今回は、関節リウマチの治療においての最終兵器である生物学的製剤について解説します。
現在使用可能な薬剤は大きく分けて3通りの種類があります。
目次
今回の10秒まとめ
① 生物学的製剤は、TNF阻害剤、ヒト化抗IL-6受容体モノクローナル抗体、T細胞活性化抑制(CTLA4-Ig)の3種類がある。
② csDMARDsを単剤もしくは併用療法を行い、6ヶ月以内に治療目標に達しない場合、かつ、予後不良因子を持つ場合、生物学的製剤の適応となる。
③ 生物学的製剤の導入時は、既存感染症の有無を確認する。
④ 生物学的製剤の導入後も、感染症の発症に注意する。
⑤ 生物学的製剤の特徴を理解し、どの薬剤を使用するか検討する。
生物学的製剤の種類
生物が産生したタンパク質を利用し関節リウマチの進行を抑えるため、生物学的製剤と呼ばれています。
現在日本で使用可能な生物学的製剤は、大きく下記の3つに分けられます。
① TNF阻害剤
1)インフリキシマブ(レミケード®︎)
2)エタネルセプト(エンブレル®︎)
3)アダリムマブ(ヒュミラ®︎)
4)ゴムリマブ(シンポニー®︎)
5)セルトリズぺゴル(シムジア®︎)
② ヒト化抗IL-6受容体モノクローナル抗体
1)トリシズマブ(アクテムラ®︎)
③ T細胞活性化抑制(CTLA4-Ig)
1)アバタセプト(オレンシア®︎)
生物学的製剤を用いる時
適応
下記のような状況の場合、生物学的製剤の投与を検討いたします。
① csDMARDsを単剤もしくは併用療法を行い、6ヶ月以内に治療目標(低活動性)に達しない場合。
② ①かつ下記の予後不良因子を持つ場合。
1)リウマチ因子 and/or 抗CCP抗体 高値
2)高疾患活動性
3)早期の関節破壊
導入の注意点
① B型肝炎、C型肝炎の感染の有無を確認
② 結核感染の有無を確認
③ 真菌感染症(ニューモシスチス感染症)の有無を確認
④ 間質性肺炎の有無を確認
⑤ 歯周病の治療を行う
活動性のある感染症がある場合生物学的製剤の使用は禁忌になります。
また、ワクチン接種も生ワクチンの接種は禁忌になります。生ワクチンの接種を行う場合は、前後2ヶ月間は生物学的製剤の使用は控える必要があります。
妊娠希望がある場合や授乳中の場合は、生物学的製剤の使用は回避が望ましいといわれております。
投与中の注意点
① TNF阻害剤使用時は結核の発症に特に注意する
② ニューモシスチス肺炎の発症に注意し、β-Dグルカンを定期的に検査する
③ 高齢者の場合は、ニューモシスチス肺炎の予防のためにST合剤の内服を行う
④ 帯状疱疹発症のリスクも高まるため、神経痛を認める場合は皮膚初見も必ず診察する
⑤ 手術を行う場合は、前後2週間ほど休薬する
⑥ 生物学的製剤の併用は有害事象発生のリスクが高まるため行わない
効果不十分の場合
① TNF阻害剤で効果を認めない場合
1)作用機序の異なる薬剤を用いる
② TNF阻害剤使用中に効果が減弱した場合
1)違う種類のTNF阻害剤を用いる
2)MTXやcsDMARDsの併用やステロイドの使用・増量などを検討する
生物学的製剤それぞれの特長
どの生物学的製剤の選択するかは、①投与経路・②投与場所・③投与回数・④MTXが併用可能かどうか・⑤費用・⑥その他の特徴、の観点から個々人にあった薬剤を選択していきます。
TNF阻害剤
1)インフリキシマブ(レミケード®︎)
①投与経路:点滴静注
②投与場所:病院
③投与回数:1回目から2週間後に2回目、その4週間後に3回目、その後は(4~)8週間あけて投与
④MTXが併用可能かどうか:MTXの内服は必須
⑤費用:月1回投与、月額:77,871円(1割負担:7,787円、3割負担:23,361円)
⑥その他の特徴
・キメラ抗体のため、自己抗体の産生を抑えるためにMTXが必要
・活動性に応じて投与量や投与間隔が調整可能
・活動性が高く比較的若年の症例に利用される
2)エタネルセプト(エンブレル®︎)
①投与経路:皮下注
②投与場所:自己注射可能
③投与回数:週1 or 2 回
④MTXが併用可能かどうか:MTX効果不十分例に対して追加投与を行うと、単剤投与よりも有効性が高い
⑤費用:月4回投与(50mg皮下注射)の場合、月額:123,748円(1割負担:12,375円、3割負担:37,124円)
⑥その他の特徴
・完全ヒト型抗TNF受容体抗体
・体内から消失しやすく、術前後のコントロールがしやすい薬剤
・自己注射が可能なため、受診という時間的拘束が無い
・肺炎を含め、感染症に注意が必要
3)アダリムマブ(ヒュミラ®︎)
①投与経路:皮下注射
②投与場所:自己注射可能
③投与回数:2週間に1回
④MTXが併用可能かどうか:皮疹などの副作用を防ぐためにも可能であれば併用投与を行う
⑤費用:月2回投与、月額:124,276円(1割負担:12,428円、3割負担:37,283円)
⑥その他の特徴
・生物学的製剤の第1選択薬として位置付けられる薬剤
・完全ヒト型TNF阻害剤のため、効果減弱が起こりにくい
4)ゴムリマブ(シンポニー®︎)
①投与経路:皮下注射
②投与場所:自己注射可能
③投与回数:4週間に1回
④MTXが併用可能かどうか:併用する場合は、1回投与量を50mgに減量する。効果をみて100mgまで増量可能
⑤費用:月1回投与、月額:120,335円(1割負担:12,034円、3割負担:36,101円)
⑥その他の特徴
・二次無効が少ない
・他のTNF阻害剤が無効の場合の第2選択薬にも用いられる
5)セルトリズぺゴル(シムジア®︎)
①投与経路:皮下注射
②投与場所:自己注射可能
③投与回数:症状安定後は2週または4週に1回の投与が可能
④MTXが併用可能かどうか:可能
⑤費用:月2回投与の場合、月額:122,662円(1割負担:12,266円、3割負担:36,799円)
⑥その他の特徴
・初のPEG化TNF阻害剤(TNF阻害剤として有効な部分のみ切り離した製剤)
・妊娠を希望する方に利用しやすい薬剤
ヒト化抗IL-6受容体モノクローナル抗体
1)トリシズマブ(アクテムラ®︎)
①投与経路:点滴静注、皮下注射
②投与場所:自己注射可能
③投与回数:皮下注射の場合、2週間に1回投与
④MTXが併用可能かどうか:必要なし
⑤費用:月2回投与の皮下注射場合、月額:80,838円(1割負担:8,084円、3割負担:24,251円)
⑥その他の特徴
・日本人での臨床試験結果が豊富
・注射部の皮膚トラブルが比較的少ない薬剤
・投与後、白血球減少や脂質代謝異常を認めやすい
・肺炎などの発見が遅れることがあるので、肺炎に注意する
T細胞活性化抑制(CTLA4-Ig)
1)アバタセプト(オレンシア®︎)
①投与経路:点滴静注、皮下注射
②投与場所:自己注射可能
③投与回数:皮下注射の場合、1週間に1回投与
④MTXが併用可能かどうか:可能
⑤費用:月4回皮下注射の場合、月額:115,024円(1割負担:11,502円、3割負担:34,507円)
⑥その他の特徴
・安全性が高い薬剤であるが、肺炎などの発症に注意が必要
・生ワクチンの摂取は投与中および投与後3ヶ月は行わない
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