足立慶友医療コラム

レントゲンで見る股関節の状態|整形外科の診断

2025.03.03

股関節は日常生活の動作を支える要といえますが、痛みや違和感があると立ち上がりや歩行などで負担を感じやすくなります。違和感を放置すると進行して痛みが強くなり、治療が長期化することも考えられます。

整形外科ではレントゲン股関節画像を含めた診断を実施して、骨の形状や摩耗の程度などを確かめます。適切に状態を把握すれば、リハビリや投薬などの治療プランを立てやすくなり、患者の負担を軽くするための方向性を導きやすくなります。

この記事では、レントゲン股関節検査を軸にした整形外科での診断の概要や注意点をまとめ、日頃から気になる症状がある方に向けて情報を紹介します。

股関節の基本構造と動きの特徴

股関節は骨盤と大腿骨をつなぐ部分で、上半身と下半身を橋渡しするような形状を持ちます。運動や歩行において可動域が広いため、日常生活における重要な役割を担っています。

さらに、この部位は体重を支える点で大きな負荷を受けるので、変形や摩耗を起こしやすい特徴があります。

股関節を構成する主な骨と関節の役割

股関節は大腿骨頭と寛骨臼がかみ合う構造になっています。大腿骨頭は球形で、寛骨臼はくぼみがある構造です。この球とくぼみの組み合わせにより、前後・左右・回旋といった多方向の動きを実現します。

骨の先端は軟骨で覆われ、衝撃を吸収したり摩擦を減らしたりする大切な機能があります。軟骨がすり減ると痛みが出やすくなり、レントゲン股関節画像からでも変化を見つけやすくなります。

股関節の主な機能を一覧にまとめたもの

機能具体的な役割
支持体重を支えて姿勢を保つ
運動前後・左右・回旋といった多彩な動き
衝撃緩衝軟骨がクッションのように働いて骨同士の衝突を防ぐ
安定靭帯や筋肉と連動して安定性を維持する

股関節に負担がかかりやすい動作

走ったり跳んだりするスポーツ動作だけでなく、長時間の立位姿勢や階段の昇降など、日常的な動作も股関節に大きな負荷を与えます。

特に、体重が増えると股関節が受ける圧力が増し、軟骨や骨に疲労を蓄積させやすくなります。

痛みや違和感の放置によるリスク

違和感が少しだけある状態でも、放っておくと進行して関節が変形し始め、股関節症へ移行しやすくなります。

変形が進むと軟骨の損傷が大きくなり、最終的には人工股関節置換術などの手術が必要になるケースも考えられます。

少しの痛みでも早めに診断を受けることで、症状の進行を遅らせる対策を取ることが大切です。

レントゲン股関節検査の意義と目的

レントゲン股関節検査は、骨の状態を直接確認する手段として非常に有用です。骨密度や骨形態の把握を通じて、関節の変形や摩耗、骨折の有無などを正確に見極める役割を果たします。

軟骨部分の観察はMRIのほうがより詳細に確認しやすいですが、レントゲンでも軟骨のすり減りによる関節の隙間の変化や骨棘の形成などを推察できます。

整形外科でレントゲンを撮るメリット

レントゲン股関節画像から得られる情報には以下のようなメリットがあります。

  • 骨の形状や変形の度合いを把握しやすい
  • 骨折やヒビなど、急性期の異常が判別しやすい
  • 複数回の撮影で経過を比較しやすい
  • 他の画像検査に比べ撮影時間が比較的短い

レントゲンと他の画像検査の比較

検査方法得意分野撮影時間料金の目安骨・軟部組織の観察精度
レントゲン骨形状の把握短い比較的低い骨は高め・軟骨は間接的に推測
MRI軟骨・筋肉・靭帯など長め高め骨だけでなく軟部組織を詳細に評価
CT骨断面の精密な描写中程度中程度骨密度や三次元画像に強み

レントゲン画像が示す主な異常所見

変形性股関節症や関節唇損傷、先天性股関節脱臼の影響などがレントゲンで確認されやすい代表的な所見です。

関節隙の狭小化や骨棘の有無、大腿骨頭の変形などが明確になれば、より的確な診断に近づきます。

レントゲン撮影の際に注意すべきポイント

レントゲン撮影時は、撮影姿勢や骨盤の角度が画像に反映されます。

姿勢の乱れが大きいと読影に誤差を生じる可能性があるので、撮影時には技師やスタッフの指示に従って正しい姿勢を保つことが重要です。

レントゲン股関節診断の手順と流れ

レントゲン股関節診断は、整形外科で行う初期検査の一部です。医師が問診・視診・触診などを行い、痛みのある部位や可動域などを確認した後で、必要に応じてレントゲンを撮影します。

撮影後に医師が画像を確認して診断し、必要があればMRIやCTなど他の検査を追加して判断を補強します。

問診や視診・触診との組み合わせ

レントゲンだけでなく、問診や視診・触診も合わせて行うことが大切です。

患者の症状や日常動作の状況を確認し、視診では歩行の状態や骨盤の傾き、触診では痛みの場所や腫れなどを確かめます。

これらの情報がレントゲンと組み合わさると、症状の原因を立体的に把握しやすくなります。

医療面接時に確認する主な項目

項目内容の例
痛みの強さいつからどの程度痛むか
日常生活の支障立ち上がりや歩行などに支障があるか
既往歴過去のけがや先天的疾患の有無
生活習慣運動頻度や体重の増減の状況

レントゲンの読影で判断するポイント

レントゲン股関節画像を医師が確認するとき、関節軟骨の厚みは直接見えませんが、関節隙の広さを基準に軟骨の摩耗度合いを推察します。

そのほか、大腿骨頭の丸みや骨盤との位置関係、骨棘の形成などを踏まえながら総合的に判断を行います。

  • 大腿骨頭の形状が球形かどうか
  • 関節隙が両側で均等かどうか
  • 骨盤の左右差があるかどうか
  • 骨がとげのように突出していないか
  • 先天的なゆがみが確認できるかどうか

追加検査の必要性

レントゲン股関節写真だけで診断が難しい場合、より詳細な情報を得るためMRIを撮る場合があります。

例えば、軟部組織(関節唇や筋肉・靭帯など)の損傷や変性を疑うときにはMRIのほうが評価しやすいです。患者の症状やレントゲン所見を踏まえて、医師が必要性を判断します。

レントゲン画像から生まれる疑問への対応

レントゲンを撮ると患者自身も画像を見て疑問を抱くことがあります。疑問点があればその都度医師に質問するほうがよいです。

理解を深めることで、今後の治療やリハビリ計画に対して前向きに取り組みやすくなります。

股関節の変形や摩耗が疑われる主な原因

股関節の変形や摩耗には様々な原因があります。加齢による関節軟骨の劣化だけでなく、スポーツでの過度な使用、先天性の要因、生活習慣など、多角的に影響を受けることが知られています。

加齢による股関節変化

加齢に伴い軟骨がすり減ったり、骨密度が低下したりすることは自然な変化です。長年の使用で少しずつ摩耗が蓄積し、50代以降になると痛みが顕在化し始める例が多く見られます。

加齢現象だからといって放置すると、日常生活の質が低下しやすいです。

加齢の進行度合いと股関節の症状

年齢帯主な特徴症状の出方
40代軟骨の弾力がやや低下運動後に軽い痛み
50代軟骨の摩耗が進行朝起きた際にこわばり感
60代以上骨密度の低下も顕著日常的に痛みや違和感

スポーツや仕事での負荷

長時間の立ち仕事や激しい運動を行う方は、股関節に大きな負荷がかかります。

特に、マラソンやサッカーのような反復動作が多い競技では、股関節の軟骨に加わる衝撃が何度も蓄積されるため、変形や摩耗が進みやすくなります。

  • 運動後に鈍い痛みや疲労感が残りやすい
  • かがむ動作で痛みや突っ張りを感じる
  • 体重をかけた瞬間に違和感が走る

先天性股関節脱臼や構造的な問題

生まれつき股関節が浅い臼蓋形成不全や先天性股関節脱臼などを経験した方は、加齢とともに股関節の変形が進行しやすい傾向があります。

構造的に安定性が低い分、軟骨への負荷が増大するからです。

生活習慣や体重の影響

肥満の方は股関節に常時かかる負荷が増しやすく、関節の消耗が進む可能性があります。

栄養バランスの偏りや運動不足も、筋力低下につながって股関節をうまく支えられなくなる要因となります。

体重管理に関する目安

BMI値状態の指標股関節への影響
18.5未満やせ傾向筋力不足で関節の保護力が弱い
18.5~24.9適正範囲過度な負荷が少ない
25以上太り傾向長期間にわたり関節を圧迫

レントゲン股関節画像から読み解く病態の具体例

レントゲン股関節画像を基に、医師はさまざまな病態を想定しながら診断を行います。

変形性股関節症だけでなく、骨密度の低下や先天性異常、腫瘍の可能性など、多岐にわたって異常を確認します。

変形性股関節症の特徴

変形性股関節症は、主に軟骨の摩耗によって生じる病気です。レントゲン画像では関節隙が狭くなり、骨同士が接近するような状態が確認されます。

骨端にトゲのような骨棘が形成されることもあり、痛みや可動域の制限を強く感じることが多いです。

関節の摩耗度合いを段階的に示した一覧

グレード画像上の特徴症状
軽度関節隙の軽微な狭小化運動後の鈍い痛み
中等度関節隙の明らかな狭小化、骨棘形成動作の制限や強い違和感
重度骨同士がほとんど接触、変形進行歩行困難や強い痛み

骨粗鬆症や骨壊死との関係

股関節には大腿骨頭壊死という病態も存在し、骨への血流が阻害されることで骨がもろくなって潰れる現象が起きます。

レントゲン股関節画像では、大腿骨頭の形が歪んだり陥没したりしている様子が捉えられます。

骨粗鬆症の場合は骨自体の密度が低いため、小さな負荷でも骨折しやすくなり、レントゲンにて骨の透過度が高い印象を受けます。

関節唇損傷や腫瘍の疑い

関節唇損傷は、レントゲン単体でははっきり映りづらい場合があります。ただし、骨に付随する変形や骨盤との位置異常などの補助的な所見から、関節唇に負荷がかかっている可能性を推測することができます。

腫瘍の疑いがある場合は、骨の一部が変色・変形して映るなどの所見が現れることがあります。

レントゲン画像の共有とセカンドオピニオン

撮影したレントゲン画像を患者自身がコピーして別の医療機関へ持参し、セカンドオピニオンを受けることも可能です。

複数の視点から診断を受けることで、より客観的に治療方針を検討しやすくなります。

股関節の健康維持と予防のポイント

レントゲン股関節検査で問題がなくても、普段の生活習慣を見直すことは重要です。股関節を長く健康な状態で維持するためにできることは多岐にわたります。

特に姿勢や筋力アップ、体重管理などに意識を向けると、負担が減る可能性があります。

正しい姿勢と歩行を心がける

姿勢が崩れると股関節に負担が集中しやすくなります。背筋を伸ばし、骨盤が前後に傾きすぎないよう注意しながら歩くことで、荷重バランスが整いやすくなります。

姿勢チェックに関する項目

  • 立ったときに頭・肩・腰が一直線になるか
  • 骨盤が前や後ろに傾きすぎていないか
  • 歩行時に左右の重心移動がスムーズか
  • 足を引きずるように歩いていないか

筋力強化トレーニング

下肢の筋力が弱いと、股関節への負担が増しやすくなります。特に中臀筋や大腿四頭筋など、股関節を支える筋肉を意識的にトレーニングすると、関節の安定性が高まりやすいです。

整形外科のリハビリなどでも推奨されることがあります。

自宅で取り組みやすい運動をまとめたもの

運動名方法ポイント
スクワット軽めの膝曲げから開始し、徐々に深く曲げる膝がつま先より前に出ないようにする
ヒップアブダクション横向きに寝て上側の脚を上げる中臀筋を使う感覚を意識する
ブリッジ仰向けで膝を立て、腰を浮かせる腰を反りすぎないように注意

体重コントロールと栄養バランス

適切な体重を維持すると、股関節への負担が緩和されます。脂質や糖質の過剰摂取を控え、タンパク質・カルシウム・ビタミンDなど骨や筋肉に必要な栄養をしっかり摂る工夫も大切です。

整形外科受診のタイミングと受診前の準備

違和感や痛みを感じたら、できるだけ早めに整形外科を受診することをおすすめします。軽度の段階であれば、レントゲン股関節診断と簡単な理学療法だけで改善が見込めるケースもあります。

受診を先延ばしにすると症状が進行し、治療期間も長くなる可能性があります。

受診のタイミング

痛みが激しいときだけでなく、軽い違和感が継続する場合も早めに相談すると安心です。

特に歩行や立ち上がりなど、日常生活の動作で支障を感じ始めたときには一度レントゲン股関節検査を受けて状態を把握したほうがよいでしょう。

  • 階段の昇降がつらい
  • 足の付け根付近に引っかかるような痛みがある
  • 夜間や朝方に痛みで目が覚めることがある
  • スポーツ中に痛みや違和感がしばしば生じる

受診前のメモや記録

医師の問診をスムーズにするため、自分の症状や困っている動作、生活習慣などを簡単にまとめておくと役立ちます。

痛みの性質やどの動作で強く感じるかなどの情報があると、診断が進みやすくなります。

受診前にまとめておくと便利な項目

項目具体例
症状の発生時期○月頃から歩行時に痛む
痛みの度合い10段階で○程度
痛みが増す動作しゃがむ、階段を下りる
服薬状況市販鎮痛薬を1日○回服用

受診時の服装や持ち物

整形外科ではレントゲンを撮ることが想定されるため、着脱しやすい服装やボトムスを身につけておくと便利です。

必要であれば、MRIやCT検査を追加で行う可能性もあるため、時間に余裕をもって受診するほうが良いでしょう。

定期的なフォローアップの意義

股関節の状態は年齢や日常生活の影響で徐々に変化します。定期的にレントゲン股関節画像を撮って経過を追うことで、早期段階の変化に気づきやすくなります。

痛みの程度と画像を照らし合わせると、自分の身体状態を客観的に把握できるメリットがあります。

レントゲン股関節検査後の治療やセルフケア

レントゲン股関節検査で異常が確認された場合は、医師の診断に応じて治療方針が決まります。

状態によっては保存的療法(投薬やリハビリ)で十分対応できる場合もありますし、進行度合いによって手術を検討することがあります。

いずれの治療を選ぶ場合でも、日常生活でできるセルフケアを心がけると、症状の悪化を抑制しやすくなります。

保存的療法の選択肢

保存的療法では、生活習慣の改善や筋力トレーニング、痛み止めや炎症を抑える薬の活用などを行います。股関節への負担を減らしつつ、身体の機能を維持することを目指します。

医師や理学療法士と相談しながら、自宅で無理なく続けられる運動を組み込むことが大切です。

保存的療法で用いられる主な方法

方法特徴期待できる効果
投薬消炎鎮痛薬など痛みと炎症の抑制
温熱療法ホットパックなど筋肉を柔らかくして痛みを和らげる
物理療法電気刺激や超音波血行促進や筋肉緊張の緩和
運動療法ストレッチや筋力トレーニング関節可動域の維持と筋力アップ

手術が検討される場合

変形が著しい場合や保存的療法で痛みのコントロールが困難な場合は、手術を検討します。人工股関節置換術などで関節の機能回復を図るケースもあります。

手術を行うかどうかはレントゲン股関節画像やMRIなどを含めた総合的な判断となります。

セルフケアで重視したいこと

治療と併用して、自分の体を守るための工夫を日常生活に取り入れることが望ましいです。症状に応じた運動量の調整や、正しい姿勢を保つ意識、体重管理などが挙げられます。

小さな対策でも継続することで、痛みや変形の進行を和らげる力になります。

  • 自分の可動域を定期的にチェックする
  • 痛みがあるときは無理をせず安静にする
  • 通勤時や買い物時など、歩行距離を少し調整する
  • 普段から股関節周囲の筋肉を意識して動かす

再発予防に向けたメンテナンス

股関節の状態は一度改善しても、使い方や負担によって再びトラブルが起きる可能性があります。定期的な受診や検診を習慣化し、異常があれば早期に対処する姿勢を保つことが大切です。

  • 定期的なレントゲン股関節検査で変化を確認する
  • 予防的な筋トレやストレッチを継続する
  • 痛みがなくても年に1回程度は検診を受ける
  • 日常生活で痛みがぶり返したら早めに相談する

以上

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Author

北城 雅照

医療法人社団円徳 理事長
医師・医学博士、経営心理士

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