整形外科における膝の治療 – 専門医による診断と治療法
膝の痛みは、多くの人が経験する症状の一つです。その原因は、加齢による変化、スポーツや日常生活での怪我、あるいは病気など多岐にわたります。
痛みを抱えながら生活することは、行動範囲を狭め、生活の質を大きく低下させる要因になりかねません。整形外科では、まず痛みの根本原因を正確に突き止めることから治療を始めます。
この記事では、整形外科の専門医がどのように膝の症状を診断し、どのような治療法を選択していくのかを詳しく解説します。
ご自身の症状を理解し、今後の治療について考えるための一助となれば幸いです。
目次
膝の痛みを引き起こす主な原因
膝の痛みと一言でいっても、その背景には様々な疾患や状態が隠れています。原因を正しく理解することは、適切な治療への第一歩です。
ここでは、整形外科でよく見られる膝の痛みの代表的な原因について、それぞれの特徴を解説します。ご自身の症状がどれに近いかを確認してみましょう。
加齢に伴う変形性膝関節症
変形性膝関節症は、膝の痛みの原因として最も多い疾患の一つです。
長年の使用により、膝関節のクッションの役割を果たす軟骨がすり減り、骨が変形することで痛みや腫れ、動かしにくさが生じます。
特に中高年以降の女性に多く見られ、初期には立ち上がりや歩き始めに痛む程度ですが、進行すると安静時にも痛みが続くようになります。
変形性膝関節症の進行度と症状
進行度 | 主な症状 | 特徴 |
---|---|---|
初期 | 立ち上がり、歩き始めの痛み | 休むと痛みが和らぐことが多い。 |
中期 | 階段昇降や正座が困難になる | 膝の曲げ伸ばしが制限され、水がたまることもある。 |
末期 | 安静時や夜間にも痛む | O脚やX脚の変形が目立ち、歩行が困難になる。 |
スポーツや事故による膝の怪我
若い世代やスポーツを活発に行う人では、外傷(怪我)が膝の痛みの主な原因となります。
急な方向転換やジャンプからの着地、他者との接触などで膝に強い力が加わり、靭帯や半月板といった組織が損傷します。
代表的なものに、前十字靭帯損傷や半月板損傷があります。受傷直後には激しい痛みや腫れ、「膝がガクッと崩れる」ような不安定感を感じることがあります。
代表的な膝の外傷
損傷部位 | 主な原因 | 特徴的な症状 |
---|---|---|
前十字靭帯損傷 | スポーツ中の急停止や方向転換 | 受傷時の断裂音、膝崩れ、激しい痛みと腫れ |
半月板損傷 | 膝をひねる動作、強い衝撃 | ひっかかり感、ロッキング(膝が動かなくなる) |
内側側副靭帯損傷 | 膝の外側からの衝撃 | 膝の内側の痛みと不安定感 |
関節リウマチなどの炎症性疾患
関節リウマチは、自己免疫疾患の一つで、免疫システムの異常により自分自身の関節を攻撃してしまう病気です。
膝関節に発症すると、関節内に炎症が起きて軟骨や骨が破壊され、痛みや腫れ、こわばりを引き起こします。
特に朝起きた時に関節が動かしにくい「朝のこわばり」が特徴的な症状です。変形性膝関節症とは異なり、手足の指など複数の関節に症状が現れることが多くあります。
その他の原因
上記以外にも、膝の痛みを引き起こす原因は存在します。
例えば、尿酸の結晶が関節にたまることで激しい痛みを引き起こす「痛風」や、ピロリン酸カルシウムの結晶が原因となる「偽痛風」も膝に発症することがあります。
また、成長期の子供に見られるオスグッド・シュラッター病や、細菌感染による化膿性膝関節炎など、年齢や体の状態によって様々な原因が考えられます。
整形外科で行う専門的な診断
膝の痛みの原因を正確に特定するため、整形外科では多角的な視点から診断を進めます。
患者さんからのお話を聞く問診から始まり、身体診察、そして画像検査などを組み合わせて、痛みの根本に迫ります。ここでは、診断に至るまでの具体的な検査内容について解説します。
問診と身体診察の重要性
診断の第一歩は、患者さんの話を詳しく聞く「問診」です。いつから、どこが、どのように痛むのか、どのような時に痛みが強くなるのか、過去の怪我の経験などを詳しく尋ねます。
この問診から得られる情報は、原因を推測する上で非常に重要です。続いて、医師が膝の状態を直接見て、触って評価する「身体診察」を行います。
膝の腫れや熱感、変形の有無、押して痛む場所(圧痛点)、関節の動く範囲、靭帯の安定性などを確認し、どの組織に問題がある可能性が高いかを判断します。
身体診察で確認する主な項目
- 関節の可動域(曲げ伸ばしの角度)
- 圧痛点の有無と位置
- 関節の安定性(ぐらつきの有無)
- 腫れや熱感、発赤の有無
レントゲン(X線)検査でわかること
レントゲン検査は、骨の状態を評価するための基本的な画像検査です。関節の隙間の広さ(軟骨の厚みの指標)、骨の変形の有無、骨折などを確認できます。
特に変形性膝関節症の診断や進行度の評価に有用です。検査は短時間で済み、多くの医療機関で手軽に行える利点があります。
ただし、レントゲンには軟骨や靭帯、半月板といった柔らかい組織は写らないため、これらの損傷が疑われる場合は他の検査が必要になります。
MRI検査による詳細な評価
MRI検査は、磁気と電波を使って体内の断面を撮影する検査です。レントゲンでは見ることのできない軟骨、半月板、靭帯、筋肉といった軟部組織の状態を詳細に描出できます。
このことにより、前十字靭帯損傷や半月板損傷、軟骨の傷などを正確に診断することが可能です。
レントゲンで異常が見られないにもかかわらず痛みが続く場合に、原因を特定するために非常に有効な検査です。
レントゲン検査とMRI検査の比較
検査項目 | レントゲン検査 | MRI検査 |
---|---|---|
評価できる組織 | 骨(変形、骨折など) | 軟骨、半月板、靭帯、筋肉など |
特徴 | 短時間、手軽に行える | 軟部組織の評価に優れる、検査に時間がかかる |
放射線被ばく | あり(微量) | なし |
関節液検査や血液検査の目的
膝に関節液(いわゆる「水」)がたまっている場合、注射器で関節液を抜いてその性状を調べる「関節液検査」を行うことがあります。
関節液の色や濁り、含まれる成分を分析することで、炎症の種類や程度を判断します。例えば、痛風や偽痛風では結晶を、化膿性関節炎では細菌を確認できます。
また、「血液検査」は、関節リウマチなどの全身性の炎症性疾患が疑われる場合に行い、炎症反応の数値や自己抗体の有無などを調べ、診断の助けとします。
保存療法によるアプローチ
膝の治療では、多くの場合、手術以外の方法である「保存療法」から開始します。保存療法の目的は、痛みを和らげ、炎症を抑え、膝関節の機能を維持・改善することです。
患者さん一人ひとりの症状や原因に合わせて、様々な治療法を組み合わせて行います。ここでは、代表的な保存療法について解説します。
薬物療法(内服薬・外用薬)
痛みをコントロールするために薬を使用します。基本となるのは、炎症を抑えて痛みを和らげる「非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)」です。
飲み薬(内服薬)のほか、湿布や塗り薬(外用薬)も広く用いられます。外用薬は、内服薬に比べて全身への影響が少ないという利点があります。
胃腸障害などの副作用が心配な方や、痛みが比較的軽い場合には、炎症を抑える作用はないものの、痛みを和らげる「アセトアミノフェン」が選択されることもあります。
主な内服薬の種類と作用
薬剤の種類 | 主な作用 | 注意点 |
---|---|---|
非ステロイド性消炎鎮痛薬 | 炎症を抑え、痛みを和らげる | 胃腸障害や腎機能への影響に注意が必要。 |
アセトアミノフェン | 脳に作用して痛みを和らげる | 空腹時でも服用可能だが、肝機能への配慮が必要。 |
オピオイド鎮痛薬 | 強い痛みを抑える | 眠気や吐き気などの副作用があり、慎重な使用が求められる。 |
関節内注射
薬物療法で効果が不十分な場合や、痛みが強い場合に、関節内に直接薬剤を注射する治療法があります。代表的なものに「ヒアルロン酸注射」と「ステロイド注射」があります。
ヒアルロン酸は、もともと関節液に含まれている成分で、関節の動きを滑らかにし、軟骨を保護する効果が期待されます。
一方、ステロイドは非常に強力な抗炎症作用があり、急性の強い痛みや腫れを抑えるのに有効です。
ただし、頻繁に使用すると軟骨や組織に悪影響を及ぼす可能性があるため、使用間隔には注意が必要です。
ヒアルロン酸注射とステロイド注射
注射の種類 | 主な目的 | 特徴 |
---|---|---|
ヒアルロン酸注射 | 関節機能の改善、痛みの緩和 | 効果発現は緩やか。複数回の注射を要する。 |
ステロイド注射 | 強力な抗炎症作用、急性の痛みの緩和 | 即効性が期待できるが、頻回使用は避ける。 |
装具療法
装具を用いて膝の安定性を高め、負担を軽減する治療法です。膝の状態に合わせて様々な種類の装具があります。
「サポーター」は、膝全体を保温・圧迫することで安定感をもたらし、痛みを和らげます。
「足底板(インソール)」は、靴の中に入れて足の傾きを調整し、O脚やX脚による膝への偏った負担を軽減します。
変形性膝関節症や靭帯損傷後の不安定感が残る場合に有効です。
物理療法
物理療法は、温熱、寒冷、電気、超音波などの物理的なエネルギーを利用して、痛みの緩和や血行改善、組織の修復を促す治療法です。
リハビリテーションの一環として行われることが多くあります。「温熱療法」は、患部を温めることで血行を良くし、筋肉の緊張を和らげます。
慢性的な痛みに有効です。「電気刺激療法」は、微弱な電気を流して痛みの感覚を麻痺させたり、筋肉の収縮を促したりします。
運動療法の重要性と具体的な方法
膝の治療において、運動療法(リハビリテーション)は薬物療法と並んで非常に重要な役割を担います。
単に安静にするだけでなく、適切な運動で膝周りの筋力を強化し、関節の柔軟性を保つことが、痛みの軽減と機能改善につながります。
ここでは、運動療法の目的と、安全に行える具体的な方法について解説します。
なぜ運動療法が膝の治療に必要なのか
膝を支える筋肉、特に太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)が衰えると、歩行や立ち座りの際に膝関節にかかる衝撃を十分に吸収できなくなり、痛みが増悪する原因となります。
運動療法によってこの大腿四頭筋を鍛えることで、膝の安定性が増し、関節への負担が軽減されます。
また、関節を動かすことで血行が促進され、痛みの物質が排出されやすくなるほか、関節の動きが滑らかになり、可動域の低下を防ぐ効果も期待できます。
膝周りの筋力トレーニング
膝に負担をかけずに筋力を強化することが大切です。代表的な運動に「大腿四頭筋セッティング」があります。
これは、椅子に座った状態や仰向けに寝た状態で、膝を伸ばしたまま太ももの前の筋肉に力を入れる運動です。
また、椅子に座ってゆっくりと膝を伸ばしていく「膝伸ばし運動」も効果的です。これらの運動は、関節自体を動かすわけではないため、痛みが強い時期からでも始めやすいのが特徴です。
関節の動きを滑らかにするストレッチ
筋肉や関節周囲の組織が硬くなると、膝の動きが悪くなり、痛みの原因となります。ストレッチによって柔軟性を取り戻すことが重要です。
太ももの裏側(ハムストリングス)やふくらはぎの筋肉をゆっくりと伸ばすストレッチが有効です。
痛みを感じない範囲で、心地よく伸びている感覚を意識しながら、一つのポーズを20〜30秒程度維持します。反動をつけずにゆっくり行うことがポイントです。
運動を行う上での注意点
運動療法は、やり方を間違えると逆に膝の痛みを悪化させてしまう可能性があります。運動の前後にはウォーミングアップとクールダウンを必ず行いましょう。
また、運動中に強い痛みを感じた場合は、無理をせず中止してください。どのような運動を、どのくらいの強度と頻度で行うべきかは、個人の症状や体力によって異なります。
始める前には、医師や理学療法士に相談し、適切な指導を受けることが大切です。
運動時の注意点リスト
- 運動前後のウォーミングアップとクールダウン
- 痛みを感じたら無理せず中止する
- 専門家の指導のもとで開始する
- 継続することが重要
手術療法を検討するタイミングと種類
保存療法を続けても日常生活に支障をきたすほどの痛みが改善しない場合や、外傷によって関節の構造が大きく損傷した場合には、手術療法が検討されます。
手術と聞くと不安を感じる方も多いかもしれませんが、近年では患者さんの負担が少ない方法も開発されています。
ここでは、どのような場合に手術を考え、どのような選択肢があるのかを解説します。
手術を検討すべき症状のサイン
手術を検討する明確な基準はありませんが、一般的には以下のような状態が続く場合に選択肢として浮上します。
まず、痛みが強く、歩行や階段昇降といった日常の基本的な動作が困難になった場合です。
また、保存療法(薬物療法、注射、リハビリなど)を十分な期間行っても効果が見られない場合や、膝の変形が進行し、見た目にもO脚などが明らかになった場合も手術を考えるタイミングと言えます。
最終的には、患者さん自身の生活の質や活動レベルへの希望を考慮し、医師と十分に相談して決定します。
関節鏡視下手術
関節鏡視下手術は、数ミリ程度の小さな切開部からカメラ(関節鏡)と手術器具を関節内に挿入して行う手術です。
モニターで関節の内部を直接見ながら、損傷した半月板の切除や縫合、剥がれた軟骨の処置などを行います。傷が小さく、術後の回復が早いことが大きな利点です。
主に、半月板損傷や前十字靭帯損傷、関節内の遊離体(関節ねずみ)の除去などに適用されます。
高位脛骨骨切り術
高位脛骨骨切り術(こういけいこつこつきりじゅつ)は、O脚変形が進行した変形性膝関節症に対して行われる手術です。
すねの骨(脛骨)の一部を切り、角度を調整して固定し直すことで、体重がかかるラインを膝の内側から外側へ移動させます。
このことにより、すり減った内側の軟骨への負担を減らし、痛みを和らげます。自分の関節を温存できるため、比較的活動性の高い若い世代の患者さんによい適応となります。
人工膝関節置換術
人工膝関節置換術は、損傷した関節の表面を取り除き、金属やポリエチレンなどでできた人工の関節(インプラント)に置き換える手術です。
変形性膝関節症や関節リウマチが末期まで進行し、他の治療法では痛みのコントロールが困難な場合に選択されます。
痛みの原因となる部分そのものを置き換えるため、除痛効果が高いのが特徴です。膝全体を置き換える「全置換術(TKA)」と、傷んだ部分だけを置き換える「単顆置換術(UKA)」があります。
主な手術療法の比較
手術方法 | 主な対象 | 目的 |
---|---|---|
関節鏡視下手術 | 半月板損傷、靭帯損傷など | 損傷部位の修復・切除 |
高位脛骨骨切り術 | O脚変形の変形性膝関節症 | 荷重軸の移動、関節温存 |
人工膝関節置換術 | 末期の変形性膝関節症、関節リウマチ | 除痛、関節機能の再建 |
日常生活で膝の負担を減らす工夫
膝の治療効果を高め、再発を防ぐためには、医療機関での治療と並行して、日々の生活習慣を見直すことが非常に重要です。
何気ない動作が、知らず知らずのうちに膝へ大きな負担をかけていることがあります。ここでは、日常生活の中で簡単に取り入れられる、膝に優しい工夫を紹介します。
体重管理の重要性
体重は膝にかかる負担と密接な関係があります。歩行時には体重の約3倍、階段の上り下りでは約7倍もの負荷が膝にかかると言われています。
つまり、体重が1kg増えるだけで、膝にはその数倍の負担が加わることになります。逆に、体重を少し減らすだけでも、膝の負担は大きく軽減され、痛みの緩和につながります。
食事内容の見直しや、水泳や水中ウォーキングなど膝に負担の少ない運動を取り入れ、適正体重を維持するよう心がけましょう。
正しい歩き方と姿勢
猫背で歩いたり、膝を曲げたまま歩いたりする癖は、膝への負担を増大させます。
背筋を伸ばし、かかとから着地して、つま先でしっかりと地面を蹴り出すように意識するだけで、歩行時の衝撃を和らげることができます。
また、長時間同じ姿勢でいることも避けるべきです。デスクワークの合間には立ち上がって軽くストレッチをするなど、こまめに体を動かす習慣をつけましょう。
床からの立ち座りや階段昇降のコツ
和式の生活は膝に負担をかける動作が多くなります。できるだけ椅子やベッドを使用する洋式の生活スタイルに切り替えることが望ましいです。
床から立ち上がる際は、近くの安定したテーブルや椅子に手をついて、腕の力も利用すると膝への負担を減らせます。階段の上り下りでは、手すりを必ず使いましょう。
上る時は痛くない方の足から、下りる時は痛い方の足から出すのが基本です。
日常動作での負担軽減策
動作 | 負担を減らすコツ | ポイント |
---|---|---|
立ち座り | 椅子や手すりを利用する | 膝だけで立ち上がらない。 |
階段昇降 | 手すりを使い、一段ずつ昇降する | 上りは健側から、下りは患側から。 |
荷物を持つ | リュックやカートを利用する | 片側に重さが偏らないようにする。 |
靴選びのポイント
足に合わない靴や不安定な靴は、膝の痛みを悪化させる原因になります。靴を選ぶ際は、かかとがしっかりしていて、靴底には適度な厚みとクッション性があるものを選びましょう。
つま先部分にはゆとりがあり、指が自由に動かせることも大切です。ハイヒールや底の硬い靴は、膝への衝撃が大きくなるため、長時間の使用は避けるのが賢明です。
靴選びのチェック項目
- クッション性の高い靴底
- 安定したかかと周り
- 指が動かせるつま先のゆとり
- 足の甲にフィットする紐やベルト
よくある質問
膝の治療について、患者さんから寄せられることの多い質問にお答えします。多くの方が抱く疑問や不安を解消するための一助としてください。
ただし、個々の症状については主治医とよく相談することが最も重要です。
膝の水を抜くと癖になりますか?
「膝の水を抜くと癖になる」というのはよく聞かれる言葉ですが、医学的には誤解です。
膝に関節液(水)がたまるのは、関節内で炎症が起きている「結果」です。水を抜くという行為そのものが、水がたまりやすくなる原因ではありません。
炎症が続く限り、関節液は再び産生されます。痛みが強い場合や膝がパンパンに張って曲げにくい場合には、水を抜くことで症状が楽になります。
大切なのは、水がたまる原因となっている根本の炎症を治療することです。
サプリメントは効果がありますか?
グルコサミンやコンドロイチンといったサプリメントが、膝の痛みに効果があるかについては、多くの研究が行われていますが、現在のところ医学的に明確な有効性は証明されていません。
一部の方で痛みが和らいだという報告もありますが、その効果は限定的と考えられています。サプリメントはあくまで健康食品であり、医薬品ではありません。
頼りすぎるのではなく、基本となる運動療法や体重管理など、科学的根拠のある治療法を優先することが大切です。
痛いときでも運動はした方が良いですか?
痛みの程度によります。膝が赤く腫れて熱を持っているような急性の強い痛みがある場合は、無理に運動すると炎症を悪化させる可能性があります。
このような時期は安静を基本とし、痛みが和らいでから運動を再開します。一方、慢性的な痛みの場合、痛いからといって全く動かないでいると、かえって筋力が低下し、関節が硬くなってしまいます。
痛みを感じない範囲で、膝に負担の少ない運動(大腿四頭筋セッティングや水中ウォーキングなど)を継続することが、長期的な症状の改善につながります。
手術後のリハビリはどのくらいかかりますか?
手術後のリハビリテーションの期間は、行った手術の種類や患者さん個人の状態によって大きく異なります。
例えば、関節鏡視下手術のような比較的負担の少ない手術であれば、数週間から数ヶ月でスポーツ復帰を目指せる場合もあります。
一方、人工膝関節置換術のような大きな手術の場合、入院中からリハビリを開始し、退院後も数ヶ月から半年程度、継続的なリハビリテーションが必要となるのが一般的です。
手術後の機能回復を最大限に引き出すためには、焦らず、専門家の指導のもとでリハビリにしっかり取り組むことが重要です。
質問と回答の要約
質問 | 回答の要点 |
---|---|
水を抜くと癖になる? | 癖にはならない。水がたまるのは炎症が原因。 |
サプリメントは効く? | 医学的な有効性は確立されていない。治療の基本は運動など。 |
痛くても運動すべき? | 急性の強い痛みでは安静。慢性痛では痛くない範囲で継続が重要。 |
以上
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