足立慶友医療コラム

大腿骨寛骨臼インピンジメントについて

2020.02.28

股関節

大腿骨寛骨臼インピンジメントはFAI(femoroacetabular impingement)と称されます。サッカーやアイスホッケーなどのスポーツで深い股関節屈曲に伴う内転や内旋の複合的な運動を繰り返す事で発症しスポーツ活動が制限される疾患です。

今回はFAIについて説明させて頂きます。

(文章中に、日本整形外科スポーツ医学会が配布しているスポーツ損傷シリーズ「股関節インピンジメント」の図を利用させて頂きました。ぜひこちらもご活用下さい。)

今回の10秒まとめ

①FAIは、骨形態異常とインピンジメントにより関節唇・関節軟骨に損傷が生じる疾患である。

②FAIの診断は、臨床所見に加えX線検査とMRI検査にて行う。

③FAIに対する鏡視下手術は、良好な手術成績が報告されている。

④FAIに対するリハビリテーションは、股関節・腰椎-骨盤機能に着目して行う。

FAIとは?

骨変形+インピンジメント ➡ 関節唇・関節軟骨の損傷 ➡ 鼠経部痛 ➡ 変形性股関節症

FAIは寛骨臼、もしくは大腿骨の軽度な骨性変形を背景として、股関節運動における繰り返しの衝突(インピンジメント)によって、関節唇および軟骨に損傷が生じます。その結果、症状として鼠径部痛が引き起こされます。関節軟骨損傷に進行すると変形性股関節症の一因になり得ます。

FAIは以下の3つのタイプに分類されます。

〇Pincer type impingement
 ・寛骨臼側の骨形態異常に起因するもの。
 ・30~40代の女性に多い。
 ・寛骨臼前上方の関節唇損傷と関節軟骨の損傷が認められる。
〇Cam type impingement
 ・大腿骨側の骨形態異常に起因するもの。
 ・20~30第の男性に多い。
 ・より広範囲の寛骨臼前方関節唇の剥離と関節軟骨の欠損が認められる。
〇Mixed type
 ・Pincer type impingementとCam type impingementの混合タイプ

FAIの診断は?

FAIの診断は単純X線検査・CT検査にて骨形態異常の評価行い、MRI検査にて股関節唇と関節軟骨の状態を確認します。
FAIによる股関節唇損傷を疑った場合は関節内注射により疼痛改善の有無を確認し診断されます。

FAIの治療は?

保存療法

通常はリハビリ内服により疼痛をコントロールする保存療法を行います。FAIでは股関節の屈曲内転内旋動作にて痛みを誘発します。そのため日常生活の中でそのような動作を避ける練習を行います。痛みを誘発しやすい動作の例としては、しゃがむ動作や靴下を履く動作が挙げられます。

手術療法

約3か月の保存療法でも症状の改善がない場合に手術療法が選択されます。手術は関節鏡視下で行われます。痛みの原因である関節唇の縫合により除痛を行う事に加えて、再発予防のために骨形態異常の処置を行います。これにより、変形性股関節症の発症予防にもつながります。手術療法は、アスリートの競技復帰に関して、良好な成績が報告されています。

FAIに対するリハビリテーションは?

FAIに対するリハビリテーションの目標は、寛骨臼と大腿骨のインピンジメントを回避して、関節唇へのストレスを軽減させ、疼痛の緩和を図る事です。

インピンジメントを引き起こす原因に、骨形態の異常という背景以外に、①股関節の可動性・安定性低下②腰椎-骨盤帯の可動性・安定性の低下が挙げられます。

骨形態異常があったとしても股関節の機能と腰椎-骨盤機能が正常に働いていれば、インピンジメントを回避できる可能性があります。

 

手術後のリハビリテーション

手術直後は荷重制限がかかり、荷重を減らした状態から歩行練習を行っていきます。

個々の手術の行い方で進行具合が異なりますが、6~8週間でADL自立レベルに達します。

競技復帰に関しては術後4〜6か月を目指してリハビリテーションを行っていきます。

 

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