腰椎狭窄症の間欠跛行 – 症状の特徴と判断
腰部脊柱管狭窄症の代表的な症状である間欠跛行(かんけつはこう)は、歩行中に足の痛みやしびれが生じ、休息を取ることで再び歩けるようになる状態を指します。
この症状は、加齢に伴う腰椎の変形が神経を圧迫することで引き起こされ、放置すると日常生活に大きな支障をきたします。
本記事では、間欠跛行が起こる原因や特徴的な症状、血管性の病気との見分け方、そして適切な受診のタイミングや治療方法について詳しく解説します。
正しい知識を持ち、早期に対処することで、健康的な歩行機能の維持を目指しましょう。
目次
腰部脊柱管狭窄症と間欠跛行の基本的な関係
腰部脊柱管狭窄症における間欠跛行は、背骨の中を通る神経の通り道が狭くなることで生じる、極めて特徴的な歩行障害です。
歩くことで神経への圧迫や血流不足が強まり、下肢に症状が現れますが、前かがみになって休むと神経の通り道が広がり、症状が和らぐという性質を持ちます。この現象を正しく理解することが、適切な対策への第一歩となります。
間欠跛行とはどのような症状か
間欠跛行(かんけつはこう)とは、歩き始めは順調であっても、しばらく歩き続けると足に痛みやしびれ、脱力感などが現れ、歩行の継続が困難になる状態を指します。
しかし、その場でしゃがみ込んだり、椅子に座って前かがみの姿勢をとったりして休息をとると、短時間で症状が消失し、再び歩き出せるようになるのが最大の特徴です。
このサイクルを繰り返すことから「間欠」という言葉が使われています。
多くの患者が「スーパーマーケットでカートを押しながらだと長く歩ける」と訴えるのは、カートにもたれかかることで自然と前傾姿勢になり、腰椎の生理的前弯(反り)が減少して神経への圧迫が軽減するためです。
逆に、背筋を伸ばして歩いたり、立ち続けたりする姿勢は、脊柱管を狭める方向に働くため、症状を悪化させる要因となります。
なぜ腰部脊柱管狭窄症で歩行困難になるのか
腰部脊柱管狭窄症で歩行困難が生じる主な要因は、加齢に伴う腰椎の変性変化にあります。
背骨(脊椎)は、椎体と椎弓からなる骨積み木のような構造をしており、その中心にある空洞が脊柱管です。この中を脳から続く重要な神経の束である馬尾神経が通っています。
年齢を重ねると、椎間板が弾力を失って潰れたり、椎間関節の骨が変形してトゲ(骨棘)ができたりします。また、脊柱管の後方を支える黄色靭帯が分厚くなることもあります。
これらの変化が組み合わさることで、脊柱管の内腔が狭くなり、中を通る神経や、神経に栄養を送る血管が圧迫されます。
歩行時には腰を伸ばす動作や衝撃が加わるため、この圧迫がさらに強まり、神経が虚血状態(酸欠状態)に陥ることで、足が前に出なくなるといった歩行困難を引き起こします。
神経圧迫が引き起こす足の痛みとしびれ
脊柱管狭窄症による圧迫は、主に腰椎(腰の骨)の部分で起こりますが、症状は腰そのものよりも、お尻から太もも、ふくらはぎ、足先にかけての下肢全体に強く現れる傾向があります。
これは、圧迫されているのが足の感覚や運動を司る神経の束だからです。
神経のタイプと症状の現れ方
| タイプ分類 | 圧迫される部位 | 主な症状の特徴 |
|---|---|---|
| 神経根型 | 神経の枝(神経根) | 主にお尻から下肢にかけての片側の痛みやしびれ。特定の部位に症状が出やすい。 |
| 馬尾型 | 神経の束(馬尾) | 両足のしびれ、脱力感、冷感、足裏の異常感覚。排尿・排便障害を伴うこともある。 |
| 混合型 | 神経根と馬尾の両方 | 上記の両方の特徴を併せ持つ。痛みとしびれが混在し、重症化しやすい傾向がある。 |
神経根型と呼ばれるタイプでは、左右どちらかの神経の枝が圧迫されるため、片足の特定の部分に鋭い痛みやしびれが走ります。
一方、馬尾型と呼ばれるタイプでは、脊柱管の中心を通る神経の束全体が圧迫されるため、両足に広範囲なしびれや脱力感、足の裏に何かが張り付いているような異常感覚(餅を踏んでいるような感覚)が生じます。
これらの不快な感覚は、歩行によって神経が引っ張られたり、うっ血したりすることで増強し、患者に休息を強いるほどの苦痛を与えます。
間欠跛行の具体的な症状と日常生活への影響
間欠跛行の症状は、単に「足が痛い」というだけでなく、生活の質を大きく低下させる様々な形で現れます。歩ける距離が徐々に短くなることや、特定の動作でのみ症状が楽になるといった日々の変化を観察することで、病状の進行度合いを把握できます。
歩き始めは問題ないが次第に足が重くなる
朝起きて動き始めるときや、椅子から立ち上がって歩き出した直後は、全く症状を感じないことがよくあります。
しかし、5分、10分と歩き続けるうちに、徐々にふくらはぎや太ももの裏あたりに重だるさを感じ始めます。この「最初は歩ける」という点が、常時痛みがある他の整形外科疾患との大きな違いです。
足の重さは次第に「鉛が入ったような感覚」や「締め付けられるような痛み」へと変化し、最終的には足が前に出なくなります。
無理をして歩き続けると、足がもつれて転倒する危険性も高まります。この症状の変化は、神経の血流障害が歩行という運動負荷によって徐々に進行していく様子を反映しています。
前かがみで休むと症状が改善する理由
患者の多くは、症状が出たときに無意識に前かがみの姿勢をとります。近くの壁や手すりに手をついて腰を丸めたり、公園のベンチやガードレールに座ったりします。
なぜなら、腰椎を屈曲させる(丸める)ことで脊柱管の容積がわずかに拡大し、神経への物理的な圧迫が緩むからです。
また、前かがみになることで、神経に栄養を送る血管の圧迫も解除され、血流が回復します。その結果、神経の虚血状態が改善し、痛みやしびれが速やかに消失します。
この「姿勢による症状のオン・オフ」は腰部脊柱管狭窄症を診断する上で非常に重要な手がかりとなります。逆に、腰を反らす姿勢(後屈)は脊柱管をさらに狭めるため、症状を誘発したり悪化させたりします。
連続して歩ける距離や時間の変化
病状が進行すると、連続して歩ける距離や時間が短縮していきます。
初期段階では30分以上歩けていたものが、進行すると10分、5分となり、重症化すると数メートル歩くだけで休息が必要になる場合もあります。この「連続歩行距離」は、治療方針を決定する際の重要な指標となります。
日常生活では、信号待ちの間にしゃがみ込みたくなったり、横断歩道を渡りきるのが怖くなったりすることで、外出自体を控えるようになります。
活動量の低下は筋力の低下を招き、さらに症状を悪化させるという悪循環に陥りやすいため、早めの対策が必要です。
日常生活で現れる具体的な支障
- 横断歩道の途中で足が痛くなり、青信号のうちに渡りきれない不安を感じる。
- スーパーでの買い物中、カートがないと店内を回ることが辛い。
- 台所で立って料理を続けるのが困難になり、椅子を使う頻度が増える。
- 趣味の散歩や旅行に行きたくても、仲間に迷惑をかけると思い断念してしまう。
- 高いところの物を取ろうとして背伸びをすると、足にしびれが走る。
- 排尿のコントロールが難しくなり、外出時のトイレの場所を常に気にする。
このように、生活の様々な場面で制限がかかるようになると、精神的にも大きなストレスとなります。
血管性と神経性の間欠跛行を見分けるポイント
間欠跛行を引き起こす原因は、腰の神経だけでなく、足の血管に問題がある場合もあります。これを「血管性間欠跛行」と呼び、腰部脊柱管狭窄症による「神経性間欠跛行」とは治療法が全く異なります。
閉塞性動脈硬化症による血管性間欠跛行
血管性の間欠跛行の代表的な原因は、閉塞性動脈硬化症(ASO)です。
これは、動脈硬化によって足の血管が狭くなったり詰まったりすることで、筋肉に必要な酸素や栄養が届かなくなる病気です。歩行によって筋肉が酸素を多く消費すると、供給が追いつかずに痛みが生じます。
神経性と血管性の特徴比較
| 比較項目 | 神経性間欠跛行(脊柱管狭窄症) | 血管性間欠跛行(閉塞性動脈硬化症) |
|---|---|---|
| 原因 | 神経の圧迫および神経の血流障害 | 足の動脈の狭窄や閉塞による筋肉の虚血 |
| 楽になる姿勢 | 前かがみで休むと楽になる | 姿勢に関係なく、立ち止まれば楽になる |
| 自転車運転 | 前傾姿勢になるため、いくらでも乗れることが多い | 足の筋肉を使うため、乗っていても痛くなる |
| 足の脈拍 | 正常に触れる | 弱い、または触れない |
神経性との大きな違いは、姿勢による変化が少ないことです。
血管性の場合、前かがみになっても血管の詰まり自体は変わらないため、症状の回復には単に「立ち止まって休む」ことが必要であり、姿勢を変える必要は必ずしもありません。
また、血管性の病態は「筋肉の痛み」として感じることが多く、しびれよりも痛みが先行する傾向があります。
足背動脈の拍動を確認する方法
簡易的な見分け方として、足の甲にある動脈(足背動脈)の拍動を確認する方法があります。
足の甲の親指と人差し指の骨の間あたりを指先で触れ、ドクンドクンという脈を感じ取れるか確認します。
腰部脊柱管狭窄症(神経性)の場合、血管には問題がないため、足の脈はしっかりと触れます。一方、閉塞性動脈硬化症(血管性)の場合、血流が悪くなっているため、脈が弱かったり、全く触れなかったりします。
さらに、血管性の場合は足先が冷たく、皮膚の色が悪くなっていることも多いです。ただし、これらはあくまで目安であり、正確な判断には医療機関での検査が必要です。
医療機関を受診するタイミングと初期評価
「年のせいだから仕方がない」と痛みを我慢してしまう方が多いですが、症状を放置すると神経に不可逆的なダメージを与えるリスクがあります。どの程度の症状が出たら病院へ行くべきか、緊急性の高いサインについて理解することが大切です。
排尿障害や排便障害が出た場合の緊急性
最も警戒すべき症状は、排尿や排便に関するトラブルです。これを膀胱直腸障害と呼びます。
「おしっこが出にくい」「残尿感がある」「頻繁にトイレに行きたくなる」「便秘がひどい」「知らないうちに漏らしてしまう」といった症状が現れた場合、馬尾神経が重度に圧迫されている可能性があります。
これらの症状は、神経の機能が深刻なダメージを受けているサインであり、放置すると手術をしても機能が戻らない恐れがあります。
したがって、足の痛みに加えて排泄の異常を感じた場合は、様子を見ることなく、直ちに整形外科(脊椎専門医)を受診する必要があります。場合によっては緊急手術が検討されます。
安静時にも足のしびれが続くケース
初期の間欠跛行は歩行時にのみ症状が出ますが、病状が進行すると、安静にしているときや寝ているときにも足のしびれや痛みを感じるようになります。
受診を推奨する危険なサイン
| 症状のレベル | 具体的なサイン | 推奨される行動 |
|---|---|---|
| 緊急性が高い | 尿漏れ、尿が出ない、便失禁、股間周辺の感覚麻痺 | 直ちに専門医を受診(手術の可能性あり) |
| 早めの受診が必要 | 安静時でも痛む、足に力が入らない、スリッパが脱げやすい | 数日以内に整形外科を受診 |
| 受診を検討 | 歩行距離が短くなってきた、時々足がしびれる | 予定を立てて整形外科を受診し相談 |
特に、夜寝ているときに足がつる(こむら返り)頻度が増えたり、足の裏の異常感覚が一日中続いたりする場合は、神経の圧迫が常態化していることを示唆しています。
安静時の症状は、生活の質を著しく低下させるだけでなく、睡眠不足を引き起こし、全身の健康状態にも悪影響を及ぼします。歩かなくても痛い、という状態になる前に受診することが望ましいです。
医師が行う診断の流れと検査方法
整形外科では、問診による自覚症状の確認と、画像検査による客観的な評価を組み合わせて診断を行います。正確な診断のためには、患者自身が自分の症状を医師に詳しく伝えることが重要です。
問診で確認する歩行距離と姿勢の影響
診断の第一歩は詳細な問診です。医師は「どれくらいの距離を歩くと痛くなるか」「休むとどれくらいで回復するか」「どのような姿勢をとると楽になるか」といった点を重点的に確認します。
また、自転車に乗れるかどうかも重要な質問項目です。自転車は前傾姿勢で漕ぐため、脊柱管狭窄症の患者は痛みなく乗れることが多いからです。
これらの質問は、他の疾患(閉塞性動脈硬化症や椎間板ヘルニアなど)との鑑別を行う上で非常に重要です。
具体的なエピソード(例:スーパーまで5分歩くと辛いが、カートを使うと1時間買い物できる等)を伝えると、医師は病態をイメージしやすくなります。
レントゲン検査でわかる骨の状態
レントゲン検査(X線検査)は、骨の形や並びを確認するための基本的な検査です。腰椎の生理的な弯曲の状態、椎間板の厚みの減少、骨棘(骨のトゲ)の形成、すべり症(骨のずれ)の有無などを評価します。
ただし、レントゲンには神経や椎間板そのものは写りません。あくまで骨の変形から間接的に脊柱管の狭窄を推測するものです。骨折や腫瘍などの他の病気がないかを除外する目的も兼ねています。
MRI検査による神経圧迫部位の特定
腰部脊柱管狭窄症の確定診断に最も有用なのがMRI検査です。磁気を利用して体の断面を撮影するため、骨だけでなく、椎間板、黄色靭帯、そして神経の状態を鮮明に映し出すことができます。
主な検査項目のリスト
- 問診・理学的所見:歩行状態の観察、足の知覚検査、筋力テスト、反射テスト(膝蓋腱反射など)を行い、神経障害のレベルを確認します。
- 単純X線(レントゲン):骨の配列、変形、不安定性(ぐらつき)を確認します。
- MRI(磁気共鳴画像):神経の圧迫状況、椎間板や靭帯の状態を三次元的に詳細に評価します。
- CT(コンピュータ断層撮影):骨の形状をより詳細に調べたり、靭帯の骨化を確認したりする場合に用います。
- 脊髄造影(ミエログラフィー):造影剤を注入して神経の通り道を写し出す検査で、手術を前提とした詳細な評価が必要な場合に行うことがあります。
- ABI検査(足関節上腕血圧比):足と腕の血圧を比較し、血管性間欠跛行(閉塞性動脈硬化症)の可能性を除外するために行います。
MRI画像を見ることで、脊柱管がどの程度狭くなっているか、どの高さの腰椎で神経が圧迫されているか、神経が腫れていないかなどを詳細に評価できます。
これにより、手術が必要かどうかの判断や、手術する場合の範囲を決定することが可能になります。
保存療法による症状の緩和と管理
腰部脊柱管狭窄症と診断されても、すぐに手術が必要になるわけではありません。排尿障害や重度の麻痺がない限り、まずは手術を行わない「保存療法」から開始するのが一般的です。
薬物療法で神経の血流を改善する
薬物療法の中心となるのは、神経の血流を改善するプロスタグランジンE1製剤(リマプロストなど)です。
この薬は血管を広げて血流を良くし、神経への酸素供給を増やすことで、しびれや痛みを緩和し、歩行距離を延ばす効果が期待できます。
痛みが強い場合には、消炎鎮痛剤(NSAIDs)や、神経障害性疼痛治療薬(プレガバリン、ミロガバリンなど)を併用します。また、筋肉の緊張を和らげる筋弛緩薬や、しびれに対してビタミンB12製剤が処方されることもあります。
医師は症状の種類と強さに応じて、これらを適切に処方します。
リハビリテーションと理学療法のアプローチ
理学療法では、腰への負担を減らすためのストレッチや筋力トレーニングを行います。特に、腰が反る姿勢を改善するために、股関節周りの柔軟性を高めたり、腹筋を強化したりすることが重要です。
主な保存療法の種類と効果
| 治療法 | 主な内容 | 期待される効果 |
|---|---|---|
| 薬物療法 | 血管拡張薬、鎮痛薬、神経障害性疼痛薬などの内服 | 神経の血流改善、痛みやしびれの軽減、歩行能力の向上 |
| 理学療法 | ストレッチ、筋力強化、温熱療法、牽引療法 | 腰椎の安定化、姿勢改善、筋肉の緊張緩和、血行促進 |
| 装具療法 | 軟性コルセットの着用 | 腰椎の過度な反りを防ぎ、腹圧を高めて腰を安定させる |
| ブロック注射 | 硬膜外ブロック、神経根ブロック | 神経の炎症を抑え、強い痛みを一時的に遮断する |
また、温熱療法(ホットパック)や電気療法で筋肉の血流を促し、痛みを和らげる処置も行われます。
専門の理学療法士の指導の下、正しい姿勢や歩き方を学ぶことも大切です。前かがみの姿勢を保持しやすくするための指導や、日常生活動作の工夫(重いものを持たない、長時間の立位を避ける等)のアドバイスを受けることで、症状の悪化を防ぎます。
手術療法を検討する基準と方法
保存療法を十分に行っても症状が改善しない場合や、日常生活に深刻な支障が出ている場合には、手術療法が選択肢となります。手術の目的は、狭くなった脊柱管を広げて神経の圧迫を取り除くことです。
日常生活に著しい支障が出ているケース
手術を検討する最大の基準は、「患者自身が現在の生活に満足できず、困っているかどうか」です。
例えば、「痛くて買い物に行けない」「趣味の旅行を楽しめない」「夜も眠れないほどの痛みがある」といった状態が続き、保存療法でも改善が見込めない場合は、手術によって生活の質を取り戻すことを考えます。
また、前述した排尿・排便障害がある場合や、足に力が入らない(麻痺)といった症状がある場合は、神経機能の回復を図るために、できるだけ早い段階での手術が強く推奨されます。
除圧術と固定術の違いと選択
手術方法は大きく分けて「除圧術」と「固定術」の2つがあります。除圧術は、神経を圧迫している骨の一部(椎弓)や肥厚した黄色靭帯を削り取り、脊柱管を広げる手術です。
手術適応の判断目安
| 判断要素 | 手術が考慮される状況 |
|---|---|
| 保存療法の効果 | 薬やリハビリを3ヶ月以上続けても効果が乏しい |
| 歩行障害の程度 | 連続歩行距離が数百メートル以下で、外出が困難 |
| 神経脱落症状 | 足に力が入らない、筋肉が痩せてきた、感覚がない |
| 膀胱直腸障害 | 尿漏れや便秘など、排泄機能に異常がある(絶対的適応) |
内視鏡や顕微鏡を用いた小切開の手術が主流で、筋肉へのダメージが少なく、早期の回復が期待できます。
一方、固定術は、背骨のずれ(すべり症)や不安定性が強い場合に行われます。除圧を行った上で、ボルトやスクリューなどの金属を用いて骨同士を固定し、安定させます。
腰椎がグラグラしている状態で除圧だけを行うと、さらに不安定になり症状が悪化する恐れがあるため、固定術が必要となります。
よくある質問
腰部脊柱管狭窄症や間欠跛行に関して、患者様から頻繁に寄せられる疑問についてお答えします。日々のケアや病気との向き合い方の参考にしてください。
自分でできるストレッチはありますか?
腰を丸める動作を中心としたストレッチが有効です。例えば、仰向けに寝て両膝を抱え込み、胸に近づける「抱え込み体操」は、脊柱管を広げ、腰の筋肉を伸ばす効果があります。
逆に、腰を反らすようなストレッチは神経の圧迫を強めるため避けてください。痛みが出ない範囲で、毎日少しずつ継続することが大切です。
完治するまでどのくらいの期間が必要ですか?
加齢による骨の変形が原因であるため、風邪のように完全に「元通り」になることは難しいのが現状です。
治療の目標は、骨を若返らせることではなく、神経の圧迫を緩和し、痛みなく日常生活を送れる状態にすることです。
保存療法であれば数ヶ月単位で症状の改善を目指し、手術療法であれば術後数週間から数ヶ月のリハビリを経て社会復帰を目指します。
温めるのと冷やすのではどちらが良いですか?
基本的には「温める」ことが推奨されます。慢性的な腰痛やしびれは、血行不良が関与していることが多いため、入浴やカイロなどで腰を温めると、筋肉がほぐれて血流が改善し、症状が楽になることが多いです。
ただし、急に痛みが激しくなった場合や熱感がある場合は、一時的に冷やす方が良いこともありますので、医師に相談してください。
予防のために日常生活で気をつけることは?
腰に負担をかける姿勢を避けることが重要です。長時間立ちっぱなしになる作業や、重いものを持ち上げる動作、腰を強く反らす動作は避けてください。
歩くときは少し前かがみを意識したり、杖やカートを利用したりするのも有効です。また、肥満は腰への負担を増やすため、適正体重を維持することも予防につながります。
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