足立慶友医療コラム

変形性膝関節症のヒアルロン酸注射|効果の持続期間と治療を切り替えるタイミング

2026.02.22

膝の痛みに悩む多くの方が、最初に提案される治療法の一つがヒアルロン酸注射です。この治療は膝関節の動きを滑らかにし、痛みを一時的に緩和する優れた働きをしますが、その効果は永久ではありません。

効果が持続する期間や、注射を続けても改善が見られない場合に、どのタイミングで次の治療法へ切り替えるべきかを判断することは、将来の歩行機能を守るために極めて重要です。

本記事では、ヒアルロン酸注射の仕組みから効果の目安、そしてリハビリや再生医療、手術を検討するべき具体的なサインまで、あなたの膝の健康を取り戻すための指針を詳しく解説します。

ヒアルロン酸注射で膝の痛みが和らぐ仕組みと期待できる効果

ヒアルロン酸注射は膝関節内の潤滑油としての機能を補い、炎症を鎮めることで痛みを軽減します。加齢や負担によって減少した関節液の質を高めることで、日常生活の動作をスムーズに助けます。

膝の動きを滑らかにする関節液の代わりとして働きます

健康な膝関節の中には、関節液と呼ばれる液体が満たされています。この液体にはヒアルロン酸が豊富に含まれており、骨と骨が直接ぶつからないように保護する潤滑油を担っています。

変形性膝関節症が進むと、関節液の中のヒアルロン酸が薄くなったり、量が減ったりしてしまいます。その結果、膝を動かすたびに摩擦が生じ、歩くたびに強い痛みを感じるようになります。

炎症を抑えて痛みの物質を減らす働きを支えます

膝の痛みが生じる原因は、単なる摩擦だけではありません。関節を包む関節包という袋に炎症が起き、痛みを引き起こす化学物質が放出されることも大きな要因として挙げられます。

ヒアルロン酸には、こうした炎症を抑える作用があります。注射によって高濃度の成分が関節内を満たすと、炎症物質の発生を抑制し、膝の腫れや熱感を穏やかに鎮めてくれます。

膝を守るための具体的な働き

  • 関節をスムーズに動かすための潤滑作用を補います。
  • 軟骨同士がぶつかる衝撃を吸収して痛みを和らげます。
  • 関節内部の炎症を鎮めて熱や腫れを抑えてくれます。

軟骨への負担を減らして変形の進行を緩やかにします

変形性膝関節症は、一度擦り減ってしまった軟骨が自然に元に戻ることは難しい病気です。しかし、注射によって滑りを良くすれば、残っている軟骨への過度な負担を分散できます。

軟骨同士の激しい接触を避けることができれば、変形が進むスピードを遅らせることが可能になります。膝の状態を安定させるための基本的なケアとして、こうした補給は大切です。

変形性膝関節症のヒアルロン酸注射による効果の持続期間

ヒアルロン酸注射の効果は、一般的に週1回の投与を5回ほど続けた後に安定します。その後は数週間から1ヶ月程度持続しますが、症状の進行具合によって個人差がある点に注意が必要です。

初期の治療では週に1回のペースで5回継続します

初めて治療を受ける場合、通常は1週間に1回の頻度で合計5回続けて行います。これは、関節内のヒアルロン酸濃度を十分に高め、炎症をしっかりと鎮めるために必要な回数だからです。

1回打っただけで劇的に痛みが消えることもありますが、多くの場合は3回目から5回目にかけて徐々に効果が安定してきます。まずはセットで継続して、様子を見ることが大切です。

症状が落ち着いた後の維持期は2週間から4週間に1回が目安です

初期の投与を終えて痛みが落ち着いてきたら、その状態を維持するために間隔を空けていきます。一般的には2週間から4週間に1回程度の頻度で継続して、良好な環境をキープします。

維持期に入ると、患者さん自身も「少し痛みが出てきたな」と感じるタイミングで受診するなど、調整しやすくなります。痛みが強くなる前に継続して、炎症の再燃を防ぐことが理想です。

注射1回あたりの薬液の持続は数日から1週間程度です

注入されたヒアルロン酸そのものが関節内に数ヶ月も留まり続けるわけではありません。実際に注入された薬液は、数日から長くても1週間程度で体内に吸収され、代謝されてしまいます。

しかし、注入された成分が滑膜という組織を刺激し、自分自身で質の良い関節液を作る力を助けてくれます。こうした働きによって、薬液が消えた後も痛みの緩和効果が持続します。

注射の頻度と期待できる変化の目安

治療の段階投与の間隔期待できる変化
初期導入期週に1回炎症が徐々に落ち着きます
安定維持期2週~4週に1回日常生活の動作が安定します
長期経過期月1回程度痛みの再発を予防します

ヒアルロン酸注射を続けても膝の痛みが改善しない理由

長期間治療を続けていても、痛みが全く引かなかったり、むしろ強くなったりすることがあります。これは、膝関節の中で起きている変化が注射の作用を超えてしまっている状態です。

膝の変形が進んで軟骨の擦り減りが激しくなっています

変形性膝関節症が末期の状態に近づき、軟骨が完全に消失して骨と骨が直接ぶつかり合うようになると、注射による潤滑作用だけでは痛みを抑えきれなくなるケースが増えてきます。

硬い骨同士が直接接して摩擦を生じれば、どんなに滑りを良くしても強い炎症が発生してしまいます。骨の形そのものが変わってしまう物理的な問題は、薬の限界を超えています。

筋力が低下して関節への荷重が増え続けています

膝関節を支える最大の組織は筋肉です。特に太ももの前側にある筋肉が衰えてしまうと、歩くたびに膝の関節面に直接大きな衝撃が加わるようになり、痛みを引き起こしてしまいます。

注射の効果を妨げる要因のまとめ

妨げとなる要因膝への影響対応の考え方
軟骨の完全消失骨同士の直接摩擦構造的な修復が必要です
支持筋力の衰え衝撃吸収能の低下リハビリの強化が重要です
激しい関節炎多量の水が溜まる強力な炎症対策を優先します

膝関節の中で強い炎症が起きて水が溜まっています

変形性膝関節症の経過中に、急激に強い炎症が起きることがあります。この状態は関節水腫と呼ばれ、いわゆる「膝に水が溜まった」状態で、内部を強く圧迫して激しい痛みを呼びます。

炎症があまりに強い場合は、少量のヒアルロン酸を注入しても、すぐに炎症物質に負けて薄められてしまいます。この場合は、まず炎症そのものを鎮める処置を優先しなければなりません。

痛みが引かないときに治療を切り替えるタイミングを見極めるポイント

注射を3ヶ月から半年以上続けても、痛みが軽減せず日常生活に制限があるなら、治療方針の再検討が必要です。適切な時期に次のステップへ進むことが、歩行能力を守る鍵となります。

階段の上り下りや立ち上がりが困難になったときが目安です

日常生活において最も膝に負担がかかる動作で痛みが増しているかどうかを確認してください。階段の上り下りで手すりがないと動けない状態は、クッション機能が限界に達しているサインです。

行きたい場所に行くのを諦めたり、外出を控えたりするようになったら注意が必要です。自分一人の力で基本的な動作を行うのが苦痛になったときが、より積極的な治療を検討する時期です。

夜寝ている間も膝が疼いて眠れない状態が続く場合です

通常、変形性膝関節症の痛みは動かしたときに生じるものですが、症状が進むと安静にしていても痛むようになります。夜、布団に入っても膝が疼く状態は、炎症が深刻化している警告です。

休息をとっても回復しない痛みがある場合、それは関節の構造そのものに手を加える手術や、強力な炎症抑制を行う再生医療などを検討するべき切実なタイミングを迎えています。

ヒアルロン酸注射の効果が3日も持たなくなったと感じる時期です

以前は1ヶ月は楽になっていたのに、最近は注射をした翌日にはもう痛みが戻ってしまう。このような効果の短縮を感じたら、現在の治療を見直すべき絶好の機会として捉えてください。

切り替えを検討するべき自覚症状

症状のサイン日常生活への影響判断のポイント
移動の制限連続15分以上歩けない生活範囲が狭まっている
動作の痛み椅子から立つのが苦痛関節の支持力が限界に近い
薬の持続性2日後には痛みが再発保存療法の限界の可能性

注射以外の選択肢として検討すべき保存療法と再生医療

注射の効果が薄れてきたからといって、すぐに人工関節手術しかないわけではありません。自分自身の筋力を養う方法や、最新の治癒力を活用する新しい選択肢についても確認しましょう。

リハビリテーションで太ももの筋肉を鍛えて関節を支えます

注射を打つ目的の一つは、痛みを和らげて「動ける状態」を作ることです。そのチャンスを活かして優先すべきなのが、膝を支える太ももの筋肉を強化するリハビリテーションです。

筋肉は天然のサポーターであり、鍛えることで骨への衝撃を物理的に吸収してくれます。理学療法士の指導のもと、正しいフォームで歩く練習を継続することが、長期的な回復には重要です。

自分の血液を利用するPRP療法で組織の修復を促します

注射を続けても満足な結果が得られない場合、次に検討されることが多いのがPRP(多血小板血漿)療法です。自分の血液から抽出した成分を膝に注入し、傷ついた組織の修復を促します。

検討したい治療法の選択肢

  • 太ももの筋肉を再教育して膝の揺れを抑える運動療法です。
  • 血液中の成長因子を利用して炎症を鎮めるPRP療法です。
  • 脂肪内の幹細胞を培養して関節環境を整える幹細胞治療です。

脂肪由来の幹細胞を注入して膝の環境を整えます

さらに進んだ再生医療として、自分の脂肪から抽出した幹細胞を膝に注入する治療があります。幹細胞には強力な抗炎症作用があり、摩耗が進む膝の環境を劇的に改善する力を秘めています。

この治療は、末期の変形性膝関節症で手術を勧められている方にとっても、有力な選択肢となっています。関節内の環境を根本からリセットしたい場合に、検討する価値が非常に高い方法です。

手術を検討する前に知っておきたい膝の負担を減らす生活習慣

治療と並行して、自分自身の生活習慣を見直すことは膝の痛みを管理するために大切です。日々の負担を減らす工夫を積み重ねることで、手術が必要な時期を大幅に遅らせることが可能になります。

適正な体重を維持して膝への負担を物理的に減らします

膝への負担を減らすために、最も効果が分かりやすいのが体重管理です。歩行時には体重の約3倍の負荷が膝にかかるため、体重が1キロ減るだけで歩くたびに3キロ分の負担を軽減できます。

急激なダイエットは筋肉を落とすため逆効果ですが、食事の内容を見直すことは、膝への強力な治療になります。物理的な重さを取り除くことが、関節を長持ちさせるための第一歩です。

クッション性の高い靴を選んで地面からの衝撃を和らげます

足元からの衝撃は、ダイレクトに膝へと伝わります。底が薄い靴を履いていると、歩くたびに膝がハンマーで叩かれているような衝撃を受け続けてしまい、炎症を悪化させてしまいます。

厚手で弾力性のあるソールを持つ靴を選ぶだけで、歩行時の痛みが驚くほど軽減することがあります。自分の足の形に合ったインソールを使用することも、毎日膝をケアするのと同じ効果を生みます。

正座や重い荷物を持つ動作を避けて膝を労わります

日本の伝統的な生活習慣には、膝に大きな負担をかける動作が多く含まれています。その代表が正座であり、膝を深く曲げる動作は関節を強く圧迫し、軟骨に過度なストレスを与えてしまいます。

膝を守るための生活習慣リスト

改善する項目具体的な対策得られるメリット
座る姿勢椅子やベッドを使う立ち上がり時の負荷を軽減
持ち運びカートや宅配を利用関節への瞬間的な圧力を回避
家庭環境手すりを設置する不意のぐらつきを防止

納得できる治療法を選んで膝の痛みから解放されるために

膝の治療には、これさえすれば完璧という唯一の正解があるわけではありません。現在の膝の状態を正しく把握し、自分の将来の希望に合った治療法を選択することが、回復への一番の近道です。

医師に今の痛みのレベルを詳しく伝えて方針を相談します

治療を正しく進めるためには、具体的な痛みの状況を医師に伝える必要があります。「朝起きた時だけ痛む」「注射後3日で痛みが戻る」といった情報は、方針を決めるための貴重なデータです。

自分の膝の状態を確認する項目

確認内容記入のヒント
最も痛む動作立ち上がり、階段、就寝時など
現在の不便さ買い物に行けない、旅行を諦めたなど
治療の希望手術は避けたい、早く歩けるようになりたい

治療ごとの利点と懸念事項を比較して自分で判断します

ヒアルロン酸注射、再生医療、手術にはそれぞれの特徴があります。注射は手軽ですが効果は一時的であり、手術は根本的な解消が期待できますが、入院期間やリハビリの努力が必要です。

これらの情報を整理し、自分にとって何が最も重要かを考えることが大切です。あなたの人生の優先順位が治療法を選ぶ基準となります。納得して選んだ治療こそ、前向きに取り組めるはずです。

痛みを我慢しすぎず早めに次の手を打つ勇気が必要です

膝の痛みは我慢すれば治るというものではありません。無理をして歩き続けることで周囲の組織が傷つき、病状を悪化させてしまうケースが多いのが変形性膝関節症という病気の特徴です。

「まだ歩けるから」と放置せず、早めに有効な手段を講じることが大切です。治療の切り替えは負けではなく、より良く生きるための戦略変更です。将来の自分の自由な動きを守りましょう。

Q&A

変形性膝関節症のヒアルロン酸注射は何回くらい続けるのが普通ですか?

一般的には、最初の導入期として週に1回、合計5回の注射を1セットとして行います。これで関節内の環境を整え、炎症をしっかりと抑えるのが標準的な流れとなっています。

その後は症状の落ち着き具合を見ながら、2週間から1ヶ月に1回程度の頻度で継続して、良い状態を維持していきます。痛みが強く炎症が引かない場合は、回数が調整されます。

変形性膝関節症のヒアルロン酸注射を打っても痛みが取れないときはどうすればよいですか?

5回程度の注射を終えても変化がない、あるいは効果が数日しか持たない場合は、膝の変形が進んでいるか、筋力低下など別の要因が強いと考えられます。無理は禁物です。

まずは医師にその旨を伝え、リハビリテーションの強化やPRP療法などの再生医療、あるいは手術療法の適応がないか再検討してもらうことをお勧めします。

変形性膝関節症でヒアルロン酸注射を長期間打ち続けるデメリットはありますか?

薬そのものに重篤な副作用は少ないですが、同じ治療を漫然と続けることで、より適切な治療を受けるタイミングを逃してしまうことが最大の懸念点として挙げられます。

また、ごく稀に関節内への穿刺による感染のリスクもゼロではありません。注射のたびに腫れが強くなるような場合は、早めに医師へ相談することが大切です。

変形性膝関節症のヒアルロン酸注射と同時にリハビリを行う意味はありますか?

非常に大きな意味があります。注射は関節内の滑りを良くして痛みを和らげますが、膝を支える力を高めるわけではありません。根本的な解決には支持力が必要となります。

注射で痛みが軽くなった隙に、リハビリで筋肉を鍛えることで、関節への負担を減らすことができます。この組み合わせこそが、自分の足で歩き続けるための鍵となります。

参考文献

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Author

北城 雅照

医療法人社団円徳 理事長
医師・医学博士、経営心理士

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