今回は、膝外側に痛みが生じる、マラソンランナーによくみられる疾患である『腸脛靭帯炎』について説明します。
別名、「ランナーズニー」とも言われるスポーツ障害です。
目次
今回の10秒まとめ
①腸脛靭帯は、太腿外側の外側に付着する腱です。
②腸脛靭帯炎は、膝の外側が痛くなる。
③過剰な練習や体型的要因などが重なり発症する。
④治療者は、腸脛靭帯だけでなく脂肪体や周囲の筋肉の影響の評価・治療が重要である。
⑤治療には、リハビリテーションやセルフケアが必要である。
⑥屋内ランニングと屋外ランニングは体が受ける床反力が大きく異なる。
腸脛靭帯の構造とは?
腸脛靭帯はさまざまな働きをする腱で、骨盤最上部(腸骨)からすねの骨(脛骨)まで太腿外側についてます。
腸脛靭帯には、大殿筋・中殿筋(お尻の筋肉)と大腿筋膜張筋(太ももの外側の筋肉)が繋がってます。
また膝側では、外側広筋という大腿四頭筋のひとつと隣接しています。
腸脛靭帯の上部に付着している筋肉(大腿筋膜張筋と大・中臀筋)が収縮すると、腸脛靭帯に張力が加わり、膝と腰の結びつきを安定させています。
上記のどれかの筋肉を使いすぎるor機能低下していると腸脛靭帯に負担がかかります。
腸脛靭帯炎とは?
競技要因
腸脛靭帯炎は、膝外側が痛くなるスポーツ障害になります。
マラソンランナーや長距離選手に多い障害で、ある一定以上の距離を走ったり(ランニング中盤~終盤)、ランニング後に痛むのが特徴とされています。スピード練習などの過負荷なども要因となります。
原因としては、軽く膝を曲げた状態(膝屈曲30 度付近)では、解剖学的に腸脛靭帯に摩擦が生じやすいとされています。
そのため、坂・ジョギング・足元が悪い路面・雨の日では、膝を曲げている角度が浅くなるため症状が悪化しやすいと考えられています。そのため腸脛靭帯炎を発症しても、膝を伸ばしたまま歩くと痛みが軽いとも言われています。
逆に短距離選手などは、走る距離も短く、なおかつ走っている時の膝の角度が広いため、腸脛靭帯の摩擦は少なくなり、腸脛靭帯炎にはなりにくいと考えられます。
体型的要因
近年では、競技要因よりも体型要因(姿勢や膝・足の不調)が関係していると言われています。
体型要因として内反膝(O脚)、回内足(足首が内側に傾く)などがあります。
O脚で走ると、構造上膝の外側に強くストレスがかかります。
回内足で走ると膝を内側に捻じる動作が入るため腸脛靭帯が引っ張られます。
受傷原因と過程
①ランニング・サイクリング・ジャンプ種目などで膝の屈伸をくり返す。
②不良姿勢から過剰な負荷により腸脛靭帯に摩擦ストレスがかかる
③腸脛靭帯に局所的な炎症を起こして膝の外側に痛みが発生する。
このような過程を経て受傷に繋がる場合が多いです。
しかし近年の研究では…
最近では腸脛靭帯自体の炎症よりも、
「膝の外側の脂肪体という脂肪組織が原因ではないか」と指摘されています。
この脂肪組織には、神経や血管が多く存在することから治療者は、「脂肪体の炎症」の可能性を考える必要もあります。
治療の選択
治療方法は、主に保存療法になりリハビリテーションが適応となります。
リハビリテーション内容
・ランニングフォームや姿勢修正
・下肢機能改善(特に膝関節や足関節)
・殿筋群の筋力増強
・股関節や足関節の柔軟性の確保
・大腿四頭筋やハムストリングスの機能改善
・インソール処方(内側アーチの向上)
などセラピストは多角的に評価・治療する必要があります。
トレッドミル走とランニングの違い
トレッドミルの練習で本番を迎える方は、要注意です。
マシンの上を走ることと、自分の足で走ることは全く違います。
なぜか、トレッドミルマシンは勝手に足を後ろに運んでくれるからです。
マシンでの練習で本番で段々と足が前に進まない・膝が痛みだすなどの症状が現れる可能性があります。
屋内と屋外の違い
最後にお伝えしたいのは、屋内と屋外を走ることは違うということです。
その理由として室内と室外の違いは、床反力(地面から返ってくる力)が異なるからです。
室内は天候に左右されずに走れますが、外はコンクリートや不整地(補装されていない地面)になります。
コンクリートや不整地は、床反力(床から跳ね返ってくる力)が大きいため関節や筋・靭帯への負荷は大きくなります。
そのため、室内で練習してフルマラソンに出場すると、足が出ない・膝が痛いなどの症状が出る可能性があります。十分に屋外で練習し、ケアした上でチャレンジしてください。
そして症状に当てはまる場合のセルフケアですが、ストレッチやアイシングなどがあります。
しかし炎症時と炎症後では対応が違いますので、一概にストレッチだけや過剰にアイシングすることはお勧めしません。
膝の痛みでお悩みの方は、是非当院の膝専門外来をご受診ください。
当院のご紹介
整形外科の診療に必要な設備が整った診療所
当院は、各種専門領域を持った医師の診療に加え、大学病院と同様の医療機器を有し、かつ、理学療法士・作業療法士によりリハビリテーションも積極的におこなっている診療所です。また、併設の慶友整形外科脊椎関節病院では手術加療も行なっております。
そのため当院では、整形外科疾患におけるほぼ全ての治療を提供することができます。
当院の『7つの特徴』や『ミッション』についてご案内いたします。
各部門の専門家が集まった特殊外来を設置
当院は、一般的な関節の痛みや筋肉の痛みを診る整形外科の他に、「脊椎(首・腰)」、「肩関節」、「股関節」、「膝関節」、「手」、「足」とそれぞれの専門家が集まった専門外来を用意しております。
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