腰椎圧迫骨折の予防|骨粗しょう症との関連
いつまでも自分の足で歩き、好きな場所へ出かけたいと願うあなたへ。腰の痛みや背中の曲がりは、単なる年齢のせいではありません。腰椎圧迫骨折は、骨の強度が低下する骨粗しょう症と密接に関わっており、気づかないうちに進行していることがあります。
しかし、過度に恐れる必要はありません。日々の食事やちょっとした動作の見直し、そして適切な運動習慣によって、骨を守り、骨折のリスクを遠ざけることは十分に可能です。この記事では、今日から始められる具体的な予防策をわかりやすくお伝えします。
目次
なぜ腰椎圧迫骨折は起こるのか?骨粗しょう症との深い関係を紐解きます
腰椎圧迫骨折を防ぐためには、まずその根本的な原因を知ることが大切です。多くの人が「重いものを持った瞬間」や「転んだ時」に骨折すると考えがちですが、実はもっと静かに、そして日常の何気ない動作の中で発症することがあります。
ここでは、骨の強度がどのように骨折リスクに影響しているのか、その背景にある骨粗しょう症との密接なつながりについて解説します。自分の骨の状態を正しく知ることで、適切な予防策が見えてくるはずです。
骨密度が低下すると腰椎は空洞化した積み木のように脆くなります
私たちの背骨、特に腰の部分にある「腰椎」は、上半身の体重を支える大黒柱のような役割を果たしています。健康な骨であれば、多少の衝撃や重さが加わっても、その強固な構造で持ちこたえることができます。
しかし、骨粗しょう症によって骨密度が低下すると、骨の内部構造がヘチマやスポンジのようにスカスカの状態になってしまいます。こうなると、腰椎は本来の強度を失い、外部からの圧力に耐えられなくなります。
イメージしてみてください。中身の詰まった積み木は頑丈ですが、空洞だらけの箱は上から押すと簡単にクシャッと潰れてしまいます。これが腰椎圧迫骨折のメカニズムです。
骨がもろくなっているため、転倒などの大きな事故がなくても、自分の体重や日常の動作による負荷だけで、椎体(背骨の本体部分)が押しつぶされるように変形してしまうのです。
くしゃみや咳などの些細な衝撃でも骨折するリスクがあります
驚かれるかもしれませんが、骨粗しょう症が進行している場合、くしゃみや咳といった生理現象だけで腰椎圧迫骨折を起こすことは珍しくありません。これらの動作は、一瞬のうちに腹圧を高め、背骨に対して急激な衝撃を与えます。
健康な人にとっては些細な衝撃でも、強度が著しく低下した腰椎にとっては、耐え難い負荷となってしまうのです。「いつ骨折したのかわからない」というケースも多く見られます。
骨強度に影響を与える主な要因
| 要因 | 内容 | 骨への影響 |
|---|---|---|
| 加齢による代謝変化 | 骨形成と骨吸収のバランス崩壊 | 骨密度が自然と低下し、脆くなる |
| 栄養吸収力の低下 | 腸管機能の衰え | カルシウム等の材料不足になる |
| 運動不足 | 骨への物理的刺激の減少 | 骨を強くしようとする働きが弱まる |
これを「いつの間にか骨折」と呼ぶことがありますが、強烈な痛みを感じないまま徐々に腰椎が潰れていくパターンです。背中が丸くなってきた、身長が縮んできたと感じる場合、すでに目に見えないレベルで微細な骨折が積み重なっている可能性があります。
日々の生活動作が骨折の引き金になり得るという事実を、まずは正しく認識することが予防の第一歩となります。ちょっとした異変を見逃さない姿勢が大切です。
加齢による代謝の変化が骨強度を低下させる主な原因です
骨は一度作られたらそのまま変わらないコンクリートのようなものではありません。実は、私たちの体の中では毎日、古い骨を壊し(骨吸収)、新しい骨を作る(骨形成)という代謝が繰り返されています。
これを「骨代謝」と呼びます。若い頃はこのバランスが保たれていますが、加齢とともにこのサイクルが崩れていきます。特に年齢を重ねると、新しい骨を作るスピードが、骨を壊すスピードに追いつかなくなります。
その結果、骨の量が徐々に減少し、質も劣化していきます。さらに、腸からのカルシウム吸収能力が落ちたり、骨を作るのに必要なビタミンDの合成能力が低下したりすることも要因です。誰にでも訪れる体の変化ですが、このスピードをいかに緩やかにするかが、腰椎を守る鍵となります。
あなたは大丈夫ですか?腰椎圧迫骨折のリスクが高い人の特徴
腰椎圧迫骨折は誰にでも起こり得ますが、特に警戒が必要な方がいます。「自分はまだ元気だから」と思っていても、体の中ではリスクが高まっているかもしれません。
ご自身の状況と照らし合わせながら、予防への意識を高めるきっかけにしてください。性別や生活習慣、過去の病歴など、多角的な視点でリスク要因を見ていきましょう。
閉経後の女性はホルモンバランスの変化に警戒が必要です
統計的に見ても、骨粗しょう症および腰椎圧迫骨折は圧倒的に女性に多い疾患です。その最大の理由は「閉経」にあります。女性ホルモンの一種である「エストロゲン」には、骨からカルシウムが溶け出すのを防ぐ重要な働きがあります。
しかし、閉経を迎えるとエストロゲンの分泌が急激に減少します。エストロゲンという守り神がいなくなることで、骨吸収(骨を壊す働き)が加速し、骨密度が一気に低下してしまいます。
この時期に適切な対策を取らないと、ほんの数年で骨がスカスカになってしまうこともあります。閉経を迎えた女性にとって、骨のケアは美容と同じくらい、あるいはそれ以上に気を使うべき大切な習慣なのです。
若い頃の無理なダイエットが将来の骨に悪影響を及ぼします
「若い頃は細くてスタイルが良かった」という方でも、それが無理なダイエットによるものであった場合、将来的な腰椎圧迫骨折のリスク要因となります。10代から20代は、一生の中で最大骨量を獲得する重要な時期です。
この時期に栄養不足や極端な体重制限を行うと、骨の貯金(最大骨量)を十分に増やせないまま年齢を重ねることになります。骨の貯金が少ない状態で加齢による減少が始まれば、当然ながら骨粗しょう症のラインを割る時期も早まります。
注意すべきリスク要因と対策のヒント
| リスク分類 | 具体的な特徴 | 推奨される対策 |
|---|---|---|
| 性別・年齢 | 閉経後の女性、70歳以上 | 定期的な骨密度検査を受ける |
| 体型・生活歴 | 痩せ型、若い頃の過度なダイエット | 栄養バランスの見直しと体重管理 |
| 既往歴・服薬 | 糖尿病、ステロイド薬の長期服用 | 主治医と骨への影響について相談 |
また、現在進行形で痩せすぎ(低体重)の方も注意が必要です。体重は骨にかかる適度な負荷となり、骨を強くする刺激になりますが、痩せすぎているとその刺激が弱く、骨が弱くなりやすい傾向にあります。
ステロイド薬の使用や生活習慣病も骨質劣化の要因となります
持病の治療薬や他の病気が、骨の強度に悪影響を与えることがあります。代表的なのが「ステロイド薬」の長期服用です。ステロイドは炎症を抑える優れた薬ですが、副作用として骨形成を抑制し、腸管からのカルシウム吸収を妨げる作用があります。
これを「ステロイド性骨粗しょう症」と呼び、一般的な骨粗しょう症よりも骨折リスクが高いとされています。また、糖尿病や慢性腎臓病などの生活習慣病も骨質を劣化させることがわかっています。
これらの病気がある方は、単に血糖値や腎機能を管理するだけでなく、「骨の状態」にも目を向ける必要があります。喫煙や過度の飲酒も、カルシウムの吸収を妨げ、骨を作る細胞の働きを弱めるため、生活習慣全体の見直しが求められます。
毎日の動作に潜む危険!腰椎を守るための安全な動作テクニック
骨が弱くなっている方にとって、日常の何気ない動作一つ一つが腰椎への大きな負担となります。しかし、過度に恐れて動かなくなるのも良くありません。
大切なのは「どのような姿勢が危険か」を知り、「安全な体の使い方」を身につけることです。ここでは、腰椎圧迫骨折を防ぐための具体的な動作の工夫について解説します。
重い荷物は膝を使って持ち上げることが鉄則です
床にある荷物を持ち上げようとして、膝を伸ばしたまま腰だけを曲げて(前屈姿勢で)持ち上げる動作は、腰椎にとって最も危険な行為の一つです。この姿勢では、荷物の重さと上半身の重さがテコの原理で腰椎の一点に集中し、強烈な圧力がかかります。
これが圧迫骨折の直接的な原因になることが多々あります。重いものを持つときは、面倒でも必ず一度しゃがみ込み、荷物を体にできるだけ近づけてから、足の力を使って立ち上がるようにしましょう。
「腰で持つ」のではなく「脚で持つ」意識です。また、そもそも重いものは無理して持たない、小分けにして運ぶ、台車を使うといった工夫も、腰椎を守るためには賢明な選択です。
洗顔や家事では腰を曲げずに膝や道具を活用しましょう
洗顔時の中腰姿勢や、掃除機をかける際の前かがみの姿勢も、長時間続くと腰椎への持続的な圧迫となります。特に朝起きた直後は、椎間板が水分を含んで膨らんでおり、腰への負担がかかりやすい時間帯でもあります。
洗顔の際は、膝を少し曲げて腰の高さを調整するか、片足を低い台に乗せることで腰への負担を分散させることができます。掃除機をかける際も、柄を短く持って前かがみになるのではなく、柄を長くして背筋を伸ばした状態で、体全体を使って動かすようにしましょう。
日常動作の危険パターンと安全な代替動作
| 場面 | 避けるべき危険な動作 | 腰椎を守る安全な動作 |
|---|---|---|
| 荷物を持つ | 膝を伸ばしたまま前屈みで持つ | しゃがんで荷物を体に寄せ、足で立つ |
| 洗顔・家事 | 中腰姿勢を長時間続ける | 膝を曲げる、台を使う、背筋を伸ばす |
| 起床時 | 仰向けから急激に起き上がる | 横向きになり、手をついてゆっくり起きる |
草むしりや拭き掃除など、床に近い作業をする際も、高い椅子を使ったり、頻繁に姿勢を変えたりして、同じ前屈みの姿勢を続けないことが重要です。道具を工夫して使うことで、腰への負担を劇的に減らすことができます。
椅子からの立ち上がりや寝返りはゆっくりと丁寧に行います
動作の「初動」は意外と負荷がかかります。椅子から勢いよく立ち上がったり、体をひねりながら起き上がったりする動作は、弱った腰椎にねじれの力と圧迫力を同時に与えてしまいます。
立ち上がる際は、まず足を手前に引き、手すりや膝に手をついて、お辞儀をするように重心を前に移動させてからゆっくりと立ち上がりましょう。ベッドから起き上がる時も同様です。
仰向けのまま腹筋の力だけでガバッと起きるのではなく、一度横向きになり、足をベッドから下ろしてから、腕の力を使って上半身を起こすようにします。これらの「丁寧な動作」を習慣化することで、腰椎への衝撃を最小限に抑えることができます。
強い骨を作る食事術|カルシウムに加えるべき相棒の栄養素
「骨にはカルシウム」というのは常識ですが、実はカルシウムを摂るだけでは、骨粗しょう症を十分に防ぐことはできません。摂取したカルシウムを効率よく吸収し、骨に定着させるためには、相棒となる栄養素が必要です。
毎日の食卓を見直し、腰椎を内側から強くするための栄養戦略について考えていきましょう。バランスの良い食事が、骨の健康を守る土台となります。
カルシウムの吸収率を高めるビタミンDは必須です
カルシウムは体への吸収率が非常に悪い栄養素の一つです。せっかく牛乳や小魚をたくさん食べても、ビタミンDが不足していると、その多くは吸収されずに体外へ排出されてしまいます。
ビタミンDは、腸管からのカルシウム吸収を促進し、血液中のカルシウム濃度を保つために働きます。ビタミンDは鮭やサンマ、カレイなどの魚類や、干し椎茸などのキノコ類に多く含まれています。
また、食事だけでなく、日光(紫外線)を浴びることで皮膚でも合成されます。過度な紫外線対策をしているとビタミンD不足になりがちですので、適度な日光浴と食事の組み合わせが大切です。
骨の形成を助けるビタミンKとマグネシウムも忘れずに
吸収されたカルシウムを骨に取り込み、骨からカルシウムが溶け出すのを防ぐ役割を担っているのがビタミンKです。言わば、骨という建物を作る際の接着剤のような役割を果たしています。
ビタミンKが不足すると、骨密度が低下しやすくなり、骨折のリスクが高まることが知られています。納豆や小松菜、ブロッコリーなどの緑黄色野菜に豊富に含まれています。
骨を強くするために積極的に摂りたい食品リスト
| 栄養素 | 主な働き | 多く含む食品 |
|---|---|---|
| カルシウム | 骨の主成分となる | 牛乳、乳製品、小魚、大豆製品 |
| ビタミンD | カルシウムの吸収を助ける | 鮭、サンマ、干し椎茸、キクラゲ |
| ビタミンK | 骨への定着を促す | 納豆、小松菜、ほうれん草、海藻 |
さらに、マグネシウムも重要です。マグネシウムは骨の弾力性を保つ働きがあり、不足すると骨がもろくなります。アーモンドなどのナッツ類、海藻、大豆製品に多く含まれています。
一方、リン(加工食品やスナック菓子に多い)の過剰摂取はカルシウムの排泄を促してしまうため、インスタント食品の食べ過ぎには注意が必要です。
高齢者が不足しがちなタンパク質は骨のコラーゲンになります
骨というとミネラルの塊というイメージがありますが、実は骨の体積の約半分はコラーゲンというタンパク質でできています。鉄筋コンクリートの建物に例えると、カルシウムがコンクリートで、コラーゲン(タンパク質)が鉄筋にあたります。
鉄筋がしっかりしていないと、いくらコンクリートを固めても脆い建物になってしまいます。高齢になると食が細くなり、肉や魚を敬遠しがちですが、タンパク質不足は骨質の低下に直結します。
また、タンパク質は骨を支える筋肉の材料でもあります。筋肉が衰えると転倒リスクが高まるため、骨折予防の観点からも、肉、魚、卵、大豆製品などから良質なタンパク質を毎食しっかり摂ることが必要です。
無理なく続く運動習慣|腰椎を支える筋肉を育てましょう
運動は骨に刺激を与えて強くすると同時に、腰椎を支える天然のコルセットである「筋肉」を維持するために大切です。「運動」と聞くとジム通いや激しいスポーツを想像するかもしれませんが、腰椎圧迫骨折の予防には、自宅でできる安全で穏やかな運動の方が効果的で継続しやすいものです。
ここでは、腰に負担をかけずにできる運動を紹介します。継続こそが力なり、です。
背筋を鍛えることで猫背を防ぎ圧迫骨折を予防します
腰椎圧迫骨折は、背骨の前側が潰れることで背中が丸くなる(円背)変形を招きます。逆に、背中が丸まっていると、常に腰椎の前側に圧力がかかり続け、骨折のリスクが高まります。
この悪循環を断ち切るために必要なのが「背筋」の力です。背筋を鍛えることで、重力に抗って上体を起こし、良い姿勢を保つサポートができます。ただし、無理に体を反らすような激しい背筋運動は逆効果になりかねません。
うつ伏せになり、お腹の下に枕を入れて、頭と胸を少しだけ持ち上げて5秒キープする程度の、穏やかな運動から始めましょう。これだけでも、背骨を支える深層の筋肉(多裂筋など)を刺激するのに十分な効果が期待できます。痛みが出ない範囲で行うのがポイントです。
ウォーキングは骨に縦方向の刺激を与える最適な運動です
骨は「縦方向の重力刺激」が加わると、その強度を増そうとする性質があります。この性質を利用した最も手軽で効果的な運動がウォーキングです。地面に着地した時の適度な衝撃が骨に伝わり、骨形成を促します。
ダラダラと歩くのではなく、少し歩幅を広げ、リズミカルに歩くことを意識しましょう。可能であれば、1日20分から30分程度、週に3回以上行うのが理想です。
自宅でできる腰椎を守る運動リスト
- ダイナミックフラミンゴ療法(片足立ち): つかまり立ちで片足を5〜10センチ上げ、1分間キープ。左右行う。転倒予防と骨密度アップに効果的。
- 背筋のアイソメトリック運動: 椅子に座り、背もたれに背中を押し付けるように力を入れ、5秒キープして脱力。これを繰り返すことで安全に背筋を刺激できる。
- かかと落とし運動: 立位でつま先立ちになり、ストンとかかとを落とす。骨への縦方向の刺激を与える(※膝や腰に痛みがある場合は控える)。
- ドローイン(腹筋運動): 仰向けで膝を立て、おへそを背骨に近づけるイメージで息を吐きながらお腹を凹ませる。天然のコルセットである腹横筋を鍛える。
天気の良い日に外を歩けば、日光浴によるビタミンD生成も期待でき、一石二鳥の効果が得られます。痛みがある場合は無理をせず、水中ウォーキングなど腰への負担が少ない方法を選ぶのも良いでしょう。
片足立ちなどのバランストレーニングで転倒リスクを下げます
骨が弱くなっていても、転ばなければ骨折のリスクは大幅に減らせます。そのためには、バランス能力の向上が必要です。加齢とともに平衡感覚は低下しますが、訓練によって維持・改善することが可能です。
安全な場所で、机や椅子の背もたれに手を添えながら行う「片足立ち」がおすすめです。左右それぞれ1分間ずつ、1日3回程度行いましょう。この運動は、ダイナミックフラミンゴ療法とも呼ばれ、足の付け根の骨(大腿骨近位部)の骨密度を上げる効果も報告されています。
ふらつきが強い場合は、必ず何かにつかまって行い、転倒しないよう十分注意してください。スクワットも有効ですが、膝がつま先より前に出ないようにし、椅子の座り立ちを繰り返す方法が安全です。
家の中こそ危険がいっぱい?転倒を防ぐ住環境の見直し
高齢者の転倒事故の多くは、実は住み慣れた自宅の中で起きています。「いつもの場所だから大丈夫」という油断や、わずかな段差、滑りやすい床が、取り返しのつかない骨折事故を招くことがあります。
腰椎圧迫骨折の直接的なきっかけとなる転倒を防ぐため、住環境の安全点検を行いましょう。環境を整えることは、最も即効性のある予防策です。
じゅうたんやコード類はつまずきの主な原因となります
リビングや寝室にある「ちょっとした障害物」が命取りになります。例えば、じゅうたんやラグの端がめくれていたり、電気製品の延長コードが床を這っていたりしませんか?足が高く上がりにくくなっている高齢者にとって、これらは大きなハードルです。
じゅうたんは固定テープでめくれを防ぐか、思い切って撤去してフラットな床にするのが安全です。コード類は壁沿いに這わせるか、モールでカバーをして足が引っかからないように整理しましょう。
また、床に新聞紙やビニール袋が落ちていると、それを踏んで滑って転倒することもあります。床には物を置かない習慣をつけることが大切です。
夜間のトイレ移動を安全にするために足元灯を設置しましょう
夜中にトイレに起きた時は、寝起きで頭がぼんやりしている上、暗がりで足元が見えにくく、転倒リスクが跳ね上がります。まず、寝室からトイレまでの動線には、足元灯(人感センサー付きが便利)を設置し、明るさを確保しましょう。
また、スリッパは脱げやすく、つまずきの原因になりやすいため、かかとのあるルームシューズに変えるか、滑り止めのついた靴下を履くことを検討してください。手すりの設置も有効です。
自宅内の転倒リスクチェックと改善策
| 場所 | チェックポイント | 改善策 |
|---|---|---|
| 居間・寝室 | コード、ラグのめくれ、床の散乱物 | 配線整理、ラグ撤去、整理整頓 |
| 廊下・階段 | 照明の暗さ、滑りやすい床 | 足元灯の設置、手すりの取り付け |
| 玄関・浴室 | 段差、靴の脱ぎ履き、滑り | 椅子の設置、すのこやマットの活用 |
廊下やトイレの中に手すりがあれば、ふらついた時にとっさに掴まることができ、転倒を未然に防ぐことができます。また、冬場の浴室はヒートショックによるめまいでの転倒も多いため、脱衣所を暖めておくことも重要です。
靴選びも重要です!屋外での転倒を防ぐためのポイント
屋内だけでなく、外出時の靴選びも転倒予防には欠かせません。サンダルやヒールのある靴、重すぎる靴は避けましょう。足にフィットし、つま先が少し反り上がっている(トゥスプリングがある)ウォーキングシューズやスニーカーが推奨されます。
つま先が上がっていることで、小さな段差につまずくリスクを軽減できます。マジックテープ式など、脱ぎ履きしやすく、かつ足をしっかり固定できるものが理想です。
早期発見が鍵!骨密度検査と医療機関との賢い付き合い方
骨粗しょう症は「サイレントディジーズ(沈黙の疾患)」と呼ばれ、自覚症状がないまま進行します。「痛くなってから病院へ行く」のでは遅いのです。
腰椎圧迫骨折を未然に防ぐためには、定期的な検査で自分の骨の状態を正確に把握し、必要な治療を早期に開始することが何よりも重要です。専門家の力を借りて、自分の体を守りましょう。
年に1回は骨密度検査を受け、DEXA法を選択しましょう
閉経後の女性や65歳以上の方は、少なくとも年に1回は骨密度検査を受けることを強くお勧めします。自治体が行う骨粗しょう症検診などを利用するのも良いでしょう。
すでに骨粗しょう症と診断されている方や治療中の方は、医師の指示に従い、半年に1回程度のペースで検査を行い、治療の効果を確認することが一般的です。検査方法には、手首や踵で測る簡易的なものもあります。
しかし、腰椎圧迫骨折のリスクを正確に評価するためには、腰椎と大腿骨の骨密度を直接測定できる「DEXA(デキサ)法」が推奨されます。整形外科などで「DEXA法で検査したい」と相談してみましょう。
血液検査で骨の状態をさらに詳しく知ることができます
骨密度検査に加えて、血液検査を行うこともあります。これは「骨代謝マーカー」を調べるためです。骨代謝マーカーを測定することで、現在、骨が壊されるスピードが速いのか、それとも骨を作るスピードが遅いのかを詳しく知ることができます。
この結果に基づいて、医師は患者さん一人ひとりに最適な薬(骨吸収を抑える薬か、骨形成を促す薬か)を選ぶことができます。より効果的な治療を行うために、非常に重要な検査です。
骨粗しょう症治療薬は自己判断で中断してはいけません
骨粗しょう症と診断され、薬が処方された場合、自己判断で服用を中止することは非常に危険です。骨粗しょう症の薬は、飲み始めてすぐに痛みが消えたり、目に見えて効果が実感できたりするものではないため、つい飲むのをやめてしまう方がいます。
しかし、薬を中断すると、再び骨密度が低下し、骨折リスクがリバウンドしてしまうことがあります。現在では、毎日飲む薬だけでなく、週に1回、月に1回の服薬で済むものや、半年に1回の注射など、様々なタイプの治療薬が登場しています。
専門医を受診するタイミングと確認事項
- 定期検診として: 女性は閉経後、男性も70歳を過ぎたら、症状がなくても一度DEXA法での検査を受ける。
- 身長の変化: 若い頃より身長が2cm以上縮んでいる場合は、すでに隠れ骨折がある可能性があるため受診する。
- 急な腰痛: 尻餅をついたり、重いものを持ったりした直後からの痛みは、放置せずすぐに整形外科へ。
- 治療の継続相談: 服薬がつらい、歯科治療の予定がある(顎骨への影響確認)などの場合は、必ず医師に相談する。
もし「飲み忘れが多い」「副作用が気になる」などの悩みがある場合は、勝手にやめずに主治医に相談し、自分に合った治療法を見つけることが大切です。
急な腰痛は放置せず、すぐにMRI検査を受けられる病院へ
「ただの腰痛だろう」と放置していると、実は圧迫骨折だったというケースは少なくありません。初期の段階で適切な治療(コルセットによる固定や安静など)を行わないと、潰れた骨が固まらずに偽関節になったりする恐れがあります。
特に、転んだり重いものを持ったりした後に続く腰痛や、寝返りを打つ時に激痛が走る場合は、圧迫骨折の可能性が高いサインです。早めにMRIなどの精密検査を受けることで、骨折の有無を確定診断し、早期に適切な対処を行うことができます。
よくある質問
ここでは、腰椎圧迫骨折の予防や骨粗しょう症に関して、患者様から頻繁に寄せられる疑問にお答えします。正しい知識を持って、日々の生活にお役立てください。
腰椎圧迫骨折の予防にコルセットはずっと着けていた方が良いですか?
予防のためにコルセットを常時着用することはお勧めできません。急性期の痛みがある場合や、農作業など腰に負担がかかる作業をする際に限定して使用するのは有効です。
しかし、一日中着け続けると、自分の筋肉(体幹筋)がサボってしまい、筋力が低下してかえって腰痛や骨折リスクを招く恐れがあります。医師の指示がない限り、頼りすぎないようにし、自身の筋肉を鍛えることを優先しましょう。
腰椎骨粗しょう症と診断されましたが、食事だけで治せますか?
食事療法は基本として非常に大切ですが、すでに骨粗しょう症と診断されたレベル(骨密度が著しく低い、骨折リスクが高い状態)の場合、食事だけで骨密度を正常範囲まで回復させることは困難です。
現在の医療では、骨密度を効果的に上げる優れた薬剤がありますので、食事・運動療法と並行して、適切な薬物療法を受けることが骨折回避への近道となります。
腰椎圧迫骨折の予防に有効な具体的な運動は何ですか?
腰椎への負担が少なく、骨強化に有効な運動としては「ウォーキング」「片足立ち(ダイナミックフラミンゴ療法)」「背筋運動(上体を少し起こす程度)」が挙げられます。
特に背筋を鍛えることは、椎体の前方にかかる圧力を減らすために有効です。ただし、ジャンプなどの衝撃が強い運動や、体を強くひねる運動、過度な腹筋運動(上体を起こすタイプ)は、逆に骨折を誘発する可能性があるため避けてください。
一度腰椎圧迫骨折をすると、次も骨折しやすいというのは本当ですか?
はい、本当です。これを「骨折の連鎖(ドミノ骨折)」と呼びます。一度腰椎が潰れると、背骨のバランスが崩れ、隣接する他の椎体に過度な負担がかかるようになります。
データによると、一度骨折した人は、しなかった人に比べて新たな骨折を起こすリスクが数倍高くなると言われています。だからこそ、最初の骨折を防ぐこと、もし骨折しても二度目を防ぐための強力な治療介入が必要になります。
腰椎の骨密度検査はどこで受けられますか?
整形外科、婦人科、内科などで受けることができますが、すべての医療機関に腰椎を精密に測れるDEXA(デキサ)法のアースがあるわけではありません。
検診センターや骨粗しょう症外来を標榜している病院であれば設置されている可能性が高いです。受診する前に、電話やホームページで「DEXA法による腰椎の骨密度測定が可能か」を確認することをお勧めします。
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