活習慣も、膝の痛みに大きく影響します。体重管理や運動習慣、姿勢などを見直すことが、予防や症状改善につながります。
体重増加の影響
体重が増加すると、その分、膝関節にかかる負担も大きくなります。歩行時には体重の約3~5倍、階段昇降時には約7~8倍の負荷が膝にかかると言われています。
体重が数キログラム増えるだけでも、膝への負担は想像以上に大きくなり、軟骨のすり減りを早めたり、痛みを悪化させたりする原因となります。
運動不足や過度な運動
運動不足は、膝を支える筋力の低下を招き、関節の不安定性を増大させます。一方、準備運動不足や自分の体力レベルを超えた過度な運動は、膝に大きな負担をかけ、怪我のリスクを高めます。
適度な運動で筋力を維持し、関節の柔軟性を保つことが重要です。
姿勢の悪さ
猫背や反り腰といった悪い姿勢は、身体の重心バランスを崩し、膝関節に偏った負荷をかける原因となります。
また、O脚やX脚のような脚の形態も、膝の内側や外側に負担が集中しやすく、痛みを引き起こす要因となることがあります。
膝の骨の痛みのサインを見逃さない
膝の痛みは、身体が発する重要な警告サインです。初期の小さな変化に気づき、適切に対応することで、症状の悪化を防ぐことができます。
どのような点に注意すれば良いかを見ていきましょう。
初期症状に気づく
多くの場合、膝の痛みは突然激痛として始まるわけではありません。日常生活の中での些細な変化として現れることが多いです。
動き始めの痛み
「朝起きて最初の一歩が痛い」「長時間座っていて立ち上がる時に膝がこわばる、痛む」といった症状は、変形性膝関節症の初期によく見られるサインです。
しばらく動いているうちに痛みが和らぐため、見過ごされがちですが、注意が必要です。
特定の動作での痛み
階段の上り下り、正座、深くしゃがみ込む動作、坂道での歩行など、特定の動作をした時だけ痛みを感じる場合も、膝に何らかの問題が潜んでいる可能性があります。
どの動作で痛みが出るのかを把握しておくことは、原因を探る上で役立ちます。
痛みの性質の変化
痛みの感じ方や強さが変わってきた場合も、注意が必要です。
以前は軽い鈍痛だったものが、ズキズキとした鋭い痛みに変わったり、痛む頻度が増えたりした場合は、症状が進行している可能性があります。
ズキズキする痛み
ズキズキとした拍動性の痛みは、炎症が強く起きていることを示唆します。安静にしていても痛みが続く場合は、早めに専門機関に相談することを検討しましょう。
鈍い痛み
持続的な鈍い痛みや重だるい感じは、慢性的な負担や関節の変性が背景にあることが多いです。我慢できる程度の痛みでも、長期間続く場合は原因を特定することが大切です。
熱感や腫れ
膝が熱っぽい、腫れている、水がたまっている感じがするといった症状は、関節内で炎症が起きている明確なサインです。
変形性膝関節症の悪化時や、関節リウマチ、痛風発作などでも見られます。
日常生活への影響度チェック
膝の痛みが、どの程度日常生活に影響を及ぼしているかを客観的に把握することも重要です。以下のような点で困ることが増えていないか確認してみましょう。
日常生活における膝の痛みチェック
チェック項目 | 以前と比べてどうか | 具体的な状況 |
---|---|---|
階段の昇り降り | 辛くなった、手すりが必要になった | 特に下りが痛む、一段ずつしか進めない |
歩行距離・時間 | 短い距離でも痛む、途中で休みたくなる | 以前は平気だった散歩がつらい |
正座・しゃがみ込み | できなくなった、非常に痛む | 和式の生活が困難、床の物を拾うのが辛い |
睡眠 | 痛みで目が覚める、寝返りで痛む | 寝付けない、熟睡できない |
専門機関への相談タイミング
以下のような場合は、自己判断せずに専門機関(整形外科など)を受診することを強く推奨します。
- 痛みが2週間以上続く場合
- 痛みが徐々に悪化している場合
- 安静にしていても痛む場合
- 膝が明らかに腫れている、熱を持っている場合
- 歩行が困難になるなど、日常生活に支障が出ている場合
- 怪我(転倒、スポーツ中の受傷など)の後に痛みや不安定感が生じた場合
早期の診断と適切な治療が、症状の改善と機能回復への近道です。
自宅でできる膝の痛みへの対処法
膝の痛みが強いときや、原因がはっきりしない場合は専門機関の受診が基本ですが、日常生活の中でご自身でできる対処法もあります。
ただし、これらの方法はあくまで症状を和らげるためのものであり、根本的な原因解決にはならない場合があることを理解しておきましょう。
安静と冷却(RICE処置)
急な痛みや、スポーツなどで膝を痛めた直後(急性期)には、炎症を抑えるために安静と冷却が重要です。RICE処置はその基本となります。
RICE処置の基本要素
- Rest(安静):患部を動かさず、負担をかけないようにします。
- Ice(冷却):氷のうやアイスパックで患部を冷やし、炎症や腫れを抑えます。
- Compression(圧迫):弾性包帯などで軽く圧迫し、腫れの広がりを防ぎます。
- Elevation(挙上):患部を心臓より高い位置に保ち、腫れを軽減します。
適切な冷却方法
氷のうやビニール袋に氷と少量の水を入れ、タオルで包んでから患部に当てます。1回15~20分程度を目安にし、凍傷を防ぐために直接肌に氷を当てないように注意してください。
冷却は、痛めてから24~72時間程度が目安です。慢性的な痛みに対しては、冷却が逆効果になる場合もあるため、専門家のアドバイスを受けることが望ましいです。
温熱療法
慢性的な痛みや、筋肉のこわばりがある場合には、温熱療法が有効なことがあります。血行を促進し、筋肉の緊張を和らげ、痛みを軽減する効果が期待できます。
温めることのメリット
膝を温めることで、血管が拡張し、血流が改善します。これにより、痛みの原因となる発痛物質の排出が促されたり、筋肉や靭帯などの組織が柔らかくなり、関節の動きがスムーズになったりします。
ただし、急性の炎症がある場合(腫れや熱感が強いとき)は、温めると症状が悪化することがあるため注意が必要です。
適切な温め方
入浴(38~40℃程度のぬるめのお湯にゆっくり浸かる)、蒸しタオル、温湿布、カイロなどが手軽な方法です。
温めすぎや長時間の使用は低温やけどの原因になることがあるため、心地よいと感じる程度に留めましょう。
冷やすか温めるかの判断目安
状態 | 対処法 | 理由 |
---|---|---|
急な痛み、腫れ、熱感がある(急性期) | 冷やす(アイシング) | 炎症を抑え、腫れを軽減する |
慢性的な痛み、こわばり(慢性期) | 温める(温熱療法) | 血行を促進し、筋肉の緊張を和らげる |
判断に迷う場合 | 専門機関に相談する | 誤った対処は症状を悪化させる可能性あり |
市販薬の利用と注意点
痛みが辛い場合には、市販の痛み止め(内服薬や外用薬)を利用することも一つの方法です。ただし、これらは対症療法であり、根本的な原因を治療するものではありません。
使用する際は、薬剤師に相談し、用法・用量を守ることが大切です。
痛み止めの種類
市販の内服薬には、アセトアミノフェンや非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などがあります。外用薬としては、NSAIDsを含む湿布薬や塗り薬、温感・冷感タイプの湿布薬などがあります。
湿布薬の選び方
急性の炎症や熱感がある場合は冷感湿布、慢性的な痛みやこわばりには温感湿布が適していると一般的に言われますが、ご自身の感覚に合うものを選ぶと良いでしょう。
NSAIDs含有の湿布薬は、炎症を抑える効果も期待できます。
副作用と使用期間
内服薬は胃腸障害などの副作用、外用薬は皮膚のかぶれなどが起こる可能性があります。
長期間の使用や漫然とした使用は避け、症状が改善しない場合や、副作用が疑われる場合は使用を中止し、専門機関を受診してください。
サポーターや装具の活用
膝用のサポーターや装具は、関節の安定性を高めたり、動きを補助したりすることで、膝への負担を軽減し、痛みを和らげる効果が期待できます。
様々な種類があるため、ご自身の症状や目的に合ったものを選ぶことが重要です。
サポーターの種類と効果
保温効果のあるもの、関節を軽く固定するもの、靭帯の動きをサポートするもの、膝蓋骨を安定させるものなどがあります。
スポーツ用、日常生活用など、用途によっても形状や素材が異なります。
正しい装着方法
サポーターは、適切なサイズを選び、正しく装着しないと効果が得られないばかりか、血行を妨げたり、皮膚トラブルの原因になったりすることもあります。
購入時には試着し、専門家のアドバイスを受けることが望ましいです。
膝の痛みを悪化させないための生活習慣
膝の痛みを抱えている場合、日常生活の送り方を見直すことで、症状の悪化を防ぎ、改善を促すことができます。ここでは、膝に優しい生活習慣のポイントを紹介します。
適正体重の維持
体重コントロールは、膝の負担を減らす上で最も基本的ながら、非常に効果的な方法です。体重が1kg減るだけでも、膝への負荷は大きく軽減されます。
膝への負担軽減
体重が増加すると、立っているだけでも膝には大きな力が加わります。特に変形性膝関節症など、軟骨がすり減っている状態では、過体重は症状を急速に悪化させる要因となります。
適正体重を維持することは、膝の寿命を延ばすことにもつながります。
食事管理のポイント
バランスの取れた食事を心がけ、摂取カロリーが消費カロリーを上回らないように注意します。
特に、脂質の多い食事や糖分の多い間食は控えめにし、野菜やきのこ類、海藻類など、低カロリーで食物繊維が豊富な食品を積極的に取り入れましょう。
急激な減量は身体に負担をかけるため、無理のない範囲で継続することが大切です。
膝に優しい運動の選択
膝に痛みがある場合でも、適切な運動は筋力維持や関節の柔軟性向上に役立ち、症状の改善につながることがあります。ただし、膝に負担の大きい運動は避ける必要があります。
膝に配慮した運動の例
運動の種類 | 主な効果 | 注意点 |
---|---|---|
水中ウォーキング・水泳 | 浮力により膝への負担が少ない。筋力向上、有酸素運動。 | 水温が低すぎると筋肉がこわばることがある。 |
自転車(エアロバイク) | 膝への衝撃が少ない。太ももの筋力強化。 | サドルの高さを適切に調整する。負荷をかけすぎない。 |
太ももの筋力トレーニング | 膝関節を安定させる大腿四頭筋などを強化。 | 痛みが出ない範囲で行う。正しいフォームが重要。 |
ストレッチ | 関節の可動域を広げ、筋肉の柔軟性を高める。 | 反動をつけず、ゆっくりと伸ばす。 |
注意:痛みを感じる運動は無理に行わず、どのような運動が適しているかについては、専門機関に相談することをお勧めします。
日常動作の見直し
普段何気なく行っている動作が、知らず知らずのうちに膝に負担をかけていることがあります。膝に優しい動作を意識することが大切です。
日常生活での膝への配慮
- 床からの立ち上がり:椅子や手すりを利用し、膝への負担を減らす。
- 階段昇降:手すりを使い、一段ずつゆっくりと。痛い方の足は後に。
- 物の持ち運び:重い物は避け、持つ場合は身体に近づけて。
正しい立ち方・座り方
立つときは、左右の足に均等に体重をかけるように意識します。椅子に座る際は、深く腰掛け、背筋を伸ばしましょう。
低い椅子やソファは、立ち上がる際に膝に大きな負担がかかるため、避けた方が良い場合があります。
重い物の持ち方
床にある重い物を持ち上げる際は、膝を曲げて腰を落とし、物に身体を近づけてから、膝と腰の力を使って持ち上げます。
膝を伸ばしたまま前かがみになると、腰だけでなく膝にも負担がかかります。
靴の選び方
クッション性があり、かかとが安定している靴を選びましょう。ヒールの高い靴や底の薄い靴は、膝への衝撃が大きくなるため、長時間の使用は避けるのが賢明です。
足に合ったサイズの靴を選ぶことも重要です。
睡眠環境の整備
質の高い睡眠は、身体の修復や疲労回復に重要です。膝の痛みで眠りが浅くなる場合は、寝具や寝姿勢を見直してみましょう。
横向きで寝る場合は、膝の間にクッションや枕を挟むと、膝への負担が軽減され、楽になることがあります。
仰向けで寝る場合は、膝の下に丸めたタオルやクッションを入れると、膝が少し曲がった状態になり、リラックスしやすくなります。自分にとって最も楽な寝姿勢を見つけることが大切です。
専門機関で行う検査と治療法
膝の骨の痛みが続く場合、整形外科などの専門機関を受診し、正確な診断を受けることが治療の第一歩です。ここでは、一般的に行われる検査や治療法について解説します。
これらの情報は一般的なものであり、実際の診断や治療は個々の状態によって異なります。
問診と視診・触診
まず、医師が患者さんから症状について詳しく話を聞きます(問診)。いつから痛むのか、どのような時に痛むのか、痛みの程度、過去の怪我や病気の有無、生活習慣などを伝えます。
その後、膝の状態を目で見て(視診)、手で触れて(触診)、腫れや熱感、圧痛点(押して痛む場所)、関節の動きの範囲、不安定性などを確認します。
画像検査
問診や診察の結果をもとに、必要に応じて画像検査を行い、膝内部の状態をより詳しく調べます。
レントゲン検査(X線検査)
骨の状態を評価する基本的な検査です。骨折の有無、骨の変形(変形性膝関節症における骨棘形成など)、関節の隙間の狭さ(軟骨のすり減り具合の指標)などを確認できます。
比較的簡便に行える検査です。
MRI検査(磁気共鳴画像検査)
レントゲンでは写らない軟骨、半月板、靭帯、筋肉などの軟部組織の状態を詳しく評価できる検査です。半月板損傷や靭帯損傷、軟骨の損傷範囲などを詳細に把握するのに有用です。
強力な磁石と電波を使って撮影するため、体内に金属(ペースメーカーなど)が入っている場合は検査できないことがあります。
超音波検査(エコー検査)
超音波を使って、関節内の水分の貯留(水腫)、滑膜の炎症、靭帯や腱の損傷などをリアルタイムに観察できる検査です。身体への負担が少なく、簡便に行えます。
関節注射を行う際のガイドとしても利用されます。
主な画像検査とその特徴
検査方法 | 主な観察対象 | メリット |
---|---|---|
レントゲン検査 | 骨の形状、骨折、関節の隙間 | 簡便、費用が比較的安い |
MRI検査 | 軟骨、半月板、靭帯、筋肉など軟部組織 | 軟部組織の描出能が高い、詳細な情報が得られる |
超音波検査 | 関節内の水腫、滑膜炎、靭帯・腱 | リアルタイム観察、身体への負担が少ない、簡便 |
薬物療法
痛みや炎症を和らげるために、薬物療法が行われます。内服薬、外用薬、注射などがあります。
内服薬
痛みの程度や炎症の状態に応じて、消炎鎮痛薬(NSAIDsやCOX-2選択的阻害薬など)やアセトアミノフェンなどが処方されます。
関節リウマチの場合は、抗リウマチ薬や生物学的製剤などが用いられることもあります。
注射療法
膝関節内に直接薬剤を注入する治療法です。代表的なものにヒアルロン酸注射があり、関節の潤滑を高め、痛みを和らげる効果が期待されます。変形性膝関節症の治療によく用いられます。
炎症が強い場合には、ステロイド注射が行われることもありますが、頻繁な使用は副作用のリスクがあるため慎重に行われます。
理学療法・運動療法
理学療法士などの専門家の指導のもと、運動機能の回復や維持を目指す治療法です。個々の状態に合わせたプログラムが組まれます。
筋力トレーニング
膝関節を支える筋肉(特に太ももの前の大腿四頭筋や後ろのハムストリングスなど)を強化することで、関節の安定性を高め、負担を軽減します。
痛みが出ない範囲で、正しい方法で行うことが重要です。
可動域訓練
膝関節の動きが悪くなっている場合(拘縮)、関節の動く範囲を広げるための訓練を行います。温熱療法などと組み合わせて行うこともあります。
その他、物理療法として、電気刺激療法、温熱療法、超音波療法などが、痛みの緩和や血行促進、組織の修復促進などを目的に行われることがあります。
手術療法(参考情報として)
保存療法(薬物療法や運動療法など)で十分な効果が得られない場合や、症状が重度で日常生活に大きな支障が出ている場合には、手術療法が検討されることがあります。
代表的な手術には、関節鏡視下手術(半月板損傷や靭帯再建など)や人工関節置換術(変形性膝関節症や関節リウマチで関節の変形が著しい場合など)があります。
手術の適応や方法は、年齢、活動レベル、全身状態などを総合的に判断して決定されます。
手術にはメリットだけでなく、リスクや合併症の可能性もあるため、医師と十分に相談することが大切です。
膝の骨の痛みに関するよくある質問 (Q&A)
ここでは、膝の骨の痛みに関して多く寄せられる質問とその回答をまとめました。
ただし、個々の症状や状態によって最適な対応は異なりますので、あくまで一般的な情報として参考にしてください。
Q. 痛いときは冷やすべきですか?温めるべきですか?
A. 一般的に、急な痛みや腫れ、熱感がある場合(急性期)は、炎症を抑えるために冷やす(アイシング)のが適しています。
一方、慢性的な痛みやこわばりがある場合(慢性期)は、血行を促進し筋肉の緊張を和らげるために温める(温熱療法)のが良いとされています。
ただし、自己判断が難しい場合や、どちらの対応をしても症状が改善しない場合は、専門機関に相談しましょう。
Q. 膝に良いとされるサプリメントは効果がありますか?
A. グルコサミンやコンドロイチン、ヒアルロン酸などの成分を含むサプリメントが市販されていますが、これらの有効性については科学的な意見が分かれており、全ての人に効果が保証されているわけではありません。
一部の人には症状の緩和が見られることもありますが、効果には個人差が大きいです。サプリメントはあくまで健康補助食品であり、治療の代わりにはなりません。
使用を検討する場合は、過度な期待はせず、医師や薬剤師に相談することをお勧めします。
Q. 膝が痛いのですが、どのような運動がおすすめですか?
A. 膝に痛みがある場合でも、適切な運動は筋力維持や症状改善に役立ちます。
膝への負担が少ない運動として、水中ウォーキングや水泳、自転車(エアロバイク)、太ももの筋力を鍛えるトレーニング(痛みがない範囲で)、ストレッチなどが推奨されます。
ジャンプや急な方向転換を伴う運動、長時間のランニングなど、膝に強い衝撃がかかる運動は避けた方が良いでしょう。
どのような運動が自分に適しているか、また、どの程度の強度で行うべきかについては、専門家の指導を受けることが最も安全で効果的です。
Q. 痛みがなかなか改善しない場合、どうすれば良いですか?
A. セルフケアや市販薬で痛みが改善しない、あるいは悪化する場合は、自己判断を続けずに整形外科などの専門機関を受診することが重要です。
痛みの原因を正確に診断し、適切な治療法(薬物療法、理学療法、注射、場合によっては手術など)について医師と相談しましょう。また、一つの医療機関で改善が見られない場合でも、セカンドオピニオンを求めることも選択肢の一つです。
諦めずに、ご自身に合った治療法を見つけることが大切です。
以上
参考文献
TAVARES JÚNIOR, Wilson Campos, et al. Bone attrition: a cause of knee pain in osteoarthritis. Radiologia Brasileira, 2012, 45: 273-278.
DUONG, Vicky, et al. Evaluation and treatment of knee pain: a review. Jama, 2023, 330.16: 1568-1580.
BERTEAU, Jean-Philippe. Knee pain from osteoarthritis: pathogenesis, risk factors, and recent evidence on physical therapy interventions. Journal of Clinical Medicine, 2022, 11.12: 3252.
PICKERING, Marie-Eva; DELAY, Marine; MOREL, Véronique. Chronic pain and bone-related pathologies: a narrative review. Journal of Pain Research, 2024, 2937-2947.
ROOS, Ewa M.; ARDEN, Nigel K. Strategies for the prevention of knee osteoarthritis. Nature Reviews Rheumatology, 2016, 12.2: 92-101.
SARZI-PUTTINI, Piercarlo, et al. Osteoarthritis: an overview of the disease and its treatment strategies. In: Seminars in arthritis and rheumatism. WB Saunders, 2005. p. 1-10.
BIJLSMA, J. W. J.; KNAHR, K. Strategies for the prevention and management of osteoarthritis of the hip and knee. Best practice & research Clinical rheumatology, 2007, 21.1: 59-76.
GREGORI, Dario, et al. Association of pharmacological treatments with long-term pain control in patients with knee osteoarthritis: a systematic review and meta-analysis. Jama, 2018, 320.24: 2564-2579.
MICHAEL, Joern WP; SCHLÜTER-BRUST, Klaus U.; EYSEL, Peer. The epidemiology, etiology, diagnosis, and treatment of osteoarthritis of the knee. Deutsches Arzteblatt International, 2010, 107.9: 152.
JACKSON, Jeffrey L.; O'MALLEY, Patrick G.; KROENKE, Kurt. Evaluation of acute knee pain in primary care. Annals of internal medicine, 2003, 139.7: 575-588.
Symptoms 症状から探す
