足立慶友医療コラム

スポーツによる膝の痛み – 競技別の予防と対策

2025.10.14

「膝 痛い スポーツ」や「膝が痛い スポーツ」というキーワードで検索されているあなたは、練習中や試合中に膝に痛みを感じ、不安を抱えているのではないでしょうか。

スポーツ活動における膝の痛みは、パフォーマンスの低下だけでなく、競技生活の中断にもつながる重要な問題です。

しかし、膝の痛みの原因を正しく理解し、競技特性に応じた適切な予防法や対策を講じることで、多くの問題を避けることができます。

この記事では、なぜスポーツで膝が痛むのか、どのようなケガが多いのか、そして各種競技に取り組むあなたが今すぐ実践できる具体的な予防法と、痛みが起きた際の対処法について、整形外科メディアの知見に基づき、親切丁寧にご紹介します。

スポーツで膝が痛む主な原因と構造

スポーツ活動中に膝の痛みが発生するのは、単なる使いすぎだけが理由ではありません。

膝関節は、股関節と足関節の間に位置し、走行、ジャンプ、方向転換といった動作において、体重の数倍から数十倍にもなる大きな負荷を受け止める役割を担っています。

膝の痛みの根本を理解するためには、負荷の増大につながる構造的な要因と、組織が許容できる以上のストレスがかかる仕組みを把握することが重要です。

過負荷と使いすぎによる組織の損傷

スポーツによって特定の部分に継続的に大きな負荷がかかると、その部位の組織(腱、靭帯、軟骨など)は疲労し、微細な損傷を繰り返します。

これがオーバーユース(使いすぎ)による痛みです。特に、成長期の骨や関節は未発達なため、大人のアスリート以上に炎症や損傷を起こしやすく、注意が必要です。

競技の練習量や強度が急に増えた場合や、休息が不十分な場合に、組織が修復する時間を失い、慢性的な炎症へと移行します。

オーバーユースによる損傷の具体例

腱の付着部や骨の成長軟骨といった部位は、繰り返しの牽引力(引っ張る力)に弱く、炎症を起こしやすい部位です。

例えば、膝蓋腱(しつがいけん)に負荷がかかり続けると、膝蓋腱炎(ジャンパーズニー)につながります。

同様に、脛骨粗面(すねの骨の上端)に負荷がかかることで起こるオスグッド・シュラッター病も、このタイプの代表例です。

身体のバランスとフォームの不調和

膝の痛みは、膝そのものの問題だけでなく、股関節や足関節、体幹の機能不全によって引き起こされることが多々あります。

例えば、股関節周囲の筋力が低下していると、膝が内側に入り込む(ニーイン)動作が起こりやすくなります。

このニーイン動作は、膝関節の外側に過度なストレスを集中させ、外側半月板の損傷や腸脛靭帯炎(ランナーズニー)などのリスクを高めます。

適切なフォームの維持は、膝への負担を分散させるために大切です。

関節間の連動性の重要性

人体は、関節が連動して動くことで力を発揮します。この連動性を「キネティックチェーン」と呼びます。

キネティックチェーンのどこかに動きの制限や筋力不足があると、その負荷を膝が代償しようとします。このことにより、膝に不必要な回旋ストレスや剪断力(ずれる力)が発生し、痛みの原因になります。

スポーツ動作を行う際は、足首、膝、股関節が一直線上に並ぶ意識を持つことが重要です。

膝の負担を軽減するフォームチェックポイント

部位チェック内容目的
足関節土踏まずが潰れていないか衝撃吸収力の維持
膝関節つま先と膝の向きの一致回旋ストレスの防止
体幹着地時に体がブレていないか安定性の確保

スポーツで発生しやすい代表的な膝の痛み

スポーツの種類や動作の特性によって、膝の痛みの種類は大きく異なります。膝の痛みを正しく認識することは、適切な対策を講じるための第一歩です。

ここでは、スポーツでよく見られる代表的な膝の痛みを、原因となる組織ごとに分けて解説します。

膝蓋骨周囲の痛み

膝の皿(膝蓋骨)の周りや下に起こる痛みは、ジャンプや急なダッシュ、ストップ動作を頻繁に行う競技者に多く見られます。

これらは、膝を伸ばす筋肉(大腿四頭筋)や膝蓋腱に強い牽引力がかかりすぎるために生じます。

膝蓋腱炎(ジャンパーズニー)

膝蓋骨の下にある膝蓋腱に炎症が起こる状態です。バレーボール、バスケットボール、陸上競技の跳躍種目など、ジャンプ動作が多い競技に特有です。

初期はスポーツ後の軽い痛みですが、進行すると運動中も常に痛みを感じるようになり、プレー継続が難しくなります。

オスグッド・シュラッター病

成長期の子どもに特有の病態で、脛骨粗面(お皿の下の硬い出っ張り)が盛り上がり、運動時に強い痛みを生じます。

大腿四頭筋が硬くなると、膝蓋腱を介して成長途中の骨を引っ張り、炎症と損傷を起こします。活動量の多い時期に発症しやすく、適切なケアが必要です。

膝の外側の痛み

膝の外側に特化した痛みは、長時間にわたって膝の曲げ伸ばしを繰り返す動作や、股関節周りの柔軟性・筋力不足が原因となることが多いです。

腸脛靭帯炎(ランナーズニー)

太ももの外側にある腸脛靭帯が、膝の外側の骨(大腿骨外側上顆)と擦れることで炎症を起こします。マラソンや長距離走、自転車競技など、長時間の運動を続ける競技で最も多く発生します。

特に、O脚傾向のある人や、シューズが合っていない場合に、膝の外側へのストレスが増大しやすくなります。

膝の内側の痛みと関節内の損傷

膝の内側や関節の深部で生じる痛みは、急激な方向転換や接触プレー、あるいは軟骨や半月板といった関節内の重要な組織の損傷を示唆する場合があります。

内側側副靭帯損傷(MCL損傷)

膝の外側から強い衝撃を受けたり、急激な方向転換で膝が内側に「がくん」と入った際に、膝の内側にある内側側副靭帯が損傷します。

内側の関節に腫れや圧痛が現れ、不安定感を感じることがあります。受傷直後には内側に強い痛みを訴えます。

スポーツ活動における膝の代表的な損傷の種類

傷病名主な原因動作痛む部位
膝蓋腱炎ジャンプ、ダッシュ膝の皿の下
腸脛靭帯炎ランニング、サイクリング膝の外側
半月板損傷ひねり、急な方向転換関節内、内側または外側

競技特性から見る膝の痛みの発生リスク

スポーツの競技特性は、膝にかかる負荷の種類や頻度を決定します。

競技ごとの動作パターンを理解することで、あなたが取り組むスポーツ特有のリスクを認識し、効果的な予防戦略を立てることができます。

衝撃と走行距離がリスクを高める競技

長距離ランニングやトライアスロン、サッカーなどの持久系競技では、膝に繰り返しの小さな衝撃が積み重なることが主なリスクです。

特に、膝を何度も屈伸させる動作は、腸脛靭帯炎や鵞足炎といった炎症性の痛みを引き起こしやすくなります。

陸上競技(長距離)のリスク

地面からの反力が繰り返し膝に伝わるため、膝関節全体に疲労が蓄積します。特に、着地の際の膝の角度や、股関節外側の筋力不足が原因で、膝の外側へのストレスが増加します。

これにより、ランナーズニーの発症リスクが高まります。

ジャンプと急停止・方向転換が多い競技

バスケットボール、バレーボール、ハンドボール、テニスなど、コート上で行われる競技は、垂直方向のジャンプ動作と、水平方向への急な加減速、方向転換が特徴です。

これらの動作は、膝の前方や関節内の構造に強い負担をかけます。

バスケットボール・バレーボールのリスク

頻繁なジャンプと着地は、膝蓋腱に非常に大きな張力を発生させます。その結果、膝蓋腱炎(ジャンパーズニー)の発症が非常に多くなります。

また、着地時のバランスの崩れや、方向転換の際の非接触型のメカニズムにより、前十字靭帯損傷などの重篤なケガのリスクも伴います。

衝突と回旋ストレスが多い競技

ラグビー、アメリカンフットボール、柔道などのコンタクトスポーツや、スキーのように足が固定されるスポーツは、外部からの強い力や、膝関節に過度な回旋(ねじれ)ストレスがかかることがリスク要因となります。

これは、靭帯や半月板の損傷に直結します。

サッカー・アメフトのリスク

タックルや衝突による直接的な衝撃に加え、スパイクを履いて急激に方向転換する動作は、地面に足が固定された状態で膝がねじれる状態を生み出します。

これらの動作は、内側側副靭帯や前十字靭帯、半月板といった関節内の組織に損傷を与えやすいです。このことにより、競技復帰に長期間を要する可能性があります。

膝の痛みを予防するための基本的な対策

スポーツによる膝の痛みを遠ざけ、長く競技を楽しむためには、日々の練習や生活の中で継続的に予防策を講じることが大切です。

ここでは、すべての競技者が実践すべき、膝の健康を維持するための基本的な対策を解説します。

運動前のウォーミングアップとクールダウンの徹底

ウォーミングアップは、筋肉の温度を上げ、血流を改善し、関節の可動域を広げるために重要です。これにより、組織が急な運動負荷に対応しやすくなり、ケガの発生率を下げます。

運動後のクールダウンは、運動で疲労した筋肉をゆっくりと伸ばし、炎症物質の除去を促進するために必要です。

疲労を翌日に残さないことが、オーバーユースによる慢性的な痛みの予防につながります。

適切なウォーミングアップの構成要素

要素実施内容時間目安
全身運動ジョギング、軽い有酸素運動5分
動的ストレッチ股関節や膝のダイナミックな動き5〜10分
競技特有の動き軽いダッシュ、ジャンプ練習5分

適切な筋力トレーニングと柔軟性の維持

膝関節を支える主要な筋肉である大腿四頭筋、ハムストリングス、そして特に股関節周囲の筋肉(殿筋群)をバランス良く鍛えることが重要です。

これらの筋肉が強靭であれば、膝にかかる衝撃を効果的に吸収・分散させることができます。また、これらの筋肉の柔軟性を保つことは、関節の動きをスムーズにし、膝への偏った負荷を減らすために大切です。

膝関節の安定化に重要な筋肉群

特に殿筋(お尻の筋肉)のトレーニングは、膝が内側に入る(ニーイン)のを防ぎ、膝関節の適切なアライメントを保つ上で非常に重要です。

スクワットやランジなどのトレーニングを行う際は、膝がつま先と同じ方向を向いているかを確認しながら実施してください。

休養と栄養、適切な用具の選択

練習やトレーニングの量を調整し、身体が回復する時間を確保するアクティブレストは、オーバーユースを防ぐ上で欠かせません。

また、骨や腱の修復に必要なタンパク質やビタミンD、カルシウムといった栄養素を意識して摂取してください。

さらに、競技に使用するシューズやサポーターなどの用具が、あなたの足や体型に合っているか、摩耗していないかを定期的に確認し、適切に選ぶことが、ケガ予防の土台となります。

競技別に見る膝の痛みの予防戦略

競技の特性によって、重点的に強化すべき部位や、特に注意すべき動作が異なります。ここでは、代表的なスポーツにおける膝の痛みを防ぐための、具体的な予防戦略をご紹介します。

ランニング・サッカーの予防対策

長時間の負荷や急な方向転換が特徴のこれらの競技では、「衝撃吸収」と「アライメント維持」が予防の鍵となります。

股関節外転筋の強化

ランニング中や方向転換時に、骨盤が不安定になり、膝が内側に入り込むことを防ぐため、中殿筋などの股関節外転筋(脚を外側に開く筋肉)を重点的に強化します。

サイドプランクやクラムシェルといったトレーニングが有効です。

着地・方向転換のフォーム修正

走る際の着地や、急な方向転換(カッティング動作)を行う際に、膝が過度に曲がったり、内側に入ったりしないよう、意識的にフォームを修正します。

片足でのバランス練習や、膝とつま先の向きを一致させるドリルを繰り返すことで、これらの△△により、無意識下での正しい動作を獲得できます。

ジャンプ系競技(バレー・バスケ)の予防対策

高頻度のジャンプ着地を伴う競技では、「腱の負担軽減」と「着地の衝撃分散」に焦点を当てた予防が必要です。

大腿四頭筋と膝蓋腱の柔軟性維持

ジャンパーズニーを防ぐため、膝蓋腱の負担を軽減する目的で、大腿四頭筋と膝蓋腱の入念なストレッチとマッサージを行います。

特に、練習後のアイシングとストレッチはセットで実施してください。

衝撃を吸収する着地練習

ジャンプ後の着地時に、膝だけでなく股関節全体で衝撃を受け止め、着地音を小さくするような練習を行います。このことにより、膝蓋腱への過剰なストレスを減らすことができます。

特に、着地時の両足の幅や膝の曲げ具合を意識的に調整します。

回旋系競技(テニス・スキー)の予防対策

テニスやスキーのように、足元は固定されつつ、上半身が強くねじれる動作が多い競技では、「膝の安定性強化」と「体幹の回旋コントロール」が重要です。

膝周囲のインナーマッスルの強化

膝関節そのものの安定性を高めるため、内側広筋などのインナーマッスルを鍛えます。

小さな負荷で正確な動作を繰り返すレッグエクステンションや、バランスボールを使ったトレーニングなどが有効です。

体幹を使った運動連鎖の習得

テニスでのストロークや、スキーでのターン時に、膝だけで回旋力を受け止めないよう、体幹の力をうまく使って体の向きを変える動作を習得します。

体幹の安定性が高まれば、これらの効果により、膝への回旋ストレスを大幅に軽減できます。

競技別に見る主要な予防戦略

競技主なリスク重要予防点
ランニングオーバーユース、摩擦股関節外転筋強化、シューズ選び
バレーボールジャンプ、着地衝撃大腿四頭筋の柔軟性、着地フォーム
サッカー方向転換、衝突、回旋殿筋群の強化、靭帯安定化ドリル

痛みを感じた時の初期対応とセルフケア

スポーツ中に膝に痛みや違和感を感じた場合、その初期の対応がその後の回復期間を大きく左右します。

軽度な痛みであっても、放置せずに適切なセルフケアを行うことが、痛みの慢性化を防ぐために重要です。

RICE処置の実施

急性の痛みや腫れ、熱感がある場合は、応急処置としてRICE処置を実施します。

この処置は、損傷の拡大を防ぎ、炎症を最小限に抑えることを目的としています。

RICE処置の内容と重要性

RRest(安静)損傷部位の固定・安静
IIcing(冷却)熱感や腫れがある部位を冷やす
CCompression(圧迫)腫れの拡大を防ぐための圧迫
EElevation(挙上)心臓より高い位置に患部を置く

アイシングと温熱療法の使い分け

初期の急性期(受傷直後から数日、熱感や腫れがある時期)には、炎症を抑えるためにアイシング(冷却)が有効です。氷嚢などで患部を15〜20分程度冷やし、痛みを軽減させてください。

一方、慢性的な痛みや、熱感・腫れが治まった回復期には、血行を促進し、組織の修復を早めるために温熱療法(温めること)が有効です。

状況に応じて適切に使い分けることが回復を早めます。

慢性的な痛みのセルフケア

慢性的なオーバーユースによる痛みの場合、患部周辺の筋肉のストレッチや、軽い負荷をかけた筋力トレーニング(リハビリテーション)を取り入れることが大切です。

特に、痛みのない範囲で関節を動かし、血流を促すことは、組織の回復力を高めます。しかし、痛みが悪化する場合は、すぐに運動を中止し、専門家の意見を聞いてください。

専門的な医療機関を受診する目安

多くのスポーツによる膝の痛みは、適切な休養とセルフケアで改善します。

しかし、中には自己判断で済ませてはいけない、専門的な検査や治療を必要とする重篤なケガが隠れている場合があります。判断に迷うことなく、早期に医療機関を受診してください。

すぐに医療機関を受診すべき症状

以下の症状が現れた場合、靭帯損傷や半月板損傷などの重篤なケガの可能性があるため、自己判断せずにすぐに整形外科を受診することが重要です。

  • 膝に体重をかけることができないほどの激しい痛み
  • 膝がガクッと崩れるような不安定感(Giving way)がある
  • 膝が完全に伸ばせない、または曲げられないロッキング症状
  • 膝の関節が異常に腫れ上がり、熱を持っている

セルフケアで改善しない慢性的な痛み

セルフケアを1〜2週間続けても痛みが改善しない、またはスポーツ活動を再開すると痛みが再発する場合は、痛みの原因が自己判断では特定できない構造的な問題にある可能性があります。

例えば、痛みの原因が膝ではなく、腰や股関節の機能不全にある場合もあります。

専門的な評価を受けることで、根本的な原因を見つけ出し、適切なリハビリテーションや治療計画を立てることが可能になります。

これらの効果により、早期の競技復帰と再発防止につながります。

医療機関での検査と診断

医療機関では、問診や徒手検査に加え、レントゲン検査で骨の異常を確認したり、MRI検査で靭帯、半月板、軟骨といった軟部組織の詳細な状態を把握したりできます。

正確な診断が、その後の治療方針を決定する上で大切です。

正確な診断に必要な検査

検査の種類診断できる内容目的
レントゲン骨折、骨端症、変形性変化骨の構造的な問題確認
MRI靭帯・半月板・軟骨の損傷軟部組織の詳細な確認
超音波(エコー)腱や靭帯の炎症、水の貯留表層の組織と炎症度の確認

痛みの再発を防ぐための長期的な予防策

一度膝の痛みを経験した後、最も重要になるのが再発防止です。

再発を防ぐためには、単に痛みが消えるのを待つだけでなく、長期的な視点に立って、身体の構造と運動習慣を根本から見直す必要があります。

全身の柔軟性と可動域の継続的な向上

膝関節は、股関節と足関節の機能に大きく影響を受けます。

特に、股関節周辺の筋肉やハムストリングス、下腿三頭筋(ふくらはぎ)の柔軟性が低下すると、その負担が膝に集中します。

毎日継続して全身のストレッチを行い、関節の可動域を広く保つことは、膝への偏った負荷を予防する上で極めて重要です。

膝の負荷を軽減する重要なストレッチ部位

以下の部位のストレッチを毎日行う習慣をつけることで、膝への負担を効果的に軽減します。

  • 股関節屈筋群(腸腰筋)
  • 大腿四頭筋
  • ハムストリングス

インソールや装具によるアライメント調整

足の形(扁平足やハイアーチなど)や、O脚・X脚といった下肢のアライメント(骨の並び)に問題がある場合、特定の部位に常に過剰なストレスがかかり続けます。

オーダーメイドのインソール(足底板)や、適切なサポーターを使用することで、足元からのアライメントを修正し、膝にかかる衝撃や回旋ストレスを分散させることができます。

これは、特にランニングやウォーキングを日常的に行う方にとって、非常に有効な長期予防策です。

インソール導入による予防効果

アライメントの問題インソールの効果軽減されるリスク
過度な回内(扁平足)土踏まずのサポートシンスプリント、膝のねじれ
O脚(膝の外側重心)外側への負荷軽減腸脛靭帯炎
ハイアーチ衝撃吸収力の向上膝蓋骨周囲炎

段階的な復帰プランと専門家との連携

痛みが改善した後、すぐに元の練習強度に戻すのは非常に危険です。再発の多くは、この復帰期に無理をしてしまうことで起こります。

競技復帰にあたっては、運動負荷を段階的に上げるプランを作成し、医師や理学療法士などの専門家と連携しながら、膝の機能回復を最終的なゴールとして取り組みます。

この復帰プランには、筋力、柔軟性、そして競技特有の動作の確認が含まれます。

よくある質問

痛みがない時でも予防のためにストレッチは必要ですか?

はい、非常に大切です。痛みがない時でも、日々のストレッチは欠かせません。スポーツ活動によって筋肉には必ず疲労が蓄積し、柔軟性が低下します。

柔軟性の低下は、関節の可動域を狭め、スポーツ動作の効率を悪化させ、最終的に膝への偏った負荷を招きます。

特に、大腿四頭筋、ハムストリングス、股関節周りの筋肉は、膝の安定性に直結するため、毎日の習慣として取り入れてください。

膝のサポーターやテーピングは予防に役立ちますか?

サポーターやテーピングは、一時的に膝の安定性を高めたり、特定の動作を制限したりする上で役立ちます。特に、軽い不安定感がある場合や、不安を感じる動作を行う際には効果的です。

ただし、これらはあくまで補助的なものです。

長期間にわたって頼りすぎると、本来働くべき筋肉(インナーマッスル)の機能が低下する可能性があるため、サポーターを使いつつ、根本的な筋力強化とフォーム改善に取り組むことが重要です。

痛みがある状態でも、できるトレーニングはありますか?

痛みの種類や程度によりますが、一般的に痛みを誘発しない範囲でのトレーニングは、血流を改善し、回復を早めるために推奨される場合があります。

例えば、ランニングが痛い場合でも、水中ウォーキングや自転車エルゴメーターなど、膝への衝撃が少ない運動であれば、心肺機能や筋力の維持に役立ちます。

また、患部から遠い、股関節や体幹のトレーニングは、膝への負担軽減のために積極的に行うべきです。ただし、運動を始める前に必ず痛みの専門家に相談し、安全な範囲を確認してください。

サプリメントは膝の痛みの改善に効果がありますか?

特定の栄養素は、関節や軟骨の健康維持に重要な役割を果たします。

例えば、コラーゲンの構成要素となるタンパク質、骨の形成を助けるビタミンDやカルシウムは、スポーツをする人にとって重要です。

しかし、サプリメントが既に発生した痛みを劇的に治癒させる「薬」ではないことを理解してください。

バランスの取れた食事を基本とし、不足しがちな栄養素を補う目的でサプリメントを活用することが賢明な方法です。

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Author

北城 雅照

医療法人社団円徳 理事長
医師・医学博士、経営心理士

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