足立慶友医療コラム

股関節の引っかかり症状と痛みの関連性

2025.07.07

股関節に「引っかかり」を感じ、それが痛みを伴う場合、日常生活に大きな支障をきたすことがあります。

この症状は、立ち上がったり、座ったり、歩いたりといった何気ない動作のたびに生じ、多くの方がその原因や対処法について悩みを抱えています。

股関節は、体の中でも特に大きな負荷がかかる関節であり、デリケートな構造をしています。この状態が続くことで、不安やストレスを感じる方も少なくありません。

ここでは、股関節の引っかかりとその痛みがなぜ生じるのか、どのような病態が考えられるのか、そして適切な対応がなぜ大切なのかについて、詳しく解説します。

あなたの股関節の悩みが少しでも軽くなるよう、丁寧な情報提供を心がけます。

股関節の引っかかりとはどのような状態か

股関節の引っかかりとは、股関節を動かした際に何かにつっかえるような感覚や、スムーズな動きが妨げられる状態を指します。

この感覚は、しばしば「パキッ」という音や「カクッ」という関節のズレ感を伴うことがあります。

この現象は、股関節の複雑な構造の中で、骨や軟部組織が正常な位置から一時的にずれたり、挟まったりすることで生じます。

この引っかかりが痛みと結びつくことで、日常生活の質が著しく低下することがあります。

股関節の構造と動き

股関節は、骨盤の寛骨臼(かんこつきゅう)と呼ばれるくぼみに、大腿骨の先端にある大腿骨頭(だいたいこっとう)がはまり込む形で構成される球状関節です。

この構造により、股関節は前後、左右、回旋といった非常に広い範囲の動きを可能にします。関節の表面は滑らかな関節軟骨で覆われ、関節包という袋に包まれています。

関節包の内部は滑液で満たされ、これにより骨同士の摩擦が減り、スムーズな動きが実現しています。また、関節の安定性を保つために、強靭な靭帯や周囲の筋肉が股関節を支えています。

引っかかりの感覚の正体

股関節の引っかかりの感覚は、主に以下の要素によって生じます。

関節の動きの中で、何らかの理由でこれらの要素が一時的に正常な位置から外れたり、挟み込まれたりすることで、不快な感覚を覚えます。

  • 関節軟骨の不整: 軟骨が摩耗したり損傷したりすると、表面が滑らかでなくなり、引っかかりが生じやすくなります。
  • 関節唇の損傷や変性: 寛骨臼の縁にある関節唇は、関節の安定性を高める役割がありますが、これが傷つくと引っかかりの原因となります。
  • 腱の摩擦や弾発: 股関節周囲の腱が、骨の突出部と擦れたり、乗り越えたりする際に弾発音や引っかかりを感じることがあります。
  • 骨の異常な増殖(骨棘): 骨に不要な突起ができると、それが関節の動きを阻害し、引っかかりや痛みを引き起こします。

股関節の主な構成要素

要素名役割
体を支え、関節の土台となる
関節軟骨骨の摩擦を減らし、衝撃を吸収
関節唇関節の安定性を高め、骨頭を包む
靭帯関節を補強し、動きを制限
筋肉・腱関節を動かし、安定させる

引っかかりと痛みの関係性の理解

引っかかりそのものは痛みを伴わないこともありますが、多くの場合、引っかかりが繰り返されることで関節内部の組織に炎症や損傷が生じ、痛みに発展します。

例えば、骨の衝突や腱の摩擦が頻繁に起こると、その部位に炎症が起き、鈍い痛みや鋭い痛みを引き起こします。

このことにより、関節軟骨や関節唇といった重要な組織が傷つき、さらに症状が悪化する悪循環に陥る可能性があります。

引っかかりの感覚が生じる状況

  • 立ち上がり動作
  • 階段昇降時
  • 足を大きく開く、または閉じる動作
  • 特定の運動中

股関節の引っかかりと痛みの主な原因

股関節の引っかかりと痛みの原因は多岐にわたりますが、代表的なものとしては、変形性股関節症、股関節インピンジメント(FAI)、関節唇損傷などが挙げられます。

これらの病態は、股関節の構造的な問題や、繰り返しの負荷によって引き起こされることが多く、症状の程度も様々です。正確な原因を特定することが、適切な治療方針を立てる上で大切です。

変形性股関節症

変形性股関節症は、股関節の関節軟骨が摩耗し、骨が変形していくことで痛みや動きの制限が生じる病気です。

初期段階では、関節の滑らかさが失われることで引っかかりを感じることがあります。進行すると、関節軟骨が完全に失われ、骨同士が直接こすれ合うことで強い痛みが生じます。

初期症状と進行

初期の変形性股関節症では、立ち上がりや歩き始めに股関節に軽い違和感や鈍い痛みを感じることが多いです。この段階では、引っかかりの症状も現れることがあります。

病状が進行するにつれて、痛みが常に伴うようになり、股関節の動く範囲が狭まります。最終的には、安静時にも痛みが現れ、日常生活に大きな支障をきたすようになります。

変形性股関節症の進行段階

進行段階主な特徴
初期軽度の関節軟骨の損傷、関節の隙間のわずかな狭小化
中期関節軟骨の広範囲な摩耗、骨棘の形成、関節の隙間の狭小化が顕著
末期関節軟骨のほぼ完全な消失、骨の変形が著しい、関節の隙間が非常に狭いか消失

FAI(股関節インピンジメント)

FAI(Femoroacetabular Impingement)は、大腿骨頭の付け根(大腿骨頸部)と寛骨臼の縁が衝突することで、痛みや引っかかりが生じる病態です。

これは、骨の形状に異常がある場合に起こりやすく、特に股関節を深く曲げたり、内側にひねったりする動作で症状が現れやすい特徴があります。

Cam型とPincer型

FAIには、大腿骨側の骨の突出が原因となるCam(カム)型と、寛骨臼側の骨の突出が原因となるPincer(ピンサー)型の2つのタイプがあります。

Cam型は、大腿骨頭の付け根が丸みを帯びるべきところが平坦または突出しているため、関節を動かす際に寛骨臼の縁と衝突します。

Pincer型は、寛骨臼の縁が過剰に発達しているために、大腿骨頭の付け根を挟み込んでしまいます。両方が合併している場合もあります。

発生する動作

FAIによる引っかかりや痛みは、股関節を深く曲げる動作、例えばしゃがむ、椅子から立ち上がる、自転車に乗る、車の乗り降りをする際などに特に強く感じられます。

また、スポーツ活動で股関節を大きく使う動作、例えばサッカーでのキックやバレエでの開脚などでも症状が出やすいです。

関節唇損傷

関節唇は、寛骨臼の縁にある線維軟骨のリングで、大腿骨頭を包み込み、関節の安定性を高め、衝撃を吸収するクッションのような役割を担っています。

この関節唇が損傷すると、関節の安定性が損なわれ、痛み、引っかかり、そして関節の不安定感が生じることがあります。

損傷の原因

関節唇の損傷は、外傷(転倒など)、繰り返しの微細なストレス(スポーツによる過度の負荷)、またはFAIのような骨の形態異常に伴って生じることが多いです。

特に、股関節に強いねじれの力が加わったり、急激な方向転換を行ったりする際に損傷しやすいとされます。

症状の特徴

関節唇損傷の主な症状は、鼠径部(足の付け根)の痛みです。この痛みは、特定の股関節の動きや、長時間の座位、歩行によって悪化することがあります。

また、引っかかりやカクッという音、そして股関節が不安定に感じる「抜けそうな」感覚を伴うことも特徴です。

その他の原因

上記以外にも、股関節の引っかかりや痛みは様々な原因で生じることがあります。

例えば、股関節周囲の腱鞘炎(けんしょうえん)や滑液包炎(かつえきほうえん)など、筋肉や腱、滑液包といった軟部組織の炎症が原因となる場合があります。

これらの炎症は、使いすぎや不良姿勢、急な運動量の増加などによって引き起こされることがあります。

また、稀にですが、神経の圧迫や腰からの関連痛が股関節の症状として現れることもあります。

股関節の引っかかりと痛みの主な原因

原因特徴
FAI骨の衝突による痛み、特定の動作で悪化
関節唇損傷関節の不安定感、クリック音、鼠径部痛
変形性股関節症軟骨の摩耗、進行性の痛みと可動域制限
腱の炎症股関節周囲の特定の部位の痛み、動作時痛
滑液包炎股関節の特定の部位の圧痛、炎症による痛み

引っかかりに伴う主な症状

股関節の引っかかりは、単に動きの違和感だけでなく、様々な症状を伴うことがあります。これらの症状は、引っかかりの原因となっている病態や、その進行度合いによって異なります。

引っかかりが痛みを伴う場合、その痛みの性質や、どのような時に痛むのかを把握することが、原因究明の手がかりとなります。

また、可動域の制限や異音など、痛み以外の症状にも注意を払うことが大切です。

痛みの特徴

股関節の痛みの現れ方は多様です。鈍い痛みは、股関節の深部に感じられ、じわじわと続くことが特徴です。これは、関節の炎症や軟骨の摩耗が背景にある場合に多いです。

鋭い痛みは、特定の動作をした時に「ズキン」と走るような痛みを指し、関節唇の損傷や骨の衝突(FAI)が強く疑われます。

また、動作時痛は、歩行、立ち上がり、階段昇降など、股関節に負荷がかかる際に現れる痛みで、安静時には痛みが軽減することがあります。

可動域の制限

股関節の引っかかりが強くなると、関節の動かせる範囲が狭くなることがあります。例えば、靴下を履く動作や、足を組む動作、あぐらをかく動作などが困難になります。

これは、関節内部の炎症や変形、骨の衝突などが原因で、物理的に動きが妨げられるためです。可動域の制限は、日常生活における動作の自由度を奪い、活動量を低下させる要因となります。

異音(クリック音など)

股関節を動かした際に、「カクッ」「パキッ」「ゴリゴリ」といった様々な異音が生じることがあります。

これは、関節内で何らかの組織が引っかかったり、擦れたり、乗り越えたりする際に発生する音です。

痛みを伴わない異音であれば、生理的な現象である場合も多いですが、痛みや引っかかり感と同時に現れる場合は、関節唇損傷や腱の弾発、軟骨の損傷などが関連している可能性があります。

筋力の低下と不安定感

股関節の痛みや引っかかりが続くと、その部位をかばうことで周囲の筋肉を使わなくなり、筋力が低下することがあります。

特に、股関節を安定させるために重要な臀部の筋肉や体幹の筋肉が弱まることがあります。筋力低下は、股関節の不安定感を引き起こし、さらに症状を悪化させる要因となる可能性があります。

不安定感は、歩行時や体重をかける際に股関節が「抜けるような」感覚として自覚されることがあります。

股関節の引っかかりに伴う症状の例

症状詳細
痛み鈍痛、鋭い痛み、動作時痛、安静時痛
可動域制限特定の動作での関節の動きの制限
異音クリック音、パキッという音、ゴリゴリ音
不安定感関節が抜けるような感覚、ぐらつき
筋力低下足を挙げにくい、力が入らない感覚

医療機関を受診するタイミング

股関節の引っかかりや痛みが続く場合、放置せずに早めに医療機関を受診することが大切です。

特に整形外科専門医の診断を受けることで、症状の正確な原因を特定し、適切な治療へと繋げることができます。

早期に問題を発見し対処することは、症状の悪化を防ぎ、より効果的な治療を受けるために重要です。

早期受診の重要性

股関節の痛みや引っかかりの症状を放置すると、病状が進行し、治療がより複雑になる可能性があります。

例えば、初期の変形性股関節症や関節唇損傷であれば、保存療法で症状の改善が見込める場合でも、進行すると手術が必要になることもあります。

また、痛みを我慢することで、日常生活の活動量が減少し、全身の健康にも悪影響を及ぼすことがあります。

このことにより、早期に専門家のアドバイスを受けることで、より良い結果を得ることが可能です。

どのような症状があれば受診すべきか

以下のような症状がある場合は、迷わず医療機関を受診してください。

痛みが続く場合

  • 数日〜数週間以上、股関節の痛みが持続している
  • 安静にしていても痛みが改善しない
  • 痛みが徐々に悪化している

日常生活に支障が出る場合

  • 歩くのが辛い、足を引きずるようになった
  • 椅子からの立ち上がりや階段の昇降が困難になった
  • 靴下を履く、爪を切るといった動作ができない
  • 夜間、痛みで目が覚める

医療機関受診の目安

  • 痛みが日に日に悪化する
  • 安静時にも常に痛む
  • 発熱を伴う股関節の痛みがある
  • 股関節が腫れている
  • 足を引きずるようになった
  • 日常生活動作に明らかな支障が生じている

股関節の引っかかり症状の診断方法

股関節の引っかかりや痛みの原因を正確に診断するためには、様々な検査が行われます。問診や身体診察に加え、X線検査、MRI検査といった画像診断が重要な役割を果たします。

これらの検査を総合的に判断することで、患者さんの股関節の状態を詳細に把握し、適切な治療計画を立てることが可能になります。

問診と身体診察

医療機関では、まず患者さんから詳しい症状の聞き取り(問診)を行います。

いつから、どのような時に引っかかりや痛みを感じるのか、痛みの性質や強さ、日常生活での困りごとなどを詳細に確認します。

次に、医師が直接股関節を触診し、動きの範囲や痛みの出る動作、筋肉の状態などを確認する身体診察を行います。

特定の動作をすることで症状が再現されるかを確認することも、診断の重要な手がかりとなります。

画像診断

問診や身体診察の結果に基づき、さらに詳しい情報を得るために画像診断が行われます。

X線検査でわかること

X線(レントゲン)検査は、骨の状態を評価するために最も基本的な画像検査です。

股関節のX線写真では、大腿骨頭や寛骨臼の骨の変形、関節の隙間の広さ、骨棘(骨の突出)の有無などを確認できます。

変形性股関節症の診断には不可欠であり、FAIなどの骨形態異常の評価にも用いられます。これにより、骨が原因となる引っかかりの有無を判断します。

MRI検査でわかること

MRI(磁気共鳴画像)検査は、X線では映らない軟部組織(関節軟骨、関節唇、靭帯、筋肉、腱、滑液包など)の状態を詳細に評価できる検査です。

関節唇の損傷、軟骨の変性、骨挫傷、周囲の筋肉や腱の炎症などを捉えることが可能です。

股関節の引っかかりや痛みの原因が、骨以外の軟部組織にある場合に特に有用な情報をもたらします。

診断に用いられる主な画像検査

検査方法主にわかること
X線検査骨の形態、関節の隙間、骨棘の有無
MRI検査関節唇、軟骨、靭帯、筋肉などの軟部組織の状態
CT検査骨の詳細な三次元構造、骨折の有無

股関節の引っかかりと痛みの治療アプローチ

股関節の引っかかりと痛みの治療は、その原因や症状の程度によって様々なアプローチがあります。

大きく分けて、手術を行わない「保存療法」と、手術によって根本的な解決を図る「手術療法」があります。患者さんの状態や希望を考慮し、最も適切な治療方法が選択されます。

保存療法

保存療法は、手術以外の方法で症状の改善を目指す治療です。初期の段階や症状が軽度な場合にまず選択されることが多いです。

薬物療法

痛みを和らげ、炎症を抑えるために、非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)などの内服薬や、湿布、塗り薬が用いられます。

炎症が強い場合には、ステロイドの関節内注射が考慮されることもあります。

これらの薬は対症療法であり、根本的な原因を取り除くものではありませんが、痛みを軽減し、リハビリテーションを行いやすくする役割があります。

理学療法(運動療法・物理療法)

理学療法は、股関節の機能改善を目指す上で非常に重要です。運動療法では、股関節周囲の筋肉を強化し、柔軟性を高めるためのストレッチやエクササイズを行います。

特に、股関節を安定させるためのインナーマッスルの強化や、姿勢の改善に繋がる運動が中心となります。

物理療法では、温熱療法や電気療法などを用いて、痛みの軽減や血行促進を図ります。

生活指導と装具療法

日常生活における股関節への負担を減らすための指導も大切です。

例えば、長時間の立ちっぱなしや座りっぱなしを避け、適度な休憩を取ること、重いものを持つ際の工夫などが挙げられます。

また、必要に応じて、股関節を保護する装具や、歩行を補助する杖などの使用が勧められることもあります。これらの工夫により、股関節にかかるストレスを軽減します。

保存療法の主な方法

方法目的
薬物療法痛みや炎症の軽減
理学療法筋力強化、柔軟性向上、姿勢改善
生活指導日常生活での負担軽減、動作改善
装具療法関節の保護、歩行補助

手術療法

保存療法で十分な効果が得られない場合や、病状が進行している場合には、手術療法が検討されます。

関節鏡手術

関節鏡手術は、股関節に小さな穴を開け、内視鏡を挿入して行う低侵襲な手術です。関節唇の修復や、FAIの原因となる骨の突出部を削り取る形成術などが行われます。

この手術は、傷口が小さく、回復が比較的早いという特徴があります。

人工股関節置換術

変形性股関節症が進行し、関節軟骨がほとんどなくなり、日常生活に大きな支障をきたしている場合には、人工股関節置換術が選択されることがあります。

これは、損傷した股関節の骨と軟骨を人工のインプラントに置き換える手術です。この手術により、痛みが大きく軽減され、股関節の機能が回復することが期待できます。

股関節の引っかかり症状の予防とセルフケア

股関節の引っかかりや痛みを予防し、症状の悪化を防ぐためには、日々の生活におけるセルフケアが非常に重要です。

正しい知識を持ち、適切な運動習慣や生活習慣を身につけることで、股関節の健康を維持し、快適な日常生活を送ることが可能になります。

適切な運動習慣

股関節の健康を維持するためには、適度な運動が大切です。ただし、過度な負荷は逆効果になることもあるため注意が必要です。

股関節に優しい運動としては、ウォーキング、水中運動、サイクリングなどが挙げられます。

これらの運動は、股関節に大きな衝撃を与えることなく、周囲の筋肉を強化し、関節の柔軟性を保つのに役立ちます。

体重管理

体重が増加すると、股関節にかかる負担も比例して増大します。特に、肥満は変形性股関節症のリスクを高める要因となります。

適切な体重を維持することは、股関節への負担を軽減し、痛みや引っかかりの症状を予防するために重要です。

バランスの取れた食事と定期的な運動により、健康的な体重管理を心がけましょう。

姿勢の改善

猫背や反り腰など、不良な姿勢は股関節に不均等な負荷をかける原因となります。

正しい姿勢を意識することで、股関節への負担を均等に分散し、特定の部位にストレスが集中するのを防ぐことができます。

立つとき、座るとき、歩くときなど、日々の動作の中で、骨盤を立て、背筋を伸ばすことを意識することが大切です。

早期発見と対処

股関節に違和感や軽い引っかかりを感じた際には、様子を見ずに早めに対処することが大切です。

初期の段階であれば、簡単なセルフケアや生活習慣の見直しで症状の悪化を防げる可能性があります。

痛みが続くようであれば、専門医に相談し、適切な診断とアドバイスを受けることを検討してください。

股関節の健康を保つためのセルフケア

  • 適度な運動
  • 正しい姿勢の維持
  • 適切な体重管理
  • 十分な休息
  • バランスの取れた食事

股関節への負担を減らす日常動作

動作工夫のポイント
立ち上がり方膝を十分に曲げ、手すりや椅子を活用してゆっくりと立ち上がる
座り方深く腰掛け、膝と股関節が90度になるように座る。柔らかすぎる椅子は避ける
物を持つ際重いものは身体に近づけて持ち、膝を曲げて腰を落として持ち上げる
寝方仰向けで膝の下にクッションを入れる、横向きで股の間にクッションを挟む

よくある質問

股関節の引っかかりや痛みに関して、多くの方が疑問に感じるであろう点について、Q&A形式で解説します。

股関節の引っかかりは自然に治りますか?

股関節の引っかかりや痛みが自然に治るかどうかは、その原因によって異なります。一時的な筋肉の緊張や軽度の炎症であれば、安静にすることで改善する可能性もあります。

しかし、関節唇損傷、股関節インピンジメント(FAI)、変形性股関節症といった構造的な問題が原因である場合、自然に治ることは稀で、むしろ症状が悪化する可能性があります。

痛みが続く場合や、日常生活に支障をきたす場合は、専門医の診断を受けることが大切です。

運動はしても良いですか?

股関節に引っかかりや痛みがある場合でも、適切な運動は可能です。ただし、痛みを誘発するような激しい運動や、股関節に過度な負担をかける運動は避けるべきです。

ウォーキング、水中運動、サイクリングなど、股関節への負担が少ない運動を選び、痛みのない範囲で行うことが重要です。

運動療法は、股関節周囲の筋力を強化し、関節の安定性を高めるために非常に有効ですが、自己判断で行うのではなく、専門家(医師や理学療法士)の指導のもとで行うことを強くお勧めします。

食事で気を付けることはありますか?

特定の食品が直接的に股関節の引っかかりや痛みを改善するという科学的な根拠は明確ではありませんが、関節の健康をサポートするためには、バランスの取れた食事が重要です。

特に、炎症を抑える効果が期待されるオメガ-3脂肪酸(青魚などに含まれる)、骨や軟骨の健康に必要なカルシウムやビタミンD(乳製品、小魚、きのこ類など)、抗酸化作用のあるビタミンCやE(野菜、果物など)を積極的に摂ることをお勧めします。

また、体重管理の観点からも、過剰なカロリー摂取を避け、栄養バランスの良い食事を心がけることが大切です。

冷やすのと温めるのはどちらが良いですか?

股関節の痛みに対する冷却と温熱のどちらが適切かは、痛みの性質や原因によって異なります。

急性の痛みや炎症が強い時期(例えば、運動後に急に痛みが出た場合や、股関節が熱を持っている場合)には、冷却が有効です。

これにより、炎症を抑え、痛みを和らげる効果が期待できます。一方、慢性の痛みや、筋肉のこわばりが原因である場合、温めることで血行を促進し、筋肉の緊張を緩和する効果が期待できます。

どちらが良いか迷う場合は、両方を試してみて、ご自身が心地よく感じる方を選ぶか、医師や理学療法士に相談してください。

以上

参考文献

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Author

北城 雅照

医療法人社団円徳 理事長
医師・医学博士、経営心理士

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