足立慶友医療コラム

肉離れの症状・診断・重症度・治療について

2020.01.23

下肢

 

肉離れは、スポーツ現場でよく見かける怪我で、競技特性と強く関係しています。そのため各競技で起こりやすい肉離れを理解しておくことは予防の一歩となります。今回は肉離れについて、症状・診断・重症度・治療についてお話させて頂きます。

(今回も日本整形外科スポーツ医学会が発行するスポーツ損傷シリーズ「肉離れ」の画像を一部使用しております。合わせてご参照下さい。)

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今回の10秒まとめ

①肉離れは、強い筋収縮や過度な伸長によって筋が断裂する事を言う。

②肉離れの主な症状は、疼痛・内出血・損傷部の陥凹である。

③肉離れの診断や詳細な重症度判定にはMRIや超音波検査などの画像検査を行う。

④肉離れの治療法は保存療法が選択されることが多い。

⑤肉離れの重症度は、治療やリハビリの進行、競技復帰までの期間に大きく関わる重要な要素である。

⑥肉離れのリハビリテーションは疼痛に応じて強度を上げていき、復帰後には再発防止にも力を入れる必要がある。

肉離れとは?

肉離れとは、「自らの筋力あるいは介達外力によって、筋が過伸張され筋が断裂するもの」をいいます。下肢のスポーツ外傷の代表例であり、どんなスポーツでも起こりますが、特に陸上競技・サッカー・ラグビーなどに多いと言われています。競技に関係なく、ハムストリングス下腿三頭筋大腿骨四頭筋股関節内転筋に多い疾患です。

特にハムストリングの損傷は、受傷機転により2つに分類されます。
スプリントタイプ:最大速度での走動作であるスプリント動作における受傷(強い筋収縮によっての断裂)
ストレッチングタイプ:過剰な股関節屈曲・膝関節伸展により生じる受傷(過度な伸長によっての断裂)

肉離れの症状は?

・伸長時痛(ストレッチした時)
・収縮時痛(力を入れた時)
・圧痛  (患部を押した時)
・損傷部の陥凹(中等度~重度の損傷)
・内出血
肉離れを発症した時には、「ぶちっ」という断裂音を感じることがあり、痛みを伴います。筋肉を伸ばしたときの痛みで重症度が簡易的にわかります。

 

肉離れの診断は?

肉離れの診断や詳細な重症度判定にはMRIや超音波検査などの画像検査を行います。スポーツでよく起きる筋損傷である筋痙攣や筋打撲傷との鑑別が必要です。

ちなみに、筋痙攣は一次的な筋肉の痙攣による痛みで、筋打撲傷は衝突などによって起こり明らかな外力によるものです。

重症度分類

MRI画像に基づいて損傷部位を明らかにし重症度分類を行います。

Ⅰ型(軽傷):腱・筋膜に損傷がなく、筋肉内に出血を認める(出血型)
Ⅱ型(中等症):筋腱移行部の損傷を認めるが、完全断裂・付着部の裂離を認めない(筋腱移行部損傷型)
Ⅲ型(重症):筋腱の短縮を伴う腱の完全断裂または付着部裂離(筋腱付着部損傷型)

特に重症度は、治療やリハビリテーションの進行や競技復帰までの期間に大きく関わるものです。そのため、MRIやエコーなどの画像診断などを用いて性格に判定していく必要があります。

肉離れの治療は?

肉離れの治療法は保存療法が選択されることが多いですが、腱付着部での断裂や裂離損傷では手術療法が選択されることもあります。

保存療法

受傷直後から48時間は重症度によらずPRICE療法を行いリハビリテーションに繋げます。

【PRICE療法】
・Protection(保護)
・Rest(安静)
・Ice(冷却)
・Compression(圧迫)
・Elevation(挙上)

手術療法

MRI上で筋・腱の連続性が完全に断たれ、広範な血腫とともに、断端の短縮が確認できるような場合に手術的治療を検討する必要があります。先ほど紹介した、重症度分類で、Ⅲ型に分類される方が主な適応です。

肉離れ後のリハビリテーションは?

今回は肉離れに多いハムストリングの損傷を例にリハビリテーションの流れを紹介します。

メディカルリハビリテーション

上記で紹介した、PRICE処置を行いながら患部の保護を行います。アイシングと圧迫は出来る限り繰り返し実施して、靴を脱ぐ、床のものを拾うなど日常生活で痛みを誘発しやすい動作にも注意が必要です。

ジョギング開始までは、伸長時痛や収縮時痛、トレーニング後の疼痛増悪がない事を確認しながら、ストレッチと筋力トレーニングを行っていきます。

アスレティックリハビリテーション

ハムストリングの伸長時痛が消失したら、速歩やジョギングを開始します。さらに抵抗痛が消失したら加速走を開始します。加速走の実施後や翌日に疼痛の増加や筋出力の低下などの所見を確認し、強度や走行距離を徐々に増やしていきます。

競技復帰の基準は、以下の項目が挙げられます。

1)圧痛がない 
2)筋力や柔軟性のテストで疼痛がない 
3)スポーツ動作中の疼痛がない 
5)左右で柔軟性に差がない 
6)心理的な不安がない 
競技復帰に向けては、「Return to play based on time-flame alone」という考え方が今までは一般的でしたが、現在では「Return to play based on performance criteria」という考え方が広がっています。つまり、「受傷後からの期間で復帰時期を考える」のではなく、「パフォーマンスが基準に達しているか?」で復帰時期を検討するべきという考え方です。
闇雲に競技復帰するのではなく、身体機能がベストな状態で復帰することが、再発予防にも必要であると考えます。

再発予防に向けてのトレーニング

肉離れ受傷後は、パフォーマンスの低下が避けられず、復帰した後の再発頻度も少なくありません。柔軟性の低下・筋力の不均衡・疲労の蓄積などが肉離れの危険因子として挙げられます。個々の身体機能や特徴に応じて、ストレッチや筋力トレーニング、適切なウォーミングアップなどをプランニングし日々のトレーニングから積み重ねて行う必要があります。

肉離れでお悩みの方は一度、当院にご相談下さい。

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各部門の専門家が集まった専門外来を設置

当院は、一般的な関節の痛みや筋肉の痛みを診る整形外科の他に、「脊椎(首・腰)」、「肩関節」、「股関節」、「膝関節」、「手」、「足」とそれぞれの専門家が集まった専門外来を用意しております。

他院で診断がつかない症状に関して、各領域の専門家が診察をいたします。

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