足立慶友医療コラム

膝の骨が痛いときに考えられる病気や治療の基本

2025.02.01

膝の骨が痛いと感じるとき、大腿骨や脛骨、膝蓋骨(膝の皿)の周辺で何らかの異常が起こっている可能性があります。

変形性膝関節症などの慢性的な病気から、靭帯や半月板損傷のような外傷まで、膝を痛める原因は多岐にわたります。

骨の痛みは、軟骨のすり減りや筋肉の疲労、炎症によって増幅することも多いです。

症状や痛む部位、痛みの強さは人によって異なり、適切な治療と日常生活の工夫によって症状の改善を目指すことが大切です。

この記事では、膝の骨が痛むときに考えられる代表的な原因や診断法、そして改善や予防に向けたポイントを詳しく解説します。

膝の骨が痛い状態とは

膝関節は太ももの大腿骨とすねの脛骨、そして膝蓋骨(膝の皿)の3つの骨が組み合わさっています。それを支える軟骨や靭帯、筋肉が損傷すると、膝の骨自体に痛みを覚えることがあります。

膝蓋骨は関節の動きを滑らかにする重要な役割を果たし、曲げ伸ばしなどの動作で大きな負担がかかりやすい場所です。

骨に走る痛みと膝蓋骨の働き

膝の皿(膝蓋骨)は、足を伸ばすときに太ももの筋肉(大腿四頭筋)の力を効率的に伝える役割を担います。

この部分が炎症や過度の摩擦を起こすと、骨に直接ズキッとした痛みを生じることがあります。

特に膝を曲げ伸ばしするときや階段の昇り降りで膝蓋骨周辺の違和感が強まるケースは少なくありません。

関節痛と他の痛みの違い

膝の痛みには、筋肉痛や靭帯の損傷など軟部組織が原因のものと、骨や軟骨の変形による痛みがあります。大きく分けると次のような特徴があります。

関節痛の特徴をまとめた表

種類主な原因痛みの特徴
骨・軟骨の問題変形性膝関節症、骨壊死など骨の奥深くに響く痛み
靭帯や半月板損傷スポーツなどによる外傷動作中の鋭い痛み、ぐらつき感
筋肉疲労や炎症大腿四頭筋やふくらはぎの炎症など表層が熱をもつような痛み、押すと痛い

骨が痛いと感じるときは、軟骨がすり減ったり骨の変形が進んでいたりする可能性があります。初期であれば違和感程度でも、放置すると慢性化する恐れがあるため注意が必要です。

痛みを感じやすい場面

  • 階段の昇り降りで膝に強い負荷をかけるとき
  • 正座やしゃがむ動作などで膝を深く曲げるとき
  • スポーツや運動でジャンプやダッシュを繰り返すとき
  • 長時間同じ姿勢で過ごしたあとに動き始めるとき

中高年に多いケースと若年層のケース

中高年の場合は、変形性膝関節症の影響で膝の骨が痛くなるケースが多いです。一方、若年層では激しいスポーツや体重の急増、先天的な膝の構造異常などが原因になることがあります。

年齢や運動習慣、生活スタイルに合わせた対策が大切です。

膝の骨が痛む原因

膝は体重を支えながらさまざまな動作をこなすため、骨や軟骨、靭帯、筋肉など多くの組織に負担がかかりやすいです。

痛みを引き起こす代表的な原因には、大きく分けて以下のパターンがあります。

変形性膝関節症による骨の痛み

変形性膝関節症は、膝の軟骨がすり減って骨同士が摩擦を起こし、炎症が生じる病気です。膝の内側や外側、膝蓋骨の裏など、痛む部位は人によって異なります。

初期には軽い違和感だけでも、進行すると骨の変形が顕著になり、強い痛みや腫れを伴います。

靭帯損傷や半月板損傷

スポーツ中のアクシデントなどで膝の靭帯や半月板が損傷すると、膝が不安定になり骨に負担がかかります。

とくに半月板損傷の場合、歩行中に関節がロッキングしたり、痛みで動作が制限されたりすることがあります。

膝蓋骨周辺のトラブル

膝蓋骨と大腿骨の間で生じる摩擦や炎症は、いわゆるジャンパー膝や膝蓋大腿関節症などを引き起こします。

大腿四頭筋や膝蓋骨の腱に過剰なストレスが加わると、骨の周辺が痛むだけでなく、腫れや動きの制限が起こるケースもあります。

骨自体の疾患

骨壊死や骨折といった深刻な病気も、膝の骨が痛む原因です。大腿骨顆部骨壊死のような状態になると、時間の経過とともに骨が変形する恐れがあります。

痛みが慢性化している場合は、レントゲンやMRI検査で骨の状態を把握することが重要です。

骨に直接影響を及ぼす主な原因と特徴

原因症状の特徴
変形性膝関節症軟骨のすり減りによる骨の摩擦と炎症、進行すると変形が顕著になる
半月板損傷膝の動作制限やロッキングが発生し、痛みが鋭いことが多い
大腿骨顆部骨壊死骨が部分的に壊死し、激しい痛みや変形を起こす
靭帯損傷膝の不安定感が強く、動作時に骨が過度にずれやすい

筋力や体重、姿勢の影響

膝にかかる負担は、体重や筋力、姿勢によって大きく変わります。太ももの筋力が弱いと膝関節の安定性が低下し、膝の骨により大きな衝撃が加わりやすくなります。

体重が増えると膝への負担も増し、痛みが起こる頻度が高くなります。

膝の骨の痛みに多い症状と考えられる病気

膝の骨が痛む原因はさまざまですが、その痛み方や腫れ具合、動かしにくさなどの症状によって、考えられる病気がある程度絞られます。

自分の痛みの特徴を知ることが、早期受診や適切な治療につながります。

痛む部位や状態でイメージできる病気

  • 膝の内側が痛い場合:変形性膝関節症、内側半月板損傷など
  • 膝の外側が痛い場合:腸脛靭帯炎、外側半月板損傷など
  • 膝の前側(膝蓋骨周辺)が痛い場合:ジャンパー膝、膝蓋大腿関節症など
  • 膝の裏が痛い場合:ベーカー嚢腫、関節リウマチなど

痛む場所ごとの代表的な病気

部位代表的な病気
内側変形性膝関節症、内側半月板損傷
外側腸脛靭帯炎、外側半月板損傷
膝蓋骨周辺ジャンパー膝、膝蓋大腿関節症
膝の裏ベーカー嚢腫、関節リウマチ

腫れや炎症を伴うケース

膝の骨が痛いだけでなく、腫れや赤み、熱感を伴うときは炎症が強い可能性があります。

急性の場合はアイシングを行い、慢性の場合は温めて血流を改善しつつ安静にするなど、対処法を切り分けることが必要です。

膝の曲げ伸ばしのしにくさ

骨にダメージがあると、膝を曲げる・伸ばすといった基本的な動作で強い痛みが出ます。

特に朝起きた直後や長時間座った後に立ち上がるときに痛みが増す場合は、変形性膝関節症や軟骨のすり減りが疑われます。

慢性痛への移行

最初は軽い違和感でも、放っておくと日常的に痛みを感じる慢性痛に移行する場合があります。

膝の骨の痛みが続くと、生活の質が大きく下がり、さらに筋力が低下して状態が悪化しやすいため、早期対応が重要です。

慢性化しやすい特徴

  • 痛みを我慢し続け、適切な治療を受けない
  • 体重増加や運動不足で膝への負担が増える
  • 痛みがあるのに無理な動作やスポーツを続ける
  • 症状が出たり引いたりを繰り返し、ケアを怠る

検査や診断の流れ

膝の骨が痛いと感じたら、医療機関での検査と診断が大切です。痛みの原因を特定せずに自己流の対処を続けると、病気が進行するリスクがあります。

医師が行う診察と問診

診察では、痛みの位置や強さ、いつから痛むのか、どのような動作で痛むかなどを詳細に尋ねます。

加えて、腫れや熱感の有無、膝関節の可動域を確認し、変形や筋肉の状態をチェックします。

レントゲンやMRIの活用

骨の状態を直接見るためにレントゲン撮影は有用です。骨の変形や軟骨のすり減り具合を把握でき、変形性膝関節症などを疑うときに役立ちます。

MRI検査では、靭帯や半月板、骨の内部状態など、より詳しい情報を得ることが可能です。

検査方法の特徴

検査法特徴
レントゲン骨の変形や隙間の狭さを確認しやすい
MRI半月板や靭帯、骨の内部など軟部組織を詳細に把握できる
CT骨の三次元構造をより立体的に確認

血液検査による炎症の有無

関節リウマチなど、自己免疫性の病気を疑う場合は血液検査で炎症マーカーや特定の抗体をチェックします。感染症が関係しているケースでも血液検査が役立ちます。

病気の特定と治療方針の決定

問診と診察、各種画像検査を総合し、病気の種類や進行度を特定します。そのうえで、患者の年齢や生活スタイル、痛みの程度を考慮しながら治療の方向性を決めます。

よくある診断後の流れ

  • 保存的治療(投薬やリハビリ)から始める
  • 重症度によって手術(人工関節や骨切り術など)を検討
  • 体重管理や運動指導などの生活習慣改善を提案
  • 定期的な通院や検査で経過を確認

治療の実際

膝の骨が痛い場合、治療は大きく分けて保存的治療と手術の2種類があります。保存的治療で症状が改善しない、あるいは重度の変形や損傷がある場合に手術が選択されることが多いです。

保存的治療

投薬や注射、リハビリなどを中心に行い、膝関節への負担を減らしながら痛みを和らげます。

保存的治療の種類とポイント

方法内容や目的
投薬消炎鎮痛薬や筋肉弛緩薬などで痛みと炎症を抑える
ヒアルロン酸注射関節液を補い、膝の動きを滑らかにし、痛みを軽減
物理療法温熱療法や電気刺激で血流を促進し、筋肉のこわばりを緩和
サポーター関節を安定させ、動作時の衝撃を緩和
運動療法筋力強化やストレッチで膝周辺の機能を改善

投薬や注射による痛みの軽減は比較的即効性がありますが、根本的な原因を取り除くには筋力バランスの改善や体重管理など、長期的な視点が必要です。

手術療法

変形性膝関節症が進行して骨の変形が大きい場合や、靭帯や半月板が大きく損傷している場合には手術を検討します。骨切り術や人工関節置換術などの方法があり、症例に合わせて選択します。

リハビリテーションの重要性

手術の有無にかかわらず、リハビリテーションは回復を支える柱です。太ももの筋肉を鍛え、膝関節を安定させることで、痛みの再発や進行を抑えやすくなります。

リハビリで意識したい運動

  • 大腿四頭筋の強化トレーニング
  • ハムストリングスのストレッチ
  • 膝の曲げ伸ばしを意識した軽いスクワット
  • 無理のない範囲でのウォーキングや水中歩行

日常生活でできるケアと予防

膝の骨の痛みを軽減するためには、日常生活そのものの見直しが欠かせません。適切な運動習慣や姿勢、食事管理など、生活全体を通じて膝関節にかかる負担をコントロールします。

体重管理と食生活

体重が増えるほど、膝関節に大きな負荷がかかります。膝の骨が痛い方は、バランスのよい食事と適度な運動で無理なく体重を管理すると、症状改善に近づきます。

膝の健康を支える栄養素

栄養素主な食品
タンパク質魚、肉、大豆製品など
カルシウム牛乳、チーズ、小魚など
ビタミンDきのこ類、魚類(鮭やサンマなど)
ビタミンC柑橘類、緑黄色野菜

正しい姿勢と動作のポイント

  • 椅子に座るときは背筋を伸ばし、足の裏を床につける
  • 荷物を持ち上げるときは、腰や膝を無理に曲げずに足全体で支える
  • 長時間同じ姿勢を続けず、休憩を挟んで軽く体を動かす
  • 歩くときは足の親指側を意識し、踵からしっかり接地する

適度な運動とストレッチ

ウォーキングや軽いジョギング、水泳などの有酸素運動は、膝関節を動かしながら筋力を維持する効果が期待できます。

運動前後のストレッチで、太ももや股関節周辺の筋肉を柔らかくすると、膝の骨や軟骨への過度な衝撃を和らげられます。

おすすめの運動とメリット

運動メリット
ウォーキング膝への負担が少なく、心肺機能の向上や体重管理に適している
水泳水中では体重が軽減され、膝関節の動きや筋力強化を両立できる
自転車こぎ太ももの筋肉を鍛えながら、衝撃を軽減できる

冷やす・温めるを上手に使い分ける

急性期の炎症や腫れがある場合は冷却により痛みを抑え、慢性的な痛みや筋肉のこわばりには温める方法が向いています。痛む部分の状態に合わせて冷却・温熱を切り替える工夫が大切です。

冷却と温熱の使い分けポイント

  • 急性期の腫れや熱感が強いときは冷却を数分おきに繰り返す
  • 慢性期は入浴や温熱シートなどで血行を促進
  • 冷やしすぎや温めすぎによる皮膚のトラブルに注意
  • 痛みが増す場合は医師に相談する

慢性痛や再発を防ぐには

膝の骨が痛い原因が明らかになっても、一度痛みが治まった後に再発するケースは珍しくありません。慢性痛に移行しないように、日常的なケアと定期的な検診が重要です。

定期的な受診とフォローアップ

痛みが軽減しても、定期的に整形外科を受診して状態を確認することが望ましいです。レントゲンやMRIで膝関節の変化を早期に察知し、進行を抑える治療法を導入できます。

適切な運動量を見極める

過度な運動は膝に大きな負担をかけますが、運動不足は筋肉量の低下を招き、膝関節の安定性が損なわれやすくなります。医師や理学療法士と相談しながら、適切な運動量を見極めることが大切です。

膝への負担を調整する工夫

工夫具体的な方法
運動前後の準備運動太ももや股関節まわりのストレッチを入念に行う
シューズの選び方クッション性や安定感があるものを選ぶ
サポーターやテーピング膝関節を支え、骨への衝撃やねじれを軽減

ストレス管理と休養

痛みが長引くと精神的なストレスが増し、痛覚過敏を引き起こす場合があります。無理せず休息をとり、ストレッチやリラクゼーションを取り入れながら膝の疲労を回復させることがポイントです。

変形性膝関節症の進行を遅らせる生活

変形性膝関節症の方は、関節の変形がさらに進まないよう、筋肉の強化や体重の適切な維持を心がけるとともに、痛みが出たら無理をせず早めに休むことが重要です。

痛み止めの服用やヒアルロン酸注射などのメディカルケアも適宜活用しながら、負担の少ない生活を継続することで、長期的な予後が変わってきます。

日常で意識したいポイントのリスト

  • ゆっくり行動する習慣を持ち、急な動作を避ける
  • 正座は避け、椅子生活を中心にする
  • 自宅の段差やすべりやすい床を見直して危険を減らす
  • ストレッチやマッサージを取り入れて筋肉のこわばりをほぐす

早めの受診で快適な日常へ

膝の骨が痛いという症状は、変形性膝関節症や半月板損傷などの大きな病気のサインである可能性があります。

日常生活に支障が出る前に、痛みの原因を突き止め、適切な治療を始めることが理想です。

すでに痛みが続いている方も、医療機関で相談しながら生活習慣を工夫することで、快適な動作を取り戻しやすくなります。

以上

参考文献

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Author

北城 雅照

医療法人社団円徳 理事長
医師・医学博士、経営心理士

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