足立慶友医療コラム

右足の股関節痛における原因究明と治療方針

2025.03.20

右足の付け根付近に生じる痛みは日常生活にも影響を及ぼしやすく、少しの違和感があっても受診を先延ばしにしがちです。

しかし、股関節の痛みは原因の種類によって治療法が異なるため、早期の原因究明と適切なケアが重要です。

この記事では、右の股関節が痛い状態を引き起こす主な原因や診断方法、治療の流れ、日常生活で意識したいポイントなどをまとめてご紹介します。

専門的な視点とわかりやすい説明を心がけていますので、痛みに悩む方や将来的に股関節のトラブルが心配な方は、ぜひ参考にしてください。

股関節の構造と右足の痛みが起こりやすい理由

股関節は骨盤と大腿骨を連結する大きな関節で、歩行や体重支持など多彩な動作に携わります。特に右側に痛みが集中するケースには、利き足や生活習慣などが影響することがあります。

痛みの原因を把握するためには、まずは股関節の構造や負担がかかりやすい動作を理解することが大切です。

股関節の基本構造

股関節は、大腿骨の先端部分にある球状の骨頭と、骨盤側の寛骨臼というくぼみがはまり込み合う構造で成り立っています。この構造を「球関節」と呼び、可動域が広いことが特徴です。

可動域の広さがある反面、体重を支えながら動作するため、負荷も大きくなります。

  • 骨盤側には寛骨臼があり、ここに大腿骨の骨頭が入る
  • 大腿骨周囲には筋肉や腱、靱帯などの組織が集まる
  • 動きの大きさと同時に安定性も求められる

右足に症状が集中する背景

一般的に、右利きの方は右足を軸足にしやすいため、体重を支えたり踏み込んだりする回数が自然と増えます。その結果、右の股関節が痛いと感じる方も多いです。

また、日常動作でも無意識に右足へ負荷をかける習慣が積み重なると、慢性的な股関節痛につながる可能性があります。反対に、左利きの方であれば左足に症状が出やすいともいえます。

動作時に負荷がかかりやすいケース

動作の中で特に負担がかかるのは、以下のような場面です。いずれも体重が集中的に股関節へかかるため、痛みが生じやすくなります。

  • 長時間の歩行や立ち仕事
  • 椅子から立ち上がるときに片足に重心が偏る
  • スポーツでの急な方向転換やジャンプ動作

動作別の負荷一覧

動作股関節への負荷度合い
立ち仕事立位姿勢維持で股関節を長時間使用
長距離歩行一定のリズムで継続的に衝撃を受ける
階段昇降体重移動が多く、片足支持時の負担増
スポーツ動作ダッシュやジャンプで負荷が急上昇
座り姿勢からの立ち上がり片足に体重が集中しやすい

右足の股関節痛を引き起こす主な原因

右足の股関節痛は、筋肉や腱・靱帯の炎症、骨や軟骨の変形など多様な要因で発生します。

単なる使い過ぎによる疲労から深刻な病変まで幅が広いため、痛みを放置せず原因を突き止めることが重要です。

筋肉や腱の炎症

長時間の立位や歩行、激しいスポーツなどで起こりやすいのが筋肉や腱の炎症です。特に大腿部や臀部周辺の筋肉に負担が集中すると、炎症反応が起こりやすくなります。

急な運動量の増加やウォーミングアップ不足なども関連します。

変形性股関節症

股関節の軟骨がすり減り、骨どうしが直接こすれ合うことで強い痛みが生じます。

加齢によるリスクが高いイメージですが、体重過多、姿勢の乱れ、先天性股関節脱臼の既往がある方にも起こりやすい病変です。

右の股関節が痛い状態が長く続く場合には変形性股関節症を疑う必要があります。

骨盤周辺の異常

骨盤の歪みや仙腸関節の機能不全など、股関節周囲の骨格バランスが乱れるケースもあります。

骨盤の向きに偏りがあると、歩行時や立位時に無意識のうちに左右差が生じ、右足に負担がかかって痛みにつながることがあります。

主な診断方法と来院時の流れ

診断では、痛みの程度や発症状況、既往歴などを総合的に確認し、画像検査や物理的な触診で詳細を把握します。

右足の痛みが続いている場合、早めに医療機関を受診して原因を特定することが大切です。

問診でのチェックポイント

来院時にはまず問診を行い、痛みの部位や強度、発症のきっかけなどを医師が確かめます。

どんなタイミングで右の股関節が痛いのか、同時に出る症状はあるのかなどを具体的に話すと診断の手がかりになります。

  • 痛みの出る時間帯(朝起きたとき、運動後、長時間座った後など)
  • 痛みの強さ(鋭い痛みなのか、鈍い痛みなのか)
  • 併発している症状(しびれ、むくみ、熱感など)

画像検査

痛みの原因を特定するうえで、レントゲンやMRIなどの画像検査は重要な手段です。軟骨の変性や骨の変形の有無、筋肉や腱の状態などを確認できます。

レントゲン検査では骨の形態を把握し、MRI検査では軟部組織や骨内部の状態を把握しやすくなります。

画像検査の特徴一覧

検査種類特徴主な確認内容
レントゲン検査時間が短く費用も比較的安い骨の形態、変形の有無を確認
MRI詳細な画像が得られるが費用が高い傾向がある軟骨、靱帯、腱、筋肉、骨内の損傷の有無を把握
CT断層画像を立体的に確認できる骨の細かな形状や病変位置を正確に特定しやすい

触診や動作テスト

医師は実際に股関節周辺を触り、痛みの出る角度や可動域を調べながら原因を推定します。

歩行テストや屈伸動作を行ったときの痛みの変化を細かく確認することで、骨格の問題なのか筋肉の問題なのかを絞り込みやすくなります。

右足の股関節痛に対する主な治療法

股関節痛の治療は、原因や症状の程度によって選択肢が異なります。

薬物療法や理学療法、注射治療、必要に応じて手術など、多面的にアプローチして痛みを軽減し、再発を防ぐことを目指します。

薬物療法

痛みが強い場合には、消炎鎮痛薬の内服や塗り薬などで症状を抑えます。炎症が関与しているケースでは、消炎作用のある薬剤によって痛みの悪化を抑えることが期待できます。

ただし、長期的に薬に頼りすぎると副作用が心配ですので、医師と相談しながら使用量や期間を調整します。

理学療法と運動療法

筋肉や関節をサポートするための運動メニューを理学療法士などが提案します。具体的には、ストレッチや軽い筋力トレーニングなどによって股関節周囲の筋肉を強化し、可動域を広げます。

理学療法によって負担が集中しない体の使い方が身につき、痛みの軽減を目指せます。

  • 適切な筋力トレーニングで股関節周辺を安定させる
  • 柔軟性を高め、関節の動きを滑らかにする
  • 正しい姿勢や歩行フォームを習得して負担を分散

注射治療や手術的治療

痛みが著しく、保存的療法では改善が見込めない場合は、股関節内への注射や手術が検討されることがあります。関節内注射は局所的に痛みを緩和する効果が期待できます。

手術は変形性股関節症が進行し、歩行困難などの日常生活に支障が大きい場合に選択肢となるケースがあります。

治療方法の選択例一覧

治療法対象となるケース特徴
消炎鎮痛薬軽度~中程度の炎症や痛みがある場合鎮痛効果が期待できるが長期使用には注意が必要
理学療法・運動療法筋力不足や柔軟性低下が痛みの原因になっている場合体の使い方を改善して再発防止にもつなげやすい
関節内注射強い痛みがあり、即時的な緩和を目指す場合ピンポイントで痛みを抑えられるが効果は一時的な場合も
手術重度変形性股関節症や骨折などで根本的な処置が必要な場合痛みの原因部位を直接修復または置換する

日常生活で気をつけたいポイント

治療の効果を高め、痛みを再発させないためには、日々の動作や生活習慣を見直すことが大切です。簡単な対策であっても積み重なると効果を実感しやすくなります。

適度な休息と負荷管理

痛みがある状態で無理に運動や仕事を続けると、関節や筋肉に大きな負担がかかります。適度な休憩を挟み、痛みが強くなる前に休息する習慣を身につけると、炎症の増悪を防ぎやすくなります。

特に右の股関節が痛いと感じたときには、その動作を中断して負荷を調整することが大切です。

正しい姿勢の維持

長時間の立ち仕事やデスクワークでは、姿勢が乱れると股関節に余計な負担がかかりやすくなります。

体幹や骨盤まわりの筋肉を意識して背筋を伸ばし、重心を左右に偏らないように保つと、痛みの予防につながります。

姿勢が乱れやすい要因比較

状況骨盤・股関節まわりへの影響
椅子に浅く座る骨盤が後傾し、腰や股関節に負担が集中しやすい
片足重心で立つ右足や左足のどちらかに過度の負荷がかかりやすい
猫背の姿勢体幹が安定せず、股関節まわりの筋肉が緊張しやすい
下腹部が出た姿勢骨盤前傾が強まり、股関節に無理が生じやすい

体重コントロール

股関節は体重を支える関節なので、過体重は痛みのリスクを高める要因になります。

バランスのとれた食事や適度な有酸素運動で体重を管理することも、右足の股関節痛の予防と緩和につながります。

食事制限だけでは筋力も落ちやすいため、運動と組み合わせることが望ましいです。

自宅でできるケアと運動の具体例

医師の診断や指導を受けながら、自宅でも無理なくケアを継続すると回復が早まりやすくなります。簡単に取り入れやすい運動と、普段の生活で意識したい予防法をご紹介します。

股関節周辺をほぐすストレッチ

ストレッチは股関節周囲の筋肉をやわらかくし、血流を促すので回復を助ける効果が期待できます。

身体の状態に合わせて負荷を調整し、痛みが無理なくできる範囲で行います。

ストレッチ種別と注意点一覧

ストレッチの種類目的注意点
大腿四頭筋ストレッチ太ももの前側を伸ばしてバランスを整える片足立ちになるので、壁などで支えを確保すると安全
ハムストリングスストレッチ太ももの裏側の筋肉をほぐす背中を丸めすぎないように意識し、ゆっくり行う
股関節内外転ストレッチ内転筋や外転筋を伸ばして可動域を広げる無理に大きく開きすぎず、軽い引っ張り感で止める

筋力トレーニングで安定性を高める

股関節痛の原因に筋力低下がある場合、トレーニングで補強すると症状が和らぎやすくなります。ただし、痛みが強いときは無理に運動を続けずに休むことが優先です。

軽度から中度の痛みなら、医師や理学療法士が提案したメニューを自宅でも継続できます。

  • スクワットや軽いランジで大腿四頭筋と殿筋を鍛える
  • 骨盤周囲のインナーマッスルを意識したエクササイズを行う
  • 自重トレーニングを中心に、負荷を少しずつ調整する

症状が強いときの対処法

痛みが顕著なときは、患部を冷やして炎症を鎮静化させる場合と、慢性化している場合は温めて血流を促進する場合があります。どちらが適切かは医師の指示を仰ぎましょう。

また、固定具の使用で動きを制限し、股関節を安静に保つと回復しやすくなります。

状況に応じたケア方法比較

痛みの状態ケア方法活用例
急性期の強い痛み氷や冷却パックで患部を冷やす捻挫や炎症反応が強いとき、アイシングで症状緩和を目指す
慢性的な痛み温めて血流を増やし、筋肉の緊張を和らげる湯船でゆっくり温まる、ホットパックを当てる
可動域が狭い固定具やサポーターで保護しつつリハビリ痛みを減らしながら徐々にリハビリ運動を導入する

クリニックで受けるメリットとサポート体制

一時的な痛みの場合はセルフケアで良くなることもありますが、長期化した痛みや再発を繰り返す方はクリニックの受診がおすすめです。

適切な診断から専門的なケアまで一貫してサポートすることで、日常生活への早期復帰が望みやすくなります。

医師の専門的な判断

自分で判断しきれない原因や、合わない運動を継続することによる悪化を避けるには、医師の専門的な視点が役立ちます。

画像検査を含めた総合的な評価を行い、最善の治療プランを提示します。

リハビリ施設やサポートの活用

理学療法士や作業療法士が在籍しているクリニックでは、患者の生活環境や目標に合わせたリハビリプログラムを作成します。

正しいフォーム指導や適切な負荷調整を受けられるため、安全かつ効果的に回復を目指せます。

  • 運動メニューのカスタマイズが可能
  • 痛みの状況に合わせた評価を常時受けられる
  • 電気療法や温熱療法など補助的な手技も利用できる

定期的なフォローアップ

一度痛みが取れたとしても、再発を防ぐために定期受診で股関節の状態をチェックすることが大切です。

症状や生活状況の変化に応じて運動メニューや生活指導を調整し、痛みの再燃を予防します。

右足の股関節痛を防ぐ生活習慣の工夫

根本的な原因にアプローチした治療と並行して、普段の生活習慣を見直すとより効果的です。仕事環境の調整から日々の姿勢ケアまで、心がけ次第で再発リスクを下げられます。

身の回りの環境を整える

家や職場での動線を工夫し、股関節に負担がかかりにくい環境づくりを行います。

たとえば、長時間立ち続けなくていいように作業スペースを適切に設定したり、座る姿勢をサポートするクッションを活用したりといった工夫です。

負担軽減に役立つアイテム一覧

アイテム効果
サポートクッション骨盤を安定させて腰や股関節への負担を減らす
スタンディングデスク長時間座ることによる負担を分散できる
インソール歩行時の衝撃を和らげ、股関節への衝撃を低減する
足置き台椅子に座る際、足裏をしっかり支え重心を整える

無理なく続けられる運動を選ぶ

ウォーキングや水中歩行など、関節に大きな負担がかかりにくい運動がおすすめです。

運動は一時的ではなく継続することで効果を発揮しやすくなるため、自分の体力や痛みの状態に合ったものを選びます。

ストレス管理も大切

ストレスがたまると姿勢や食生活が乱れがちになります。

適度に休息を取る、趣味の時間を確保するといった方法で心身のバランスを整えると、股関節痛の悪化リスクを減らしやすくなります。

よくある質問

痛みが軽くなったときも通院を続ける必要はありますか?

急性の炎症が落ち着くと痛みが消える場合がありますが、痛みが消えた状態こそ再発予防を図る時期といえます。

医師の判断で通院回数や理学療法の頻度を調整しながら、体の使い方や筋力を整えると再燃を防げます。

右の股関節が痛いときに激しい運動をしてもいいですか?

痛みがある状態で激しい運動をすると、炎症や損傷が悪化する恐れがあります。医師や理学療法士が運動許可を出すまでは、負担の大きいスポーツやトレーニングは控えてください。

ウォーキングなど軽めの運動から始めるといいでしょう。

サポーターやベルトは有効ですか?

症状や原因に応じてサポーターや骨盤ベルトを使用すると、股関節周囲を安定させて痛みを和らげる助けになります。

ただし、常時装着し続けると筋力の低下を招く場合もあるため、医師の指示を参考にしながら使い方や装着時間を調整すると安心です。

手術を検討するのはどんなタイミングですか?

変形性股関節症が進行して歩行が困難な状態になったり、保存的な治療で十分な効果が得られなかったりした場合に検討することが多いです。

手術には入院やリハビリ期間も伴うため、メリットとリスクを医師とよく相談する必要があります。

以上

参考文献

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Author

北城 雅照

医療法人社団円徳 理事長
医師・医学博士、経営心理士

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