今回は、関節リウマチの治療のコントローラーである抗リウマチ薬(DMARDs)、特に合成抗リウマチ薬(sDMARDs)についてまとめました。
それぞれの薬剤の特徴を理解することで、効果的な治療計画を立てることができます。
目次
今回の10秒まとめ
① DMARDsをうまく使うことによって関節の破壊を止めることができる。
② DMARDsは、合成抗リウマチ薬(sDMARDs)と生物学的製剤(bDMARDs)の2つに大きく分けられる。
③ 合成抗リウマチ薬(sDMARDs)は、従来型(csDMARDs)とターゲット型(tsDMARDs)に分けられる。
④ 従来型の代表薬剤はメトトレキサート(MTX)である。
⑤ MTXと同等の効果があると考えられており、副作用の少ない薬剤としてサラゾスルファピリジン(SASP)が挙げられる。
⑥ SASPは妊娠を希望される方にも投与可能である。
⑦ SASPに対する薬剤アレルギーがある場合、ブシラミン(BUC)の投与を検討する。
⑧ タクロリムス(TAC)は肝機能障害を認めないため、MTXによる肝機能障害を認めた場合に良い適応となる。
⑨ イグラチモドは、疼痛コントロールや膠原病合併抑制効果が期待できる。
⑩ トファシチンブは、他のDMARDs効果不十分例に投与を検討する。
抗リウマチ薬の登場でリウマチの治療大きく変わった
抗リウマチ薬(disease modifying anti-rheumatic drugs: DMARDs)が登場する前の関節リウマチの治療目標は「症状の緩和」であり、関節の破壊を防ぐことなどできないと考えられていました。
しかし現在では、DMARDsをうまく使うことによって関節の破壊を止めることができると考えられております。
DMARDsは、合成抗リウマチ薬(synthetic DMARDs: sDMARDs)と生物学的製剤(biologic DMARDs: bDMARDs)の2つに大きく分けられます。
また合成抗リウマチ薬(sDMARDs)は、
① 従来型:conventional sDMARDs (csDMARDs)
② ターゲット型:targeted sDMARDs (tsDMARDs)
の2つに分けられます。
従来型:conventional sDMARDs (csDMARDs)
特徴
① 関節リウマチと診断したら、可能な限り早期に投与を行う
② 治療目標は「寛解」または「低活動性(CDAI≦10)」
③ 効果発現までには2~3ヶ月が必要
④ 患者評価を1~3ヶ月ごとに行う
⑤ 有効率は30~70%に対して、有害率は20~50%と報告されている
⑥ 効果減弱(エスケープ現象)が起こる場合がある
⑦ 各薬剤には特徴的な副作用があり、それぞれに応じた定期検査が必要となる
⑧ まずは単剤の投与から行い、目標を達成できない場合は、csDMARDsの変更や多剤併用を検討する
⑨ csDMARDsで治療目標を達成できない場合は、bDMARDsの使用を検討する
代表的な薬剤
① メトトレキサート(MTX:リウマトレックス ®︎、メトレート®︎ など)
<特徴>
1)免疫抑制薬
2)投与開始前に腎機能の評価・肝炎ウィルスの有無・結核感染の有無・真菌感染の有無・間質性肺炎の有無を行う
3)1週間あたり4~6mgから経口投与を開始する。2~4週経過を見て効果不十分であれば、最大16mg/週まで増量可能
4)8mg/週を超える場合は12時間間隔の分割投与を行う
5)副作用として、肺障害・肝機能障害・骨髄抑制・口内炎などの消化器障害が挙げられる
6)投与開始後3ヶ月は2~4週ごとに採血・胸部X線にて経過観察を行う。その後は、2~3ヶ月に1回定期検査を行う
7)肝機能障害・骨髄抑制・口内炎などの副作用を予防するために、MTX投与後24~48時間後に葉酸製剤5mg/週を投与する
8)肺機能障害は重篤化する可能性があるため、投与後に呼吸器症状を認めた場合MTXの投与を中止する
9)妊娠を希望される場合、妊娠計画の3ヶ月前にはMTXの投与を中止、授乳中の投与も禁忌
10)MTX関連リンパ増殖性疾患の報告もあり、投与中は注意する
② サラゾスルファピリジン(SASP:アザルフィジン®︎)
<特徴>
1)免疫調整薬
2)単剤でMTXと同等の効果があるという報告もあり、副作用に重篤なものが比較的少ないため、早期から用いられることが多い
3)500mg/日(朝・夕)から投与を開始し、効果や副作用を見ながら1000mg/日まで増量する
4)投与早期の副作用として、薬剤アレルギー(皮疹・薬疹・肝機能障害)・消化器症状(悪心・下痢・食欲不振)がある
5)時に腎機能障害・肺機能障害・骨髄抑制を起こるため2~4週ごとに定期検査を行う
6)妊娠期間中に使用可能な薬剤であり、葉酸5mg/日と併用投与する
7)サルファアレルギーや日光過敏症がある方には投与できない
③ ブシラミン(BUC:リマチル ®︎)
<特徴>
1)免疫調整薬
2)50mg/日から投与を開始し、効果や副作用を見ながら200mg/日まで増量する
3)投与初期の副作用として、消化器症状・皮膚粘膜症状が挙げられる
4)重篤な副作用としてネフローゼ症候群が挙げられるため、定期的な尿蛋白検査を行う
5)その他の副作用として、肺障害・肝機能障害・骨髄抑制・爪の黄染が挙げらる
6)MTXとの併用療法の有効性が報告されている
7)サルファアレルギーや日光過敏症がありSASPを投与できない症例に使用を検討する
8)妊娠を希望される場合、妊娠計画の3ヶ月前には投与を中止する
④ タクロリムス(TAC:プログラフ®︎)
<特徴>
1)免疫抑制薬
2)通常用量は3mg/日、高齢者の場合は1.5mg/日
3)間質性肺炎に対する効果が報告されている薬剤である
4)8mg/週を超える場合は12時間間隔の分割投与を行う
5)副作用として、糖代謝異常・腎機能障害・消化器症状・血圧上昇などが挙げられる
6)副作用に肝機能障害がないためMTXによって肝機能障害を認めた場合に良い適応となる
7)副作用予防のためにトフラレベルを10ng/ml以下に保つようにする
⑤ イグラチモド(ケアラム®︎)
<特徴>
1)免疫調整薬
2)初期の4週間は25mg/日で内服を開始し、その後50mg/日(朝・夕)に増量する
3)COX-2阻害作用効果によって自覚症状の早期緩和が期待できる
4)自己抗体産生抑制作用が報告されており、膠原病の合併症予防にも効果が期待できる
5)SASPと同等の効果が報告されており、また、MTXとの併用でMTX単剤よりも効果があると報告されている
6)肝機能障害・消化器障害に注意する
7)ワーファリンとの併用は禁忌である
ターゲット型:targeted sDMARDs (tsDMARDs)
tsDMARDsは既存の抗リウマチ薬投与を行なっても効果が不十分な患者様に対して投与を行うことを目的に日本で承認された薬剤です。そのため、生物学的製剤が効かない場合に投与を検討します。
代表的な薬剤
① トファシチンブ(ゼルヤンツ®︎)
<特徴>
1)細胞内シグナル伝達阻害薬
2)既存抗リウマチ薬投与不十分例に投与を検討する
3)通常10mg/日(朝・夕)で投与を行う
4)有害事象として、上気道感染・頭痛・下痢・高脂血症・帯状疱疹が挙げられる
6)投与期間中は、感染症・間質性肺炎・肝機能障害・骨髄抑制・悪性腫瘍などの出現に注意する
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