女性に多い股関節の痛みの原因|年代別の特徴
「立ち上がるときに股関節が痛む」「歩いていると足の付け根が気になる」といった悩みを抱える女性は少なくありません。
股関節の痛みは、日常生活の質に大きく影響します。特に女性は、骨盤の形状やホルモンバランスの影響など、男性とは異なる要因で股関節に問題を抱えやすい傾向があります。
この痛みは、若い年代から中高年まで、さまざまな年代で現れますが、その背景にある原因は年代ごとに異なることも多いのです。
この記事では、なぜ女性に股関節の痛みが多いのか、その原因と年代別の特徴について詳しく解説します。
目次
なぜ女性は股関節に痛みを抱えやすいのか
股関節は、体を支え、歩行や動作の起点となる重要な関節です。しかし、女性の体は男性と比較していくつかの構造的な違いがあり、それらが股関節への負担と関係している場合があります。
女性特有の体のつくりやライフイベントが、どのように股関節の痛みに影響するのかを見ていきましょう。
女性の骨盤の構造的な特徴
女性の骨盤は、出産に適応するため、男性に比べて幅が広く、浅い形状をしています。この形状の違いは、大腿骨(太ももの骨)が骨盤にはまる角度にも影響を与えます。
一般的に、女性は骨盤が広いために股関節から膝への角度(Qアングルと呼ばれます)が大きくなりやすい傾向があります。
この角度が大きいと、歩行時や運動時に股関節や膝関節に特定の力がかかりやすく、周囲の筋肉や腱に負担が集中する一因となります。
また、股関節の受け皿である「臼蓋(きゅうがい)」が浅い「臼蓋形成不全」も、女性に多く見られる特徴の一つです。
臼蓋が浅いと、大腿骨の先端(骨頭)を十分に覆うことができず、関節が不安定になりがちです。
この不安定さが、長期間にわたる負担の蓄積につながり、将来的な関節の変形や痛みの原因となることがあります。
女性と男性の骨盤形状の主な違い
| 特徴 | 女性の骨盤 | 男性の骨盤 |
|---|---|---|
| 全体の形状 | 幅広く、浅い | 縦に長く、狭い |
| 主な役割 | 出産への適応 | 体重の強固な支持 |
| 関節への影響 | Qアングルが大きくなりやすい | 比較的まっすぐな下肢のライン |
妊娠・出産による身体への影響
妊娠中は、胎児の成長とともにお腹が大きくなり、体重が増加します。この体重増加は、股関節を含む下半身の関節に大きな負担をかけます。
また、妊娠後期になると、出産をスムーズにするために「リラキシン」というホルモンが分泌されます。このホルモンは、骨盤の靭帯(じんたい)や関節を緩める働きがあります。
骨盤周囲の関節が緩むと、股関節の安定性も低下しやすくなります。
この状態で増加した体重を支えたり、育児で無理な姿勢をとったりすることで、股関節やその周囲の筋肉に痛みが生じることがあります。
産後も、緩んだ靭帯が元の状態に戻るまでには時間がかかり、その間に育児による負担が続くため、痛みが慢性化するケースも見られます。
ホルモンバランスの変動と関節
女性の体は、月経周期、妊娠・出産、そして更年期といったライフステージを通じて、ホルモンバランスが大きく変動します。
特に女性ホルモンである「エストロゲン」は、骨の健康維持や関節の柔軟性にも関わっています。
エストロゲンには、骨密度を維持し、関節の炎症を抑える働きがあると考えられています。しかし、閉経を迎える50代前後になると、エストロゲンの分泌量が急激に減少します。
この変化により、骨がもろくなる「骨粗しょう症」のリスクが高まるだけでなく、関節軟骨の保護機能が低下し、関節痛が起こりやすくなると指摘されています。
このホルモン変動が、中高年期の女性に変形性股関節症が増える一因とも考えられています。
股関節の痛みを引き起こす主な原因
股関節の痛みは、特定の年代に限らず発生する可能性があります。その原因は多岐にわたり、関節そのものの問題から、周囲の筋肉や腱、さらには日常生活の習慣まで関係しています。
痛みの背景にある代表的な原因を理解することは、適切な対処への第一歩となります。
関節や軟骨の問題
股関節痛の最も代表的な原因の一つが、関節の軟骨がすり減ることによって起こる「変形性股関節症」です。関節軟骨は、骨同士が直接こすれ合うのを防ぐクッションの役割を果たしています。
しかし、加齢や長年の負担、あるいは前述の臼蓋形成不全などが原因で軟骨がすり減ると、骨同士がぶつかり、炎症や痛み、関節の変形を引き起こします。
初期の段階では、立ち上がりや歩き始めに痛みを感じる程度ですが、進行すると安静時にも痛むようになり、関節の動かせる範囲が狭まることもあります。
この症状は、特に中高年の女性に多く見られます。
痛みの場所から推測される主な原因
| 痛む場所 | 考えられる主な原因(例) | 特徴 |
|---|---|---|
| 足の付け根(前方) | 変形性股関節症、筋肉の炎症 | 歩行時や立ち上がり時に痛むことが多い |
| お尻(後方) | 筋肉の緊張、坐骨神経の問題 | 座っていると痛む、しびれを伴うことも |
| 太ももの外側 | 腱の炎症(転子部滑液包炎) | 押すと痛む、横向きに寝られない |
筋肉や腱の疲労・損傷
股関節は多くの筋肉や腱によって支えられ、動かされています。これらの組織に過度な負担がかかると、炎症や微細な損傷が起こり、痛みを生じます。
例えば、股関節の周囲には「中殿筋」や「小殿筋」といったお尻の筋肉があり、これらは歩行時の骨盤の安定に重要な役割を果たします。
これらの筋肉が疲労すると、股関節の外側やお尻に痛みが出ることがあります。
また、急な運動や長時間の歩行によって、筋肉や腱が硬くなり、血流が悪化することも痛みの原因となります。
スポーツや肉体労働だけでなく、日常生活での些細な負担の蓄積が、筋肉由来の痛みを引き起こすことも珍しくありません。
日常生活の姿勢や動作の癖
自分では気づきにくい日常生活の癖が、股関節への負担を増やしていることがあります。例えば、いつも同じ側でバッグを持つ、足を組んで座る、片足に体重をかけて立つといった癖です。
これらの動作は、骨盤の歪みや左右の筋力バランスの不均衡を生み出します。
骨盤が傾くと、左右どちらかの股関節に過剰な体重がかかり続けることになり、その結果、特定の筋肉が常に緊張した状態になったり、関節軟骨への負担が偏ったりします。
長期間このような状態が続くと、股関節や腰に痛みが生じやすくなります。
【10代・20代】若年層に見られる股関節痛の特徴
「股関節の痛みは中高年のもの」というイメージがあるかもしれませんが、10代や20代の若い女性でも股関節の痛みに悩むケースは増えています。
この年代の痛みは、加齢による変性とは異なり、主に活動量や先天的な要因、生活習慣が関係しています。
スポーツや過度な運動による負荷
部活動やスポーツジムでのトレーニング、ダンス、ランニングなど、活発に運動する女性は多いです。
しかし、十分なウォーミングアップやクールダウンを行わなかったり、自分の体力以上に過度な負荷をかけ続けたりすると、股関節周辺の筋肉や腱、関節包(関節を包む袋)に炎症が起こることがあります。
これは「使いすぎ(オーバーユース)」による痛みです。
特に、ジャンプや急な方向転換を繰り返すスポーツは、股関節への衝撃が大きくなります。
痛みを感じながらも無理して運動を続けると、症状が悪化し、疲労骨折や軟骨の損傷につながる可能性もあるため注意が必要です。
発育性股関節形成不全(臼蓋形成不全)の影響
生まれつき股関節の受け皿(臼蓋)が浅い「発育性股関節形成不全(臼蓋形成不全)」は、若年層の股関節痛の大きな原因の一つです。
これは、乳幼児健診で見つかることもありますが、軽度の場合は成人になるまで自覚症状がないことも少なくありません。
臼蓋が浅いと、体重を支える面積が狭くなるため、関節軟骨の特定の部分に負担が集中します。
10代や20代では、まだ軟骨が厚く弾力があるため問題なくても、スポーツや日常生活での負担が蓄積することで、軟骨が傷つきやすくなり、痛みや違和感として現れ始めます。
この状態を放置すると、将来的に変形性股関節症へ進行するリスクが高まります。
若年層向けの股関節ケアのポイント
| シーン | 注意点 | 目的 |
|---|---|---|
| 運動時 | 適切なウォームアップとクールダウン | 筋肉や腱の柔軟性を保ち、怪我を防ぐ |
| 日常生活 | 長時間の同じ姿勢を避ける | 特定の筋肉への負担集中を避ける |
| セルフケア | 股関節周りのストレッチ | 筋肉の緊張を和らげ、可動域を保つ |
デスクワークと運動不足
スポーツとは対照的に、運動不足も股関節痛の原因となります。特に学生や社会人になり、デスクワークで長時間座りっぱなしの生活を送るようになると、股関節を動かす機会が減ります。
長時間座った姿勢を続けると、股関節の前側にある筋肉(腸腰筋など)が縮こまった状態で硬くなり、逆にお尻の筋肉(大殿筋など)は引き伸ばされて弱くなりがちです。
この筋力バランスの乱れが、立ち上がる時や歩く時の股関節の不安定さや痛みを引き起こします。
また、運動不足は体重増加にもつながりやすく、股関節への負担をさらに増大させる要因となります。
【30代・40代】ライフスタイルの変化と股関節痛
30代から40代は、仕事でのキャリアアップ、妊娠・出産、育児など、女性のライフスタイルが大きく変化する時期です。
これらの変化は、体に新たな負担をもたらし、これまで感じなかった股関節の痛みが現れやすい年代とも言えます。
産後の骨盤の変化と育児の負担
出産は女性の体に大きな変化をもたらします。妊娠中から出産にかけて緩んだ骨盤周囲の靭帯は、産後数ヶ月かけて徐々に元の硬さに戻っていきます。
しかし、この時期に始まる育児は、股関節にとって負担の大きい動作の連続です。
例えば、床からの赤ちゃんの抱き上げ、授乳時のあぐらや横座り、長時間の抱っこなどは、不安定な骨盤や股関節に大きなストレスを与えます。
特に、左右どちらか一方で抱っこする癖があると、骨盤が歪み、片方の股関節に痛みが集中しやすくなります。この時期の負担が、産後の股関節痛や腰痛の主な原因となります。
育児中に気をつけたい股関節への負担
| 動作 | 負担のかかる理由 | 対策のヒント |
|---|---|---|
| 床からの抱き上げ | 股関節を深く曲げ、前傾姿勢になる | 膝をついてから抱える、ベビーベッドを活用 |
| 長時間の抱っこ | 片側の腰や股関節に体重が偏る | 抱っこ紐を正しく使う、左右均等に |
| 床での座り方 | あぐらや横座りは股関節にねじれを生む | 椅子を使う、クッションで高さを出す |
ホルモン変動の始まりと関節への影響
30代後半から40代にかけては、更年期にはまだ早くとも、女性ホルモンの分泌が徐々にゆらぎ始める時期です。
エストロゲンの分泌量が不安定になると、これまで保たれていた関節の柔軟性や筋力にも微妙な変化が現れ始めます。
この時期に感じる股関節の違和感や軽い痛みは、本格的な関節の変形が始まったというよりは、ホルモンバランスの変化に伴う一時的な関節の不調や、筋肉の柔軟性低下が原因である場合もあります。
しかし、これを「年のせい」と見過ごさず、体の変化に合わせたケアを始めることが、将来の深刻な股関節トラブルを防ぐ上で重要です。
筋力低下と体重の増加
基礎代謝は20代をピークに徐々に低下していきます。30代、40代になると、以前と同じ食生活や運動量では体重が増えやすくなります。
特に、運動習慣がない場合、股関節やお尻周りの筋力は確実に低下していきます。
股関節を支える筋力が低下すると、歩行時や階段の上り下りなどの際に、関節軟骨にかかる衝撃を筋肉が十分に吸収できなくなります。
この状態での体重増加は、股関節への負担を二重に増やすことになります。
例えば、歩行時には股関節に体重の約3〜4倍の負荷がかかると言われており、体重が1kg増えるだけで、股関節への負担は3〜4kg増える計算になります。
【50代以降】中高年期に増加する股関節の悩み
50代以降は、女性の体にとって大きな転換期である「閉経」を迎える時期です。
これまでの生活で蓄積された負担に加え、加齢とホルモンバランスの劇的な変化が組み合わさることで、股関節の悩みはより深刻化しやすい傾向にあります。
変形性股関節症の発症と進行
この年代の股関節痛で最も注意が必要なのが「変形性股関節症」です。これは、長年の使用によって股関節の軟骨がすり減り、骨が変形してしまう状態です。
特に、若い頃に臼蓋形成不全を指摘されたことがある女性や、体重が多めの方は、発症のリスクが高いとされています。
初期症状としては、立ち上がりや歩き始めの痛み(始動時痛)が特徴です。
進行すると、安静にしていても痛むようになり、靴下が履きにくい、足の爪が切りにくいなど、股関節の動きが悪くなります(可動域制限)。
さらに進行すると、左右の足の長さに違いが出て、歩行が困難になることもあります。
変形性股関節症の主な症状の段階
| 段階 | 主な症状 | 日常生活への影響 |
|---|---|---|
| 初期 | 立ち上がり、歩き始めの痛み | 長距離歩行で疲れやすくなる |
| 進行期 | 安静時痛、夜間痛 | 階段昇降や靴下履きが困難になる |
| 末期 | 持続的な強い痛み、可動域の著しい制限 | 歩行が困難になり、杖などが必要になる |
閉経に伴うホルモンバランスの変化
閉経を迎えると、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌がほぼ停止します。エストロゲンには骨を丈夫に保つ働きがあるため、その欠乏は骨密度の急激な低下を招きます。
このことにより、骨粗しょう症のリスクが著しく高まります。
また、エストロゲンは関節軟骨の代謝や、関節周囲の炎症を抑えることにも関与していると考えられています。
そのため、閉経後は軟骨がもろくなりやすく、変形性股関節症が発症・進行しやすくなるのです。
関節自体の強度が低下するため、以前は問題なかった負担でも痛みを感じやすくなることがあります。
骨粗しょう症と関節の脆弱性
骨粗しょう症は、骨がスカスカになり、わずかな衝撃でも骨折しやすくなる状態です。特に女性は閉経後に急速に骨密度が低下します。
股関節に関連する骨折で深刻なのは「大腿骨近位部骨折(だいたいこつきんいぶこっせつ)」です。
これは、太ももの骨の付け根部分の骨折で、転倒などをきっかけに発生します。この骨折が起こると、歩行能力が著しく低下し、寝たきりにつながるリスクも高まります。
直接的な股関節の痛みとは異なりますが、50代以降の女性が股関節周辺の健康を考える上で、骨粗しょう症の予防と対策は非常に重要です。
股関節の痛みを和らげるセルフケアのヒント
股関節に痛みや違和感がある場合、日常生活の中で少し工夫するだけで、関節への負担を減らし、痛みを和らげることができる場合があります。
無理のない範囲で取り入れられるセルフケアは、股関節の健康を維持するために大切です。
股関節に負担をかけない生活の工夫
日々の何気ない動作が、股関節に負担をかけていることがあります。例えば、床に座る生活は、股関節を深く曲げたり、ねじったりする動作が多いため、関節への負担が大きくなります。
できるだけ椅子やソファを使用する洋式の生活スタイルに変えることを検討しましょう。
また、重い物を持つ際は、膝を曲げて腰を落とし、体に引き寄せてから持ち上げるようにします。
前かがみで腕の力だけで持ち上げると、腰だけでなく股関節にも大きな負担がかかります。
股関節に優しい動作の例
| 避けた方が良い動作 | 推奨される動作 | 理由 |
|---|---|---|
| 床でのあぐら、横座り | 椅子に深く腰掛ける | 股関節の過度な屈曲やねじれを防ぐ |
| 前かがみで物を拾う | 膝を曲げて腰を落とす | 股関節への負荷を分散させる |
| 片足に体重をかけて立つ | 両足に均等に体重をかける | 左右のバランスを保ち、片側への負担を防ぐ |
適度な運動とストレッチの重要性
痛みがあるからと全く動かないでいると、股関節周りの筋肉が硬くなり、筋力も低下してしまいます。
このことが、かえって関節の安定性を損ない、痛みを悪化させる悪循環につながります。
大切なのは、股関節に負担をかけずに筋力を維持することです。
水中ウォーキングやエアロバイクは、関節に体重の負荷をかけずに筋肉を動かせるため、股関節痛がある方にも推奨される運動です。
また、お尻や太ももの筋肉をゆっくり伸ばすストレッチも効果的です。筋肉の柔軟性を高めることで、関節の動きがスムーズになり、痛みの緩和につながります。
ただし、痛みが強い時に無理に行うのは禁物です。
股関節周りの柔軟性を保つためのケア
- お尻のストレッチ(中殿筋など)
- 太ももの裏側のストレッチ(ハムストリングス)
- 太ももの前側のストレッチ(大腿四頭筋)
- 股関節(足の付け根)のストレッチ(腸腰筋)
体重管理と食生活の見直し
体重の管理は、股関節の負担を減らす上で最も重要な要素の一つです。前述の通り、体重が1kg増えるだけで、股関節にはその数倍の負荷がかかります。
適正体重を維持することは、股関節の軟骨を守り、痛みの進行を防ぐことにつながります。
食事においては、バランスの取れた栄養摂取を心がけましょう。
特に50代以降の女性は、骨の健康を維持するために、カルシウムやビタミンD、ビタミンKを意識して摂取することが推奨されます。
また、筋肉の材料となるタンパク質もしっかりと摂り、筋力の維持に努めましょう。
痛みが続く場合に考えるべきこと
セルフケアを試みても股関節の痛みが改善しない場合や、痛みが日常生活に支障をきたす場合は、そのサインを軽視すべきではありません。
痛みは、体が発する重要な警告信号です。適切な判断と行動が、将来の股関節の健康を守ることにつながります。
痛みのサインを見逃さない
「少し痛むだけだから」「年のせいだろう」と自己判断で放置してしまうことは、症状を進行させる原因になりかねません。
特に、変形性股関節症のような進行性の状態は、早期に対処を始めるほど、関節の機能を長く保てる可能性が高まります。
痛みの性質や頻度を注意深く観察しましょう。
最初は運動後だけだった痛みが、安静にしていても痛むようになったり、夜中に痛みで目が覚めるようになったりした場合は、注意が必要です。
相談を検討する痛みの特徴
| 痛みの種類 | 頻度・タイミング | 伴う症状 |
|---|---|---|
| 鋭い痛み、激しい痛み | 持続的、または特定の動作で必ず発生 | 腫れ、熱感 |
| 安静時痛、夜間痛 | じっとしていても痛む、夜間に痛む | 可動域の制限(靴下が履きにくい等) |
| 改善しない痛み | 数週間セルフケアしても変わらない | 歩行困難、びっこを引く |
どのような場合に専門家への相談を検討するか
上記のような痛みのサインが見られる場合、または痛みの原因がはっきりせず不安な場合は、整形外科などの専門家に相談することを検討しましょう。
特に、急に強い痛みが生じた場合、転倒などの明らかなきっかけがあった場合、または足に力が入らない、しびれを伴うといった症状がある場合は、早めの相談が望まれます。
専門家は、痛みの原因が関節にあるのか、筋肉にあるのか、あるいは他の要因(例えば腰の問題)から来ているのかを判断するための知識を持っています。
正確な状態把握の重要性
股関節の痛みの原因は、年代やライフスタイルによってさまざまです。
臼蓋形成不全が背景にあるのか、筋肉の炎症なのか、あるいは変形性股関節症が始まっているのかによって、推奨される対処法は異なります。
専門家による評価を受けることで、レントゲンやMRIなどの画像検査を通じて、骨や軟骨の状態、筋肉や腱の状態を客観的に把握することができます。
自分の股関節が今どのような状態にあるのかを正確に知ることは、不安を解消し、自分に合った適切なケアや治療を選択するための基盤となります。
女性の股関節の痛みに関するよくある質問 (Q&A)
ここでは、女性の股関節の痛みに関して多く寄せられる質問にお答えします。
Q. 股関節の痛みは左右どちらかに出やすいですか?
一概にどちらかに出やすいということはありませんが、臼蓋形成不全などの先天的な要因が片側だけにある場合は、その側に痛みが出やすくなります。
また、日常生活での立ち方や座り方、バッグの持ち方などの癖によって、片方の股関節に負担が集中し、痛みが出やすくなることもあります。
Q. どのような座り方が股関節に良くないですか?
股関節に負担をかける座り方として代表的なものは、床での「横座り(お姉さん座り)」や「あぐら」、「ぺたんこ座り(とんび座り)」です。
これらの座り方は、股関節を深く曲げたり、過度にねじったりするため、関節や周囲の筋肉に大きなストレスを与えます。
できるだけ椅子を使用し、深く腰かけて足の裏が床にしっかりつく姿勢を心がけるのが理想です。
Q. 運動不足は股関節痛の原因になりますか?
はい、運動不足は股関節痛の大きな原因の一つです。股関節の周りには、関節を支え、安定させるための多くの筋肉があります。
運動不足によってこれらの筋力が低下すると、歩行時などの衝撃を筋肉が吸収しきれず、関節軟骨や腱への負担が増加します。
また、長時間座りっぱなしの生活は、股関節周りの筋肉を硬くし、血流を悪化させるため、痛みが出やすくなります。
Q. 痛みがある場合、温めるべきですか? 冷やすべきですか?
痛みの性質によって使い分けます。スポーツや特定の動作の直後に急に痛くなった場合や、熱感や腫れがある場合は「急性期」と考えられ、炎症を抑えるために冷やす(アイシング)のが一般的です。
一方、慢性的な痛みや、筋肉が硬くなっていることによる鈍い痛み、朝起きた時のこわばりなどには、血行を促進するために温める(温熱)方が楽になることが多いです。
ただし、自己判断が難しい場合や、どちらを試しても痛みが変わらない・悪化する場合は、専門家にご相談ください。
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