転んで膝を痛めたときの対処法|受診の判断基準
日常生活やスポーツ中、思わぬ瞬間に転んで膝を強く打ちつけてしまい、「痛い」「腫れてきた」と不安に感じている方は少なくないでしょう。
転倒による膝の痛みは、軽い打撲から骨折や靭帯損傷といった専門的な治療を要する怪我まで、その原因は多岐にわたります。
この記事では、転んで膝を痛めてしまった際に、ご自身でできる応急処置の方法、考えられる怪我の種類、そして最も重要な「医療機関を受診すべきかどうかの判断基準」について、詳しく解説します。
適切な初期対応が、その後の回復を大きく左右することもあります。ご自身の症状と照らし合わせながら、冷静な判断の一助としてください。
目次
転んで膝を痛めた直後にやるべき応急処置
転倒して膝に痛みを感じた場合、パニックにならず、まずは落ち着いて行動することが大切です。
症状の悪化を防ぎ、回復を早めるためには、怪我の直後に行う「応急処置」が非常に重要になります。
ここでは、ご家庭でもできる基本的な応急処置の手順を紹介します。これらの処置は、医療機関を受診するまでの間、痛みや腫れを最小限に抑える助けとなります。
まずは安静にする
膝を痛めたら、何よりもまず安静を保つことが基本です。無理に動かしたり、歩き続けたりすると、損傷が悪化する可能性があります。
可能であれば、椅子やソファに座る、あるいは横になるなどして、膝に体重がかからない楽な姿勢をとりましょう。
特に、痛みが強い場合や、膝が不安定な感じがする場合は、動かずに助けを呼ぶことも検討してください。
スポーツや作業中であったとしても、すぐに中断し、安全な場所へ移動して膝を休ませることが回復への第一歩です。
患部を冷やす (アイシング)
患部を冷やすことは、内出血や炎症、腫れを抑える上で非常に効果的です。ビニール袋に氷と少量の水を入れ、タオルで包んでから痛む部分に当てます。
保冷剤を使用する場合も、直接肌に当てると凍傷のリスクがあるため、必ずタオルなどで包んでください。
アイシングの時間は、1回あたり15分から20分程度を目安とし、感覚がなくなってきたら一度中断します。そして、また痛みが戻ってきたら冷やす、ということを繰り返します。
この処置は、怪我をしてから24時間から72時間以内に行うのが特に有効です。
膝を圧迫する
患部を適度に圧迫することで、内出血や腫れの広がりを防ぐ効果が期待できます。弾性包帯やテーピング、なければタオルなどを使って、痛む膝の周りを軽く圧迫するように巻きます。
ただし、強く巻きすぎると血行が悪くなり、逆効果になることもあるため注意が必要です。圧迫した部分が変色したり、しびれを感じたりした場合は、すぐに緩めてください。
あくまで「軽く固定する」という意識で行うことが大切です。圧迫は、腫れが引くまでの間、安静にしている時に行うと良いでしょう。
心臓より高く上げる (挙上)
膝を心臓よりも高い位置に保つことで、重力を利用して腫れや内出血を軽減させることができます。これを「挙上(きょじょう)」と呼びます。
横になった状態で、足の下にクッションや座布団、折りたたんだ毛布などを数枚重ねて置き、膝が心臓の高さより上にくるように調整します。
座っている場合でも、足を別の椅子に乗せるなどして、できるだけ高い位置に保つよう心がけましょう。
この挙上は、特に安静にしている間や就寝時に行うと、翌朝の腫れを抑えるのに役立ちます。
応急処置の基本「RICE」
| 処置 (英語) | 内容 | 目的 |
|---|---|---|
| Rest (安静) | 患部を動かさず休ませる | 損傷の悪化防止 |
| Ice (冷却) | 氷などで患部を冷やす | 炎症・腫れ・痛みの抑制 |
| Compression (圧迫) | 弾性包帯などで軽く圧迫する | 内出血・腫れの抑制 |
| Elevation (挙上) | 患部を心臓より高く上げる | 腫れの軽減 |
膝の痛みの原因として考えられる怪我の種類
転倒した際の膝への衝撃のかかり方や方向によって、損傷する部位や程度はさまざまです。痛みの原因を正確に知ることは、適切な対応をとるために重要です。
ここでは、転倒によって引き起こされる代表的な膝の怪我について解説します。ご自身の症状がどれに近いかを確認する際の参考にしてください。
ただし、自己判断は禁物であり、最終的な診断は必ず医師に委ねる必要があります。
打撲 (打ち身)
打撲は、転倒時に膝を直接何かにぶつけることで起こる、最も一般的な怪我です。皮膚やその下の軟部組織(筋肉、脂肪など)が損傷し、内出血(あざ)や腫れ、痛みを伴います。
多くの場合、骨や関節自体に大きな異常はなく、時間とともに軽快します。
しかし、衝撃が強いと、皮膚の下で血液が溜まってしまう血腫(けっしゅ)ができたり、骨の表面を覆う骨膜を傷つけたりして、強い痛みが続くこともあります。
軽い打撲であれば応急処置で対応できますが、痛みが長引く場合は他の損傷が隠れている可能性も考えられます。
捻挫 (靭帯損傷)
捻挫は、関節が許容範囲を超えて捻じれたり、伸ばされたりすることで、関節を支える靭帯が損傷する怪我です。
膝には前十字靭帯、後十字靭帯、内側側副靭帯、外側側副靭帯という4本の主要な靭帯があり、転倒時のひねり方によって特定の靭帯が傷つきます。
靭帯が伸びる程度の軽傷から、部分的に切れる、あるいは完全に切れてしまう重傷まで程度はさまざまです。
「膝がガクッと崩れる感じがする」「関節が不安定だ」といった症状がある場合は、靭帯損傷の可能性が高いと考えられます。
特に前十字靭帯の損傷は、スポーツ活動への復帰に大きな影響を与えることがあります。
半月板損傷
半月板は、膝関節の大腿骨(太ももの骨)と脛骨(すねの骨)の間にあるC型をした軟骨組織で、クッションの役割を果たしています。
転倒時に膝をひねるような力が加わると、この半月板が傷ついたり、断裂したりすることがあります。
半月板を損傷すると、膝の曲げ伸ばしの際に痛みや「ひっかかり感」を感じることが特徴です。また、急に膝が動かなくなる「ロッキング」という現象が起こることもあります。
関節の内部に水や血が溜まり、腫れを伴うことも少なくありません。
骨折
強い衝撃が膝に加わった場合、膝関節を構成する骨(大腿骨、脛骨、膝蓋骨)が折れてしまうことがあります。
特に高齢者では骨がもろくなっているため、比較的軽い転倒でも骨折に至るケースがあります。
骨折をすると、非常に激しい痛み、急速な腫れ、膝の明らかな変形、そして体重を全くかけられないといった症状が現れます。
骨折が疑われる場合は、自分で動かそうとせず、直ちに医療機関を受診する必要があります。関節内での骨折は、将来的に関節の動きに影響を残す可能性もあるため、早期の適切な治療が重要です。
主な膝の怪我と特徴
| 怪我の種類 | 主な症状 | 特徴的な感覚 |
|---|---|---|
| 打撲 | 痛み、腫れ、内出血(あざ) | 押すと痛い、熱感 |
| 捻挫(靭帯損傷) | 痛み、腫れ、関節の不安定感 | 膝が抜ける、グラグラする |
| 半月板損傷 | 痛み、ひっかかり感、ロッキング | 曲げ伸ばしで音がする |
| 骨折 | 激痛、強い腫れ、変形 | 体重をかけられない、動かせない |
危険なサイン すぐに医療機関を受診すべき症状
転んで膝を痛めた後、すべてのケースで様子を見ても良いわけではありません。中には、緊急で専門的な治療を必要とする重篤な怪我が隠れている可能性もあります。
放置すると後遺症につながる恐れもあるため、危険なサインを見逃さないことが極めて重要です。
以下に示すような症状が一つでも見られる場合は、自己判断で様子を見ずに、速やかに整形外科などの医療機関を受診してください。
激しい痛みや変形がある
我慢できないほどの激しい痛みがある場合や、安静にしていても痛みが全く治まらない場合は、骨折や重度の靭帯損傷が疑われます。
また、膝を客観的に見て、明らかに形がおかしい、へこんでいる、あるいは通常ではありえない方向に曲がっているといった「変形」が見られる場合は、骨折や脱臼の可能性が非常に高いです。
このような状態では、内部の血管や神経をさらに傷つけるリスクがあるため、むやみに動かさず、できるだけ早く専門医の診察を受ける必要があります。
全く体重をかけられない
立ち上がろうとしたり、歩こうとしたりした際に、痛めた方の足に全く体重をかけることができない、あるいは激痛で体重を支えきれないという症状も、重傷のサインです。
これは、膝の安定性を保つための重要な構造(骨、靭帯など)が大きく損傷していることを示唆しています。
無理に立とうとすると、さらなる損傷を招いたり、転倒して二次的な怪我を負ったりする危険性があります。
歩行が困難な場合は、家族に付き添ってもらうか、状況によっては救急車の要請も検討しましょう。
関節が不安定でグラグラする
膝に力が入らない、歩いていると急に膝が「ガクッ」と崩れるような感覚(膝崩れ)がある、あるいは手で膝を動かすと明らかにグラグラするといった症状は、関節の安定性を司る靭帯が断裂している可能性を示します。
特に前十字靭帯や後十字靭帯の完全断裂でよく見られる症状です。靭帯の損傷を放置すると、関節の軟骨がすり減りやすくなり、将来的に変形性膝関節症へと進行するリスクが高まります。
関節の不安定性を感じたら、早期の診断と治療方針の決定が重要です。
大量の内出血や腫れがある
怪我の直後から急速に膝がパンパンに腫れ上がり、皮膚の色が紫色に変わるような大量の内出血が見られる場合も注意が必要です。
これは、関節内部での大きな損傷、例えば関節内骨折や主要な靭帯の断裂によって、多量の出血が起きていることを意味します。
関節内に血液が溜まる状態(関節血腫)は強い痛みを引き起こすだけでなく、関節組織への悪影響も懸念されます。腫れが異常に速く、かつ広範囲にわたる場合は、軽視せずに受診してください。
受診の緊急度が高い症状
| 症状 | 考えられる主な原因 | 推奨される行動 |
|---|---|---|
| 明らかな変形、激痛 | 骨折、脱臼 | 直ちに受診 |
| 完全な歩行不能 | 骨折、重度の靭帯・半月板損傷 | 直ちに受診 |
| 関節の著しい不安定感 | 靭帯の完全断裂 | できるだけ早く受診 |
| 急速で大量の腫れ・内出血 | 関節内骨折、主要な靭帯断裂 | できるだけ早く受診 |
数日様子を見ても良い場合の判断基準
転倒による膝の痛みが比較的軽く、前述したような危険なサインが見られない場合は、すぐに医療機関へ行かずに数日間自宅で様子を見るという選択肢もあります。
ただし、これはあくまで症状が軽度であることが前提です。ここでは、自宅で応急処置を続けながら経過観察を検討できる症状の目安について解説します。
もし症状が悪化したり、改善が見られなかったりした場合は、速やかに受診を判断してください。
痛みが軽度で歩行に支障が少ない
痛みが我慢できる範囲であり、少し足を引きずる程度でなんとか歩ける場合は、重篤な損傷の可能性は低いと考えられます。
日常生活において、階段の上り下りなどで多少の痛みは感じるものの、平地での歩行に大きな支障がない状態が目安です。ただし、「痛みを我慢すれば歩ける」という状態は含まれません。
無理のない範囲で動けるかどうかを冷静に判断することが大切です。痛みが徐々にでも和らいでいくかも重要な観察点です。
腫れや熱感がほとんどない
膝を見比べた際に、痛めた方の膝に明らかな腫れが見られない、あるいは触ってみても熱っぽさ(熱感)を感じない場合も、炎症が軽度であるサインです。
軽い打撲などでは、少し腫れることはあっても、パンパンに膨れ上がることは稀です。
怪我から数時間経っても腫れや熱感がほとんど現れないのであれば、ひとまず応急処置を続けながら様子を見ることができるでしょう。
逆に、時間が経つにつれて腫れや熱感が強まってくる場合は、受診を検討する必要があります。
膝の曲げ伸ばしがある程度できる
痛みや違和感はあるものの、自分の力で膝をある程度の角度まで曲げたり伸ばしたりできる場合も、関節内部の大きな損傷の可能性は低いと判断できます。
骨折や重度の半月板損傷があると、痛みでほとんど動かせなくなったり、特定の角度でロックがかかったように動かなくなったりします。
ゆっくりと動かしてみて、可動域に極端な制限がないかを確認しましょう。ただし、無理に動かすと症状を悪化させる可能性があるので、痛みを感じる手前で止めてください。
応急処置で痛みが和らぐ
安静にしたり、アイシングをしたりといった応急処置を行うことで、痛みが明らかに軽減する場合も、重傷度は低いと考えられます。
RICE処置は炎症や腫れを抑えるための基本的な対応であり、これに反応するということは、症状がコントロール可能な範囲内にあることを示唆します。
数日間、これらの処置を続けた結果、痛みが着実に引いていくようであれば、そのまま治癒に向かう可能性が高いです。
もし応急処置をしても痛みが全く変わらない、あるいはむしろ強くなる場合は、受診が必要です。
自宅療養を検討できる症状の目安
| チェック項目 | 様子を見ても良い可能性が高い状態 | 受診を検討すべき状態 |
|---|---|---|
| 痛み | 軽度で我慢できる | 激しい、安静時でも痛い |
| 歩行 | 少し引きずるが歩ける | 体重をかけられない、歩けない |
| 腫れ・熱感 | ほとんどない、またはごくわずか | 急速に腫れる、明らかに熱い |
| 可動域 | 痛みはあるが曲げ伸ばしできる | ほとんど動かせない、ロックする |
医療機関を受診する前の準備と注意点
膝の痛みが続き、医療機関を受診することを決めた場合、事前にいくつかの準備をしておくと診察がスムーズに進み、より的確な診断につながります。
医師は患者さんからの情報をもとに診断を進めていくため、怪我の状況や症状の経過を正確に伝えることが非常に重要です。
ここでは、受診前に整理しておくべき点や、診察時に注意すべきことについて解説します。
いつ、どこで、どのように怪我をしたか説明できるようにする
医師が診断する上で、受傷時の状況は極めて重要な情報です。
「いつ(例:昨日の午後3時頃)」「どこで(例:自宅の階段で)」「どのように(例:足を滑らせて、膝をひねるように転んだ)」といった具体的な情報を、できるだけ正確に思い出しておきましょう。
特に「膝を内側にひねった」「膝の前側を強く打った」など、膝にどのような力が加わったかを伝えられると、損傷部位を推測する大きな手がかりとなります。
また、怪我をした瞬間に「ブチッ」というような断裂音(ポップ音)が聞こえたかどうかも、靭帯損傷を疑う上で参考になる情報です。
症状の経過をメモしておく
怪我をしてから受診するまでの間に、症状がどのように変化したかを時系列でまとめておくと、診察時に役立ちます。
例えば、「怪我の直後は歩けたが、夜になったら腫れてきて歩けなくなった」「痛みは少しずつ引いてきているが、膝を曲げると特定の場所が痛む」といった具体的な経過をメモしておきましょう。
痛みの強さの変化、腫れの増減、新たに出てきた症状(あざ、しびれなど)について記録しておくと、医師が病状の重症度や進行度を判断する助けとなります。
服用中の薬や持病について伝える準備
現在服用している薬や、治療中の病気(持病)がある場合は、必ず医師に伝えてください。
特に、血液をサラサラにする薬(抗凝固薬や抗血小板薬)を服用していると、内出血が広がりやすくなることがあります。
また、糖尿病や骨粗しょう症などの持病は、怪我の治癒過程に影響を与える可能性があります。お薬手帳を持参すると、正確な情報を漏れなく伝えることができるので便利です。
アレルギー歴についても、忘れずに申告しましょう。
質問したいことをまとめておく
診察室では緊張してしまい、聞きたかったことを忘れてしまうことがよくあります。
受診前に、疑問に思っていることや不安なことをリストアップしてメモにまとめておくと、聞き忘れを防ぐことができます。
診断名や治療法、今後の見通し、日常生活での注意点など、気になることは遠慮せずに質問しましょう。
患者さんが自身の状態を正しく理解し、納得して治療を受けることが、回復への大切な一歩となります。
医師に伝えるべき情報
| カテゴリ | 伝える内容の例 | なぜ重要か |
|---|---|---|
| 受傷状況 | 日時、場所、転び方、ひねり方 | 損傷メカニズムの推定 |
| 症状の経過 | 痛みの変化、腫れの増減、可動域 | 重症度や進行度の判断 |
| 既往歴・服薬歴 | 持病、服用中の薬、アレルギー | 治療方針の決定、合併症予防 |
- 診断名は何ですか?
- 治療にはどのような選択肢がありますか?
- 全治までどのくらいの期間がかかりますか?
- 日常生活で気をつけることは何ですか?
医療機関での一般的な検査と診断の流れ
整形外科を受診すると、医師は正確な診断を下すために、いくつかの診察や検査を行います。
問診で得られた情報と、これらの検査結果を総合的に判断して、膝の内部で何が起きているのかを突き止め、最適な治療方針を決定します。
ここでは、転倒による膝の怪我で一般的に行われる検査とその目的について解説します。どのような検査が行われるかを知っておくことで、安心して診察に臨むことができるでしょう。
問診と身体診察
まず最初に行われるのが問診です。前述したように、いつ、どこで、どのように怪我をしたか、どのような症状があるかなどを詳しく聞かれます。
その後、身体診察に移ります。医師は膝を直接見て、腫れや内出血、変形の有無を確認します。次に、膝に触れて、圧痛点(押して特に痛い場所)や熱感がないかを調べます。
さらに、膝をゆっくりと動かして可動域を測定したり、徒手検査(医師が手で膝にストレスをかけて靭帯の緩みなどを調べる)を行ったりして、損傷部位を特定していきます。
レントゲン (X線) 検査
レントゲン検査は、骨の状態を確認するための基本的な画像検査です。転倒による膝の痛みでは、まず骨折の有無を確認するために行われることがほとんどです。
膝をさまざまな角度から撮影し、骨にひびが入っていないか、折れてずれていないかなどを詳細に観察します。
レントゲンは骨を描出することに優れていますが、靭帯や半月板、軟骨といった軟部組織は写らないため、これらの損傷が疑われる場合は、他の検査を追加する必要があります。
MRI検査やCT検査
レントゲンで骨に異常が見られないにもかかわらず、靭帯損傷や半月板損傷が強く疑われる場合、MRI検査が行われることがあります。
MRI(磁気共鳴画像法)は、磁力と電波を使って体内の断面を撮影する検査で、靭帯、半月板、軟骨、筋肉といった軟部組織の状態を非常に詳しく見ることができます。
この検査により、損傷の部位や程度を正確に診断することが可能です。
一方、CT(コンピュータ断層撮影)検査は、レントゲンを応用して体の断面を撮影するもので、複雑な骨折の形状を立体的に把握したい場合などに有用です。
関節穿刺
膝の腫れが著しく、関節内に関節液や血液が大量に溜まっている(関節水腫、関節血腫)場合、関節穿刺(かんせつせんし)を行うことがあります。
これは、注射器で関節内の液体を抜き取る処置です。液体を抜くことで痛みが軽減されるだけでなく、抜き取った液体の性状を確認することで診断の助けにもなります。
例えば、液体が血液であれば、靭帯損傷や関節内骨折の可能性が高まります。また、細菌感染が疑われる場合には、液体を培養検査に出すこともあります。
膝の検査方法とその目的
| 検査方法 | 主な目的 | この検査でわかること |
|---|---|---|
| 問診・身体診察 | 全体的な状態の把握、損傷部位の推定 | 痛みの場所、関節の不安定性など |
| レントゲン検査 | 骨の異常の確認 | 骨折、脱臼、骨の変形 |
| MRI検査 | 軟部組織の詳細な観察 | 靭帯損傷、半月板損傷、軟骨損傷 |
| 関節穿刺 | 関節液の排出と性状確認 | 関節内出血の有無、感染の有無 |
痛みが長引く場合に考えられること
適切な応急処置や治療を受けたにもかかわらず、膝の痛みがなかなか改善しない、あるいは一度良くなった痛みが再発するというケースもあります。
痛みが長引く背景には、いくつかの原因が考えられます。ここでは、慢性的な膝の痛みに移行してしまった場合に考えられる要因と、その後の対応の重要性について解説します。
見逃されていた損傷の可能性
初回の診察では明らかにならなかった、別の損傷が隠れている可能性があります。
例えば、当初は打撲と診断されても、実はごく小さな骨折(不全骨折)や軟骨の損傷、軽度の靭帯・半月板損傷が合併しているケースです。
これらの微細な損傷は、初期のレントゲン検査では見つかりにくいことがあります。
痛みが特定の動作で必ず現れる、あるいはいつまでも腫れが引かないといった場合は、再度の診察や、MRIなどのより精密な検査が必要になるかもしれません。
慢性的な炎症への移行
急性の炎症が適切に管理されないまま活動を再開してしまったり、リハビリが不十分だったりすると、膝関節に慢性的な炎症が残ってしまうことがあります。
この状態になると、少し膝に負担をかけただけですぐに痛みや腫れ、熱感が生じるようになります。
また、関節を包む滑膜という組織が炎症によって分厚くなり、痛みの原因となることもあります。
慢性化させないためには、急性期の徹底した安静と、医師の許可を得てからの段階的な活動再開が重要です。
変形性膝関節症への進行
転倒による怪我、特に前十字靭帯損傷や半月板損傷、関節内骨折などを経験すると、将来的に変形性膝関節症を発症するリスクが高まることが知られています。
これは「外傷後変形性膝関節症」と呼ばれます。怪我によって関節の安定性が損なわれたり、軟骨の表面が傷ついたりすることで、関節軟骨のすり減りが通常より早く進行してしまうのです。
怪我から数年〜数十年経ってから、徐々に痛みが現れ、関節の変形が進むこともあります。
リハビリテーションの重要性
痛みが長引く原因として、膝周りの筋力低下や柔軟性の欠如、さらにはバランス能力の低下が挙げられます。
怪我で安静にしている期間が長いと、太ももの筋肉(特に大腿四頭筋)はすぐに衰えてしまいます。
この筋肉は膝の安定に非常に重要な役割を担っているため、筋力が低下したままだと膝への負担が増え、痛みが再発しやすくなります。
医師や理学療法士の指導のもと、適切なリハビリテーションを行い、膝の機能を回復させることが、痛みの連鎖を断ち切る鍵となります。
痛みが長引く原因の例
| 原因 | 特徴 | 考えられる対策 |
|---|---|---|
| 潜在的な損傷 | 特定の動作での鋭い痛み、持続する腫れ | 再度の精密検査 (MRIなど) |
| 慢性炎症 | 運動後の痛みや腫れの繰り返し | 抗炎症薬の使用、物理療法 |
| 筋力低下 | 膝の不安定感、階段での痛み | 筋力トレーニング中心のリハビリ |
よくある質問
ここでは、転んで膝を痛めた方からよく寄せられる質問とその回答をまとめました。応急処置やその後の対応について、多くの方が抱く疑問にお答えします。
ただし、個々の症状によって最適な対応は異なるため、あくまで一般的な参考情報として活用し、最終的な判断は専門医に相談してください。
湿布は温かいものと冷たいもののどちらが良いか
一般的に、怪我をした直後の急性期(受傷後24〜72時間程度)で、患部に熱感や腫れがある場合は「冷湿布」を使用します。
冷湿布に含まれるメントールなどの成分が冷感を与え、炎症を鎮める効果が期待できます。
一方、痛みが長引いている慢性期で、血行が悪くなってこわばりを感じるような場合には「温湿布」が有効なこともあります。
温湿布は血行を促進し、筋肉の緊張を和らげる助けとなります。どちらを使うか迷った場合は、熱感があるうちは冷やす、と覚えておくと良いでしょう。
お風呂で温めても良いか
これも湿布と同様に、時期によって判断が異なります。怪我をした直後の急性期は、温めることで血行が良くなり、かえって炎症や腫れを悪化させてしまう可能性があります。
このため、急性期はシャワー程度で済ませ、湯船に浸かって患部を温めるのは避けるべきです。
痛みが落ち着き、腫れや熱感が引いた慢性期に入れば、温めることで血行が改善し、痛みの緩和や組織の回復につながることがあります。
温めてみて痛みが強くなるようなら、すぐに中止してください。
サポーターはつけた方が良いか
サポーターは、膝の安定性を高め、安心感を得るために有効な場合があります。
特に、靭帯損傷後などで関節に不安定感がある場合や、痛みが残る中で日常生活を送らなければならない場合には、膝への負担を軽減する助けとなります。
ただし、サポーターに頼りすぎると、膝周りの筋力が低下してしまう可能性も指摘されています。
長期間、常に装着するのではなく、負担がかかる動作をするときだけ使用するなど、目的に応じて使い分けることが大切です。
どのような種類のサポーターが良いかは、医師や理学療法士に相談することをお勧めします。
状況別サポーターの選び方(簡易版)
| 目的 | サポーターの種類 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| 保温・軽い圧迫 | スリーブタイプ | 筒状で着脱が簡単 |
| 軽度の安定性補助 | ストラップ付きタイプ | 圧迫力を調整できる |
| 中等度以上の安定性確保 | 支柱(ステー)入りタイプ | 横方向のブレをしっかり抑制 |
何科を受診すれば良いか
転んで膝を痛めた場合は、「整形外科」を受診するのが最も適切です。整形外科は、骨、関節、靭帯、筋肉といった運動器の疾患を専門とする診療科です。
レントゲンやMRIなどの画像検査設備も整っていることが多く、正確な診断から治療、リハビリテーションまで一貫して対応することができます。
近くに整形外科がない場合は、まずかかりつけの内科や外科で相談することも可能ですが、その際は膝の怪我であることを明確に伝え、必要に応じて専門医を紹介してもらうようにしましょう。
以上
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