足立慶友医療コラム

股関節のどこが痛むかによる症状の違いと診断

2025.06.30

「股関節が痛いけれど、具体的にどこが痛むのかうまく説明できない」「足の付け根や、お尻のあたりが痛むのはなぜだろう」といったお悩みはありませんか。

股関節の痛みは、発生している場所によって考えられる原因が異なります。例えば、前側の付け根、横側、後ろ側(お尻)など、痛む部位を特定することで、ご自身の体の状態を理解する手がかりになります。

この記事では、股関節のどのあたりが痛むのかという場所に着目し、それぞれの場所で考えられる症状の違いや原因、そして医療機関でどのような診断が行われるのかを詳しく解説します。

痛みの原因を正しく知ることが、適切な対処への第一歩です。

股関節の痛みの場所と原因の基本的な関係

股関節の痛みを理解するためには、まず股関節がどのような構造で、なぜ痛む場所によって原因を推測できるのかを知ることが大切です。

ここでは、股関節の基本的な仕組みと、痛みの場所が診断において重要なヒントとなる理由について解説します。

ご自身の症状を客観的に把握するための準備として、基本から確認していきましょう。

股関節の構造と役割の理解

股関節は、太ももの骨である「大腿骨」の先端にある球状の「骨頭」が、骨盤の「寛骨臼」というお椀のようなソケットにはまり込む形をしています。

この構造は「球関節」と呼ばれ、脚を前後、左右、斜めなど、さまざまな方向に自由に動かすことを可能にしています。

関節の表面は「関節軟骨」という滑らかで弾力のある組織で覆われており、衝撃を吸収し、動きをスムーズにするクッションの役割を果たしています。

この股関節は、立つ、歩く、走るといった日常のあらゆる動作で体重を支える重要な役割を担っています。

そのため、軟骨のすり減りや、周囲の筋肉・腱の不調などが起こると、痛みとして症状が現れやすいのです。

なぜ痛む場所によって原因が異なるのか

股関節周りには、骨だけでなく、軟骨、靭帯、筋肉、腱、神経といった多くの組織が複雑に存在しています。

痛みの原因が関節そのものにあるのか、それとも周囲の筋肉や腱にあるのかによって、痛みを感じる場所は変わってきます。

例えば、関節軟骨のすり減りが原因の場合、股関節の前側(付け根)に痛みが出やすい傾向があります。

一方で、お尻の横側が痛む場合は、股関節を支える筋肉の腱に問題が生じている可能性を考えます。

このように、股関節のどのあたりに痛みを感じるかは、問題が起きている組織を特定するための重要な手がかりとなるのです。

痛みの記録が診断に役立つ理由

医療機関を受診する際、医師に症状を正確に伝えることは、適切な診断に繋がります。特に「股関節のどこが痛むか」を具体的に伝えられると、診断の精度が向上します。

さらに、「いつから痛むか」「どんな動きで痛むか」「痛みの強さはどうか」といった情報を整理しておくと、よりスムーズに原因を探ることができます。

日頃からご自身の痛みの特徴をメモしておくことをお勧めします。

痛みの記録方法

記録項目記録のポイント具体例
痛む場所指一本で具体的にさせる場所を記録する足の付け根の前面、お尻の横のでっぱりなど
痛みの種類ズキズキ、ジンジン、ピリッとするなど表現する歩き始めにズキッと痛む、安静時にジンジン痛む
痛むタイミングどんな動作や状況で痛むかを記録する階段の上り、あぐらをかくとき、長時間座った後など

年齢と痛みの関係性

股関節の痛みの原因は、年齢によってもある程度傾向が見られます。若い世代では、スポーツによる筋肉や腱の損傷、股関節インピンジメント(FAI)などが比較的多く見られます。

一方、中高年以降になると、長年の使用による関節軟骨のすり減りが原因の「変形性股関節症」が増加する傾向にあります。

もちろん、年齢だけで原因が決まるわけではありませんが、ご自身の年齢を考慮することも、痛みの背景を理解する上で参考になります。

股関節の「前側(付け根)」が痛む場合に考えられること

足の付け根、つまり股関節の前側が痛む場合、多くの人が股関節自体の問題を心配します。

実際、この場所の痛みは、股関節のクッションである軟骨の異常や、骨の変形が関連していることが少なくありません。

ここでは、股関節の前側に痛みが生じる代表的な原因について掘り下げていきます。

変形性股関節症の初期症状

変形性股関節症は、関節軟骨がすり減ることで骨が変形し、痛みや機能障害を引き起こす状態です。初期の段階では、立ち上がりや歩き始めなど、動き始めに足の付け根に痛みを感じることが多くあります。

しばらく動いていると痛みが和らぐこともありますが、進行すると痛みが持続し、安静にしていても痛むようになります。

また、可動域が狭くなり、靴下を履く、足の爪を切るといった動作が困難になることも特徴です。

変形性股関節症の進行度と痛みの特徴

進行度主な症状痛みの特徴
初期立ち上がり、歩き始めの痛み動き始めに痛み、少し動くと軽減することがある
進行期持続的な痛み、可動域制限歩行時や階段昇降で常に痛む、安静時にも痛むことがある
末期強い痛み、著しい可動域制限夜間にも痛みで目が覚めることがある、歩行が困難になる

股関節インピンジメント(FAI)

股関節インピンジメント(Femoroacetabular Impingement: FAI)は、股関節を深く曲げたときなどに、大腿骨と寛骨臼が衝突して痛みや引っかかり感を生じる状態です。

特に若い世代やスポーツを活発に行う人に見られ、骨の形態的な特徴が原因となることが多いです。

あぐらをかいたり、スポーツで深くしゃがみ込んだりする動作で、足の付け根の奥に鋭い痛みを感じる場合は、この状態を疑う必要があります。

放置すると軟骨や、関節の縁にある関節唇という組織を損傷し、将来的に変形性股関節症に移行するリスクを高める可能性があります。

筋肉や腱のトラブル(腸腰筋など)

股関節の前側には、「腸腰筋」という上半身と下半身をつなぐ重要な筋肉があります。この腸腰筋やその腱に炎症が起きたり、硬くなったりすると、足の付け根に痛みを生じることがあります。

特に、急に運動を始めたり、長時間座った姿勢が続いたりした後に痛みが出やすいのが特徴です。

サッカーのキック動作やランニングなど、足を前に振り上げる動きを繰り返すことでも負担がかかり、痛みの原因となります。

この痛みは、関節自体の問題と間違われやすいですが、原因が筋肉にある場合も少なくありません。

股関節の「横側(お尻の横)」が痛む場合に考えられること

ズボンのポケットのあたり、お尻の横の出っ張った骨の周辺が痛む場合、その原因は股関節そのものではなく、関節を支える筋肉や腱にあることが多いです。

この部分の痛みは、歩行や片足立ちの際に顕著になることがあります。ここでは、股関節の横側に痛みをもたらす主な原因を見ていきましょう。

中殿筋・小殿筋の腱の付着部炎

お尻の横側には、骨盤を支え、歩行時の安定性を保つために重要な「中殿筋」や「小殿筋」という筋肉があります。

これらの筋肉の腱が、大腿骨の外側にある「大転子」という骨の出っ張りに付着する部分で炎症を起こすと、痛みが生じます。

これを腱の付着部炎と呼びます。特に中高年の女性に多く見られ、歩行時や、痛いほうを下にして横向きに寝たときに痛みが増す傾向があります。階段の上り下りでも痛みを感じやすいです。

大転子部滑液包炎

滑液包は、筋肉や腱と骨がこすれ合う部分にある、潤滑液の入った小さな袋です。大転子の周辺にもこの滑液包が存在し、繰り返しの摩擦や圧迫によって炎症を起こすことがあります。

これが大転子部滑液包炎です。症状は中殿筋腱の付着部炎と似ており、お尻の横を押すと強い痛みを感じます。長距離の歩行やランニング、転倒などをきっかけに発症することがあります。

弾発股(バネ指股)

弾発股は、股関節を動かしたときに「ポキッ」とか「ゴリッ」という音や引っかかり感(弾発現象)が生じる状態です。多くは痛みを伴いませんが、炎症を伴うと痛みを感じるようになります。

弾発股にはいくつかのタイプがあり、股関節の横側で起こるタイプは、大転子の上を筋肉や腱が乗り越える際に発生します。

ランニングやダンスなど、股関節を繰り返し動かす動作で生じやすいです。

股関節横側の痛みの原因比較

考えられる原因主な症状痛みを誘発する動作
中殿筋・小殿筋腱付着部炎お尻の横の圧痛、歩行時痛歩行、階段、痛い側を下にして寝る
大転子部滑液包炎お尻の横の圧痛、腫れ長時間の歩行、圧迫
弾発股(外側型)音や引っかかり感、時に痛み股関節の曲げ伸ばし、ランニング

股関節の「後ろ側(お尻)」が痛む場合に考えられること

お尻の深い部分や、太ももの裏側にかけて痛みやしびれを感じる場合、股関節自体の問題ではなく、腰や神経に原因がある可能性を考慮します。

特に「坐骨神経痛」という言葉を耳にしたことがあるかもしれません。ここでは、股関節の後ろ側に痛みを感じる場合に考えられる原因と、その見分け方について解説します。

坐骨神経痛との関連

坐骨神経は、腰から出てお尻を通り、足先まで伸びる人体で最も太い神経です。

この神経が何らかの原因で圧迫されたり刺激されたりすると、お尻や太ももの後ろ、ふくらはぎ、足にかけて痛みやしびれが生じます。

これを総称して坐骨神経痛と呼びます。原因としては、腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症など、腰の骨(腰椎)に問題があることが多いです。

そのため、股関節の後ろ側の痛みは、股関節ではなく腰の検査が必要になる場合があります。

梨状筋症候群

梨状筋は、お尻の深層にある筋肉で、坐骨神経のすぐ上を走行しています。

この梨状筋が硬くなったり、炎症を起こしたりすることで坐骨神経を圧迫し、痛みやしびれを引き起こすのが梨状筋症候群です。

長時間のデスクワークや運転など、座っている時間が長い人に起こりやすいとされています。お尻の特定の場所を押すと強い痛みがあり、太ももの裏に痛みが放散するのが特徴です。

仙腸関節の不調

仙腸関節は、骨盤の後ろ側にある、背骨の土台となる仙骨と、左右の腸骨をつなぐ関節です。

この関節は非常にわずかしか動きませんが、出産や中腰での作業、転倒などをきっかけに、関節にズレや炎症が生じることがあります。

この仙腸関節の不調が原因で、お尻のあたりや足の付け根に痛みが出ることがあり、股関節の痛みと間違われることがあります。

股関節後ろ側の痛みと坐骨神経痛の見分け方

症状の特徴股関節由来の可能性坐骨神経痛(腰由来)の可能性
痛みの範囲股関節周辺に限局しやすいお尻から足先まで広範囲に及ぶことがある
しびれの有無少ない伴うことが多い
痛む動作あぐら、靴下履きなど股関節を動かす動作前屈み、長時間座る、長時間立つなど

痛みの特徴から原因を探る

痛む場所だけでなく、どのようなタイミングや状況で痛みが出るのかという「痛みの特徴」も、原因を特定するための重要な情報です。

動き始めに痛むのか、それともじっとしていても痛むのか。特定の動きでのみ鋭い痛みが出るのか。ここでは、痛みの性質から考えられる原因について解説します。

動き始めの痛み

「立ち上がる瞬間」「歩き出す一歩目」など、動き始めに痛みが生じるのは、変形性股関節症の典型的な症状の一つです。これは「始動時痛」と呼ばれます。

長時間同じ姿勢でいた後に関節を動かすと、関節軟骨がうまく潤滑せず、一時的に痛みとして感じられます。しばらく動いていると関節液が循環し、痛みが和らぐことが多いです。

しかし、症状が進行すると、この痛みがなかなか消えなくなります。

夜間や安静時の痛み

じっとしていても痛む、あるいは夜、痛みで目が覚めてしまうような場合は、注意が必要です。このような痛みは、関節内の炎症が強いことを示唆しています。

変形性股関節症が進行した場合や、大腿骨頭壊死症、関節リウマチなどの炎症性疾患、あるいは稀ですが腫瘍などが原因である可能性も考えられます。

安静にしていても痛みが続く場合は、早めに医療機関を受診することが重要です。

特定の動きで鋭く痛む

「あぐらをかく」「深くしゃがむ」「車の乗り降りで足を開く」など、特定の動きをしたときにだけ股関節の奥に鋭い痛みが走る場合は、股関節インピンジメント(FAI)や、関節唇損傷の可能性があります。

関節唇は、寛骨臼の縁を取り囲む軟骨様の組織で、関節の安定性を高める役割があります。

インピンジメントによってこの関節唇が傷つくと、特定の角度で股関節を動かした際に、痛みや引っかかり感として現れます。

痛みのタイミングと主な原因

痛みのタイミング特徴主な原因の例
動き始めしばらく動くと楽になる変形性股関節症(初期)
動作時歩行や階段などで常に痛む変形性股関節症(進行期)、筋肉・腱の炎症
安静時・夜間じっとしていても痛む強い炎症、大腿骨頭壊死症など

クリック音や引っかかり感

股関節を動かしたときに「ポキポキ」「コリコリ」といった音が鳴る、あるいは何かが引っかかるような感覚がある場合、弾発股や関節唇損傷、関節内にある遊離体(関節ねずみ)などが考えられます。

遊離体とは、剥がれた軟骨や骨のかけらが関節内を動き回る状態です。

音が鳴るだけで痛みがなければ、多くの場合、心配はいりませんが、痛みを伴う場合や、急に股関節が動かなくなる「ロッキング」という現象が起きる場合は、検査が必要です。

医療機関で行う診断の流れ

股関節の痛みの原因を正確に特定するため、医療機関では段階的に検査を進めていきます。

ご自身の症状を的確に伝える問診から始まり、医師による身体診察、そして必要に応じてレントゲンなどの画像検査を行います。

ここでは、一般的な診断の流れを理解し、受診の際に備えましょう。

問診で伝えるべきこと

問診は、診断における最初の、そして非常に重要な情報収集です。医師は患者さんの話から、原因のあたりをつけます。

以下の点を整理して伝えられるように準備しておくと、診断がスムーズに進みます。

  • どこが痛むか(指でさせる具体的な場所)
  • いつから、どんなきっかけで痛むようになったか
  • どんな痛みか(ズキズキ、ジンジン、鋭い痛みなど)
  • どんな時に痛みが強くなるか、楽になるか
  • 日常生活(歩行、階段、着替えなど)で困っていること

身体診察(視診・触診・徒手検査)

問診の後は、医師が実際に股関節の状態を見て、触って、動かして評価します。視診では、歩き方や姿勢、左右の足の長さの違いなどを確認します。

触診では、痛む場所を直接押して、圧痛の有無や場所を特定します。

そして徒手検査では、医師が患者さんの足をさまざまな方向に動かして、股関節の可動域や、特定の動きで痛みが出るかどうか(誘発テスト)を調べ、原因となっている組織を探ります。

画像検査の種類と目的

身体診察で得られた情報をもとに、さらに詳しく調べるために画像検査を行います。

最も一般的に行われるのはレントゲン(X線)検査です。骨の形や関節の隙間の広さなどを評価し、変形性股関節症や骨折の有無を確認します。

レントゲンだけでは判断が難しい場合や、軟骨や筋肉、腱といった軟部組織の状態を詳しく見たい場合には、MRI検査やCT検査を追加で行うことがあります。

主な画像検査の比較

検査方法わかること主な目的
レントゲン(X線)骨の変形、関節の隙間、骨折変形性股関節症の診断、骨の異常の確認
MRI軟骨、関節唇、筋肉、腱、骨内部の状態関節唇損傷、大腿骨頭壊死症、腱の炎症の診断
CT骨の立体的な構造、微細な骨折複雑な骨折、骨の形態異常(FAI)の詳細評価

その他の検査(血液検査など)

関節リウマチや感染症など、全身性の病気が疑われる場合には、炎症の程度や特定の物質を調べるために血液検査を行うことがあります。

また、診断を確定させる目的で、痛みの原因と考えられる場所に局所麻酔薬を注射する「ブロック注射」を行うこともあります。

この注射によって痛みが和らげば、その場所が痛みの発生源であると判断する材料になります。

日常生活で股関節の痛みを和らげるためのヒント

股関節の痛みは、日常生活のささいな動作の積み重ねで悪化することがあります。痛みの原因が何であれ、股関節への負担を減らす工夫は、症状の緩和や進行予防に繋がります。

ここでは、医療機関での治療と並行して、ご自身で取り組めるセルフケアのヒントを紹介します。

股関節に負担をかけない動作の工夫

痛みがあるときは、無意識に痛みをかばう動作をしてしまいがちですが、それがかえって他の部位に負担をかけたり、股関節の動きを悪くしたりすることがあります。

日常生活のちょっとした動作を見直してみましょう。

日常動作のポイント

場面工夫のポイント具体的な方法
床に座る床座りを避け、椅子を使う正座やあぐらは股関節に大きな負担をかける
物を拾う膝を曲げて腰を落とす股関節だけを深く曲げないようにする
靴下を履く椅子に座って足を引き寄せる立ったまま前屈みにならない、補助具を使う

体重管理の重要性

股関節には、歩行時に体重の3〜4倍、階段の上り下りではさらに大きな負荷がかかります。つまり、体重が1kg増えるだけで、股関節にかかる負担は何倍にもなってしまうのです。

体重を適正な範囲にコントロールすることは、股関節の負担を直接的に軽減し、痛みの緩和に繋がる非常に有効な方法です。

食事内容の見直しや、水泳や自転車など、股関節に負担の少ない運動を取り入れることが推奨されます。

靴選びのポイント

毎日履く靴も、股関節の健康に影響を与えます。足元が不安定だと、その衝撃やねじれが膝や股関節に伝わってしまいます。

靴を選ぶ際は、かかとがしっかりしていて、衝撃吸収性の高いクッションのあるものを選びましょう。

ハイヒールや、底が硬く薄い靴は、股関節への負担を増やす可能性があるため、痛むときは避けるのが賢明です。靴紐やベルトで足にフィットさせられるスニーカーなどが理想的です。

股関節の痛みに関するよくある質問

ここでは、股関節の痛みに関して患者さんからよく寄せられる質問とその回答をまとめました。ご自身の疑問や不安の解消にお役立てください。

Q. 股関節がポキポキ鳴るのは問題ありませんか?

A. 股関節を動かしたときに音が鳴る「弾発股」は、多くの人に見られる現象です。痛みがなく、日常生活に支障がなければ、基本的には心配ありません。

これは、関節の周りの腱や筋肉が骨の出っ張りを乗り越えるときに生じる音であることが多いです。

ただし、音とともに痛みや引っかかり感がある場合、あるいは急に音が鳴り始めた場合は、関節唇の損傷などが隠れている可能性もあるため、一度医療機関に相談することをお勧めします。

Q. ストレッチはした方が良いですか?どんな注意点がありますか?

A. 股関節周りの筋肉の柔軟性を保つことは、痛みの予防や緩和に有効な場合があります。特に、お尻や太ももの筋肉をゆっくり伸ばすストレッチは効果的です。

ただし、注意点がいくつかあります。まず、痛みを我慢して無理に伸ばさないこと。痛気持ちいいと感じる範囲で、反動をつけずにじっくり行いましょう。

また、痛みの原因によってはストレッチが逆効果になることもあります。

特に、急性期の炎症がある場合や、股関節インピンジメントのように特定の方向に動かすと痛みが出る場合は、自己判断で行わず、医師や理学療法士の指導のもとで行うことが重要です。

Q. 痛いときは温めるべきですか?冷やすべきですか?

A. 温めるべきか冷やすべきかは、痛みの原因や時期によって異なります。

一般的に、急性の痛み、つまり転んだり捻ったりした直後で、腫れや熱感がある場合は、炎症を抑えるために冷やすのが基本です。

一方、慢性的な痛みで、動かすと楽になるような場合は、血行を促進して筋肉の緊張を和らげるために温めるのが効果的です。

温める場合と冷やす場合の判断目安

対応適した状況目的
冷やす(寒冷療法)急性期(ケガ直後)、腫れ・熱感がある血管を収縮させ、炎症や腫れを抑える
温める(温熱療法)慢性期、こわばり感がある、筋肉の緊張血行を促進し、筋肉をリラックスさせる

Q. どのタイミングで医療機関を受診すべきですか?

A. 以下のいずれかに当てはまる場合は、自己判断で様子を見ずに、整形外科などの医療機関を受診することをお勧めします。

  • 痛みが2週間以上続いている
  • 痛みがだんだん強くなっている
  • じっとしていても痛む、夜に痛みで目が覚める
  • 足の可動域が狭くなってきた(靴下が履きにくいなど)
  • 転倒などの明らかなきっかけがある

痛みの原因を正確に診断し、適切な対処を早期に始めることが、症状の悪化を防ぎ、健やかな生活を維持するために大切です。

以上

参考文献

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Author

北城 雅照

医療法人社団円徳 理事長
医師・医学博士、経営心理士

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