変形性股関節症の治し方|手術しないで改善する方法
変形性股関節症と診断されたとき、多くの方が「もう手術しかないのだろうか」と不安を感じるのではないでしょうか。たしかに進行度によっては手術が選択肢に入りますが、初期から中期であれば運動療法や生活習慣の見直しで痛みを軽くし、日常動作を取り戻せるケースは少なくありません。
この記事では、整形外科の保存療法を軸に、自宅でできるリハビリや体重管理、痛みとの付き合い方まで幅広く解説しています。手術を回避したい方、まずは保存的な治療を試してみたい方に向けて、医学的根拠にもとづいた情報をわかりやすくお届けします。
目次
変形性股関節症はなぜ痛む?軟骨がすり減るしくみと初期症状を見逃さないために
変形性股関節症の痛みは、関節のクッション役である軟骨が徐々にすり減ることで起こります。軟骨そのものには神経が通っていませんが、すり減りが進むと骨同士がぶつかり、関節包や周囲の組織に炎症が広がって痛みを生じさせます。
初期の段階で気づいて対処すれば、症状の進行を大幅に遅らせることも可能です。まずは原因と初期サインを正しくつかんでおきましょう。
股関節の軟骨がすり減る原因は加齢だけではない
「歳をとったから仕方ない」と思い込んでいる方は多いかもしれません。たしかに加齢は要因の一つですが、それだけではありません。
日本人に多い臼蓋形成不全(きゅうがいけいせいふぜん)のように、もともと股関節の受け皿が浅い骨格を持っている方は、若い年代でも軟骨への負荷が偏りやすくなります。肥満による体重過多や、長年のスポーツによる反復負荷も原因として挙げられるでしょう。
遺伝的な素因が影響するケースも報告されており、家族に股関節の病気を持つ方がいる場合は、早めに整形外科で画像検査を受けておくと安心です。
「歩き始めの違和感」や「あぐらがかけない」は初期サイン
変形性股関節症の初期症状は、激痛というよりも「なんとなく動かしにくい」「長時間歩いたあとに鈍い痛みが出る」といった軽い違和感から始まります。朝の起き上がりで股関節がこわばる、あぐらをかこうとすると引っかかる感覚がある場合は要注意です。
この時期に気づいて対応を始められるかどうかが、その後の経過に大きく影響します。痛みが軽いうちに受診して、レントゲンやMRIで関節の状態を確認してもらいましょう。
変形性股関節症の進行度と代表的な症状
| 進行度 | 関節の状態 | 主な自覚症状 |
|---|---|---|
| 前期 | 軟骨は正常だが骨格に不利な形状あり | ほぼ無症状、たまに違和感 |
| 初期 | 軟骨が薄くなり始める | 歩き始めの痛み、動かしにくさ |
| 進行期 | 軟骨の摩耗が進み関節の隙間が狭くなる | 歩行時・階段昇降時の持続的な痛み |
| 末期 | 軟骨がほぼ消失し骨同士が接触 | 安静時にも痛み、歩行困難 |
放置すると日常生活はどこまで制限されるのか
変形性股関節症を放置すると、痛みをかばって反対の脚や腰に過剰な負担がかかり、体全体のバランスが崩れていきます。脚の長さに左右差が出て跛行(はこう・足を引きずる歩き方)になることもあるでしょう。
進行期以降は買い物や家事など日常の動作がつらくなり、外出を避けるようになる方も珍しくありません。活動量が減れば筋力低下が加速し、さらに症状が悪化するという負のループに陥ります。だからこそ、早い段階で正しい対策をとることが大切です。
変形性股関節症を手術しないで治すために整形外科で受けられる保存療法とは
手術を回避したい方がまず頼るべきは、整形外科で行われる保存療法です。保存療法とは、メスを入れずに症状の改善を図る治療全般を指し、薬物療法・注射・リハビリテーションなど複数の手段を組み合わせて進めます。
痛み止めや消炎剤による薬物療法で炎症を抑える
医師がまず検討するのは、非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)の処方です。ロキソプロフェンやセレコキシブといった薬が代表的で、関節内の炎症を抑えることで痛みを和らげます。
ただし、長期服用は胃腸障害や腎機能への影響があるため、医師の指示した用量と期間を守ることが前提です。外用薬(湿布や塗り薬)を併用すれば、内服量を減らしながら局所的に炎症を抑えられるでしょう。
ヒアルロン酸注射で関節の滑りを改善する
膝関節では一般的なヒアルロン酸注射ですが、股関節にも行われるケースがあります。ヒアルロン酸はもともと関節液に含まれる成分で、注入すると関節面の摩擦を減らし、痛みの軽減が期待できます。
股関節は体の深い位置にあるため、超音波ガイド下で正確に注射する技術が求められます。効果には個人差がありますが、1~2週間おきに数回注射し、数か月にわたって痛みが緩和される方もいます。
リハビリテーションは保存療法の柱になる
保存療法のなかで中軸を担うのがリハビリテーションです。理学療法士の指導のもと、関節に過度な負荷をかけずに周囲の筋力を強化し、関節の安定性を高めるプログラムを行います。
股関節周囲の筋肉、とくに中殿筋(ちゅうでんきん)や大腿四頭筋(だいたいしとうきん)をバランスよく鍛えることで、軟骨への直接的な負担を分散できます。リハビリは即効性というよりも、継続することで確実に効果が積み上がる治療法です。
| 保存療法の種類 | 主な効果 | 注意点 |
|---|---|---|
| 薬物療法(内服・外用) | 炎症と痛みの軽減 | 長期使用は副作用リスクあり |
| ヒアルロン酸注射 | 関節の潤滑性向上 | 超音波ガイド下の技術が必要 |
| リハビリテーション | 筋力強化・関節安定 | 継続が前提、自己流は逆効果になりうる |
| 物理療法(温熱・電気刺激) | 血行促進・痛みの緩和 | 単独では効果が限定的 |
自宅でできる変形性股関節症のリハビリと筋力トレーニング|やり方を間違えると悪化する
通院リハビリに加えて自宅でも運動を続けることが、症状改善の鍵を握ります。ただし、やみくもに股関節を動かすと逆に炎症を強めてしまうため、正しい方法を守ることが大前提です。
股関節に優しい「水中ウォーキング」と「仰向けトレーニング」から始めよう
自宅やプールで取り組みやすい運動として、水中ウォーキングがあります。水の浮力が体重を支えてくれるため、股関節への負荷を大幅にカットしながら筋力を鍛えられます。
プールに通うのが難しい方は、仰向けに寝た状態で行う運動から始めましょう。たとえば、仰向けで片脚ずつゆっくり持ち上げる「脚上げ運動」は、自分の体重が股関節にかからないため安全性が高い方法です。
中殿筋を鍛える横向きエクササイズで歩行を安定させる
歩行時に骨盤が左右にぶれる方は、中殿筋の筋力不足が疑われます。横向きに寝て上側の脚をゆっくり持ち上げる「サイドレッグレイズ」は、中殿筋をピンポイントで刺激できる定番エクササイズです。
1セット10~15回を目安に、朝と夜の1日2回行うのが理想的でしょう。痛みが出た場合は無理をせず回数を減らし、主治医や理学療法士に相談してください。
自宅トレーニングの種類と対象筋肉
| エクササイズ名 | 鍛えられる筋肉 | 回数の目安 |
|---|---|---|
| 仰向け脚上げ | 大腿四頭筋・腸腰筋 | 左右各10~15回×2セット |
| サイドレッグレイズ | 中殿筋 | 左右各10~15回×2セット |
| ブリッジ(お尻上げ) | 大殿筋・ハムストリングス | 10~15回×2セット |
| クラムシェル | 中殿筋・外旋筋群 | 左右各10回×2セット |
ストレッチは「伸ばしすぎない」が鉄則
筋トレと並んで取り入れたいのがストレッチですが、変形性股関節症の方は関節の可動域に制限がある場合が多く、無理に伸ばすと炎症を悪化させてしまいます。
目安は「気持ちいい」と感じる手前まで。痛みを我慢してグイグイ押し込むような伸ばし方は厳禁です。お風呂上がりの体が温まった状態で、1回15~20秒のゆっくりとした静的ストレッチを行うと効果的でしょう。
やってはいけない運動と避けるべき動作
ジョギングやジャンプなど股関節に大きな衝撃が加わる運動は、軟骨のすり減りを加速させるため避けたほうが賢明です。あぐらや正座など股関節を深く曲げる姿勢も、関節面の圧力が高まるため注意が必要でしょう。
和式トイレの使用や、低い椅子からの立ち上がり動作も負荷が大きい動作に含まれます。日常のなかで「股関節に負担がかかる動作を減らす」という意識を持つだけでも、症状の進行抑制につながります。
体重管理が変形性股関節症の治し方の土台になる|1kg減量で股関節の負担は3kg軽くなる
体重と股関節への負担には明確な相関があります。歩行時には体重の約3~4倍の荷重が股関節にかかるとされており、体重を1kg減らすだけで股関節への負荷は3~4kg軽減される計算です。食事と運動の両面から体重をコントロールすることが、治療効果を底上げします。
股関節への負荷を数字で実感してみよう
体重70kgの方が普通に歩いている場合、股関節にかかる力はおよそ210~280kgにもなるといわれています。階段の昇り降りではさらに大きな力がかかるため、肥満傾向にある方が「歩くだけで痛い」と感じるのは当然のことでしょう。
逆にいえば、適正体重に近づくほど関節への負荷は確実に下がります。5kg減量すれば15~20kgもの負担軽減になり、痛みの改善を実感しやすくなるはずです。
極端な食事制限は逆効果になる
早く痩せたいからと炭水化物を極端にカットしたり、1日1食にしたりするのは逆効果です。筋肉を維持するにはたんぱく質が欠かせませんし、カルシウムやビタミンDなど骨を支える栄養素が不足すれば骨そのものが弱くなる恐れがあります。
1か月に体重の1~2%を目安にゆるやかに落とすのが、筋肉量を保ちながら脂肪を減らす健全なペースです。管理栄養士に相談し、個人に合った食事プランを立ててもらうのも一つの手でしょう。
有酸素運動は「関節に優しい種目」を選ぶ
ダイエットのための運動としておすすめなのは、水泳やエアロバイクなど関節への衝撃が少ない有酸素運動です。エアロバイクはサドルに体重を預けられるため、股関節にかかる荷重を大幅に軽減しながらカロリーを消費できます。
1回20~30分を週3回以上行うことで、脂肪燃焼効果が高まるでしょう。運動中に股関節に痛みが出る場合は無理をせず、負荷設定を下げるか種目を変更してください。
| 運動種目 | 股関節への負荷 | 消費カロリーの目安 |
|---|---|---|
| 水中ウォーキング | 低い | 約150~250kcal/30分 |
| エアロバイク | 低い | 約150~200kcal/30分 |
| ウォーキング(平地) | 中程度 | 約100~150kcal/30分 |
| ジョギング | 高い(非推奨) | 約200~300kcal/30分 |
日常生活を工夫するだけで股関節の痛みはぐっと和らぐ
治療や運動だけでなく、毎日の生活のなかに潜む股関節への負担を減らすだけでも、痛みを軽くすることは十分に可能です。ちょっとした道具の活用や動作の工夫が、長い目で見たときに大きな差を生みます。
杖やインソールを味方につけて歩行の負担を減らそう
痛みがある側の反対の手で杖を使うと、股関節にかかる力を約20~30%軽減できるというデータがあります。「杖を使うのは恥ずかしい」と抵抗を感じる方もいるかもしれませんが、症状の悪化を防ぐ手段と考えれば積極的に活用する価値は大きいでしょう。
靴のなかに入れるインソール(中敷き)も効果的です。足底のアーチを適切にサポートすることで、歩行時の衝撃吸収力が高まり、股関節への振動が軽くなります。
和式の生活様式から洋式に切り替えると関節の負担は激減する
畳に座る生活、布団の上げ下ろし、和式トイレといった和式の動作は、股関節を深く曲げる場面が多く、関節面への圧力が非常に高くなります。可能な範囲で椅子やベッド、洋式トイレへの切り替えを検討してみてください。
台所の作業も、低い流し台で中腰を続けるより、高さの合った台を使って立ったまま行うほうが股関節に優しい環境をつくれます。
生活動作別の股関節への負担度
| 動作 | 負担度 | 工夫のポイント |
|---|---|---|
| 正座・あぐら | 非常に高い | 椅子に座る生活へ移行 |
| 布団の上げ下ろし | 高い | ベッドに変更 |
| 和式トイレ | 高い | 洋式トイレに改修 |
| 低い椅子からの立ち上がり | 中~高 | 座面を高くするクッションを使用 |
入浴と睡眠で痛みの回復力を底上げする
38~40度のぬるめのお湯にゆっくり浸かると、血流が促進されて関節周囲の筋肉がほぐれ、痛みが和らぎます。熱すぎるお湯は炎症が強い時期には逆効果になるため、自分の症状に合わせて温度を調整しましょう。
質の良い睡眠も痛みのコントロールに欠かせない要素です。横向きで寝るときは、両膝の間にクッションを挟むと股関節がニュートラルな角度に保たれ、朝のこわばりが軽減されやすくなります。
外出先で使える痛み軽減の小さな工夫
長時間歩く予定があるときは、途中で座れるベンチの場所をあらかじめ確認しておくと安心です。15~20分ごとに短い休憩を入れるだけでも、股関節の疲労蓄積をかなり抑えられます。
重い荷物はキャリーバッグに切り替える、エスカレーターやエレベーターを優先的に使う、といった小さな選択の積み重ねが、1日の終わりの痛みの強さを大きく左右するでしょう。
変形性股関節症で「手術が必要」と言われても焦らなくていい理由
医師から「そろそろ手術を考えましょう」と告げられると、大きなショックを受ける方がほとんどです。しかし、手術の提案は必ずしも「今すぐ受けなければ取り返しがつかない」という意味ではありません。保存療法で症状をコントロールしながら、タイミングを見極めていくことができます。
保存療法と手術のどちらを選ぶかは患者自身が決められる
手術を受けるかどうかの最終判断は、患者さん自身にあります。医師は画像所見や症状の程度から手術の適応を提示しますが、「まだ保存療法を続けたい」という意思が尊重されるのが原則です。
主治医だけでなく、別の医療機関でセカンドオピニオンを受けることも推奨されます。複数の医師の見解を聞いたうえで、自分の生活スタイルや価値観に合った選択をすることが後悔しないコツです。
手術を先延ばしにしても問題ないケースと、急いだほうがいいケース
痛みがあっても日常生活を送れている方、保存療法で症状が安定している方は、手術を先延ばしにしても大きなリスクはありません。経過観察を続けながら、定期的にレントゲンで関節の状態を確認していけばよいでしょう。
一方で、夜間の安静時にも強い痛みがある、歩行距離が極端に短くなった、左右の脚の長さに大きな差が生じているといった場合は、早めの手術が関節機能の温存につながることもあります。
人工股関節置換術の耐用年数は約20~30年に伸びている
人工股関節の素材や技術は年々向上しており、現在では20~30年程度もつとされています。かつては「若いうちに入れると再手術が必要になる」と言われていましたが、素材の進歩によってそのリスクは以前より小さくなりました。
そうはいっても、一度入れた人工関節に寿命があることは事実です。主治医とよく話し合い、ご自身の年齢や活動量を踏まえて、手術のタイミングを慎重に検討してください。
| 判断のポイント | 保存療法を続ける目安 | 手術を前向きに検討する目安 |
|---|---|---|
| 痛みの程度 | 歩行時に痛むが生活は可能 | 安静時にも強い痛みがある |
| 歩行距離 | 30分以上の連続歩行が可能 | 10分未満で休憩が必要 |
| 画像所見 | 関節裂隙がある程度残っている | 関節裂隙がほぼ消失 |
| 日常生活の支障 | 工夫すれば自立した生活が可能 | 介助や補助具なしでは困難 |
変形性股関節症と上手に付き合い続けるための心構えと受診のコツ
変形性股関節症は慢性疾患であり、短期間で「完全に治る」というよりも、症状をうまくコントロールしながら生活の質を維持していくことが目標になります。焦らず、正しい知識に裏づけられた行動を積み重ねることが大切です。
痛みの記録をつけると主治医への説明がスムーズになる
日々の痛みの強さ、痛みが出るタイミング、どんな動作のあとに悪化したかをメモしておくと、受診時に医師へ正確に伝えやすくなります。スマートフォンのメモ帳アプリでも十分ですし、10段階で痛みを数値化する方法もよく使われています。
- 痛みの強さ(10段階)と時間帯
- 痛みのきっかけ(歩行、階段、起床時など)
- 服薬の有無とその後の変化
- 運動内容と実施時間
「良くなったからもう大丈夫」と自己判断で治療を中断しない
保存療法で痛みが落ち着いてくると、「もう治った」と自己判断して通院やリハビリをやめてしまう方がいます。しかし、症状が改善したのは治療を続けているからであり、中断すると数週間~数か月で元の痛みが戻るケースは珍しくありません。
主治医と相談のうえ、通院頻度やリハビリの内容を段階的に調整しながら、長期的な管理を続けていきましょう。自宅でのセルフケアを定着させることも、再発予防に直結します。
信頼できる医療機関の選び方
股関節の専門外来を設けている病院や、人工関節手術の実績が豊富な施設は、保存療法の段階から質の高いリハビリプログラムを提供していることが多い傾向にあります。
日本整形外科学会の専門医が在籍しているかどうかも一つの目安になるでしょう。通いやすさとの兼ね合いも大事ですが、初診だけでも専門性の高い施設を受診して方針を確認しておくと安心感が違います。
家族の理解と協力が回復を後押しする
変形性股関節症は外見からはわかりにくい病気です。「大げさに痛がっている」と周囲に誤解されることもあり、精神的に孤立してしまう方がいます。
家族に病気の状態や治療の方針を共有し、重い荷物の持ち運びや家事の分担などで協力を得られると、身体的にも精神的にも余裕が生まれます。一人で抱え込まず、周囲の力を借りることも治療の一部だと考えてみてください。
よくある質問
変形性股関節症は運動療法だけで痛みをなくせる?
運動療法は変形性股関節症の保存療法のなかで中心的な役割を果たしますが、「痛みを完全にゼロにする」ことを保証するものではありません。初期~進行期であれば、継続的な筋力トレーニングやストレッチによって痛みが大幅に軽減し、日常生活に支障がない状態まで改善する方は多くいます。
ただし、進行度や軟骨の残存量によって効果には差があるため、運動療法だけに頼るのではなく、薬物療法や体重管理などを組み合わせた総合的なアプローチが望ましいでしょう。主治医や理学療法士と連携しながら取り組むことが大切です。
変形性股関節症にサプリメントのグルコサミンやコンドロイチンは効果がある?
グルコサミンやコンドロイチンのサプリメントは市販品として広く出回っていますが、変形性股関節症に対する科学的な有効性については、研究ごとに結果が分かれています。一部の臨床試験では軽度の痛み改善が報告される一方で、プラセボ(偽薬)と差がなかったとする大規模研究も複数存在します。
現時点で日本整形外科学会のガイドラインでは、積極的に推奨されていない状況です。サプリメントに過度な期待を寄せるよりも、運動療法や体重管理といった科学的根拠の確立された方法を優先し、サプリメントの使用については主治医に相談してから判断することをおすすめします。
変形性股関節症がある場合、どのような寝方をすれば痛みが和らぐ?
変形性股関節症の方は、横向きで寝るときに両膝の間にクッションや枕を挟むと、股関節が自然な角度で保たれて痛みが出にくくなります。仰向けで寝る場合は、膝の下にタオルを丸めて入れると腰と股関節の負担を軽減できるでしょう。
避けたほうがいいのは、痛みのある側を下にした横向き寝です。体重が直接かかるため、朝起きたときに痛みやこわばりが強まりやすくなります。マットレスの硬さも影響するため、柔らかすぎず体を適度に支えてくれるものを選ぶと、寝返りがしやすくなって夜間の痛みが減ることがあります。
変形性股関節症で痛みが強いとき、温めるのと冷やすのはどちらが正しい?
急性期の炎症が強く腫れや熱感を伴っている場合は、患部を冷やすことで炎症を鎮める効果が期待できます。氷嚢やアイスパックをタオルで包み、15~20分程度あてるのが一般的な方法です。
一方、慢性的な鈍い痛みやこわばりが中心の場合は、温めたほうが血流を促進して筋肉の緊張をほぐしやすくなります。入浴やホットパックを活用するとよいでしょう。どちらが適切か迷う場合は自己判断せず、主治医に症状を伝えて指示を仰ぐのが安全です。
変形性股関節症の進行を止めることは本当にできる?
残念ながら、現在の医学では変形性股関節症の進行を「完全に止める」治療法は確立されていません。軟骨が一度すり減ると、自然に再生することは極めて困難です。
しかし、進行のスピードを大幅に遅らせることは十分に可能です。体重管理で関節への負荷を減らし、運動療法で周囲の筋力を維持し、日常生活の動作を見直すことで、軟骨への過度なストレスを防ぎます。早期に対策を始めた方ほど、手術を必要としない期間を長く保てる傾向にあります。定期的な受診で経過を観察しながら、地道にケアを続けていくことが何より大切です。
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