足立慶友医療コラム

膝関節捻挫の症状|応急処置と治療の進め方

2025.10.23

スポーツ活動中や日常生活での転倒、衝突などで膝を強くひねった際、「膝関節捻挫」を起こすことがあります。

膝関節捻挫は、膝の関節を支える靭帯(じんたい)や半月板などの組織が損傷した状態を指します。

症状には強い痛みや腫れ、関節の不安定感(膝くずれ)などがあり、放置すると日常生活やスポーツ復帰に大きな支障をきたす可能性があります。

この記事では、膝関節捻挫が疑われる場合の症状の見極め方、直後に行うべき応急処置、そして医療機関で行われる専門的な診断と治療の進め方について、順を追って詳しく解説します。

膝関節捻挫とは? 靭帯損傷の基本

膝関節は、太ももの骨(大腿骨)とすねの骨(脛骨)、そしてお皿の骨(膝蓋骨)で構成される、体の中で最も大きな関節の一つです。

この関節を安定させ、滑らかな動きを助けるために、強靭な靭帯や軟骨組織が存在します。

膝関節捻挫は、これらの支持組織が許容範囲を超えた外力によって伸びたり、部分的に切れたり、完全に断裂したりするケガです。

膝関節の構造と安定性

膝関節の安定性は、主に四つの主要な靭帯によって保たれています。

関節の内側にある「内側側副靱帯(MCL)」、外側にある「外側側副靱帯(LCL)」、そして関節の中心部で十字に交差する「前十字靱帯(ACL)」と「後十字靱帯(PCL)」です。

これらの靭帯が前後左右へのぐらつきを防ぎます。また、大腿骨と脛骨の間には「半月板」という軟骨組織があり、クッションの役割と安定性を高める働きを担います。

膝関節捻挫が起こる主な原因

膝関節捻挫は、膝に急激なひねりや強い衝撃が加わることで発生します。

スポーツ(サッカー、バスケットボール、スキー、柔道など)でのジャンプ着地時の失敗、急な方向転換(カッティング動作)、相手選手との接触(タックル)などが典型的な原因です。

また、日常生活においても、交通事故や階段での踏み外し、転倒などによっても起こり得ます。

損傷しやすい靭帯とその特徴

膝関節捻挫では、どの靭帯が損傷したかによって症状や治療方針が異なります。複数の靭帯が同時に損傷すること(複合靭帯損傷)も少なくありません。

膝関節の主要な靭帯と損傷の特徴

靭帯の名称主な役割損傷しやすい状況
前十字靱帯 (ACL)脛骨が前にずれるのを防ぐジャンプ着地時、急な方向転換
後十字靱帯 (PCL)脛骨が後ろにずれるのを防ぐ膝を強く曲げた状態での前方からの衝撃
内側側副靱帯 (MCL)膝が外側に開く(外反)のを防ぐ膝の外側からのタックル(外反強制)

半月板損傷の合併

前十字靱帯(ACL)損傷などの強い外傷(けが)では、同時に半月板損傷を合併することが非常に多いです。

半月板を損傷すると、膝の曲げ伸ばしの際に「引っかかり感」や「ロッキング」(膝が動かなくなる現象)が生じることがあります。

膝関節捻挫の主な症状

膝関節捻挫の症状は、損傷した組織(靭帯、半月板、軟骨など)の場所や損傷の程度によって様々です。

受傷直後から現れる症状と、少し時間が経ってから明らかになる症状があります。

痛み(圧痛・運動時痛)

受傷直後に、膝関節に鋭い痛みを感じます。損傷した靭帯の部位を押すと強く痛む(圧痛)のが特徴です。また、膝を動かしたり、体重をかけたりすると痛みが増強します(運動時痛)。

内側側副靱帯(MCL)損傷では膝の内側に、外側側副靱帯(LCL)損傷では膝の外側に明確な圧痛点が存在することが多いです。

腫れ(関節内血腫)

受傷後、数時間以内に関節全体がパンパンに腫れてくることがあります。

これは、前十字靱帯(ACL)や後十字靱帯(PCL)のように関節の中にある靭帯が断裂した場合、関節内に出血(関節内血腫)が起こるためです。

内側側副靱帯(MCL)のみの損傷では、関節外の損傷であるため、腫れは比較的軽度な場合もあります。

可動域の制限

痛みや腫れ、あるいは断裂した靭帯や損傷した半月板が関節内で挟まることにより、膝の曲げ伸ばしが困難になることがあります。

特に、膝が完全に伸びない、あるいは深く曲げられないといった可動域の制限は、日常生活に大きな不便をもたらします。

不安定感(膝くずれ)

膝関節捻挫の症状として特徴的なのが、「膝がぐらぐらする」「力が抜ける」「歩行中や階段昇降時に膝がガクッと折れそうになる」といった不安定感です。

これは「膝くずれ(Giving way)」と呼ばれ、特に前十字靱帯(ACL)が完全に断裂した場合によく見られます。

この不安定感を放置すると、さらなる軟骨損傷や半月板損傷を引き起こす原因となります。

膝関節捻挫の重症度分類

重症度靭帯の状態主な症状
I度(軽症)靭帯が伸びた状態(微細な損傷)痛みや圧痛はあるが、不安定感はほぼない。
II度(中等症)靭帯の部分断裂明らかな痛み、腫れ。軽度から中等度の不安定感。
III度(重症)靭帯の完全断裂強い痛み、著しい腫れ、明らかな不安定感(膝くずれ)。

膝を捻挫した直後の応急処置(RICE処置)

膝関節捻挫が疑われるケガをした直後は、損傷部位の炎症や内出血を最小限に抑えるための応急処置が非常に重要です。この初期対応が、その後の回復過程や治癒期間に大きく影響します。

応急処置の基本として知られる「RICE処置」を適切に行いましょう。

Rest(安静)

まず、損傷した膝にそれ以上負担がかからないよう、直ちに運動や動作を中止し、安全な場所で安静にします。

体重をかけないようにすることが大切で、必要に応じて松葉杖の使用も検討します。無理に動き続けると、損傷が悪化する恐れがあります。

Ice(冷却)

痛みや腫れを抑えるため、損傷部位を冷却します。氷のう(アイスバッグ)やビニール袋に氷と少量の水を入れ、患部に当てます。

タオルや布を一枚挟み、凍傷に注意しながら、1回15分から20分程度を目安に冷却します。これを1時間から2時間おきに、受傷後24時間から72時間程度続けます。

Compression(圧迫)

内出血や腫れが広がるのを防ぐため、弾性包帯やテーピング、サポーターなどで患部を適度に圧迫します。

ただし、強く巻きすぎると血流障害や神経の圧迫を引き起こす可能性があるため注意が必要です。圧迫後にしびれや皮膚の変色が見られた場合は、すぐに緩めてください。

Elevation(挙上)

腫れを軽減するため、損傷した膝を心臓より高い位置に保ちます。横になる際は、足の下にクッションや枕、折りたたんだ毛布などを入れて高くします。

座っている場合でも、椅子や台の上に足を乗せるように工夫しましょう。

RICE処置の実施ポイント

処置目的具体的な方法(例)
安静 (Rest)損傷の悪化防止運動中止、体重をかけない(松葉杖使用)
冷却 (Ice)炎症・痛みの軽減氷のうで1回15-20分、1-2時間おきに冷却
圧迫 (Compression)腫れ・内出血の抑制弾性包帯やサポーターで適度に圧迫
挙上 (Elevation)腫れの軽減クッションなどで患部を心臓より高く保つ

応急処置における注意点

  • 無理なマッサージやストレッチは行わない
  • 受傷当日の飲酒や長時間の入浴は避ける
  • 冷却スプレーのみで処置を終わらせない(深部まで冷えないため)

RICE処置はあくまで応急処置です。痛みや腫れが強い場合、不安定感がある場合、または自分で判断がつかない場合は、できるだけ早く整形外科などの医療機関を受診してください。

医療機関での診断方法

膝関節捻挫の正確な診断には、専門医による詳細な診察と画像検査が必要です。

応急処置で症状が一時的に和らいだとしても、靭帯の損傷度合いを正確に把握するために、医療機関を受診することが重要です。

問診と身体所見(徒手検査)

医師はまず、いつ、どこで、どのようにケガをしたか(受傷機転)を詳しく尋ねます。また、「ブチッ」という断裂音(ポップ音)の有無や、膝くずれの経験なども重要な情報となります。

その後、医師が直接膝を触って、圧痛の場所、腫れの程度、関節の可動域を確認します。

さらに、膝に特定のストレス(力)を加えて関節の不安定性を評価する「徒手検査(ストレス検査)」を行います。

主な徒手検査(ストレス検査)の例

検査名目的疑われる損傷
前方引き出しテスト脛骨の前方へのずれを確認前十字靱帯 (ACL) 損傷
後方引き出しテスト脛骨の後方へのずれを確認後十字靱帯 (PCL) 損傷
外反・内反ストレステスト膝の側方への不安定性を確認側副靱帯 (MCL, LCL) 損傷

画像検査の重要性

徒手検査で靭帯損傷が疑われた場合、その損傷の程度や、他の組織(骨、半月板、軟骨)の損傷の有無を確認するために画像検査を行います。

レントゲン(X線)検査

レントゲン検査は、主に骨の状態を確認するために行います。靭帯そのものはレントゲンに写りませんが、靭帯が付着する部分の骨折(剥離骨折)の有無や、関節の隙間の状態を評価します。

また、ストレス(力を加えた状態)で撮影(ストレスレントゲン)することで、関節の不安定性を客観的に評価することもあります。

MRI検査

MRI検査は、磁気を利用して体の断面を撮影する検査です。レントゲンでは見えない靭帯、半月板、関節軟骨、筋肉などの軟部組織の状態を詳細に映し出すことができます。

膝関節捻挫の診断において最も有用な検査の一つであり、靭帯の断裂の有無や損傷部位、半月板損傷や軟骨損傷の合併を正確に診断するために行います。

超音波(エコー)検査

超音波(エコー)検査は、体の表面から超音波を当て、その反響を画像化する検査です。靭帯や筋肉の状態をリアルタイムで観察できます。

特に内側側副靱帯(MCL)や外側側副靱帯(LCL)など、関節の表面に近い組織の評価に有用です。また、関節内の出血や水(関節水腫)の量を確認することもできます。

画像検査による評価の違い

検査方法主な評価対象特徴
レントゲン (X線)骨(骨折、変形)迅速に撮影可能。靭帯自体は写らない。
MRI靭帯、半月板、軟骨軟部組織の描出に優れ、診断精度が高い。
超音波 (エコー)表層の靭帯、筋肉、血腫簡便でリアルタイムに観察可能。

膝関節捻挫の治療の進め方

膝関節捻挫の治療は、損傷した靭帯の種類、損傷の重症度(I度~III度)、年齢、活動レベル(スポーツ選手か、一般生活か)、不安定感の有無、合併損傷(半月板損傷など)の有無などを総合的に考慮して決定します。

保存的治療

靭帯の損傷が軽度(I度)や中等度(II度)の場合、または不安定感が少ない場合は、手術を行わない「保存的治療」が第一選択となることが多いです。

特に内側側副靱帯(MCL)は血流が豊富なため、単独損傷であれば保存的治療で良好な治癒が期待できます。

固定(サポーターやギプス)

受傷直後は、損傷した靭帯に負担がかからないように、サポーターやシーネ(副木)、場合によってはギプスを用いて膝関節を固定します。

固定期間は損傷の程度によりますが、数日から数週間程度です。ただし、長期間の固定は関節が硬くなる(拘縮)原因にもなるため、医師の指示に従い、徐々に動かしていくことが大切です。

薬物療法(鎮痛薬など)

痛みや炎症を抑えるために、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の飲み薬や貼り薬、塗り薬を使用します。

痛みが強い場合は、一時的に鎮痛薬を使用しながらリハビリを進めます。

リハビリテーション

保存的治療において、リハビリテーションは非常に重要な役割を果たします。炎症が落ち着いたら、関節が硬くならないように可動域訓練(曲げ伸ばしの練習)を開始します。

並行して、膝周囲の筋力(特に太もも前の大腿四頭筋)を強化する訓練を行い、膝の安定性を高めます。

外科的治療(手術)

靭帯が完全に断裂(III度)し、膝の不安定感が強い場合、特に前十字靱帯(ACL)損傷では、スポーツ活動への復帰や将来的な変形性膝関節症への進行を防ぐために、手術が検討されます。

主な手術的治療の対象

損傷靭帯治療の傾向備考
前十字靱帯 (ACL)外科的治療(再建術)自然治癒が難しく、不安定感が残りやすいため。
後十字靱帯 (PCL)保存的治療(単独損傷)筋力強化で代償できる場合がある。
内側側副靱帯 (MCL)保存的治療(単独損傷)血流が豊富で治癒しやすいため。

手術が検討される主なケース

  • 前十字靱帯(ACL)の完全断裂
  • 複数の靭帯が同時に断裂している(複合靭帯損傷)
  • 半月板損傷を合併し、ロッキング症状などがある
  • 保存的治療では不安定感(膝くずれ)が改善しない

主な手術方法(靭帯再建術)

断裂した靭帯を縫い合わせる「縫合術」は、治癒が難しい場合が多いです。

特に前十字靱帯(ACL)や後十字靱帯(PCL)では、自分の体の他の部位から腱(膝蓋腱、ハムストリングス腱など)を採取し、それを移植して新しい靭帯を作り直す「靭帯再建術」が一般的に行われます。

この手術は、関節鏡(内視鏡)を用いて小さな傷で行うことが多く、体への負担が少ない方法が進んでいます。

治療後のリハビリテーションと復帰

膝関節捻挫の治療において、リハビリテーションは保存的治療・外科的治療のどちらを選択した場合でも、機能回復のために不可欠な要素です。

適切なリハビリを行わなければ、筋力が低下したり、関節が硬くなったりして、元の生活やスポーツレベルに戻ることが難しくなります。

リハビリテーションの目的

リハビリテーションの最終目標は、膝の機能を最大限に回復させ、痛みや不安定感なく日常生活やスポーツ活動に安全に復帰することです。

また、再発を防ぐための体作りも重要な目的となります。

時期別のリハビリ内容

リハビリは、損傷や手術後の膝の状態に合わせて、段階的に進めます。

急性期(炎症のコントロール)

受傷直後や手術直後は、炎症を抑え、痛みを管理することが最優先です。

RICE処置を継続し、医師の許可の範囲で、膝に体重をかけない状態での関節可動域訓練(他動的、または自動的)や、太ももの筋肉に力を入れる練習(アイソメトリック運動)を開始します。

回復期(可動域と筋力の回復)

炎症が落ち着き、痛みが軽減してきたら、徐々に膝の曲げ伸ばしの角度を広げていきます。

並行して、大腿四頭筋(太もも前)やハムストリングス(太もも裏)、お尻の筋肉など、膝を支える筋肉の本格的な筋力強化訓練を開始します。

固定式自転車(エアロバイク)なども用います。

復帰期(機能の回復とスポーツ復帰)

筋力が回復し、膝の安定性が得られてきたら、より実践的な動作の練習に移ります。

ジョギング、ジャンプ、カッティング(方向転換)など、スポーツ特有の動作を段階的に取り入れ、再受傷しないための正しい体の使い方(フォーム)を習得します。

リハビリテーションの段階的目標

時期主な目標訓練内容(例)
急性期炎症の鎮静、可動域の維持冷却、安静、ごく軽い可動域訓練
回復期可動域の完全回復、筋力強化ストレッチ、筋力訓練(スクワット等)
復帰期スポーツ動作の獲得、再発予防ジョギング、ジャンプ、ステップ練習

スポーツ復帰の目安

スポーツへの完全復帰の時期は、損傷の重症度や手術の有無、リハビリの進捗によって大きく異なります。

特に前十字靱帯(ACL)再建術後のスポーツ復帰には、一般的に6ヶ月から12ヶ月程度かかるとされています。

筋力や関節機能が十分に回復していない状態での無理な復帰は、再断裂や反対側の膝のケガにつながるため、医師や理学療法士の専門的な判断に従うことが重要です。

膝関節捻挫の再発予防

一度膝関節捻挫を経験すると、再発しやすい状態になることがあります。特にスポーツ選手にとっては、再発予防の取り組みが非常に重要です。

日頃のトレーニングや体のケアを通じて、ケガをしにくい体作りを目指しましょう。

ウォーミングアップとクールダウンの徹底

運動前には必ず十分なウォーミングアップを行い、筋肉や関節の柔軟性を高め、血流を良くしておくことが大切です。

運動後はクールダウンとして、使った筋肉のストレッチを行い、疲労回復を促しましょう。

ウォーミングアップの例

  • 軽いジョギング
  • 動的ストレッチ(関節を大きく動かす)
  • 体幹(コア)の活性化

膝を支える筋力の強化

膝関節の安定性は、靭帯だけでなく周囲の筋肉によっても支えられています。

特に大腿四頭筋(太もも前)とハムストリングス(太もも裏)の筋力バランス、そしてお尻(殿筋群)や体幹の筋力を強化することが、膝への負担を減らし、捻挫の予防につながります。

膝の安定性を高める筋力訓練の例

訓練名鍛える主な筋肉ポイント
スクワット大腿四頭筋、ハムストリングス、殿筋群膝がつま先より前に出ないよう、お尻を引く。
ランジ大腿四頭筋、ハムストリングス踏み出した足の膝が内側に入らないように注意。
カーフレイズふくらはぎかかとをゆっくり上げ下げする。

正しいフォームの習得(動作改善)

スポーツ動作において、膝が内側に入る「Knee-in(ニーイン)」という動作は、特に前十字靱帯(ACL)損傷のリスクを高めることが知られています。

ジャンプの着地や方向転換の際に、膝とつま先がまっすぐ正面を向くように、正しいフォームを意識し、習得することが予防には重要です。

専門家による動作指導を受けることも有効です。

適切な用具の使用と環境整備

自分の足に合ったシューズを選ぶこと、競技特性に合わせたサポーターを適切に使用することも、予防の一環です。

また、練習や試合を行うグラウンドや床の状態が悪い場合は、管理者に改善を求めるなど、環境面にも注意を払いましょう。

再発予防のためのセルフケア

  • 運動後のストレッチ
  • 十分な栄養と睡眠
  • 膝に違和感があれば無理をしない

膝関節捻挫に関するよくある質問

最後に、膝関節捻挫に関して多く寄せられる質問についてお答えします。

膝を捻挫したら、すぐに病院に行くべきですか?

はい、できるだけ早く整形外科を受診することを推奨します。

特に「ブチッ」という音がした場合、膝がパンパンに腫れてきた場合、体重をかけると激痛が走る場合、膝がぐらぐらして不安定な場合は、重度の靭帯損傷や骨折の可能性があります。

軽い捻挫だと思って放置すると、診断が遅れ、治療が難しくなることがあります。

完治までどれくらいの期間がかかりますか?

損傷の重症度によって大きく異なります。

内側側副靱帯(MCL)損傷の軽度(I度)であれば数週間程度でスポーツ復帰できる場合もありますが、前十字靱帯(ACL)再建術を行った場合は、リハビリを含めてスポーツ復帰までに通常6ヶ月から1年以上かかります。

日常生活への復帰はそれよりも早くなりますが、個人差や活動レベルによります。

治療中、お風呂に入っても良いですか?

受傷直後の急性期(2~3日)は、炎症を悪化させる可能性があるため、湯船につかるのは避け、シャワー程度にするのが賢明です。

炎症が落ち着いた慢性期やリハビリ期には、温熱効果で血流が良くなり、関節の動きが改善することもあるため、医師の指示に従って入浴してください。

手術後の場合は、傷口の状態によりますので、必ず医師の許可を得てください。

膝関節捻挫は癖(くせ)になりますか?

「癖になる」という表現は、医学的には「慢性的な不安定性」が残っている状態を指すことが多いです。

特に前十字靱帯(ACL)損傷などで適切な治療やリハビリテーションが行われないと、膝の不安定感が残り、何度も膝くずれを繰り返すことがあります。

この状態を放置すると、半月板や軟骨がさらに傷つき、将来的に変形性膝関節症に進行するリスクが高まります。しっかりと治療とリハビリを行うことが、癖にしないために重要です。

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Author

北城 雅照

医療法人社団円徳 理事長
医師・医学博士、経営心理士

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