両膝の変形性膝関節症|症状と治療の特徴
歩き始めや立ち上がる際に両膝がこわばる、階段の上り下りで両膝に痛みを感じる。このような症状にお悩みではありませんか。それは、両膝の変形性膝関節症のサインかもしれません。
変形性膝関節症は、膝の軟骨がすり減ることで痛みや腫れが生じる状態で、特に両膝に症状が現れると、日常生活への影響が大きくなる傾向があります。
この記事では、両膝の変形性膝関節症に焦点を当て、その特徴的な症状、考えられる原因、そしてどのような治療法があるのかを詳しく解説します。
目次
両膝の変形性膝関節症とは何か
まず、両膝の変形性膝関節症がどのような状態なのか、基本的な知識から見ていきましょう。
片膝だけに症状が出る場合との違いや、なぜ両膝に同時に症状が現れるのかを理解することで、ご自身の状態を客観的に把握する手助けになります。
変形性膝関節症の基本的なこと
変形性膝関節症は、膝関節のクッションの役割を果たす「関節軟骨」が、加齢や長年の負担によってすり減り、骨が変形することで痛みや炎症を引き起こす状態を指します。
関節軟骨には血管や神経がないため、すり減っても直接痛みを感じることはありません。
しかし、軟骨がすり減ることで関節の骨同士がこすれ合ったり、周囲の組織が刺激されたりすることで、痛みや炎症、関節に水がたまる(関節水腫)などの症状が現れます。
なぜ両膝が同時に影響を受けるのか
変形性膝関節症が両膝に発症する主な理由は、その原因が体全体に関わる要因であることが多いためです。
例えば、加齢による軟骨の全体的な質の低下や、体重の増加による膝への全般的な負荷増大は、左右どちらか一方だけでなく、両方の膝に影響を与えます。
また、O脚やX脚のような脚の形状も、両膝に不均等な負担をかけ続ける原因となり、結果として両側性の発症につながることがあります。
片膝の場合との違い
片膝の変形性膝関節症が過去の怪我などを原因とすることがあるのに対し、両膝の場合は加齢や生活習慣といった全身的な要因が背景にあることが多いです。
症状の面では、両膝に痛みがあると、無意識に痛いほうの脚をかばうという動作が難しくなります。
このことにより、歩行や立ち座りといった日常の基本的な動作がより困難になり、生活の質(QOL)への影響が大きくなる傾向があります。
片膝と両膝の比較
| 項目 | 片膝の変形性膝関節症 | 両膝の変形性膝関節症 |
|---|---|---|
| 主な原因 | 怪我、半月板損傷など | 加齢、体重増加、脚の形状 |
| 日常生活への影響 | 痛いほうをかばいながら生活できる | かばうことが難しく、動作全般に支障が出やすい |
| 体のバランス | 体が傾きやすい | 歩行が不安定になりやすい |
両膝の変形性膝関節症でみられる主な症状
両膝の変形性膝関節症は、時間の経過とともに症状が変化していきます。
初期の小さなサインを見逃さず、症状が進行した場合にどのような変化が起こるのかを知っておくことは、適切なタイミングで対策を始めるために重要です。
初期段階のサイン
最も早い段階で現れる症状は、動作の開始時の痛みやこわばりです。
例えば、朝起きて最初の一歩を踏み出すときや、長時間座った後で立ち上がるときに、膝がぎこちなく感じたり、軽い痛みを感じたりします。
この段階では、少し動いているうちに症状が和らぐことが多いのが特徴です。
初期症状の具体例
- 立ち上がり時の膝のこわばり
- 歩き始めの軽い痛み
- 長時間の歩行後の疲労感
症状が進行した場合の変化
症状が進行すると、痛みがより頻繁に、そして強くなります。特に階段の上り下りや、正座、しゃがみ込みといった膝に大きな負担がかかる動作が困難になります。
また、膝の曲げ伸ばしができる範囲(可動域)が狭くなり、膝を完全に伸ばしたり、深く曲げたりすることが難しくなります。
外見的にも、膝が腫れて見えたり、O脚変形が目立つようになったりします。
症状の進行段階
| 進行度 | 主な症状 | 痛みの特徴 |
|---|---|---|
| 初期 | こわばり、動作開始時の痛み | 動いていると和らぐ |
| 中期 | 階段昇降時の痛み、可動域制限 | 特定の動作で常に痛む |
| 末期 | 安静時痛、著しい変形 | じっとしていても痛む |
日常生活への具体的な影響
両膝の痛みが続くと、日常生活の様々な場面で支障が出てきます。例えば、買い物で重いものを持つのがつらくなったり、掃除や料理といった家事全般が困難になったりします。
また、痛みへの不安から外出を控えるようになり、友人との付き合いが減ったり、趣味を楽しめなくなったりと、精神的な側面にも影響を及ぼすことがあります。
痛み以外の症状
変形性膝関節症の症状は痛みだけではありません。膝に水がたまって腫れる「関節水腫」や、動かすと「ゴリゴリ」「ミシミシ」といった音がする「轢音(れきおん)」も特徴的な症状です。
これらの症状は、関節内部で炎症が起きている、あるいは軟骨がすり減って骨同士が接触しているサインと考えられます。
両膝の変形性膝関節症の主な原因
なぜ両膝の変形性膝関節症になるのでしょうか。その原因は一つではなく、複数の要因が複雑に絡み合って発症すると考えられています。
ここでは、主な原因として知られているものを解説します。
加齢による軟骨のすり減り
最も大きな原因の一つが加齢です。長年にわたって膝を使い続けることで、関節軟骨は少しずつ弾力性を失い、すり減っていきます。
軟骨の主成分である水分量も年齢とともに減少するため、衝撃を吸収する能力が低下します。この加齢による自然な変化が、変形性膝関節症の土台となります。
体重の増加と膝への負担
体重も膝の健康に大きく関わっています。歩行時には体重の約3倍、階段の上り下りでは約7倍もの負荷が膝にかかると言われています。
体重が増えれば、その分だけ膝への負担も増大し、軟骨のすり減りを加速させる原因となります。特に両膝に症状がある場合、体重コントロールは非常に重要な要素です。
体重と膝への負荷の関係
| 動作 | 膝にかかる負荷(体重比) |
|---|---|
| 平地の歩行 | 約2~3倍 |
| 階段の上り | 約4~5倍 |
| 階段の下り | 約6~7倍 |
遺伝的要因と性別の影響
変形性膝関節症の発症には、家族歴も関係することが知られており、遺伝的な要因が関与する可能性が指摘されています。また、統計的には男性よりも女性のほうが発症しやすい傾向があります。
これは、女性のほうが男性に比べて骨格が小さく、膝を支える筋力が弱いことや、閉経後のホルモンバランスの変化などが影響していると考えられています。
過去の怪我や病気との関連
過去に膝の靭帯や半月板を損傷した経験がある場合、関節の安定性が損なわれ、将来的に変形性膝関節症を発症するリスクが高まります。
また、関節リウマチなどの他の関節疾患が、二次的に変形性膝関節症を引き起こすこともあります。これらの要因は、片膝だけに影響することもあれば、両膝に影響を及ぼすこともあります。
診断の流れと検査方法
膝の痛みが気になった場合、医療機関ではどのような流れで診断が行われるのでしょうか。正確な診断は、適切な治療方針を決めるための第一歩です。
ここでは、一般的な診断の流れと主な検査方法について説明します。
医師による問診と視診・触診
まず、医師が患者さんの話を詳しく聞く「問診」を行います。いつから、どのような時に、どの程度痛むのか、といった症状の詳細や、過去の病歴、生活習慣などについて質問します。
その後、膝の腫れや変形の有無、O脚の状態などを目で見る「視診」と、膝を押したり動かしたりして痛みの場所や可動域を確認する「触診」を行い、膝の状態を評価します。
問診でよく聞かれること
- 痛みが始まった時期
- 痛む場所(膝の内側、外側、お皿の周りなど)
- 痛みが強くなる動作
- 日常生活での困りごと
画像検査の重要性
変形性膝関節症の診断において、レントゲン(X線)検査は非常に重要です。
レントゲンを撮影することで、関節の隙間の広さ(軟骨の厚さの指標)や、骨の変形の有無、骨棘(こつきょく)と呼ばれる骨のとげの形成などを確認できます。
この情報をもとに、病気の進行度を客観的に評価します。場合によっては、MRI検査を行い、軟骨や半月板、靭帯の状態をより詳しく調べることもあります。
レントゲン検査でわかること
| 評価項目 | 健康な膝 | 変形性膝関節症の膝 |
|---|---|---|
| 関節の隙間 | 十分に保たれている | 狭くなっている |
| 骨の変形 | 見られない | 骨棘(とげ)や骨硬化が見られる |
| 脚の形状 | まっすぐ | O脚やX脚変形が見られることがある |
血液検査や関節液検査
通常、変形性膝関節症の診断で血液検査は必須ではありません。しかし、関節リウマチなど他の病気の可能性を否定するために実施することがあります。
また、膝に水が多くたまっている場合には、注射器で関節液を抜く「関節穿刺(かんせつせんし)」を行い、その液体の色や性状を調べることもあります。
これにより、関節内の炎症の程度を確認したり、他の病気との鑑別を行ったりします。
保存療法によるアプローチ
診断が確定した後、多くの場合、まずは手術以外の方法で症状の改善を目指す「保存療法」から治療を開始します。
保存療法は、痛みを和らげ、膝の機能を維持・向上させることを目的としており、いくつかの方法を組み合わせて行います。
運動療法の役割と具体的な方法
保存療法の中心となるのが運動療法です。膝周りの筋力を強化することで、関節の安定性が高まり、膝への負担を軽減できます。
特に太ももの前の筋肉である「大腿四頭筋」を鍛えることが重要です。
自宅で簡単にできる運動としては、椅子に座って片脚ずつゆっくりと膝を伸ばす運動や、仰向けに寝て膝を伸ばしたまま脚を少し持ち上げる運動などがあります。
痛みのない範囲で、継続的に行うことが大切です。
自宅でできる簡単な運動
| 運動の種類 | 目的 | 注意点 |
|---|---|---|
| 大腿四頭筋セッティング | 膝を支える筋力の維持 | 膝の下にタオルを丸めて入れると行いやすい |
| 脚の伸展挙上(SLR) | 太もも全体の筋力強化 | 腰が反らないように注意する |
| 水中ウォーキング | 膝への負担を減らした有酸素運動 | 無理のない範囲で歩く |
物理療法と装具療法
物理療法は、温熱療法や電気刺激療法などを用いて、膝の血行を促進し、痛みを和らげる治療法です。医療機関のリハビリテーション室などで受けることができます。
また、装具療法では、膝用のサポーターや足底板(インソール)を使用します。サポーターは膝関節を安定させ、保温効果も期待できます。
O脚が強い場合には、足底板を使って足の裏からの荷重バランスを調整し、膝の内側にかかる負担を軽減することを目指します。
薬物療法による痛みの管理
痛みが強い場合には、薬物療法も併用します。飲み薬としては、炎症を抑え痛みを和らげる非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や、アセトアミノフェンなどが用いられます。
貼り薬や塗り薬といった外用薬も、副作用が少なく使いやすい選択肢です。
これらの薬で効果が不十分な場合や、痛みが急に強くなった場合には、関節内にヒアルロン酸やステロイドの注射を行うこともあります。
日常生活での注意点
治療と並行して、日常生活での動作を見直すことも症状の悪化を防ぐ上で重要です。正座やあぐら、深くしゃがみ込む動作は膝への負担が大きいため、できるだけ避けるように心がけましょう。
和式の生活スタイルから、椅子やベッドを使う洋式の生活スタイルへ変更することも有効な対策の一つです。この工夫により、膝の負担を大きく減らすことができます。
手術療法を検討するタイミング
保存療法を続けても痛みが改善せず、日常生活に大きな支障が出ている場合には、手術療法が選択肢となります。
手術と聞くと不安に感じるかもしれませんが、どのような場合に検討されるのか、またどのような方法があるのかを知っておくことは大切です。
手術が必要になる状態
手術を検討するのは、一般的に以下のような状態になった場合です。
手術を検討する目安
- 保存療法で痛みが十分にコントロールできない
- 安静にしていても膝が痛む
- 膝の変形が進行し、歩行が著しく困難になった
- 痛みのために生活の質(QOL)が大きく低下している
これらの状態は、レントゲン所見における病気の進行度と、患者さん自身が感じる症状の強さの両方を考慮して、総合的に判断します。
代表的な手術方法
変形性膝関節症に対する手術には、いくつかの種類があります。
代表的なものとしては、「関節鏡視下手術(デブリードマン)」、「高位脛骨骨切り術(HTO)」、「人工膝関節置換術(TKA)」などが挙げられます。
どの手術方法を選択するかは、年齢や活動量、変形の程度、ライフスタイルなどを考慮して決定します。
主な手術方法の特徴
| 手術方法 | 対象 | 特徴 |
|---|---|---|
| 関節鏡視下手術 | 比較的軽症例 | 傷が小さく、体への負担が少ない |
| 高位脛骨骨切り術 | 比較的若い活動的な人 | 自分の関節を温存できる |
| 人工膝関節置換術 | 高齢者、変形が強い人 | 痛みの改善効果が高い |
人工膝関節置換術について
変形性膝関節症の手術として最も広く行われているのが、人工膝関節置換術です。
これは、傷んだ関節の表面を削り取り、金属やポリエチレンなどでできた人工の関節(インプラント)に置き換える手術です。
この手術の最大の利点は、痛みの原因となっている部分を取り除くため、高い除痛効果が期待できることです。
手術後はリハビリテーションが必要ですが、多くの場合、歩行能力が大きく改善し、より快適な日常生活を送ることが可能になります。
両膝の変形性膝関節症に関するよくある質問
最後に、両膝の変形性膝関節症に関して、患者さんからよく寄せられる質問とその回答をまとめました。治療や日常生活における疑問の解消にお役立てください。
Q. サプリメントは効果がありますか?
A. グルコサミンやコンドロイチンといったサプリメントが膝の健康に良いという情報が多くありますが、現在のところ、変形性膝関節症の進行を抑制したり、軟骨を再生させたりするという明確な科学的根拠は確立されていません。
痛みを和らげる効果を感じる人もいますが、効果には個人差が大きいのが実情です。
サプリメントはあくまで補助的なものと考え、基本的な治療である運動療法や体重管理を優先することが重要です。
Q. どのような運動を避けるべきですか?
A. 膝に強い衝撃がかかる運動や、急な方向転換を伴う運動は避けたほうが良いでしょう。
具体的には、ジャンプを多用するスポーツ(バレーボール、バスケットボールなど)や、急なストップ・アンド・ゴーが多いスポーツ(テニス、サッカーなど)です。ウォーキングや水泳、サイクリングなど、膝への負担が少ない運動を選ぶことをお勧めします。
運動の選択
| 推奨される運動 | 避けるべき運動の例 |
|---|---|
| ウォーキング、水中運動、サイクリング、ヨガ | ランニング、ジャンプ、急な方向転換を伴うスポーツ |
Q. 痛みがあるときも動いたほうが良いですか?
A. 痛みが非常に強いときや、膝が赤く腫れて熱を持っているような急性炎症期には、無理に動かさず安静にすることが第一です。
しかし、痛みが少し落ち着いている慢性期には、痛みのない範囲で適度に動かすことが大切です。全く動かさないでいると、関節が硬くなったり、筋力が低下したりして、かえって症状を悪化させる可能性があります。
痛みの程度に合わせて活動量を調整するよう心がけてください。
Q. 両膝を手術する場合、同時に行うのですか?
A. 両膝の人工膝関節置換術を行う場合、「両側同時手術」と、片方ずつ時期をずらして行う「段階的手術」の二つの方法があります。
同時手術は入院やリハビリが一度で済むという利点がありますが、体への負担は大きくなります。段階的手術は一回あたりの負担は少ないですが、合計の入院期間は長くなります。
どちらの方法を選択するかは、患者さんの全身状態や年齢、生活環境などを考慮して、医師と相談の上で決定します。
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