足立慶友医療コラム

腰椎椎間板ヘルニアの診断基準 – 重症度分類の指標

2026.02.02

腰やお尻、足に走る鋭い痛みやしびれに悩まされている方へ。その症状が「腰椎椎間板ヘルニア」によるものなのか、そしてどのくらい深刻な状態なのかを正しく知ることは、適切な治療への第一歩です。

医師はMRIなどの画像所見だけで判断するのではなく、どのような動作で痛むか、神経の反応はどうかといった身体所見を総合して診断を下します。

ヘルニアには「飛び出し方」や「神経圧迫の程度」による重症度分類があり、これが手術を選択するか、薬や注射で治すかを決める大きな判断材料となります。

この記事では、専門医がどのような視点であなたの腰の状態を診断し、重症度を判定しているのか、その基準を分かりやすく解説します。

なぜ腰やお尻が痛むのか?椎間板ヘルニアが疑われる初期症状とは

腰やお尻に痛みを感じたとき、それが一時的な筋肉の疲労なのか、それとも腰椎椎間板ヘルニアによる神経痛なのかを見極めるには、痛みの質や出現する場所に注目する必要があります。

腰椎椎間板ヘルニアの診断基準において、まず医師が重視するのは「どのような姿勢や動作で、体のどこに痛みが出るか」という自覚症状のパターンです。

ヘルニアは背骨のクッションである椎間板が飛び出し、神経を圧迫することで起こりますが、圧迫される神経の場所によって症状の出方は大きく異なります。

前かがみや座り姿勢で痛みが増すのは神経圧迫の典型です

椎間板ヘルニアの最大の特徴の一つは、前屈(お辞儀)や座っている姿勢で痛みが強くなる傾向があることです。前かがみになると椎間板の内圧が上がり、飛び出したヘルニアが神経を強く圧迫するからです。

もし、靴下を履こうとしたときや、デスクワークで長時間座り続けているときにお尻から太ももの裏、ふくらはぎにかけて電気が走るような痛みを感じるなら、ヘルニアの可能性が高いと言えます。

筋肉の単なる痛みであれば、動かしたときだけでなく安静にしていれば楽になることが多いですが、ヘルニアによる神経痛は特定の姿勢をとり続けることでも悪化するという特徴があります。

特に注意が必要な自覚症状のチェックリスト

  • 前かがみになると、お尻から足にかけて鋭い痛みが走る
  • くしゃみや咳をすると、腰や足に痛みが響く
  • 仰向けに寝て、片足を伸ばしたまま上げようとすると痛くて上がらない
  • 足の感覚が麻痺している、または特定の指に力が入らない
  • 安静にしていても激しい痛みが続き、眠れない

片足だけに走る電撃的な痛みやしびれの特徴

多くの場合、腰椎椎間板ヘルニアの症状は左右どちらかの片足に現れます。腰そのものの痛みよりも、お尻から足先にかけての痛みやしびれの方が強く感じられることが少なくありません。

「足の親指に力が入らない」「スネの外側を触った感じが鈍い」といった感覚異常も、診断において非常に重要な手がかりとなります。これが、いわゆる坐骨神経痛と呼ばれるものです。

稀に両足同時に症状が出ることもありますが、それは重症度が高い巨大ヘルニアのケースや、脊柱管狭窄症など他の病態が合併している場合が多く、より慎重な判断が求められます。

排尿障害やお尻の感覚麻痺は緊急事態のサインです

痛みが強いだけでも辛いものですが、中には一刻を争う危険な兆候があります。それは「おしっこが出にくい(排尿障害)」「お尻周りの感覚が全くない」といった症状です。

これらは、ヘルニアが巨大で、馬尾神経という神経の束全体を強く圧迫している可能性があります。この状態を「馬尾症候群」と呼びます。

放置すると神経の機能が永久に戻らなくなるリスクがあるため、診断基準においても緊急手術を検討する絶対的な指標となります。

医師はどのように診断を確定させるのですか?検査の流れと判定基準

「ヘルニアかもしれない」という疑いを確信に変え、確定診断を下すためには、問診や触診といった身体所見と、MRIなどの画像所見を照らし合わせる作業が必要です。

画像でヘルニアが写っていても、症状がなければ治療対象にはなりません。逆に、画像上のヘルニアが小さくても、症状が強ければ治療が必要です。医師はこれらを総合して判断します。

足を上げるテストで神経の圧迫度合いを調べます

診察室のベッドで行う「下肢挙上テスト(SLRテスト)」は、腰椎椎間板ヘルニアの診断基準として非常に有名です。患者さんが仰向けになり、医師が膝を伸ばしたまま片足をゆっくりと持ち上げていきます。

もし、足が70度くらいまで上がる前に、お尻から太ももの裏、膝下にかけて激しい痛みが走り、それ以上上げられない場合は「陽性」と判断されます。

これは、ヘルニアによって神経根が圧迫され、神経が引き伸ばされることに耐えられなくなっている状態を示唆しています。若い方ほどこのテストの感度は高く、診断の大きな助けとなります。

また、上位の腰椎(L2/3やL3/4)のヘルニアを調べるためには、うつ伏せで膝を曲げて太ももを持ち上げる「FNSテスト(大腿神経伸展テスト)」を行うこともあります。

画像診断モダリティの役割分担

検査方法ヘルニア診断での役割分かること・メリット
単純X線(レントゲン)骨の異常を確認する骨の配列、椎間板の隙間の狭小化、骨棘(骨のトゲ)の有無。ヘルニア自体は写らない。
MRI(磁気共鳴画像)診断の確定と重症度判定椎間板の突出具合、神経の圧迫度合い、炎症の有無。被曝がない。
CT(コンピュータ断層撮影)石灰化の有無を確認ヘルニアが硬くなっているか(骨化・石灰化)を判別。手術法の選択に役立つ。

レントゲン検査だけでヘルニアは見つかりません

よくある誤解ですが、通常のレントゲン撮影(X線検査)では、軟骨組織である椎間板や神経そのものは写りません。

ではなぜレントゲンを撮るのかというと、骨の形や並び方を見て、「骨折がないか」「腫瘍による骨破壊がないか」「背骨の不安定性(ぐらつき)がないか」を確認するためです。

つまり、他の病気ではないことを確認する「除外診断」としての意味合いが強いのです。ヘルニアの診断を確定させるには、やはりMRI検査が必要になります。

MRI画像で確認する「黒い影」の意味

診断の決め手となるのがMRI検査です。磁気を使って体の中を撮影するため、水分を多く含む椎間板や神経の状態が鮮明に分かります。

健康な椎間板は水分を含んで白っぽく写りますが、変性して傷んだ椎間板は水分が失われ、黒っぽく写ります。これをT2強調画像での「信号強度の低下」と呼びます。

さらに、その黒くなった椎間板の一部が後ろに飛び出し、神経の通り道を塞いでいる様子が確認できれば、診断はほぼ確定します。MRIはヘルニアの大きさや位置を視覚的に評価できるため、重症度分類においても欠かせない検査です。

ヘルニアの形には種類がある?画像上の形態による重症度分類

「ヘルニア」と一口に言っても、実はその飛び出し方にはいくつかのタイプがあります。MRI画像で見えるヘルニアの形によって分類することは、今後の予測に役立ちます。

自然に吸収されて治る可能性が高いか、それとも手術が必要になる可能性が高いか。医師はこの形態分類を参考にしながら、一人ひとりに合った治療計画を立てていきます。

膨らみが軽度でも油断できない理由

椎間板の中にあるゼリー状の「髄核」が、外側の「線維輪」を突き破らずに全体的に膨らんでいる状態を「膨隆型(プロトルージョン)」と呼びます。

これは比較的軽度な形態に分類され、線維輪の後ろにある「後縦靭帯」も破れていません。神経への圧迫が軽度であれば、痛み止めやリハビリなどの保存療法で症状が改善することが多く見られます。

ただし、飛び出している場所が神経の出口付近など「悪い場所」であれば、たとえ小さくても強い痛みを引き起こすことがあります。形だけで軽症と決めつけることはできません。

飛び出したヘルニアが自然に消える驚きのメカニズム

髄核が線維輪を突き破って外に出てくるものを「脱出型(エクスツルージョン)」と呼びます。さらに、飛び出した髄核がちぎれて本体から離れ、神経の通り道を漂っている状態を「遊離型(セクエストレーション)」と呼びます。

一見すると非常に重症に見えますし、発症直後は激痛を伴います。しかし、興味深いことに、この「遊離型」は体が異物として認識しやすいため、マクロファージという免疫細胞が食べて処理してくれる確率が高いのです。

つまり、最初は痛みが強くても、数ヶ月待つとヘルニアが自然に縮小・消失することが期待できるタイプでもあります。

ヘルニアの形態分類と特徴

分類名称状態の説明自然吸収(縮小)の傾向
膨隆型(Protrusion)線維輪は破れず、風船のように膨らんでいる吸収されにくい(保存療法で炎症が引くのを待つ)
脱出型(Extrusion)線維輪を破って中身が飛び出している比較的小さくなりやすい
遊離型(Sequestration)飛び出した中身がちぎれて離れている免疫反応により、高い確率で自然消失する

靭帯を突き破るかどうかが治りやすさを左右します

ヘルニアが背骨の後ろを走る「後縦靭帯」を突き破っているかどうかも、重症度や治療方針に関わります。

靭帯の下にとどまっているものを「靭帯下脱出」、突き破っているものを「靭帯経由脱出」と区別します。靭帯を突き破っているタイプの方が、先述の通り自然吸収される可能性が高い傾向にあります。

逆に、靭帯の下で大きく盛り上がっているタイプは、吸収されにくく圧迫が長引くことがあるため、痛みが引かない場合は手術を検討する材料の一つになります。

神経のダメージはどれくらい?麻痺や感覚異常による重症度判定

画像上の見た目以上に医師が重視するのは、「実際に神経がどれくらいダメージを受けているか」という機能的な重症度です。

これには徒手筋力テスト(MMT)という筋力を測る基準や、皮膚の感覚を調べるテストを用います。

足の力が弱くなっていたり、触った感覚がなくなっていたりする場合、神経がかなり強く圧迫されていることを意味し、重症度が高いと判定されます。

足首や指に力が入らないのは神経障害の進行レベルが高い

「スリッパが脱げやすい」「何もないところでつまづく」といった症状がある場合、足首を持ち上げる筋力が低下している可能性があります。

これは「下垂足(ドロップフット)」と呼ばれ、L4やL5という神経根が強く障害されているサインです。また、「つま先立ちができない」場合はS1神経根の障害が疑われます。

筋力の低下(麻痺)がある場合は、神経が不可逆的(元に戻らない)な変性を起こす前に、早めに圧迫を取り除く処置が必要になることが多く、重症度は高いと判断されます。

皮膚感覚の鈍さから障害された神経の場所を特定します

人間の皮膚の感覚は、背骨のどの神経が支配しているかが地図のように決まっています。これを「デルマトーム」と呼びます。

例えば、スネの外側から足の親指にかけて感覚が鈍いならL5神経根、足の外側から小指にかけて鈍いならS1神経根、というように、患者さんが「どこが変な感じがするか」を訴えるだけで、医師はどの骨の間でヘルニアが起きているかを推測できます。

感覚の麻痺が広範囲に及んでいる場合も、重症度が高いと考えられます。

障害される神経根と主な症状

障害神経根主なヘルニア部位筋力低下・感覚障害の場所
L4神経根腰椎3番と4番の間(L3/4)膝を伸ばす力が弱る。すねの内側の感覚が鈍い。
L5神経根腰椎4番と5番の間(L4/5)足首や親指を反らす力が弱る(下垂足)。すねの外側〜親指の感覚。
S1神経根腰椎5番と仙骨の間(L5/S)つま先立ちができない。アキレス腱反射消失。足の外側〜小指の感覚。

痛みが消えても麻痺が残る「神経死」のリスク

最も注意が必要なのが、「激痛が治まったから治った」と勘違いしてしまうケースです。神経があまりに強く圧迫され続けると、痛みを感じる機能さえ失われ、代わりに麻痺(動かない・感じない)だけが残ることがあります。

痛みが軽くなったのに足に力が入らない状態は、治癒ではなく「神経死」に近い状態へ進行している恐れがあります。

このフェーズを見逃さないことが、後遺症を残さないために極めて大切です。痛みだけでなく「動き」や「感覚」に常に注意を払ってください。

本当にヘルニアだけが原因?似た症状を持つ他の病気との鑑別

腰やお尻の痛み、足のしびれを引き起こす病気は、椎間板ヘルニアだけではありません。診断基準においては、「ヘルニアではない他の病気」を確実に除外することが求められます。

もし診断が間違っていれば、ヘルニアの治療を続けても症状は良くなりません。医師は常に、症状が似ている別の疾患の可能性を頭に置きながら診察を行っています。

脊柱管狭窄症とは痛む姿勢で見分けます

腰部脊柱管狭窄症は、ヘルニアと並んで代表的な腰の病気です。ヘルニアが若い世代にも多いのに対し、狭窄症は主に中高年に多く見られます。最大の違いは、痛みが楽になる姿勢です。

ヘルニアは「前かがみ」で痛むことが多いですが、狭窄症は「後ろに反る」と痛みが強くなり、前かがみになると楽になります。

また、少し歩くと足が痛くて歩けなくなり、休むとまた歩けるようになる「間欠性跛行(かんけつせいはこう)」は、狭窄症の典型的な特徴です。MRI検査を行えば、神経の通り道自体が骨や靭帯で狭くなっている様子が確認でき、明確に区別できます。

ヘルニアと間違えやすい疾患リスト

  • 腰部脊柱管狭窄症:歩行で悪化し、しゃがむと楽になる。高齢者に多い。
  • 梨状筋症候群:お尻の筋肉による神経圧迫。腰の画像所見は正常。
  • 脊椎分離・すべり症:骨のズレや骨折が原因。レントゲンで判別可能。
  • 仙腸関節障害:骨盤のつなぎ目の炎症。産後の女性などにも多い。
  • 閉塞性動脈硬化症:足の血管が詰まる病気。足が冷たく、脈が触れにくい。

お尻の筋肉が原因の坐骨神経痛もあります

「梨状筋症候群」という病態も、ヘルニアとよく似た坐骨神経痛を引き起こします。これは、お尻の奥にある梨状筋という筋肉が硬くなり、その下を通る坐骨神経を締め付けることで起こります。

ヘルニアの検査で腰に異常がない場合や、お尻の特定の部分を押すと痛みが足に放散する場合に疑われます。この場合、腰の手術をしても意味がなく、お尻の筋肉を緩めるストレッチや注射が有効になります。

内臓の病気が腰痛の原因になることはありますか?

稀ですが見逃してはならないのが、内臓疾患や血管の病気です。例えば、腎結石や尿管結石は激しい腰背部痛を引き起こしますし、腹部大動脈瘤や閉塞性動脈硬化症といった血管の病気も、腰痛や足の痛みの原因となります。

これらは整形外科的な動作(体を動かすこと)で痛みが変化しないことが多く、安静にしていても痛む、脂汗が出るほどの痛み、といった特徴があります。こうしたサインがある場合は、内科や泌尿器科との連携が必要になります。

手術をするか、薬で様子を見るか?治療方針を決める重症度の境界線

診断がつき、重症度が判定された後、患者さんが最も悩むのは「手術が必要なのかどうか」という点でしょう。現在の整形外科のガイドラインでは、腰椎椎間板ヘルニアの多くは自然治癒や保存療法で改善することが分かっています。

そのため、いきなり手術を勧めることは少なく、まずは保存療法から始めるのが一般的です。しかし、中には「待ってはいけない」ケースも存在します。

保存療法で粘るべき期間と具体的な方法

痛みが強くても、麻痺(筋力低下)が進行しておらず、排尿障害もない場合は、基本的に保存療法が第一選択となります。

痛み止めとしては、一般的なNSAIDs(ロキソプロフェンなど)に加え、神経障害性疼痛治療薬(プレガバリンなど)が用いられます。

痛みが激しい場合には、神経の近くに麻酔薬を打つ「神経根ブロック注射」や「硬膜外ブロック注射」を行い、炎症を抑えながらヘルニアが自然に吸収されるのを待ちます。

一般的には、発症から3ヶ月程度が目安とされています。多くの患者さんはこの期間内に痛みが軽減し、日常生活に戻ることができます。焦って手術を決める必要はありませんが、漫然と続けるのではなく、定期的にMRIなどで再評価を行うことが大切です。

手術適応の判断ガイドライン

判断区分具体的な状態推奨される対応
緊急手術(絶対適応)排尿・排便障害がある(馬尾症候群)。足が全く動かない等の重度麻痺。48時間以内の手術が望ましい。躊躇せず専門医へ。
手術推奨(相対適応)3ヶ月以上の保存療法でも激痛が続く。筋力低下が徐々に進行している。医師と相談の上、手術を前向きに検討する。
保存療法継続痛みはあるが我慢できる範囲。筋力低下はない。発症から日が浅い。薬物療法やブロック注射を継続し、経過観察。

手術を検討すべき絶対的な基準

手術を強く推奨、あるいは緊急で行うべき「絶対的適応」があります。それは、先述した「馬尾症候群(排尿障害や重度の感覚脱失)」が出ている場合と、「進行する筋力低下」がある場合です。

これらは神経が壊死する寸前のサインであり、時間との勝負になります。

また、「保存療法を3ヶ月以上続けても、生活に支障が出るほどの激痛が治まらない」場合も、手術の適応となります。これを「相対的適応」と呼び、患者さんの社会的な事情(仕事に早く復帰したいなど)と合わせて決定します。

生活環境や仕事も判断基準になります

重症度の医学的な分類だけでなく、患者さんのライフスタイルも治療方針の決定に大きく影響します。

例えば、プロスポーツ選手や重労働に従事している方で、早期の復帰がどうしても必要な場合は、保存療法で数ヶ月待つよりも、内視鏡手術(MEDやPELD)などで早めに原因を取り除く選択をすることもあります。

逆に、デスクワークで痛みをコントロールしながら仕事ができる方なら、じっくり保存療法を続ける選択肢も有力です。医師と相談する際は、ご自身の生活背景や希望をしっかり伝えることが、満足のいく治療選択につながります。

自分でできるセルフチェックと医師に伝えるべき情報

正確な診断と重症度判定のためには、医師の検査だけでなく、患者さん自身の「気づき」と「伝え方」が鍵となります。

診察室という限られた時間の中で、ご自身の状態を的確に伝えるためのポイントを知っておくことで、診断の精度は格段に上がります。日々の生活の中でご自身の腰の状態を観察してみてください。

痛みの変化を記録することは役に立ちますか?

「いつから痛いか」だけでなく、「どんな時に痛みが強くなり、どんな時に楽になるか」という情報は、ヘルニアと他の疾患を見分ける上で非常に有益です。

「朝起きた時が一番痛い」「椅子に座って30分経つと痺れてくる」「お風呂に入ると楽になる」といった具体的なエピソードは、神経の圧迫状態や炎症の程度を推測する材料になります。

簡単なメモでも良いので、痛みのパターンを記録して診察時に持参することをお勧めします。

足の指の動きを自分で確認する方法

自宅でできる簡単な筋力チェックとして、「かかと歩き」と「つま先歩き」があります。

もし、かかと歩きをしようとしてもつま先が上がらずペタペタしてしまうならL4/L5の障害、つま先立ちができずカクンと落ちてしまうならS1の障害が疑われます。

また、足の甲や裏を左右触り比べて、感覚が薄い皮一枚挟んだように感じる場所がないか確認してください。こうした麻痺の兆候を早期に発見し医師に伝えることで、重症化する前に対策を打つことができます。

医師に伝えると診断がスムーズになる項目

  • 痛みが始まった具体的な時期ときっかけ(重いものを持った、など)
  • 痛みの種類(ズキズキ、ビリビリ、重だるい)
  • 過去に腰痛やヘルニアの既往歴があるか
  • 排尿や排便に異常を感じていないか
  • 現在服用している薬や、他院で行った治療内容

よくある質問

腰椎椎間板ヘルニアの診断基準でMRIは必須ですか?

確定診断にはMRIが必要です。レントゲンだけでは骨の状態しか分からず、軟骨である椎間板や神経の圧迫状況を正確に評価できないためです。

症状とMRI画像を照らし合わせることで初めて正確な診断が可能になります。

腰椎椎間板ヘルニアの重症度は痛みだけで決まりますか?

いいえ、痛みの強さと医学的な重症度は必ずしも一致しません。痛みが強くても神経麻痺がなければ軽症とされることもあります。

逆に痛みが少なくても足に力が入らない(麻痺がある)場合は重症と判断され、手術が検討されます。

腰椎椎間板ヘルニアの手術適応となる基準は何ですか?

絶対的な基準は「排尿障害(馬尾症候群)」と「進行する筋力低下」です。これらは緊急性が高い状態です。

また、保存療法を3ヶ月以上続けても生活に支障が出るほどの痛みが改善しない場合も、手術の適応基準となります。

腰椎椎間板ヘルニアの自然治癒の可能性はありますか?

はい、高い確率で自然治癒(縮小・消失)が期待できます。特にヘルニアが大きく飛び出しているタイプ(脱出型・遊離型)ほど、免疫細胞の働きで吸収されやすい傾向があります。

そのため、麻痺がなければまずは保存療法を行うのが一般的です。

診断書における腰椎椎間板ヘルニアの記載内容は?

診断書には通常、病名(腰椎椎間板ヘルニア)、症状の程度、療養を要する期間の見込みが記載されます。

職場への提出などで具体的な重症度分類の記載が必要な場合は、医師にあらかじめ相談して、必要な情報を記載してもらうようにしてください。

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Author

北城 雅照

医療法人社団円徳 理事長
医師・医学博士、経営心理士

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