足立慶友医療コラム

骨粗鬆症の薬物治療にはどんなものがあるの?

2019.08.02

現在骨粗鬆症の治療には、異なる作用機序を持った薬剤が使用されています。

今回は、その薬剤の作用機序に注目し分類して説明していきます。

今回の10秒まとめ。

① 骨強度に関わるのは骨密度と骨質。

② 骨密度は、骨吸収の亢進、または、骨形成の低下、その両者の影響で低下する。

③ 骨吸収を抑制する薬剤には、活性型ビタミンD誘導体、ビスフォスホネート薬、SERM、抗RANKL抗体薬、の4つがある。

④ 骨形成を促進する薬剤には、副甲状腺ホルモンがある。

⑤ 骨質を改善する薬剤には、ビタミンK2薬がある。

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骨強度に影響を与えるものとは?

骨粗鬆症とは、骨強度が低下し骨が脆くなり骨折しやすくなってしまった病態のことを意味します。

そして骨強度は、骨密度骨質の影響を受けます。

骨密度は、骨を壊す反応(骨吸収)と骨を作る反応(骨形成)のバランスで決まります。

よって、(1)骨吸収が亢進する、もしくは、(2)骨形成が低下する、またはその両者によって骨密度は低下していきます。

また骨質は、(3)ビタミンKが欠乏することで劣化していくと言われています。

骨粗鬆症の治療には、上記(1),(2),(3)に働きかけることで骨強度を維持し増強することを目的としています。

骨吸収抑制

① 活性化ビタミンD3誘導体

ビタミンDは魚類やきのこ類に多く含まれるためこれらの食材を摂取することで体内に吸収されます。また、皮膚で紫外線を浴びることで合成されるビタミンでもあります。

体内に取り込まれたビタミンDは腎臓で活性型ビタミンDに変換され、小腸でのカルシウム吸収を促進します。

また最近の研究では、活性型ビタミンDは破骨細胞の骨への遊走を阻害すること(破骨細胞が骨に付きにくくすること)で働きを阻害し、骨吸収を抑制しているという報告もあります。

また、ビタミンD欠乏は筋肉量の低下を引き起こし、その結果転倒リスクが高まると言う報告あり、筋肉量維持や転倒予防にもビタミンDは注目されています。

② ビスホスフォネート薬

体内に取り込まれたビスホスフォネート(以下BP)は、骨表面のハイドロキシアパタイトにくっつき骨に沈着します。

BPが沈着した骨を破骨細胞が破壊する際にBPは破骨細胞の中に取り込まれ、BPを取り込んだ破骨細胞はアポトーシス(細胞が自ら壊れること)を起こします。

その結果破骨細胞の働きを抑制し骨吸収を抑制します。

近年、BPの長期投与と大腿骨骨折や顎骨壊死の関係が報告されています。長期投与が絶対的なリスクと言われてはいませんが、念のため現在では、BPの内服5年もしくは注射剤3年継続した場合、一時休薬することが勧められています。

その際に、私は骨代謝マーカーの変化を見ながら再開のタイミングを調整していきます。

③ SERM

閉経後の女性では、エストロゲンと呼ばれる女性ホルモンの分泌量が減すると、骨吸収が亢進し骨粗鬆症が進行します。

SERM(=選択的エストロゲン受容体調整薬)は、骨のエストロゲン受容体に選択的に作用することで骨吸収を抑制するため、主に閉経後の骨粗鬆症の治療に使われます。

治療中の注意点として、頻度は非常に稀ですが静脈血栓塞栓症が挙げられます。

そのため、私は飲水指導と活動性の乏しい高齢者にはなるべく使用を控えるようにしています。

④ 抗RANKL抗体薬

破骨細胞は、破骨細胞の前段階の細胞にRANKLと言う物質がくっ付くことで前段階の細胞が破骨細胞に成長することで生まれます。

よって破骨細胞を生まれないようにするためには、このRANKLが破骨細胞の前段階の細胞にくっ付く前に回収してしまえがいいと言うことがわかります。

抗RANKL抗体薬とはまさにこのような働きをする薬剤です。

この薬は、6ヶ月に1回の投与で骨粗鬆症の治療を行うことができるのが一番の特徴と言えます。

治療中の注意点として、血中のカルシウム濃度が低下し手足の震えや痙攣が起こることがあるため、定期的な血液検査を行う必要があると言うことが挙げられます。

骨形成促進

副甲状腺ホルモン

副甲状腺ホルモン(以下PTH)は1日1回や1週間に1回など間欠的に投与することで、骨形成が急速に促進され、骨密度を上げる作用を持っています。

また、優れた新規骨折予防効果も持っております。

治療中の注意点として、投与可能期間が2年間のみであることが挙げられます。

骨質改善

ビタミンK2薬

ビタミンKが不足すると血中の骨質マーカーのucOCが上昇します。ucOCの上昇は骨密度とは独立した骨折危険因子であり、ビタミンK2薬の投与によってucOCは低下します。

また、骨粗鬆症骨折の既往のある患者さんでビタミンK不足が指摘されています。

以上の結果から、骨強度に関わる骨密度とは別の因子である骨質にビタミンKは大きく関わっており、骨質悪化を示すucOCの上昇はビタミンK2薬の投与によって改善することから、ビタミンK2薬の投与の投与は骨質改善に関わっていると考えられます。

治療薬の選択に関しては医師と相談を

上記のように、現在骨粗鬆症の治療薬には様々な種類があり、患者様1人ひとりの状況に合わせて治療薬を選択する必要があります。

そして、適切な治療を行うことで骨密度が改善し、骨粗鬆症が治る場合もございます。

骨粗鬆症治療に関して、疑問をお持ちの方は一度当院までご相談ください。

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当院は、各種専門領域を持った医師の診療に加え、大学病院と同様の医療機器を有し、かつ、理学療法士・作業療法士によりリハビリテーションも積極的におこなっている診療所です。また、併設の慶友整形外科脊椎関節病院では手術加療も行なっております。

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Author

北城 雅照

医療法人社団新潮会 理事長
医師・医学博士、経営心理士

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