足立慶友医療コラム

変形性膝関節症の初期症状|早期発見のためのチェック項目

2025.10.12

膝の痛みが気になり始めたとき、「歳のせいだ」と見過ごしてしまう人は少なくありません。

しかし、その小さな違和感こそが、日本の高齢者に非常に多い疾患、変形性膝関節症の初期サインである可能性が高いです。

変形性膝関節症は、一度進行すると元の状態に戻すことが難しいため、いかに早い段階でその兆候を捉え、適切な対応を始めるかが、将来の生活の質(QOL)を大きく左右します。

本記事では、変形性膝関節症の初期に現れる具体的な症状、日常生活でチェックすべき項目、そして進行を食い止めるための基礎知識を、専門的な視点からわかりやすく解説します。

変形性膝関節症とは 初期段階で知っておきたい基礎知識

変形性膝関節症(Osteoarthritis of the Knee, KOA)は、膝関節のクッションである関節軟骨が摩耗し、炎症を起こし、最終的に骨が変形してしまう疾患です。

この病気は、特に中高年以降で発症しやすく、加齢や肥満、過去の怪我などが主な要因となります。

初期段階では、症状が軽微であるため、多くの人が単なる「疲れ」や「一時的な痛み」と捉えがちです。しかし、この時期に病態を正しく理解することが、早期の対応に必要です。

変形性膝関節症が発症する原因

膝関節は、太ももの骨(大腿骨)とすねの骨(脛骨)が組み合わさってできており、その端を軟骨が覆っています。

この軟骨が加齢や過度な負担によってすり減り、クッションとしての機能を失うことが根本的な原因です。

軟骨がすり減ると、骨同士が直接こすれ合うようになり、炎症(滑膜炎)や痛みを引き起こします。特に、膝の内側に負担がかかりやすいため、多くの場合、O脚変形を伴いながら進行します。

初期、中期、末期における病態の違い

変形性膝関節症は、進行度によって初期、中期、末期に分類されます。初期段階では、軟骨のすり減りはごくわずかで、レントゲンで見ても大きな異常は見られません。

しかし、関節液のバランスが崩れ始め、動作の始めに痛みを感じるようになります。中期になると、軟骨の摩耗が進行し、骨棘(こつきょく:骨のトゲ)ができ始め、痛みが持続的になります。

末期では、軟骨が完全に失われ、骨の変形が著しくなり、日常生活に大きな支障をきたします。

病期の進行度と症状の出現パターン

病期主な病態痛みの特徴
初期軟骨のごくわずかな摩耗、関節液の質の低下動作の始め(立ち上がり、歩き始め)に短時間感じる
中期軟骨の本格的な減少、骨棘の形成動作中の痛みが増し、休んでも違和感が残る
末期軟骨の完全な消失、重度の骨変形安静時や夜間にも強い痛み、歩行困難

女性に多い理由と性差の視点

変形性膝関節症は、男性よりも女性に多く見られます。

これは、女性ホルモン(エストロゲン)の減少が軟骨や骨の代謝に影響を与えること、また、一般的に男性よりも筋力が低いこと、さらに骨盤の幅が広く膝関節に負担がかかりやすい構造的な特徴を持つことが背景にあります。

閉経後の女性は、特にリスクが高まるため、日頃から膝への意識を持つことが大切です。

早期発見が鍵を握る初期症状の具体的なサイン

変形性膝関節症の治療成績を大きく左右するのは、いかに初期症状の段階で対応を始めるかです。

初期のサインは、見過ごしやすい小さな違和感であることが多いため、その具体的な特徴を知っておくことで、進行を効果的に防げます。

ここでは、特に注意して観察すべき具体的な初期症状について解説します。

「動かし始め」に感じる一過性の痛み(初動時痛)

初期の変形性膝関節症で最も特徴的な症状が「初動時痛」です。

これは、座った状態や寝た状態から立ち上がるとき、あるいは歩き始めの数歩にだけ感じる痛みで、しばらく動かしていると痛みが和らぐという性質を持っています。

関節を休ませていた間に軟骨の表面が固まり、動き出す際に抵抗が生じるために起こります。この一過性の痛みは「気のせい」として片付けられやすいですが、最も重要な初期のサインです。

動作別 初動時痛の具体例

初動時痛は、日常生活の特定の動作で現れます。ご自身の行動を振り返り、下記の状況で痛みを感じないかチェックしてください。

  1. 朝起きて布団から立ち上がる時
  2. 長時間座っていた椅子から立ち上がる時
  3. バスや電車で座っていて、降車時に立ち上がって歩き始める時

膝の曲げ伸ばしや動作時に生じる「違和感」

痛みとして明確に認識できないまでも、初期段階では膝に「違和感」や「引っかかり」を感じることがあります。

特に階段の上り下りや、膝を深く曲げる動作(しゃがむ、正座をする)の際に、スムーズに動かない、あるいは何かがつかえているような感覚を覚えます。

これは、関節内の滑膜に炎症が起き始めたり、わずかに変形した軟骨の破片が関節に挟まったりするために生じます。

天候や気温の変化で膝が重く感じる

「古傷が痛む」と言われるように、膝の調子が天候に左右されるのも初期症状の一つです。

低気圧や湿度の高い日、あるいは寒い日に、膝の周りが重く感じたり、だるさを伴う痛みが現れたりします。

これは、関節内の気圧や血流が変化すること、そして炎症部位がこれらの変化に敏感に反応することが原因です。

天候による体調の変化は誰もが感じることですが、膝に限ってこの症状が出る場合は、関節に何らかの問題が起きている可能性を示唆します。

天候による膝の状態の変化

気象条件膝に生じる影響
低気圧(雨天など)関節内の圧力が高まり、痛みを刺激する
気温の低下(寒さ)膝周辺の血行が悪くなり、痛みの物質が滞留する
湿度の増加炎症や浮腫(むくみ)が悪化しやすくなる

初期段階で感じる「膝の痛み」の特徴

変形性膝関節症の痛みは、単なる筋肉痛や関節の疲れとは性質が異なります。その痛みの出方や場所には、病気が初期段階にあることを示すいくつかの共通する特徴があります。

これらの特徴を理解することで、痛みが生じた際に「これは変形性膝関節症のサインかもしれない」と早期に気づくことができます。

痛みの場所は「膝の内側」が中心

変形性膝関節症は、特に膝の内側に痛みが生じやすいという特徴があります。これは、多くの日本人がO脚傾向にあり、体重の負荷が膝の内側に集中しやすいからです。

初期の軟骨摩耗は、この内側の関節軟骨で起こり始めることが多いため、痛みを感じる場所が内側寄りである場合は、変形性膝関節症の可能性を強く疑う必要があります。

痛みの種類と原因の区別

痛みの種類発生しやすい原因変形性膝関節症の関連
ジンジンとした痛み炎症(関節内の滑膜炎)初期から現れる主要な痛み
ズキッとした痛み動作中の関節の引っかかり初期の軟骨や骨棘による刺激
鈍い重さやだるさ血行不良、関節の腫れ症状が進むと強くなる

痛みが治まっても関節に熱感や腫れがないか

初期の痛みは短時間で治まることが多いですが、痛みが引いた後に関節の周囲を触ってみて、熱感や軽い腫れがないかを確認することが重要です。

熱感や腫れは、関節内部で炎症(滑膜炎)が起きているサインです。

初期段階ではごく軽度で、日常生活では気づきにくい程度ですが、安静時にも熱を持っている場合は、病気が活動的であることを示します。

安静時や睡眠時には痛みが消えるのが基本

初期の変形性膝関節症の痛みは、基本的に荷重がかかる動作や運動時に現れ、安静にしているときや睡眠中は治まるのが一般的です。

もし、初期とされる段階で夜間や安静時にも強い痛みが続く場合は、炎症が強く出ているか、他の疾患(痛風、関節リウマチなど)も考慮する必要があります。

変形性膝関節症の初期は、休むことで痛みがリセットされるという点が特徴の一つです。

膝の違和感と動きの制限 チェックすべき項目

痛みだけでなく、「動きにくさ」も変形性膝関節症の初期段階で現れる重要な兆候です。

これらの違和感は、関節の柔軟性や可動域の低下を示しており、放置すると関節の拘縮(動く範囲が狭くなること)につながります。

日常生活の動作をチェックすることで、膝のわずかな変化を捉えることができます。

立ち座りの動作における変化

膝を大きく曲げる動作、特に椅子からの立ち上がりや、和式トイレのようなしゃがみ込みの動作がしにくくなります。

初期段階では、「何となく膝が重い」「スムーズに立ち上がれない」程度の感覚かもしれませんが、動作に時間がかかるようになったり、手で太ももを押して補助しないと立ち上がれなくなったりする場合は、関節機能が低下し始めているサインです。

これらの変化は、膝周りの筋力低下と関節の柔軟性の低下、両方が影響しています。

正座やしゃがみ込みの困難さ

日本人の生活様式において、正座やしゃがみ込みは膝を深く曲げる動作の代表です。変形性膝関節症が始まると、この膝を深く曲げる可動域が制限されることが非常に多くなります。

関節の腫れや関節液の増加、あるいは関節包(関節を包む袋)の柔軟性の低下が原因となり、最後まで曲げきれない、あるいは曲げると痛みが走るようになります。

「最近、正座をするとすぐに痺れるようになった」という変化も、関節内の変化が原因である可能性があります。

初期に見られる可動域の制限

動作初期の違和感の例意味する状態
膝の曲げ正座でかかとにお尻がつかなくなった関節包の柔軟性低下、軽度の腫れ
膝の伸ばし歩行時に膝が完全に伸びきらない感じ軽度の屈曲拘縮(曲がったままになる)
階段の上り下り下りの際に膝がガクッとすることがある膝周りの筋力(特に大腿四頭筋)の機能低下

「ゴリゴリ」「ミシミシ」などの異常音の有無

膝を曲げ伸ばしする際に、「ゴリゴリ」「ミシミシ」といった異常な音(轢音:れきおん)が聞こえるようになることがあります。

これは、すり減った軟骨の表面が荒れ、関節の動きに合わせて互いに擦れることで生じる音です。

初期段階では、音の大きさは小さいかもしれませんが、軟骨の摩耗が進行するにつれて音が大きくなったり、頻繁に聞こえるようになったりします。

痛みがない場合でも、この轢音は軟骨の状態が悪化し始めていることを示すサインとして重要です。これらの変化は、特に早朝や長時間座っていた後に動き出すときに気づきやすいです。

進行度合いを判断するためのセルフチェック方法

自宅で簡単にできるセルフチェックを行うことは、自分の膝の状態を客観的に把握し、適切な受診タイミングを判断するのに役立ちます。

初期症状は曖昧なことが多いため、明確な指標を用いることで、自己判断による見過ごしを防げます。ここで紹介する項目を定期的に確認し、変化がないか記録していくことが重要です。

痛みの程度と頻度を記録する習慣

痛みの性質や頻度を記録することで、進行の傾向が見えてきます。

具体的には、痛みが現れる動作、痛みの強さ、痛みの持続時間、そして治まるまでの時間を記録します。

初動時痛の持続時間が長くなっている、または痛みの強さが徐々に増している場合、これは病気が進行しているサインと判断できます。

これらの記録は、医療機関を受診する際にも、医師に症状を正確に伝えるための重要な情報となります。

膝の痛み記録シート(例)

項目記録内容初期症状の見極め
痛みレベル(1〜10)朝の立ち上がり時 3痛みの数値が増えていないか
動作・場面階段の下り、長時間運転後痛む動作が増えていないか
持続時間約 5分で治まる時間が長くなっていないか

片足立ちテストで筋力とバランスを確認

変形性膝関節症の初期段階では、無意識に痛い方の膝をかばうため、膝周りの筋力が低下します。

特に、太ももの前側の筋肉(大腿四頭筋)の筋力と、姿勢を支えるバランス能力の低下が顕著です。片足立ちテストは、これらの低下を簡易的にチェックできます。

靴を脱いで、壁などに頼らずに左右それぞれの足で片足立ちを試みてください。

健康な方の足と比べて、明らかに保持時間が短い、あるいは立っている足の膝が大きく揺れる場合は、筋力やバランス機能に問題が生じている可能性があります。

足のむくみや腫れのチェック方法

初期の炎症によって、膝関節の周囲に軽いむくみ(浮腫)や腫れが生じることがあります。

以下の方法で、左右の膝を比較してみてください。

  1. 膝のお皿の周りを親指で軽く押す。
  2. 押した指を離した後に、くぼみがすぐに戻らない(圧痕が残る)か確認する。

また、左右の膝周りのサイズをメジャーで測って記録することも、腫れの進行度を知るのに有効です。

左右差がある場合は、炎症による腫れが起きている可能性が高まります。

初期症状を見過ごすことのリスクと受診の目安

「このくらいの痛みなら大丈夫」と初期症状を放置することは、病気の進行を許し、将来的な治療の選択肢を狭めることにつながります。

早期に対応を開始すれば、手術を回避できる可能性が高まります。ここでは、初期症状を見過ごすことの具体的なリスクと、専門医に相談すべきタイミングについて解説します。

痛みを我慢することによる二次的な問題

痛みを我慢して生活を続けると、その痛みから逃れようとして、無意識に膝をかばうような歩き方(跛行:はこう)になります。

この不自然な歩き方により、かばっていた側の膝だけでなく、反対側の膝や股関節、腰にも過度な負担がかかり、これらの部位にも痛みが連鎖的に発生する二次的な問題を引き起こします。

また、運動量が減ることで筋力がさらに低下し、体重が増加するという負のスパイラルに陥り、病気の進行を加速させてしまいます。

このことから、初期の痛みを放置することは、全身の健康を損なう原因となるため注意が必要です。

膝の変形が進行するメカニズム

変形性膝関節症は、軟骨がすり減るだけでなく、骨の変形も伴います。初期に炎症が起こると、関節を包む滑膜から炎症性の物質が放出されます。

これらの物質は軟骨の分解を促進するだけでなく、骨の端に不必要な骨組織(骨棘)を形成させます。骨棘が大きくなると、関節の動きをさらに制限し、痛みを強めます。

これらの変化が複合的に作用し、徐々にO脚のような見た目の変形を引き起こすのです。

この骨の変形は一度発生すると自然に治癒することはありません。これにより、治療は困難になり、手術が必要となる可能性が高まります。

専門医に相談すべき受診のタイミング

以下のような初期症状が2週間以上続き、自然に改善しない場合は、整形外科専門医の診察を受けることを強く推奨します。

整形外科受診を検討すべき症状

  • 動作の始め(立ち上がり、歩き始め)に毎回、痛みや違和感がある。
  • 膝を深く曲げる動作(正座、しゃがみ込み)が以前より困難になった。
  • 天候が悪い日に限らず、膝に熱感や腫れを感じることがある。

初期症状の段階で正確な診断を受ければ、生活習慣の改善指導や理学療法などの保存的治療で十分な効果を得られる可能性が高まります。

早期発見のためのチェック項目に1つでも該当する場合は、専門医への相談が最も重要です。

初期段階での予防と生活上の注意点

変形性膝関節症の初期と診断された場合、あるいは初期症状に気づいた段階で、生活習慣を見直し、適切な予防策を講じることが進行を防ぐために極めて重要です。

薬や注射に頼る前に、まずご自身の生活環境と体の使い方を整えることが基本となります。初期の段階で取り組むべき、効果的な予防法と生活上の注意点を紹介します。

膝への負担を減らす体重のコントロール

体重は、膝にかかる負荷に直接的に影響します。歩行時には体重の3倍、階段の上り下りでは6倍以上の負荷が膝にかかると言われています。

体重が1キログラム増加するだけで、膝には日常的に大きな負担が増えるのです。BMI(体格指数)を意識し、適正体重を維持するための食事管理と運動が必要です。

この体重管理により、関節軟骨の摩耗速度を遅らせることが期待できます。

体重と膝への負荷の関係

体重(60kg)歩行時の負荷階段昇降時の負荷
標準時約 180kg約 360kg
5kg増(65kg)約195kg約 390kg
10kg増(70kg)約210kg約420kg

大腿四頭筋を強化するトレーニング

膝周りの筋肉、特に太ももの前にある大腿四頭筋は、膝関節を安定させ、外部からの衝撃を吸収する役割を担っています。

この筋肉を強化することは、膝への負荷を軽減し、軟骨を保護するために非常に大切です。

初期段階では、関節に負担をかけない等尺性運動(アイソメトリック運動)から始めるのが適しています。

例えば、椅子に座って膝を伸ばしたまま5秒間キープする運動などが挙げられます。運動は毎日継続することが重要です。

生活様式から膝への負担を軽減する工夫

日常生活の中で、膝への負担を極力減らす工夫が求められます。特に膝を深く曲げる動作や、立ち座りを繰り返す動作は、関節への負担が大きいです。

負担軽減のための生活工夫

  • 和式トイレから洋式トイレへ変更する
  • 座椅子ではなく、肘掛け付きの椅子やソファを使用する
  • 布団ではなく、ベッドで寝る
  • 階段の上り下りには手すりを必ず使う
  • 杖やサポーターの使用を検討する(専門医の指導のもと)

これらの工夫を取り入れることで、膝関節の動きの範囲を制限する刺激を減らし、進行を遅らせることができます。

変形性膝関節症の進行を遅らせるための非運動療法

運動による筋力強化と並行して、関節軟骨や関節周囲の組織の健康を保つための非運動療法も重要です。

食事、温熱、装具の使用など、日常生活の中で意識して取り組めることで、炎症を抑え、痛みの緩和につなげることができます。

これは、初期段階から積極的に取り入れるべき重要なアプローチです。

関節の健康を支える栄養素の摂取

関節軟骨の主成分であるコラーゲンや、軟骨の水分を保つヒアルロン酸などの原料となる栄養素を意識して摂取することは、間接的に軟骨の健康をサポートします。

具体的な栄養素としては、コラーゲンの生成に必要なタンパク質やビタミンC、そして抗炎症作用を持つオメガ3系脂肪酸(魚油などに豊富)などが挙げられます。

バランスの取れた食生活は、体重管理にもつながり、多方面から膝の健康を支えます。

膝の健康をサポートする栄養素

栄養素期待される作用主な食品
タンパク質軟骨や筋肉の材料肉類、魚介類、大豆製品
ビタミンCコラーゲンの生成促進柑橘類、ブロッコリー、パプリカ
オメガ3系脂肪酸炎症の抑制サバ、サンマ、アマニ油

温熱療法と冷却療法の使い分け

痛みや違和感があるとき、温めるべきか冷やすべきか迷うことがあるかもしれません。初期の変形性膝関節症の使い分けは以下の通りです。

温熱療法:慢性的で鈍い痛みや、関節のこわばり(特に朝)がある場合に有効です。温めることで血行が促進され、痛みの原因物質の排出を助けます。入浴やホットパックの使用が一般的です。

冷却療法:運動後や長時間活動した後など、熱感や腫れを伴う急性的な炎症が強い場合にのみ使用します。冷やすことで炎症を鎮め、痛みを軽減します。

ただし、慢性的な症状に対して常に冷やし続けることは、血行不良を招く可能性があるため避けるべきです。

状況に応じて、これらを使い分けることで、痛みのコントロールに役立ちます。

装具(サポーターやインソール)の役割

専門医から処方される装具は、初期の変形性膝関節症の進行を遅らせる上で非常に効果的です。

特に、O脚が原因で膝の内側に負担が集中している場合、靴の中敷き(インソール)を使用して足底から膝関節のバランスを整えます。

また、サポーターは、膝関節の動揺を抑え、安定性を高めることで、動作時の痛みや不安感を軽減します。

市販のものもありますが、病態に合わせた装具の使用は、専門家による評価と調整が重要です。これらの装具の使用により、日常生活での膝への負荷を効果的に分散させることが可能です。

変形性膝関節症の初期症状に関する疑問にお答えします

変形性膝関節症の初期症状や今後の見通しに関して、多くの方が抱える一般的な疑問について、Q&A形式で解説します。

専門的な情報を理解し、日々の不安を軽減するために役立ててください。

初期症状が出た場合でも運動を続けても大丈夫ですか

初期症状がある場合でも、運動は大切です。

ただし、膝に負担のかかる激しい運動は避ける必要があります。ウォーキングや水泳、サイクリングなど、膝に急激な衝撃を与えない運動が適しています。

特に、太ももの前後の筋肉(大腿四頭筋やハムストリングス)を強化する運動は、関節の安定化に役立ちます。

痛みを感じる場合は無理をせず、運動の種類や強度を調整することが重要です、専門家のアドバイスを受けながら、継続できる運動を見つけてください。

初期の段階で放置するとどうなりますか

初期の痛みを放置すると、痛みをかばう動作が習慣化し、膝周りの筋肉が衰え、関節の柔軟性が低下します。

この悪循環によって軟骨の摩耗が加速し、数年で中期、さらに末期へと進行するリスクが高まります。

末期まで進行すると、日常生活に支障をきたすほどの強い痛みや歩行困難が生じ、最終的には人工関節置換術などの外科的な治療が必要となる可能性が高まります。

早期発見と早期対応は、将来の生活の質を守るために最も重要です。

サプリメントは初期症状の改善に効果がありますか

グルコサミンやコンドロイチンなどのサプリメントは、軟骨成分の原料となるものですが、これらを摂取したからといって、すり減った軟骨が元通りに再生されるという科学的な根拠は確立されていません。

しかし、一部の方には痛みの軽減効果や、関節の違和感が和らぐという体感的な効果が報告されています。栄養補助食品として、バランスの取れた食事のサポートという位置づけで利用することは可能です。

あくまで補助的な役割であることを理解し、主たる治療(運動療法や生活改善)の妨げにならないように利用してください。

膝に水が溜まるのはどのような段階で起こりますか

膝に水が溜まる(関節液が異常に増える)現象は、関節内で炎症が強く起きているサインです。

初期段階でも炎症の程度が強い場合や、一時的に無理な動作をした後には起こることがありますが、多くは病気が中期以降に進行した段階で頻繁に見られます。

水が溜まると、膝が腫れて曲げ伸ばしが困難になり、痛みが強くなります。水抜きが必要な場合もありますが、根本は炎症を抑えることが大切です。

水が溜まる頻度が増えた場合は、病態が進行している可能性を示します。

参考文献

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Author

北城 雅照

医療法人社団円徳 理事長
医師・医学博士、経営心理士

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