足立慶友医療コラム

整形外科における股関節のひびの診断と治療計画

2025.07.03

歩き始めや立ち上がりの際に、股関節、つまり足の付け根に鋭い痛みが走る。もしかしたら「股関節にひびが入ったのかもしれない」と不安を感じている方もいるでしょう。

股関節のひびは、医学的には「不全骨折」と呼び、骨が完全には折れていない状態を指します。

特に骨の強度が低下した高齢の方に多く、軽い転倒や、時には転んだ覚えがなくても生じることがあります。この状態を軽視すると、完全な骨折へと進行し、歩行が困難になる場合もあります。

この記事では、整形外科が股関節のひびをどのように診断し、個々の状態に応じた治療計画をどのように立てるのかを、順を追って詳しく解説します。

症状の原因から治療法、そしてその後のリハビリテーションに至るまで、正しい知識を持つことが、適切な対応への第一歩となります。

股関節のひびとは何か?その原因と種類

「股関節のひび」と聞くと、漠然としたイメージを持つ方が多いかもしれません。しかし、この状態は医学的に明確な定義があり、発生する原因や部位によって特徴が異なります。

まずは、股関節のひびの基本的な知識を深め、どのような状態なのかを理解しましょう。

股関節の「ひび」の医学的な定義

一般的に「ひび」と呼ばれる状態は、整形外科では「不全骨折」に分類します。

これは、骨の一部に亀裂が入っているものの、骨の連続性は保たれており、完全に分離(骨折)するには至っていない状態です。

一方で、骨が完全に折れて二つ以上に分かれてしまった状態を「完全骨折」と呼びます。

股関節のひび、つまり不全骨折は、レントゲン検査では発見しにくいこともあり、診断には注意を要します。

放置すると、体重がかかることなどでひびが広がり、完全骨折に移行するリスクを伴います。

股関節にひびが入る主な原因

股関節にひびが入る原因は、大きく分けて三つあります。一つ目は、転倒や転落といった明らかな外力が加わる「外傷性」のものです。

二つ目は、骨粗鬆症などで骨自体がもろくなっているために、くしゃみや寝返りなど、日常生活の非常に軽い動作でも発生する「脆弱性」のものです。

三つ目は、長距離ランニングやジャンプ動作の繰り返しなど、特定の部位に持続的な負荷がかかることで生じる「疲労性」のもので、これはアスリートなどに多く見られます。

股関節のひびに繋がりやすい状況

  • 転倒・転落
  • 骨粗鬆症
  • 長距離のランニング
  • 栄養不足

ひび(不全骨折)の種類

股関節のひびは、発生する場所によって大きく二つに分類されます。

股関節を形成する太ももの骨(大腿骨)の付け根部分の骨折であり、「大腿骨頸部(だいたいこつけいぶ)」に生じる場合と、少し外側の「大腿骨転子部(だいたいこてんしぶ)」に生じる場合があります。

どちらの部位にひびが入るかによって、血流の状態や骨のつきやすさが異なり、治療方針の決定に影響します。

ひびの発生部位による特徴

発生部位特徴骨癒合のしやすさ
大腿骨頸部関節の袋(関節包)の内側にあり、血流が乏しい。骨がつきにくい傾向がある。
大腿骨転子部関節包の外側にあり、血流が豊富。骨がつきやすい傾向がある。

特に注意が必要な方

股関節のひびは誰にでも起こり得ますが、特にリスクが高いとされる方々がいます。最も多いのは、骨密度が低下している高齢者、とりわけ閉経後の女性です。

骨粗鬆症の診断を受けている、あるいは治療中の方は、特に注意が必要です。

また、ステロイド薬を長期にわたって使用している方や、過度な飲酒・喫煙習慣がある方も骨がもろくなりやすいため、リスクが高まります。

アスリートの場合は、疲労骨折として発症することがあるため、トレーニング内容や体のケアには十分な配慮が大切です。

股関節のひびでみられる症状の特徴

股関節にひびが入った場合、体は様々なサインを発します。しかし、その症状は打撲や筋肉痛と似ていることもあり、見過ごされてしまうことも少なくありません。

ここでは、股関節のひびに特徴的な症状について具体的に解説し、早期発見につなげるためのポイントを説明します。

主な症状としての痛み

最も代表的な症状は「痛み」です。痛む場所は、足の付け根(鼠径部)が最も多いですが、お尻(臀部)や太もも、膝のあたりに痛みを感じることもあります。

痛みの特徴としては、じっとしている時にはあまり感じず、立ち上がる、歩く、寝返りを打つ、足をひねるなど、股関節を動かした時に鋭い痛みが生じることが挙げられます。

この「動作時痛」が、股関節のひびを疑う重要なサインです。

歩行や動作への影響

痛みのために、日常生活の様々な動作に支障が出ます。体重をかけると痛むため、足を引きずるように歩く(跛行)、あるいは痛くて全く歩けなくなることもあります。

また、靴下を履く、足の爪を切る、椅子から立ち上がるといった、股関節を深く曲げる動作が困難になります。これらの動作が急にできなくなった場合は、注意が必要です。

日常生活で困難になる動作の例

動作の例困難になる理由
歩行・階段昇降体重をかけると股関節に痛みが生じるため。
靴下やズボンを履く股関節を深く曲げる動作で痛みが誘発されるため。
椅子からの立ち座り股関節に力が入る際に痛みを感じるため。

腫れや内出血の有無

完全な骨折と異なり、ひび(不全骨折)の段階では、外から見てわかるほどの大きな腫れや内出血(あざ)は現れないことも多くあります。

特に、関節の深い部分でひびが入った場合は、見た目の変化がほとんどないことも珍しくありません。このため、「腫れていないから大丈夫」と自己判断するのは禁物です。

ただし、ひびの状態によっては、軽度の腫れや熱っぽさを感じることもあります。

見逃されやすい初期症状

股関節のひびは、必ずしも激しい痛みから始まるとは限りません。

「なんとなく足の付け根が重い」「長時間歩くと違和感がある」といった、ごく軽い症状が初期サインであるケースもあります。

特に疲労性のひびの場合、運動時のみに痛み、休むと軽快することを繰り返すため、筋肉痛などと勘違いされやすい傾向にあります。

はっきりしない痛みが続く場合は、軽視せずに専門医に相談することが大切です。

整形外科で行う股関節のひびの診断方法

股関節の痛みの原因を正確に突き止めるため、整形外科では体系的な診察と検査を行います。

特に股関節のひびは、レントゲンだけでは見つけにくいことがあるため、複数の方法を組み合わせて慎重に診断を進めます。

ここでは、診断に至るまでの具体的な流れを紹介します。

問診と身体診察の重要性

診断の第一歩は、患者さんから詳しくお話を聞く「問診」です。

いつから、どこが、どのように痛むのか、転倒などのきっかけはなかったか、普段の生活や運動習慣、過去の病気や服用中の薬についてなど、詳しく確認します。

この問診の情報が、診断の大きな手がかりとなります。

その後に行う「身体診察」では、医師が股関節を動かしたり、押したりして痛みの場所や程度、関節の動きの範囲などを確認し、ひびの可能性を探ります。

問診で確認する主な項目

  • 痛みが始まった時期ときっかけ
  • 痛みの場所と性質(鋭い、鈍いなど)
  • 痛みが強くなる動作
  • 骨粗鬆症などの既往歴

画像診断① レントゲン(X線)検査

レントゲン検査は、骨の状態を確認するための基本的な画像診断です。骨折の有無や関節の状態を手軽に評価できます。

しかし、骨のずれ(転位)がない不全骨折、つまり「ひび」の場合、特に受傷直後ではレントゲン写真に写らないことが少なくありません。

このため、レントゲンで異常がないと判断されても、症状が続く場合は、さらなる精密検査が必要になります。

画像診断② MRI検査

MRI検査は、磁気と電波を使って体内の詳細な断面像を得る検査です。レントゲンではわからない骨の中の変化を捉える能力に非常に優れています。

股関節のひびの場合、骨に亀裂が入った部分で生じる微細な出血やむくみ(骨髄浮腫)を明瞭に描き出すことができます。

このことにより、レントゲンでは見えないごく初期のひびも、MRI検査によって発見することが可能です。

症状からひびが強く疑われるにもかかわらず、レントゲンで異常が見られない場合に、最も有効な診断手段となります。

画像診断方法の比較

検査方法特徴利点・欠点
レントゲン検査骨の全体像を把握する基本的な検査。手軽で迅速だが、初期のひびは見逃すことがある。
MRI検査骨内部の変化を描出する能力が高い。初期のひびの診断に極めて有効。検査に時間がかかる。
CT検査骨の形状を立体的に詳細に評価する。複雑な骨折の評価や手術計画の立案に有用。

画像診断③ CT検査

CT検査は、レントゲンを使って体を輪切りにしたような詳細な画像を得る検査です。骨の形状を立体的に、そして非常に細かく評価することに長けています。

ひびがどの程度の深さや広がりを持っているのか、関節面に影響が及んでいるのかなどを詳しく知りたい場合や、手術を行う前の計画を立てる際に有用な情報を提供します。

股関節のひびにおける治療計画の立て方

股関節のひびと診断された後、治療はどのように進められるのでしょうか。治療方針は、画一的に決まるものではありません。

ひびの状態、患者さん自身の年齢や活動量、そして生活背景などを総合的に評価し、一人ひとりに合った治療計画を立てていきます。

治療方針を決めるための評価項目

治療計画を立案するにあたり、医師は様々な情報を基に総合的な判断を下します。

まず、画像診断から得られる情報、つまり、ひびがどの部位にあるのか、骨のずれ(転位)の程度はどうか、骨折線は不安定なタイプか、といった医学的な評価が基本となります。

これに加えて、患者さんの年齢、骨粗鬆症の有無、普段どのくらい活動的な生活を送っているか、他に持病はないか、といった全身状態も重要な判断材料です。

治療方針決定における考慮点

評価項目考慮する理由
ひびの場所とずれ骨のつきやすさや安定性に関わり、治療法選択の基本となる。
年齢と活動レベル早期の社会復帰や活動性の維持など、治療目標の設定に影響する。
全身状態・持病手術に耐えられるか、合併症のリスクはどうかを判断する。

保存的治療と手術的治療の選択基準

股関節のひびの治療は、大きく「保存的治療」と「手術的治療」に分かれます。

ひびのずれがほとんどなく、安定していると判断される場合には、手術をしない保存的治療を選択することが可能です。

一方、ひびにずれがある場合や、不安定で今後ずれる可能性が高い場合、あるいは早期に体重をかけて歩くことを目指す場合には、手術的治療を積極的に検討します。

特に高齢者の場合、長期間ベッドの上で安静にしていると、筋力低下や認知機能の低下などを招くリスクがあるため、早期離床を目指して手術を選択することが多くあります。

患者の希望と生活背景の考慮

最終的な治療方針は、医学的な判断だけで決まるわけではありません。

治療によってどのような状態を目指したいのか、仕事や家庭の事情はどうなっているのかなど、患者さん自身の希望や生活背景も重要な要素です。

例えば、仕事への早期復帰を強く望む方や、スポーツへの復帰を目指す方には、より積極的な治療法を提案することがあります。

医師はこれらの情報を踏まえ、複数の治療選択肢の利点と欠点を丁寧に説明し、患者さんと共に最終的な方針を決定していきます。

治療目標の設定

治療計画を立てる際には、具体的な目標を設定します。短期的な目標としては、まず「痛みを和らげること」が挙げられます。

そして、ひびが入った骨がしっかりつく「骨癒合を促すこと」、さらに手術などによって起こりうる「合併症を予防すること」が重要です。

長期的な目標としては、股関節の機能を最大限に回復させ、治療前と同じように「歩行能力を取り戻し、質の高い日常生活に復帰すること」を目指します。

保存的治療法の内容と進め方

手術を選択しない保存的治療は、主に体の自然治癒力を引き出し、骨が癒合するのを待つ方法です。

ひびの状態が安定している場合にこの方法が選択されますが、骨がつくまでの間は、適切な管理と注意深い経過観察が必要です。

安静と免荷の徹底

保存的治療の基本は、ひびが入った股関節に体重をかけないようにすること、つまり「免荷(めんか)」です。

骨が十分な強度を取り戻すまで、体重をかけるとひびがずれたり、完全骨折に移行したりする危険性があります。

このため、治療の初期段階ではベッド上での安静を基本とし、移動の際には松葉杖や車椅子を使用します。

免荷の期間は、骨の癒合状態をレントゲンなどで定期的に確認しながら慎重に判断します。

痛みを管理するための薬物療法

痛みが強い場合は、それを我慢する必要はありません。痛みを和らげるために、消炎鎮痛薬(非ステロイド性抗炎症薬など)の内服薬や外用薬(湿布など)を用います。

痛みを適切に管理することは、患者さんの苦痛を和らげるだけでなく、安静を保ちやすくするためにも重要です。

ただし、薬の使用は医師の指示に従い、漫然と長期間使用することは避けます。

保存的治療の主な内容

治療法目的
安静・免荷ひびの安定を保ち、骨癒合を妨げないようにする。
薬物療法痛みを緩和し、QOL(生活の質)を維持する。
骨粗鬆症治療骨の質を改善し、骨癒合を促進、再骨折を予防する。

骨癒合を促進するためのアプローチ

ひびの治癒を早めるためには、骨の材料となる栄養素を十分に摂取することが大切です。特に、カルシウムやビタミンD、ビタミンK、たんぱく質などをバランス良く含んだ食事を心がけます。

また、股関節のひびの原因に骨粗鬆症がある場合は、その治療を並行して積極的に行います。骨密度を高める薬を使用することで、骨の癒合を助け、将来の再骨折のリスクを低減させます。

保存的治療の期間と注意点

保存的治療にかかる期間は、ひびの状態や年齢、骨の健康状態によって異なりますが、一般的には数週間から数ヶ月を要します。この間、注意すべきは合併症の予防です。

特に、長期間ベッド上で過ごすことによって、足の静脈に血の塊(血栓)ができる「深部静脈血栓症」のリスクが高まります。

これを予防するために、足首を動かす運動を行ったり、弾性ストッキングを着用したりすることがあります。

手術的治療法が必要になる場合とその種類

ひびの状態や患者さんの状況によっては、より確実で早い回復を目指して手術的治療が選択されます。

手術を行うことで、痛みを早期に取り除き、ベッドから離れてリハビリを開始できるため、多くの利点があります。

ここでは、どのような場合に手術が検討され、どのような方法があるのかを解説します。

手術が推奨されるケース

手術を検討するのは、主にひびにずれ(転位)が見られる場合です。ずれたままでは骨が正常な位置でつかないため、手術によって正しい位置に戻して固定する必要があります。

また、ずれがなくても、ひびが不安定で今後ずれる可能性が高いと判断される場合も手術の良い適応となります。

特に高齢者では、長期の安静が全身状態の悪化につながるため、寝たきりを防ぎ、早期にリハビリを開始する目的で、積極的に手術が選択される傾向にあります。

骨接合術(内固定術)

骨接合術は、自分の骨を温存し、金属製のネジ(スクリュー)や板(プレート)などを使って、ひびの入った部分を内側から固定する手術です。

比較的若い方や、骨のずれが少ない、あるいは安定したタイプのひびに対して行われることが多い方法です。この手術の利点は、自分自身の関節を温存できる点にあります。

手術後は、骨が癒合するまで体重をかけるのを待つ期間が必要です。

人工骨頭置換術

人工骨頭置換術は、骨折した大腿骨の骨頭部分を取り除き、金属やセラミックでできた人工の骨頭に置き換える手術です。

この方法は、主に大腿骨頸部のひびで、ずれが大きく、骨頭への血流が途絶えて骨が壊死するリスクが高いと判断される高齢の患者さんに行われます。

手術直後から体重をかけることが可能になるため、非常に早い段階でリハビリを開始でき、早期の社会復帰が期待できるという大きな利点があります。

主な手術方法の比較

手術方法主な対象メリット・デメリット
骨接合術比較的若年者、ずれの少ないひび自己の関節を温存できるが、再手術の可能性も。
人工骨頭置換術高齢者、ずれの大きい頸部のひび早期に歩行可能だが、脱臼などのリスクがある。

手術に伴うリスクと合併症

どのような手術にも、一定のリスクや合併症の可能性は伴います。

股関節の手術で注意が必要なものとして、手術部位に細菌が入り込む「感染」、足の静脈に血栓ができる「深部静脈血栓症」、そして人工関節特有の合併症である「脱臼」などが挙げられます。

医師はこれらのリスクを最小限に抑えるために細心の注意を払いますが、患者さん自身も、手術前にリスクについて十分に理解しておくことが重要です。

治療後のリハビリテーションの重要性

保存的治療であれ手術的治療であれ、治療が完了しても、それで終わりではありません。痛みがなくなり、骨が癒合したとしても、低下した筋力や関節の機能はすぐには元に戻りません。

元の活動的な生活を取り戻すためには、リハビリテーションが極めて重要な役割を果たします。

リハビリテーションの目的

リハビリテーションの主な目的は三つあります。一つ目は、安静期間中に硬くなってしまった股関節の動き(関節可動域)を改善すること。

二つ目は、体重を支え、スムーズに歩くために低下してしまったお尻や太ももの筋力を回復させること。

そして三つ目は、これらの機能回復を通じて、最終的に安定した歩行能力を再獲得し、安全で質の高い日常生活を送れるようにすることです。

治療法別のリハビリ開始時期

リハビリテーションを開始するタイミングは、受けた治療法によって異なります。

保存的治療の場合は、骨がある程度つくまで体重をかけることができないため、ベッド上で行える関節運動や筋力トレーニングから始め、骨の癒合状態に応じて徐々に負荷を上げていきます。

一方、手術、特に人工骨頭置換術を受けた場合は、手術の翌日や翌々日といった非常に早い段階から、理学療法士の指導のもとで立ち上がりや歩行訓練を開始することが可能です。

リハビリテーションの段階的な進め方

リハビリは、患者さんの回復状態に合わせて段階的に進められます。初めはベッドの上で関節を動かす運動や、簡単な筋力トレーニングから開始します。

状態が安定してきたら、車椅子への乗り移り、平行棒につかまっての立ち上がりや歩行訓練へと進みます。

その後、杖や歩行器を使った歩行へと移行し、最終的には何も使わずに安定して歩けることを目指します。

リハビリテーションの段階

時期目標主な訓練内容
治療初期関節の拘縮予防、筋力維持ベッド上での関節可動域訓練、筋力トレーニング
回復期起立・歩行能力の獲得平行棒内歩行、杖歩行、バランス訓練
退院後日常生活への復帰、再発予防屋外歩行、応用的な動作訓練、自主トレーニング

自宅で継続する運動と日常生活の注意点

入院中のリハビリで得た機能を入院前のレベルまで、あるいはそれ以上に高めていくためには、退院後も自宅で自主的に運動を継続することが大切です。

理学療法士から指導されたトレーニングメニューを、日常生活の中に組み込みましょう。また、股関節のひびを経験した方は、再び転倒して骨折するリスクが高い状態にあります。

自宅内の段差をなくす、手すりを設置する、滑りにくい履物を選ぶなど、転倒を予防するための環境整備も同時に進めることが重要です。

転倒予防のための環境整備

  • 段差の解消
  • 手すりの設置
  • 滑りにくい床材
  • 足元を照らす照明

よくある質問

最後に、股関節のひびに関して、患者さんやそのご家族からよく寄せられる質問とその回答をまとめました。治療に関する疑問や不安の解消にお役立てください。

股関節のひびは自然に治りますか?

骨のずれが全くなく、非常に安定した状態のひびであれば、適切な安静と管理のもとで自然に治癒(骨癒合)する可能性はあります。

しかし、自己判断で「ただの打撲だろう」と放置している間にひびがずれてしまい、手術が必要な状態になることも少なくありません。

股関節の痛みが続く場合は、必ず整形外科を受診し、正確な診断を受けることが大切です。

治療期間はどのくらいかかりますか?

治療期間は、ひびの状態、治療法、年齢、元々の健康状態など多くの要因によって変わるため、一概には言えません。

目安として、保存的治療の場合は骨癒合に2~3ヶ月程度、手術的治療の場合も骨癒合には同程度の期間がかかりますが、リハビリはより早期から開始できます。

社会復帰までの期間は、仕事の内容などにもよりますが、数ヶ月単位で考えるのが一般的です。

治療費はどのくらいかかりますか?

股関節のひびの治療は、健康保険が適用されます。自己負担額は、年齢や所得に応じた負担割合(1割~3割)となります。

手術や入院で治療費が高額になった場合でも、「高額療養費制度」を利用することで、自己負担額を一定の上限額までに抑えることができます。

具体的な費用については、治療を受ける医療機関の相談窓口などで確認するとよいでしょう。

再発を予防するためにできることはありますか?

一度股関節のひびを経験した方は、反対側の足や他の部位を骨折するリスクが高いと言われています。

最も重要な予防策は、骨折の根本的な原因である「骨粗鬆症」の治療を継続することです。薬物療法や、カルシウム、ビタミンDを豊富に含む食事、適度な運動を組み合わせ、骨を強く保ちます。

また、転倒しないための体力づくり(筋力、バランス能力の向上)や、住環境の見直しも、再発予防のために非常に重要です。

再発予防のポイント

項目具体的な内容
骨粗鬆症の治療定期的な骨密度検査と、医師の指示に従った薬物療法。
運動習慣ウォーキングや片足立ちなどのバランス訓練で転倒しにくい体をつくる。
食生活の改善骨の材料となるカルシウム、ビタミンD、たんぱく質を十分に摂取する。

以上

参考文献

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Author

北城 雅照

医療法人社団円徳 理事長
医師・医学博士、経営心理士

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