足立慶友医療コラム

膝をひねると痛い症状の原因 – 応急処置と治療法

2025.07.18

スポーツ中や日常生活のふとした動作で膝をひねってしまい、「ズキッ」という鋭い痛みに襲われた経験はありませんか。

膝をひねると痛いという症状は、誰にでも起こりうる身近な怪我の一つです。しかし、その痛みは単なる打撲ではなく、膝の内部にある重要な組織が傷ついているサインかもしれません。

この記事では、膝をひねって痛みが生じる原因を詳しく解説し、怪我をした直後に行うべき応急処置、そして医療機関で行う専門的な治療法について、分かりやすく紹介します。

膝をひねるとはどういう状態か

「膝をひねる」という言葉はよく耳にしますが、具体的に膝関節の中で何が起きているのでしょうか。

この部分では、膝関節の基本的なつくりと、ひねるという動作が膝にどのような影響を与え、痛みを引き起こすのかを解説します。

関節の構造を理解することは、怪我の原因を知る第一歩です。

膝関節の基本的な構造

膝関節は、太ももの骨である「大腿骨(だいたいこつ)」、すねの骨である「脛骨(けいこつ)」、そしてお皿の骨である「膝蓋骨(しつがいこつ)」の3つの骨で構成されています。

これらの骨の表面は、衝撃を吸収するクッションの役割を持つ「関節軟骨」で覆われています。

さらに、大腿骨と脛骨の間には「半月板(はんげつばん)」というC型をした軟骨組織があり、関節の安定性を高めるとともに、衝撃を分散させる重要な働きを担っています。

これらの骨同士は、強力な「靭帯(じんたい)」によって連結され、関節が正常な範囲で動くように支えています。

膝関節を構成する主な組織

組織名主な役割特徴
骨(大腿骨・脛骨・膝蓋骨)体重を支え、関節の土台となる人体で最も大きな関節を形成
関節軟骨骨の表面を覆い、衝撃を吸収する滑らかで弾力性がある
半月板関節の適合性を高め、衝撃を分散内側と外側に1枚ずつ存在する

「ひねる」という動きで何が起こるか

膝をひねる動作は、足先が地面に固定された状態で、上半身や太ももがねじられるような動きをしたときに発生します。

例えば、急な方向転換、ジャンプからの着地、あるいは他者との接触などが典型的な場面です。このとき、膝関節には正常な可動域を超える強力な回旋力が加わります。

このねじれの力に、膝を支える靭帯や半月板などの軟部組織が耐えきれなくなると、組織が引き伸ばされたり、部分的に断裂したり、あるいは完全に断裂したりします。

これが「膝をひねった」状態であり、組織の損傷が痛みの直接的な原因となります。

痛みの発生する仕組み

靭帯や半月板、関節を包む「関節包(かんせつほう)」といった組織には、痛みを感じる神経が豊富に分布しています。

ひねる力によってこれらの組織が損傷すると、損傷部位から痛み物質が放出されます。この物質が神経を刺激することで、私たちは「痛い」と感じるのです。

また、損傷に伴って組織内の毛細血管が破れると内出血が起こり、関節内に血液や関節液が溜まります。

このことにより関節が腫れあがり(関節水腫)、膝の曲げ伸ばしが困難になるとともに、圧迫による持続的な痛みを引き起こすことがあります。

膝をひねって痛いときに考えられる主な原因

膝をひねった際の痛みは、損傷した組織によって特徴が異なります。

ここでは、膝の捻挫で損傷しやすい代表的な組織である「靭帯」「半月板」「軟骨」そして「骨」の損傷について、それぞれどのような怪我なのかを解説します。

原因を特定することが、適切な治療への第一歩です。

靭帯損傷

靭帯は骨と骨とをつなぎ、関節の安定性を保つ強靭な線維の束です。膝関節には主に4本の重要な靭帯があり、ひねり方によって損傷する部位が異なります。

靭帯が損傷すると、強い痛みや腫れとともに、膝がぐらぐらするような不安定感を感じることがあります。

膝の安定を司る4つの主要な靭帯

靭帯名位置主な役割
前十字靭帯 (ACL)膝関節の中央脛骨が前方へずれるのを防ぐ
後十字靭帯 (PCL)膝関節の中央脛骨が後方へずれるのを防ぐ
内側側副靭帯 (MCL)膝の内側膝が外側に開くのを防ぐ
外側側副靭帯 (LCL)膝の外側膝が内側に開くのを防ぐ

特にスポーツ活動中に損傷することが多いのは前十字靭帯で、「ブチッ」という断裂音を感じることもあります。

内側側副靭帯は、膝の外側からタックルを受けるなど、膝が外側に強制されるような動きで損傷しやすいです。

半月板損傷

半月板は、膝関節の内側と外側に一つずつある軟骨組織で、クッションの役割を果たしています。

体重がかかった状態で膝をひねる動作が加わると、この半月板が大腿骨と脛骨の間に挟み込まれるようにして損傷することがあります。

損傷すると、膝の曲げ伸ばしの際に痛みや引っかかり感が生じます。

ひどい場合には、断裂した半月板が関節の間に挟まり、膝が動かなくなる「ロッキング」という状態を引き起こすこともあります。

軟骨損傷

関節軟骨は、骨の末端を覆う滑らかな組織です。強い衝撃やひねる力が加わることで、この軟骨がすり減ったり、剥がれたりすることがあります。

軟骨自体には痛みを感じる神経がありませんが、軟骨が剥がれてその下の骨が露出したり、剥がれた軟骨の欠片が関節内を刺激したりすることで痛みが生じます。

軟骨の損傷は、将来的に変形性膝関節症へと進行する可能性もあるため注意が必要です。

骨折

非常に強い外力が加わった場合、膝をひねることで骨折を起こすこともあります。

靭帯が付着している部分の骨が、靭帯に引っ張られて剥がれてしまう「剥離骨折(はくりこっせつ)」や、関節面が陥没する「脛骨高原骨折(けいこつこうげんこっせつ)」などが考えられます。

骨折を伴う場合は、激しい痛みと腫れ、体重をかけることができない、といった症状が現れます。

症状から損傷部位を推測する

膝をひねった後の症状は、損傷した部位を知るための重要な手がかりになります。

痛みの場所や種類、腫れの程度、膝の動きにくさなど、ご自身の症状を注意深く観察することで、どの組織が傷ついている可能性が高いのかをある程度推測できます。

ここでは、症状ごとの特徴と、考えられる原因を解説します。

痛みの場所による違い

痛みが膝のどのあたりに最も強く出ているかによって、損傷部位を絞り込むことができます。

痛みの場所と関連する主な損傷部位

痛みの場所考えられる主な損傷特徴的な症状
膝の内側内側側副靭帯損傷、内側半月板損傷膝の内側を押すと痛む、膝が外側に開くと痛む
膝の外側外側側副靭帯損傷、外側半月板損傷膝の外側を押すと痛む、膝が内側に開くと痛む
膝の前面・お皿の周り膝蓋骨脱臼、膝蓋下脂肪体炎お皿がずれた感覚、膝を伸ばすと痛む
膝の奥・全体前十字靭帯損傷、後十字靭帯損傷膝が不安定な感じ、急に力が抜ける

もちろん、これはあくまで目安であり、複数の組織が同時に損傷していることも少なくありません。正確な診断には専門医による診察が必要です。

腫れや熱感の有無

怪我の直後から急速に膝がパンパンに腫れてきた場合、関節内での出血が疑われます。これは、血流が豊富な前十字靭帯の断裂などでよく見られる症状です。

一方、数時間から翌日にかけてゆっくりと腫れてくる場合は、関節液の過剰な分泌が原因と考えられ、半月板損傷や軟骨損傷の可能性があります。

また、損傷部位では炎症が起きるため、触ると熱を持っている(熱感)ことが多いです。

膝の不安定感(ぐらつき)

「膝がぐらぐらする」「歩いていると急にカクンと膝が抜ける感じがする(膝くずれ)」といった症状は、膝の安定性を保つ靭帯が損傷している典型的なサインです。

特に、脛骨が前後にずれるような感覚がある場合は、十字靭帯(前十字または後十字)の損傷が強く疑われます。

この不安定感を放置すると、二次的に半月板や軟骨を傷つけてしまう危険性が高まります。

膝の動きの制限(ロッキング現象)

膝を曲げ伸ばしする途中で、何かが引っかかってそれ以上動かせなくなる状態を「ロッキング」と呼びます。急に膝が固まってしまい、特定の角度から動かせなくなるのが特徴です。

これは、損傷して断裂した半月板の一部が関節の隙間に挟まり込むことで起こります。

少し時間を置いたり、膝をゆっくり動かしたりすると解除されることもありますが、頻繁に繰り返す場合は手術を検討することもあります。

膝をひねった直後に行うべき応急処置

膝をひねってしまったら、その後の回復を左右する重要な初期対応があります。

医療機関を受診するまでの間、症状の悪化を防ぎ、痛みを和らげるために、ご自身でできる応急処置を知っておくことが大切です。

ここでは、怪我の応急処置の基本である「RICE処置」を中心に、具体的な方法と注意点を解説します。

RICE処置の基本

RICE(ライス)とは、Rest(安静)、Icing(冷却)、Compression(圧迫)、Elevation(挙上)の4つの処置の頭文字をとった言葉です。

これらの処置を適切に行うことで、痛みや腫れを効果的に抑制します。

RICE処置の具体的な手順

処置目的具体的な方法
Rest (安静)損傷の拡大を防ぐ運動を中止し、体重をかけずに楽な姿勢で休む。必要に応じて松葉杖を使用する。
Icing (冷却)痛みと腫れを抑える氷のうやビニール袋に入れた氷をタオルで包み、患部に15~20分当てる。これを1~2時間おきに繰り返す。
Compression (圧迫)内出血と腫れを抑制する弾性包帯やサポーターで、患部を心臓側から末端側へ向かって適度に圧迫する。
Elevation (挙上)腫れを軽減する患部を心臓より高い位置に保つ。横になる際は、足の下にクッションや座布団を入れる。

応急処置を行う際の注意点

RICE処置は有効ですが、やり方を間違えると逆効果になることもあります。冷却(Icing)を行う際は、凍傷を防ぐために必ずタオルなどを一枚挟み、氷を直接肌に当てないように注意してください。

また、感覚がなくなってきたら一度中断し、時間を置いてから再開します。

圧迫(Compression)が強すぎると血行障害を起こす危険があるため、指先がしびれたり、変色したりしないかこまめに確認し、きつすぎる場合はすぐに緩めてください。

やってはいけないこと

怪我をした直後の急性期(受傷後48~72時間)には、炎症を助長するような行為は避けるべきです。

具体的には、以下のような行動は症状を悪化させる可能性があるため、行わないでください。

  • アルコールの摂取
  • 入浴などで患部を温めること
  • 痛む部位を無理にマッサージすること
  • 痛みを我慢して運動を続けること

これらの行為は血行を促進し、腫れや内出血、痛みを増強させる原因となります。

医療機関での診断と検査

応急処置はあくまで一時的な対応です。膝に強い痛みや腫れ、不安定感がある場合は、自己判断で放置せず、必ず整形外科を受診してください。

専門医による正確な診断が、適切な治療と後遺症の予防につながります。この部分では、病院へ行くタイミングの目安や、医療機関で行われる診察・検査について解説します。

いつ病院に行くべきか

軽い捻挫だと思っていても、内部で重い損傷が起きている可能性があります。以下のような症状が見られる場合は、できるだけ早く整形外科を受診することを推奨します。

  • 歩けないほどの激しい痛みがある
  • 膝がパンパンに腫れている
  • 膝がぐらぐらして不安定な感じがする
  • 膝の曲げ伸ばしができない(ロッキング)
  • 怪我をしたときに「ブチッ」などの断裂音を聞いた

これらの症状は、靭帯断裂や半月板の大きな損傷、骨折など、早期の治療介入が必要な怪我のサインである可能性が高いです。

整形外科での問診と身体診察

診察では、まず医師が「いつ、どこで、どのようにして」怪我をしたのかを詳しく問診します。痛みの程度や種類、その後の症状の変化なども重要な情報です。

その後、医師が直接膝を触ったり、動かしたりして損傷部位を特定する「身体診察(徒手検査)」を行います。

膝の腫れや圧痛点(押して痛い場所)を確認したり、ストレスをかけて靭帯の緩み(不安定性)を評価したりします。この診察は、どの組織が損傷しているかを推測する上で非常に重要です。

画像検査の種類と目的

問診と身体診察で疑われた損傷を確定させるために、画像検査を行います。検査にはいくつかの種類があり、それぞれ確認できる組織が異なります。

膝の主な画像検査

検査方法主な目的特徴
レントゲン(X線)検査骨折の有無を確認する最も基本的な検査。靭帯や半月板は写らない。
MRI検査靭帯、半月板、軟骨などの軟部組織の状態を詳しく見る放射線被ばくがなく、非常に詳細な情報が得られる。
超音波(エコー)検査靭帯や筋肉、関節の腫れ(水腫)などを簡易的に見るその場でリアルタイムに関節を動かしながら観察できる。

診断確定までの流れ

通常は、問診、身体診察、レントゲン検査の結果を総合して初期評価を行います。

骨折がなければ、症状に応じてMRI検査を追加し、靭帯や半月板の損傷の程度を詳細に評価して最終的な診断を確定します。

この診断結果に基づいて、患者さん一人ひとりの年齢、活動レベル、損傷の程度などを考慮し、最適な治療方針を決定していきます。

膝の痛みの治療法

膝の捻挫に対する治療は、損傷の程度や種類によって大きく異なります。ギプスやサポーターで固定して安静にする「保存療法」と、損傷した組織を修復する「手術療法」の二つに大別されます。

ここでは、それぞれの治療法の具体的な内容と、どのような場合にどちらの治療法を選択するのかについて解説します。

保存療法

靭帯や半月板の損傷が軽度である場合や、手術を希望しない場合には、まず保存療法を選択します。保存療法の目的は、痛みや炎症を抑え、膝関節の機能を回復させることです。

保存療法の主な内容

治療法内容目的
薬物療法非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の内服薬や外用薬(湿布、塗り薬)を使用する。痛みと炎症を和らげる。
装具療法サポーターやギプス、ブレース(支柱付きの装具)などで膝を固定・保護する。関節の安定性を高め、損傷部位への負担を減らす。
リハビリテーション理学療法士の指導のもと、筋力トレーニングや可動域訓練、バランス訓練などを行う。膝周りの筋力を強化し、関節機能を回復・再発を予防する。

特にリハビリテーションは、保存療法の中核をなす重要な治療です。

膝を支える太ももの筋肉(大腿四頭筋やハムストリングス)を鍛えることで、靭帯の役割を補い、膝の安定性を向上させることができます。

手術療法

保存療法で症状が改善しない場合や、損傷が重度で日常生活やスポーツ活動への復帰が困難な場合、あるいは若年者で活動性が高い場合などには、手術療法を検討します。

近年では、小さな切開で行う関節鏡(関節の内視鏡)を使った低侵襲な手術が主流です。

代表的な関節鏡視下手術

  • 半月板切除術・縫合術: 損傷した半月板の不要な部分を切り取るか、断裂部を縫い合わせる。
  • 靭帯再建術: 断裂した靭帯の代わりになる腱(自分の体の別の部位から採取した腱や人工靭帯)を移植して、靭帯の機能を再建する。

治療期間の目安

治療にかかる期間は、損傷の程度や治療法によって大きく異なります。

内側側副靭帯の軽度な損傷であれば数週間でスポーツ復帰できることもありますが、前十字靭帯再建術のような大きな手術を受けた場合は、リハビリテーションを含めてスポーツ復帰までに半年から1年程度の期間を要するのが一般的です。

焦らず、医師や理学療法士の指示に従って治療を進めることが大切です。

膝の捻挫を予防するためにできること

一度膝をひねってしまうと、治療に時間がかかったり、再発しやすくなったりすることがあります。そのため、怪我を未然に防ぐための予防策を知っておくことは非常に重要です。

ここでは、日常生活やスポーツの場面で実践できる、膝の捻挫を予防するための具体的な方法を紹介します。

日常生活での注意点

特別な運動をしなくても、日々の生活の中で膝への負担を意識することで、怪我のリスクを減らすことができます。

例えば、急に振り返る動作を避ける、段差を乗り越える際は足元をよく見る、といった小さな注意が大切です。

また、肥満は膝関節への負担を増大させる大きな要因となるため、適正体重を維持することも、長期的な膝の健康を守る上で重要です。

スポーツ活動前のウォーミングアップ

スポーツを始める前には、必ず十分なウォーミングアップを行いましょう。筋肉や関節が温まり、柔軟性が高まることで、急な動きにも対応しやすくなります。

特に、膝関節周りの筋肉を意識したストレッチや、軽いジョギングなどで体を準備させることが効果的です。

ウォーミングアップのポイント

  • 軽いジョギングやもも上げで心拍数を上げる
  • 太ももの前後や内側・外側、ふくらはぎの筋肉をゆっくり伸ばす(静的ストレッチ)
  • 膝の曲げ伸ばしや軽いスクワットで関節を動かす

膝周りの筋力トレーニング

膝の安定性は、周囲の筋肉によって大きく支えられています。特に太ももの前側にある大腿四頭筋は、膝への衝撃を吸収し、関節を安定させる上で最も重要な筋肉です。

この筋肉を鍛えることで、靭帯への負担を軽減し、捻挫の予防につながります。

自宅でできる簡単な膝の筋力トレーニング

トレーニング名方法ポイント
レッグエクステンション椅子に座り、片方の足をゆっくりと水平まで持ち上げ、数秒間保持してから下ろす。太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)が収縮するのを意識する。
ハーフスクワット肩幅に足を開き、お尻を後ろに引くようにして、膝が90度以上曲がらない程度まで腰を落とす。膝がつま先より前に出ないように注意する。
ヒップアブダクション横向きに寝て、上側の足を天井方向へゆっくりと持ち上げる。お尻の横の筋肉を意識する。体のバランスを保つ働きがある。

自分に合った靴選びの重要性

足元が不安定だと、膝に余計なねじれの力がかかりやすくなります。自分の足の形に合っていない靴や、かかとがすり減った古い靴を履き続けることは避けるべきです。

特にスポーツを行う際は、その競技の特性に合った、クッション性や安定性の高いシューズを選ぶことが怪我の予防につながります。

膝をひねった際のよくある質問

最後に、膝をひねった方からよく寄せられる質問とその回答をまとめました。多くの方が抱く疑問を解消し、ご自身の状況への理解を深めるための参考にしてください。

Q. 痛みが引けば放置しても大丈夫ですか?

A. 痛みが一時的に和らいでも、根本的な原因が解決したとは限りません。

特に靭帯が損傷している場合、痛みは引いても膝の不安定感が残り、将来的に半月板損傷や軟骨損傷、変形性膝関節症といった二次的な問題を引き起こすリスクがあります。

症状が軽くなったと感じても、一度は整形外科を受診し、正確な診断を受けることを強く推奨します。

Q. サポーターはどのようなものを選べば良いですか?

A. サポーターには様々な種類があり、目的によって使い分けます。

単純な筒状のものは保温や軽い圧迫が目的です。左右に支柱(ステー)が入っているものは、側副靭帯を保護し、横方向へのぐらつきを抑える効果が高いです。

十字靭帯を損傷している場合は、さらに複雑な構造の機能的装具が必要になることもあります。

自己判断で選ぶのではなく、医師や理学療法士に相談し、ご自身の損傷状態に合ったものを選ぶことが重要です。

Q. 再発を防ぐために最も重要なことは何ですか?

A. 再発予防で最も重要なのは、リハビリテーションによって膝の機能を完全に取り戻すことです。

痛みや腫れが引いた後も、医師の許可が出るまでは自己判断でスポーツなどに完全復帰せず、地道な筋力トレーニングやバランストレーニングを継続することが大切です。

特に、太ももの筋力と、体の使い方(動作フォーム)を改善することが、再発のリスクを大きく減らします。

Q. 子供が膝をひねった場合、大人と注意点は異なりますか?

A. 子供(成長期)の場合、大人とは異なる注意が必要です。子供の骨には、骨が成長するための「骨端線(こったんせん)」という軟骨部分が存在します。

この部分は構造的に弱いため、大人が靭帯を損傷するような力でも、骨端線で骨折(骨端線損傷)を起こすことがあります。

また、膝蓋骨の脱臼なども大人より起こりやすい傾向にあります。子供が膝の痛みを訴える場合は、成長期の特殊性を考慮した診断が必要なため、早めに小児整形外科やスポーツ整形外科の専門医に相談してください。

以上

参考文献

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Author

北城 雅照

医療法人社団円徳 理事長
医師・医学博士、経営心理士

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