肩鎖関節脱臼(けんさかんせつだっきゅう)とは、交通事故や転倒・転落などの強い外力による外傷、ラグビー・柔道・アメリカンフットボールなどのコンタクトスポーツで発生します。
今回は、肩鎖関節脱臼について病態・診断・治療中の注意点をまとめましたので是非、ご一読ください。
(文章中に、日本整形外科スポーツ医学会が配布しているスポーツ損傷シリーズ「肩鎖関節損傷」の図を利用させて頂きました。ぜひこちらもご活用下さい。)
目次
今回の10秒まとめ
① 肩鎖関節とは、肩甲骨(肩峰)と鎖骨からなる関節である。
② 肩鎖関節脱臼では、鎖骨の外側の端が皮膚を持ち上げて階段状に飛び出して見えることがある。
③ 上方に持ち上がった鎖骨の端を上から押すと、ピアノの鍵盤のように上下に動くのが特徴的な所見である。
④ 複数の靭帯を同時に損傷している場合もあるため、鎖骨の先端だけが痛いとは限らない。
⑤ 脱臼直後は、断裂した関節包などの軟部組織が修復するまで約3週間程度の固定期間要する。
⑥ 脱臼後の注意点は、無理に動かさないこと。
⑦ 再発予防は、肩関節を安定化させるインナーマッスルなどの筋肉を鍛える、身体の柔軟性を向上させる。
肩鎖関節脱臼とは
そもそも肩鎖関節ってどこ?という方が多いと思いますが、肩鎖関節とは肩甲骨(肩峰)と鎖骨からなる関節になります。
脱臼とは、関節を形成している骨が正しい位置から完全に離れた状態です。
そして、スポーツ中などに肩が脱臼した時に、靭帯が痛んでしまい正常に機能しなくなると、肩が外れやすい状態が続いてしまいます。
脱臼回数が増えるほど軽微な外力で脱臼が起こりやすく、スポーツ競技動作だけでなく日常生活の中でも脱臼が起こりやすくなります。
図1 肩鎖関節脱臼の病態
図1に記載されている肩鎖関節損傷の分類を簡単に示すと以下になります。
Ⅰ型(捻挫):
肩鎖靱帯の部分的な傷みだけで、烏口鎖骨靱帯、周囲の筋肉は正常です。
X線でも異常はありません。
Ⅱ型(亜脱臼):
肩鎖靱帯が断裂し、烏口鎖骨靱帯は部分的に傷んでいますが、周囲の筋肉は正常です。
X線では関節の隙間が広がり、鎖骨の端がやや上にずれています。
Ⅲ型(脱臼):
肩鎖靱帯、烏口鎖骨靱帯ともに断裂しています。
肩から腕につく三角筋・鎖骨・肩甲骨から首につく僧帽筋は鎖骨の端からはずれていることが多いです。
X線では鎖骨の端が完全に上にずれています。
肩鎖関節脱臼の病態
肩鎖関節脱臼では肩鎖関節のズレにより、鎖骨の外側の端が皮膚を持ち上げて階段状に飛び出して見えることがあります。
図2 脱臼し上方に持ち上がった鎖骨
上方に持ち上がった鎖骨の端を上から押すとピアノの鍵盤のように上下に動きます。
これをピアノキーサインといい、肩鎖関節の安定性が損なわれていることを示します。
肩鎖関節脱臼の症状
下記のような症状を認めるが特徴として挙げられます。
・安静時(動いていない時)の痛み
・肩関節の痛みや腫れ、変形(鎖骨の出っ張り)
・肩関節の可動域制限(肩が挙がらない、特に90°以上)
肩鎖関節部の痛みがメインになります。しかし鎖骨の先端だけが痛いとは限りません、なぜなら図1のように複数の靭帯を同時に損傷している場合もあるからです。
肩鎖関節脱臼の診断
問診
肩鎖関節脱臼が疑われる場合、発生時の状況などを聞きます。
徒手検査
肩鎖関節周囲の左右差やピアノキーサインの有無を確認します。
画像検査
図3 実際の肩鎖関節脱臼のXp画像
レントゲン・CT検査などの画像検査により、肩鎖関節の確認、またその他に骨折がないことなどの確認します。
肩鎖関節脱臼の治療・リハビリテーション
保存的治療の場合は脱臼を整復すれば、一定の固定期間の後、肩関節周囲の筋力強化、可動域訓練を行い肩関節を生活の中もしくはスポーツ競技で使えるようにリハビリを行います。
脱臼直後は、断裂した関節包などの軟部組織が修復するまで、損傷の程度によりますが約3週間程度の固定期間要します。
固定期間や固定が外れた時期からリハビリテーションを開始し、徐々に可動域や筋力を向上させていきます。
まとめ
著者も肩鎖関節脱臼例の患者さんを担当したことがありますが、体格の良いスポーツ選手でもなり得る疾患であると体感しております。その中でもベンチプレスなどのトレーニングによる大きな負荷で受傷するケースが多数ありました。
肩関節を安定化させるインナーマッスルなどの筋肉を鍛える、身体の柔軟性を向上させることで競技復帰をサポートしていければと考えております。
上記のような症状がある方は、ぜひ一度ご相談ください。
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