膝の内側が出っ張る原因と治す方法
歩いている時や階段の上り下りの際に、ふと膝の内側の出っ張りが気になったことはありませんか
。痛みはないけれど、左右で形が違うように見えたり、以前はなかった膨らみが現れたりすると、何か悪い病気ではないかと不安に感じるかもしれません。
その出っ張りの原因は一つではなく、加齢に伴う関節の変化や、筋肉の炎症、あるいは他の要因が関係している可能性があります。
この記事では、膝の内側が出っ張る場合に考えられる原因を一つひとつ丁寧に解説し、ご自身でできる対処法から医療機関での専門的な治療法まで、段階を追って詳しくご紹介します。
目次
膝の内側の出っ張りとは?まず知っておきたい基本情報
膝の内側がポコッと出っ張っているように見えるこの状態について、まずは基本的な情報を整理しましょう。
ご自身の膝に何が起きているのかを客観的に把握することは、不安を和らげ、適切な対応を見つけるための第一歩です。
痛みの有無や他の症状との関連性など、基本的なポイントから見ていきます。
膝のどの部分が出っ張っているのか
「膝の内側」と一言でいっても、人によって指し示す場所は微妙に異なります。多くの場合、膝のお皿(膝蓋骨)の少し下、内側の部分に膨らみや出っ張りを感じます。
この部分は、太ももの骨(大腿骨)とすねの骨(脛骨)が接する関節の内側にあたります。
骨そのものが変形して突出しているように感じることもあれば、その周辺の軟部組織(筋肉や脂肪など)が腫れているように感じることもあります。
どの部分が、どのように出っ張っているのかを観察することが、原因を探る上で大切な手がかりになります。
膝の内側の主な構造
構造 | 役割 | 出っ張りとの関連 |
---|---|---|
大腿骨内側顆 | 太ももの骨の膝関節を構成する部分 | 変形性膝関節症で骨棘ができることがある |
脛骨内側顆 | すねの骨の膝関節を構成する部分 | 変形性膝関節症で骨棘ができることがある |
鵞足部 | 複数の筋肉が付着する脛骨の上部内側 | 鵞足炎による腫れや痛みが起こりやすい |
痛みはある?ない?症状の個人差
膝の内側の出っ張りに伴う症状は、人によって大きく異なります。
出っ張りに加えて、ズキズキとした痛みや、動かした時の痛みを強く感じる人もいれば、痛みは全くなく、見た目の変化だけが気になるという人もいます。
また、普段は痛まないものの、長時間歩いたり、階段を使ったりした後にだけ痛みが出るというケースもあります。
この痛みの有無や強さは、原因となっている病気の種類や進行度によって変わるため、ご自身の症状を正確に把握することが重要です。
いつ、どのような時に痛みを感じるか、あるいは感じないかを覚えておきましょう。
なぜ多くの人がこの症状で悩むのか
膝は、体重を支えながら曲げ伸ばしやひねりといった複雑な動きを担う、体の中でも特に負担のかかりやすい関節です。立ったり歩いたりするだけでも、常に体重分の負荷がかかっています。
このため、加齢による軟骨のすり減りや、スポーツや仕事による使いすぎ、肥満による過度な負担などが原因で、トラブルが起きやすいのです。
特にO脚気味の人は、体重が膝の内側にかかりやすく、関節の一部に変形や炎症が起こり、出っ張りとして現れることがあります。
多くの人が経験する可能性のある症状だからこそ、正しい知識を持つことが大切です。
膝の内側が出っ張る主な原因
膝の内側が出っ張る背景には、さまざまな原因が考えられます。最も一般的なのは加齢に伴う関節の変化ですが、スポーツや日常生活での特定の動作が引き金になることもあります。
ここでは、膝の内側の出っ張りを引き起こす代表的な原因を詳しく解説し、それぞれの特徴を明らかにしていきます。
変形性膝関節症による骨の変形(骨棘)
中高年以降の方で、膝の内側に出っ張りが見られる場合、最も多く考えられる原因が「変形性膝関節症」です。
これは、長年の負担によって膝関節の軟骨がすり減り、関節に炎症が起きたり、骨が変形したりする病気です。
関節の縁に「骨棘(こつきょく)」と呼ばれるトゲのような骨ができることがあり、これが外から触れると出っ張りのように感じられます。
初期段階では痛みがないこともありますが、進行すると痛みや腫れ、関節の動かしにくさといった症状が現れます。
特にO脚の人は、膝の内側に負担が集中しやすいため、内側に骨棘ができやすい傾向があります。
変形性膝関節症の進行度と症状
進行度 | 主な症状 | 出っ張りの状態 |
---|---|---|
初期 | 動き始めの軽い痛み、こわばり | ほとんど目立たないか、軽度の膨らみ |
中期 | 階段昇降や歩行時の痛み、腫れ | 骨の変形が目立ち始め、出っ張りが明確になる |
末期 | 安静時にも痛む、膝が伸びきらない・曲がらない | 関節の変形が著しく、O脚が進行する |
鵞足炎(がそくえん)による腫れ
スポーツを活発に行う人や、膝の曲げ伸ばしを頻繁に行う人に多いのが「鵞足炎」です。
鵞足とは、膝の内側、すねの骨の上部にある部分で、3つの筋肉(縫工筋、薄筋、半腱様筋)が骨に付着しています。この部分がガチョウの足のように見えることから、この名前が付きました。
ランニングやジャンプ、キック動作の繰り返しによって、この鵞足部で筋肉や腱が骨とこすれて炎症を起こし、痛みや腫れが生じます。
この腫れが、膝の内側の出っ張りとして感じられることがあります。変形性膝関節症と異なり、骨の変形ではなく、軟部組織の炎症が主体です。
- 縫工筋
- 薄筋
- 半腱様筋
鵞足炎の原因となりやすいスポーツ活動
スポーツ | 主な動作 | 膝への負担 |
---|---|---|
ランニング | 着地と蹴り出しの繰り返し | 膝の屈伸と捻りが繰り返される |
サッカー | ボールを蹴る動作、急な方向転換 | 膝の内側への強いストレスがかかる |
水泳(平泳ぎ) | キック動作 | 膝を曲げた状態から外に蹴り出す |
脂肪や滑液包の炎症
膝関節の周りには、関節の動きを滑らかにするための「滑液包(かつえきほう)」という袋状の組織や、衝撃を吸収する脂肪組織(膝蓋下脂肪体など)が存在します。
これらの組織が、何らかの原因で炎症を起こしたり、肥厚したりすることで、膝の内側が腫れて出っ張って見えることがあります。
特に、膝を酷使する人や肥満傾向にある人では、これらの組織に負担がかかりやすく、炎症を起こしやすいと考えられています。痛みは軽微な場合から、強い圧痛を伴う場合までさまざまです。
まれなケースとしての骨腫瘍など
非常にまれですが、骨自体にできる腫瘍(骨腫瘍)が原因で、膝が出っ張ってくることもあります。多くの骨腫瘍は良性ですが、中には悪性のものも存在します。
急激に出っ張りが大きくなる、安静にしていても痛みが続く、原因に心当たりがないのに症状が進行するといった場合は、注意が必要です。
これらは変形性膝関節症や鵞足炎とは異なる特徴を持つため、自己判断せずに速やかに医療機関を受診することが重要です。
【症状別】考えられる病気とセルフチェック
膝の出っ張りに加えて、他にどのような症状があるかによって、考えられる原因はある程度絞り込むことができます。
ここでは、代表的な症状の組み合わせと、それに対応する可能性のある病気、そしてご自身でできる簡単なチェック方法を紹介します。
ただし、これらはあくまで目安であり、正確な診断は医療機関で行う必要があります。
痛みと腫れがある場合
膝の内側の出っ張りに加えて、明らかな痛みや熱感、腫れを伴う場合は、関節やその周辺で炎症が起きているサインです。
変形性膝関節症が進行して炎症を起こしている場合や、鵞足炎、滑液包炎などが考えられます。特に、押すと痛む場所(圧痛点)がはっきりしている場合は、鵞足炎の可能性が高まります。
膝の内側、お皿の下あたりを指で優しく押してみて、特に強く痛む場所があるか確認してみましょう。
症状別セルフチェックリスト
チェック項目 | はい | いいえ |
---|---|---|
動き始めに膝が痛む、こわばる | 変形性膝関節症の可能性 | 他の原因を考える |
膝の内側(お皿の下)を押すと痛い | 鵞足炎の可能性 | 他の原因を考える |
膝全体が腫れて熱を持っている | 関節炎の可能性 | 他の原因を考える |
痛みはないが出っ張りが気になる場合
痛みはなく、見た目の出っ張りだけが気になるというケースもあります。この場合、変形性膝関節症の初期段階で、まだ炎症が起きていない骨棘(骨の出っ張り)の可能性があります。
また、ガングリオンと呼ばれるゼリー状の物質が詰まった袋状の腫瘤(しゅりゅう)や、良性の脂肪腫などができていることも考えられます。
これらは通常、痛みを伴わないことが多いですが、大きくなって神経を圧迫すると、しびれや痛みが出ることがあります。
膝の曲げ伸ばしで違和感がある場合
膝を曲げたり伸ばしたりする際に、ゴリゴリ、ギシギシといった音(轢音:れきおん)がしたり、引っかかるような違和感があったりする場合は、関節の軟骨がすり減っているサインかもしれません。
これは、変形性膝関節症の典型的な症状の一つです。また、半月板損傷など、関節内部の他の組織に問題が起きている可能性も考えられます。
スムーズな動きが妨げられている感覚がある場合は、関節内部の状態を詳しく調べる必要があります。
いつ医療機関を受診すべきか
膝の出っ張りに気づいたら、一度は整形外科を受診することをお勧めします。特に、以下のような症状がある場合は、早めに専門医に相談しましょう。
自己判断で放置すると、症状が悪化したり、治療が難しくなったりすることがあります。
- 痛みが強く、日常生活に支障が出ている
- 出っ張りが急に大きくなった
- 安静にしていても痛みが続く
- 膝に熱感や強い腫れがある
- 膝が完全に伸びない、または曲がらない
自分でできる!膝の内側の出っ張りへの対処法とセルフケア
医療機関を受診するまでの間や、診断後の治療と並行して、ご自身でできることも多くあります。
痛みを和らげ、症状の悪化を防ぐためのセルフケアは、膝の健康を維持する上で非常に重要です。ここでは、日常生活の中で手軽に取り組める対処法を紹介します。
安静とアイシングの基本
痛みや腫れ、熱感が強い場合は、まず膝を休ませることが第一です。無理に動かすと炎症が悪化する可能性があります。運動や長時間の歩行は控え、安静を心がけましょう。
また、炎症を抑えるためにはアイシング(冷却)が効果的です。氷嚢や保冷剤などをタオルで包み、1回15分から20分程度、痛みや熱を感じる部分に当てます。
これを1日に数回繰り返します。ただし、冷やしすぎは凍傷の原因になるため注意が必要です。
膝に負担をかけない生活習慣
日常生活の何気ない動作が、膝に負担をかけていることがあります。少しの工夫で、その負担を大きく減らすことができます。
例えば、床に座る生活から椅子やソファを使う生活に変える、重い荷物を持つ際はカートを利用する、階段の使用を避けてエレベーターやエスカレーターを使うなどが挙げられます。
肥満は膝への負担を増大させる大きな要因ですので、体重管理も重要です。食生活を見直し、適度なカロリー摂取を心がけましょう。
膝に負担をかける動作とかけない動作
負担をかける動作 | 負担をかけない工夫 | 理由 |
---|---|---|
正座、あぐら | 椅子に座る | 膝を深く曲げることで関節内の圧力が高まるのを防ぐ |
急な立ち上がり | 手すりなどを使ってゆっくり立つ | 膝への衝撃を和らげ、筋肉への負担を減らす |
階段の上り下り | エレベーターを利用する | 体重の数倍の負荷がかかるのを避ける |
筋力トレーニングとストレッチ
膝の痛みを恐れて動かさないでいると、かえって膝周りの筋力が低下し、関節が不安定になって症状が悪化することがあります。膝に負担をかけずに筋力を強化することが大切です。
特に、太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)を鍛えることは、膝関節を安定させ、衝撃を吸収する上で非常に効果的です。
また、運動後や入浴後など、体が温まっている時に、太ももやふくらはぎのストレッチを行い、筋肉の柔軟性を保つことも痛みの緩和につながります。
大腿四頭筋を鍛える簡単な運動
椅子に浅く腰掛け、片方の足を床と平行になるまでゆっくりと持ち上げます。その状態で5秒から10秒キープし、ゆっくりと下ろします。
この動作を左右交互に10回ずつ、無理のない範囲で繰り返します。
- 痛みがあるときは無理に行わない
- 反動をつけずにゆっくりと行う
- 呼吸を止めない
サポーターやインソールの活用
膝用のサポーターを着用すると、関節のぐらつきを抑えて安定させることができます。これにより、歩行時の痛みが和らいだり、安心感が得られたりする効果が期待できます。
また、O脚が原因で膝の内側に負担がかかっている場合は、足の外側が高くなるように調整されたインソール(足底挿板)を靴の中に入れることで、膝への荷重バランスを改善し、内側への負担を軽減することができます。
どちらも市販されていますが、ご自身の足や膝の状態に合ったものを選ぶことが重要です。
専門家による治し方|医療機関での検査と治療
セルフケアを続けても症状が改善しない、あるいは痛みが強くて日常生活に支障をきたすような場合は、整形外科での専門的な診断と治療が必要です。
医師は問診や診察、画像検査などを用いて原因を正確に特定し、一人ひとりの状態に合わせた治療計画を立てます。ここでは、医療機関で行われる一般的な検査と治療法について解説します。
整形外科での診断の流れ
整形外科を受診すると、まず医師による問診と診察が行われます。いつから症状があるのか、どのような時に痛むのか、過去のケガの有無などを詳しく伝えます。
その後、医師が膝を触ったり、動かしたりして、痛みや腫れの場所、関節の動きの範囲などを確認します。診断を確定するため、多くの場合、X線(レントゲン)検査が行われます。
X線検査では、骨の変形や骨棘の有無、関節の隙間の広さなどを確認でき、変形性膝関節症の診断に有用です。
必要に応じて、MRI検査や超音波(エコー)検査を行い、軟骨や半月板、靭帯、筋肉といった軟部組織の状態をより詳しく調べることもあります。
保存療法(薬物療法・物理療法・装具療法)
多くの場合、治療は手術をしない「保存療法」から開始します。保存療法の目的は、痛みをコントロールし、炎症を抑え、膝関節の機能を維持・改善することです。
これにはいくつかの方法があり、症状に応じて組み合わせて行われます。
保存療法の種類と目的
治療法 | 内容 | 目的 |
---|---|---|
薬物療法 | 内服薬(消炎鎮痛剤)、外用薬(湿布、塗り薬)の使用 | 痛みと炎症を抑える |
物理療法 | 温熱療法、電気療法、マッサージ、運動療法(リハビリテーション) | 血行促進、痛みの緩和、筋力強化、関節可動域の改善 |
装具療法 | サポーター、インソール(足底挿板)の使用 | 関節の安定化、負担の軽減 |
注射療法(ヒアルロン酸・ステロイド)
保存療法で痛みが十分に改善しない場合、関節内への注射が検討されます。代表的なものに「ヒアルロン酸注射」と「ステロイド注射」があります。
ヒアルロン酸は、もともと関節液に含まれている成分で、関節の動きを滑らかにしたり、軟骨を保護したりする役割があります。
変形性膝関節症ではこのヒアルロン酸が減少・劣化しているため、関節内に直接補充することで、痛みを和らげ、関節の機能を改善する効果が期待できます。
一方、ステロイド注射は非常に強力な抗炎症作用があり、急性の強い痛みや腫れを抑えるのに効果的です。
ただし、頻繁に使用すると軟骨や腱を傷めるリスクがあるため、使用は限定的に行われます。
手術療法という選択肢
保存療法を長期間続けても効果がなく、痛みのために歩行などの日常生活が著しく困難になった場合には、手術療法が選択肢となります。
手術の方法は、年齢や活動レベル、関節の変形の程度などを総合的に考慮して決定されます。手術によって痛みの根本的な原因を取り除き、生活の質の向上を目指します。
- 関節鏡視下手術(デブリードマン)
- 高位脛骨骨切り術
- 人工膝関節置換術
膝の出っ張りを悪化させないための予防策
一度発症した症状を悪化させないため、また、将来的な再発を防ぐためには、日々の生活習慣を見直すことが非常に重要です。
膝への負担を減らし、関節を健康に保つための予防策は、今日からでも始められます。ここでは、特に意識したい3つのポイントを紹介します。
適正体重の維持
体重が1kg増えると、歩行時には膝に約3kg、階段の上り下りでは約7kgもの負担が増えるといわれています。
体重が重いほど膝関節にかかる圧力は大きくなり、軟骨のすり減りを早め、炎症を引き起こす原因となります。
適正体重を維持することは、膝の負担を軽減するための最も効果的な予防策の一つです。もし体重が標準を超えている場合は、食事内容の見直しや適度な運動によって、無理のない範囲で減量を目指しましょう。
少し体重を落とすだけでも、膝の痛みは大きく改善することがあります。
栄養バランスの取れた食事
骨や軟骨、筋肉といった膝関節を構成する組織は、日々の食事から作られています。
特定の食品だけを食べるのではなく、バランスの取れた食事を心がけることが、丈夫な膝を維持するために必要です。
特に、骨の材料となるカルシウム、筋肉を作るたんぱく質、そして組織の修復を助けるビタミン類などを意識して摂取することが大切です。
膝の健康を支える栄養素
栄養素 | 主な働き | 多く含まれる食品 |
---|---|---|
カルシウム | 骨や歯を形成する | 牛乳、チーズ、小魚、豆腐 |
たんぱく質 | 筋肉や軟骨の材料となる | 肉、魚、卵、大豆製品 |
ビタミンD | カルシウムの吸収を助ける | きのこ類、鮭、さんま |
正しいフォームでの運動習慣
膝の健康のためには、運動不足も過度な運動もよくありません。ウォーキングや水泳、サイクリングなど、膝への負担が少ない有酸素運動を習慣にすることがお勧めです。
これらの運動は、筋力維持や体重管理に役立つだけでなく、血行を促進し、関節の柔軟性を保つ効果も期待できます。
運動を行う際は、正しいフォームを意識することが重要です。間違ったフォームで運動を続けると、かえって膝を痛める原因になります。
運動前後のストレッチも忘れずに行い、ケガの予防に努めましょう。
膝の内側の出っ張りに関するよくある質問
最後に、膝の内側の出っ張りに関して、多くの方が疑問に思う点や不安に感じる点について、質問と回答の形式でまとめました。
ご自身の状況と照らし合わせながら、参考にしてください。
Q. 膝の出っ張りは自然に治りますか?
A. 原因によって異なります。
例えば、鵞足炎のような筋肉や腱の炎症が原因の場合、安静にしたり、適切なセルフケアを行ったりすることで、症状が改善し、腫れが引いて出っ張りが目立たなくなることはあります。
しかし、変形性膝関節症による骨棘(骨の変形)が原因の場合、一度変形した骨が自然に元の形に戻ることはありません。
ただし、適切な治療やセルフケアによって痛みを和らげ、症状の進行を遅らせることは可能です。
Q. どのような運動が効果的ですか?避けるべき運動はありますか?
A. 膝の筋力を維持し、柔軟性を高める運動が効果的です。前述した太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)を鍛える運動や、プールでの水中ウォーキング、エアロバイクなどがお勧めです。
これらの運動は、膝に直接的な体重負荷をかけずに筋力を強化できます。
一方、ジャンプや急な方向転換を伴うスポーツ(バスケットボール、バレーボールなど)や、膝を深く曲げるスクワットなどは、膝への負担が大きいため、痛みがある場合は避けるべきです。
運動の種類については、ご自身の状態に合わせて専門家と相談することをお勧めします。
Q. サプリメントは効果がありますか?
A. グルコサミンやコンドロイチン、ヒアルロン酸といった成分を含むサプリメントが、膝の健康に良いとして市販されています。
これらの成分は軟骨の構成要素であり、一部の研究では痛みの緩和に効果があったとする報告もあります。
しかし、科学的な効果についてはまだ議論が分かれており、すべての人に効果があるとは限りません。
サプリメントはあくまで食事を補助するものであり、治療の基本は適切な運動、体重管理、そして必要に応じた医療機関での治療です。
使用を検討する場合は、かかりつけの医師や薬剤師に相談すると良いでしょう。
Q. 温めるのと冷やすのはどちらが良いですか?
A. 一般的に、症状によって使い分けます。「急性期」と呼ばれる、痛み出したばかりで熱感や強い腫れがある場合は、炎症を抑えるために「冷やす(アイシング)」のが適切です。
一方、痛みが長引いている「慢性期」で、熱感はなく、動かすと痛む、こわばるといった症状の場合は、血行を促進して筋肉の緊張を和らげるために「温める(温熱療法)」のが効果的です。
入浴などで温めることで、痛みが和らぐことが多いです。
温める場合と冷やす場合の判断基準
対応 | 適した症状 | 目的 |
---|---|---|
冷やす(アイシング) | 急な痛み、腫れ、熱感がある(急性期) | 血管を収縮させ、炎症と腫れを抑える |
温める(温熱療法) | 慢性的な痛み、こわばり、筋肉の緊張(慢性期) | 血管を拡張させ、血行を促進し、痛みを緩和する |
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