足立慶友医療コラム

リトルリーガーズショルダー(上腕骨近位骨端線離開)について

2021.11.24

肩関節, 上肢

今回は、日本で最も盛んなスポーツの一つである野球で多く認める『投球障害肩』のうち、成長期の疾患である『リトルリーガーズショルダー』についてお話させていただきます。

怪我なく楽しくプレーをするためにも、親御さんや投球指導を行っている方々にぜひ読んでいただきたいです。

今回の10秒まとめ

① リトルリーガーズショルダーとは、投球動作を繰り返すことで成長段階にある骨に引っ張りやねじりのストレスがかかり、上腕骨近位の骨端線が離開する状態のことを言います。

② リトルリーガーズショルダーの原因は、下半身や体幹の柔軟性が低下した状態で繰り返しボールを投げることによって、肩への負荷が積み重なることです。

③ リトルリーガーズショルダーは、問診・触診・画像検査などにより肩関節の状態を評価して診断されます。

④ リトルリーガーズショルダーと診断された場合は、投球動作をしばらくの間中止して、肩関節の安静を図ります。

⑤ 投球休止期間は、肩周りだけではなく下半身と体幹のストレッチや筋力強化、投球フォームの修正などのリハビリが重要です。

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リトルリーガーズショルダーとは?

投球動作は、からだの各部位の運動を通じて肩関節を動かし、その力を指先からボールへ伝えていく動作です。

そのため、からだの機能(関節の柔軟性筋力など)が低下すると全身運動のつながりが崩れて肩関節にかかる負担が増えてしまいます。

 関節の柔軟性や筋力が低下することで悪いフォームになったり、投げ過ぎにより肩に多くのストレスがかかったりすることで肩の痛みが生じ、投球が困難になることを投球障害肩(野球肩)と言います。

リトルリーガーズショルダーとは、成長期の上腕骨骨端線損傷(離開)のことを指します。子どもの骨には骨が伸びていく場所である”骨端線”と呼ばれる軟骨の層があります。

リトルリーガーズショルダーは、投球動作を繰り返し行うことで成長段階の骨に引っ張り、ねじれなどのストレスが加わり、上腕骨近位の骨端線が離開(離れていく)疾患のことを言います。したがって、骨端線が閉じていない選手にのみ発症します。

リトルリーガーズショルダーの症状

✔︎ボールを投げる時の肩の痛み

✔︎肩や腕の付け根を押した時の痛み

リトルリーガーズショルダーになっても通常は肩関節の動く範囲が大きく制限されることは少ないため、日常生活には困らないことがほとんどですが、練習や試合を休んで痛みがなくなっても、投球を再開するとまた痛みが出るということも…。 

なんの対処もせずに競技に復帰するとこのような悪循環を招いてしまいます。

リトルリーガーズショルダーの原因

では、なぜリトルリーガーズショルダーになってしまうのでしょうか?

投球動作ではとても速いスピードで腕が回転するため、その動作自体が肩に大きな負担をかけます。

アクセラレーション期からフォロースルー期での急激な肩関節の外旋(後ろに捻られる)➡︎内旋(前に捻られる)の動きによって上腕骨近位の骨端軟骨に過度のストレスが生じます。

投球動作を繰り返すことで成長期の上腕骨近位の骨端軟骨にねじれと張力が働き、障害をきたします。

下半身と体幹の柔軟性が低下することによる上半身を中心とした投球動作(いわゆる”手投げ”姿勢の悪さによる未熟な投球フォームが要因となります。これは、ピッチャーやキャッチャーだけではなく、内野手や外野手にも起こる可能性があります。

リトルリーガーズショルダーの診断

医師が問診にて症状を聞いた上で、一般的にレントゲンでの骨端線の離開や程度を判断して行います。

骨の成長は個人差が大きいため、必ず非投球側(ボールを投げない方)との比較が必要です。また、経過を追って撮影していくことで損傷部分の治り具合や転位(ズレ)の程度を診ていきます。

肩の外側を押したときの痛み腕を挙げた状態で後ろに捻った時の痛みも重要な所見となります。

リトルリーガーズショルダーの治療

リトルリーガーズショルダーの治療は安静(投球禁止)が第一選択です。

ボールを投げない時期にただ休んでいれば良いというわけではなく、リハビリが重要になります。

✔︎肩関節や肩甲骨周りの柔軟性低下

✔︎体幹の回旋やしゃがみ込みの制限

✔︎ハムストリングス(太ももの裏の筋肉)の柔軟性低下

などがあることが怪我の危険性を高めていると言われており、

全身の柔軟性改善を安静期間でしっかりと行うことが重要です。

 

ボールを投げ始めても良い時期に関しては、基本的に痛みが無くなることはもちろんですが、投球フォームの改善柔軟性や筋力の改善などが得られてからとなります。

重症度にもよりますが、痛み自体は3〜4週で改善することが多いです。投球休止期間中にリハビリテーションで下半身や体幹の柔軟性の改善を行い、肩を押した時の痛みや捻った時の痛みが無くなれば投球動作を開始します。

全身のコンディションを整えながら1〜2ヶ月で全力投球を許可していきます。

リハビリでは何をするの?

リハビリの専門家である理学療法士が選手のからだを評価し、肩に負担がかかってしまった原因や機能が低下している部分を探していきます。

肩はもちろんですが、体幹や下半身などの全身をチェックします。

リハビリの内容としては、

✔︎可動域拡大のためのリハビリ

✔︎肩や股関節、体幹のストレッチ

✔︎筋力強化のためのエクササイズ

✔︎投球動作指導

✔︎自主トレーニング・ストレッチの指導

✔︎物理療法(アイシング、電気治療、超音波治療など)

などを実施します。

ノースロー期間にしっかりと全身の機能を改善させて、投球動作に耐えられるからだを作ることが非常に重要になります。

指導者と保護者の方々に知っておいていただきたいこと

スポーツ活動は成長期のからだの発育と発達に必要不可欠な要素ですが、その質と活動量はその子のからだに適正なものでなければなりません

今回説明させていただいた成長期の肩の痛みの発生には、弱い骨や軟骨未発達な筋力未熟な投球フォームなどが関与していますが、主な原因は過度に繰り返される投球動作になります。

予防策として、

◉投球を1日50球以内、かつ週300球以内に制限すること

◉ピッチャーとキャチャーは2人以上を養成すること

◉連投にならない試合日程を組むこと

◉シーズンオフの設定(ボールを投げない期間を作る)

などが挙げられます。(日本臨床スポーツ医学会提言,1995)

大切なお子さんに長くプレーしてもらうためにも参考にしていただければと思います。

まとめ

リトルリーガーズショルダーに限ったことではありませんが、野球における肩の痛みは安静にしているだけでは治すことが難しいです。

しばらくの間投球を休止して肩を休めても、再び投げ始めると痛みが再発することもあります。

重要なのは、”なぜ肩を痛めてしまったのか?”

その原因を突き止めることにあります。

選手によってその原因は様々です。

整形外科医による診察や理学療法士による身体機能のチェックを受けて、痛みの出ない身体やフォームを作ることが大切です。

野球をしていて肩に痛みや違和感が出た場合は決して我慢せず、医療機関を受診して下さい。

上記のような症状でお悩みの方は、一度当院までご相談ください。

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整形外科の診療に必要な設備が整った診療所

当院は、各種専門領域を持った医師の診療に加え、大学病院と同様の医療機器を有し、かつ、理学療法士・作業療法士によりリハビリテーションも積極的におこなっている診療所です。また、併設の慶友整形外科脊椎関節病院では手術加療も行なっております。

そのため当院では、整形外科疾患におけるほぼ全ての治療を提供することができます。

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当院の『7つの特徴』や『ミッション』についてご案内いたします。

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当院は、一般的な関節の痛みや筋肉の痛みを診る整形外科の他に、「脊椎(首・腰)」、「肩関節」、「股関節」、「膝関節」、「手」、「足」とそれぞれの専門家が集まった専門外来を用意しております。

他院で診断がつかない症状に関して、各領域の専門家が診察をいたします。

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