膝の痛みと痛風の関係|症状と治療の違い
突然、膝に激しい痛みが走り、赤く腫れ上がって歩くのもつらい。このような症状が現れたとき、多くの人は「膝の関節が悪いのでは?」と考えるかもしれません。
しかし、その耐えがたい膝の痛みの原因は、実は「痛風」の可能性があります。痛風は足の親指の付け根に発症するイメージが強いですが、膝関節に症状が現れることも少なくありません。
この記事では、膝の痛みと痛風の深い関係について、症状の特徴や変形性膝関節症との違い、そして適切な治療法まで、専門的な観点から分かりやすく解説します。
ご自身の膝の痛みの原因を正しく理解し、適切な対処法を知るための一助となれば幸いです。
目次
痛風とは?膝の痛みとの基本的な関係
膝に現れるつらい痛みの原因を考える前に、まずは痛風という病気そのものについて正しく理解することが重要です。
痛風がどのような状態を指し、なぜ膝の痛みと結びつくのか、その基本的な知識をここで確認しましょう。
痛風が起こる体の仕組み
痛風は、血液中の「尿酸」という物質が増えすぎることによって起こる病気です。尿酸は、体内でプリン体という物質が分解される際に作られる老廃物の一種です。
通常、尿酸は尿と一緒に体外へ排出され、血液中の濃度は一定に保たれます。
しかし、体内で尿酸が過剰に作られたり、腎臓からの排出がうまくいかなくなったりすると、血液中の尿酸濃度が高くなります。この状態を「高尿酸血症」と呼びます。
血液中の尿酸濃度が高い状態が続くと、尿酸は溶けきれなくなり、針状の結晶となって関節や組織に蓄積します。
この尿酸塩結晶が何らかのきっかけで関節内で剥がれ落ちると、体はそれを異物と認識し、白血球が攻撃を始めます。
この時に激しい炎症反応が起こり、痛みや腫れを引き起こすのが「痛風発作」です。
なぜ膝にも痛風は発症するのか
痛風発作が最も起こりやすい部位は足の親指の付け根(約70%)ですが、膝関節も発症しやすい部位の一つです。その理由として、膝関節が比較的体温が低い場所であることが挙げられます。
尿酸は温度が低い液体に溶けにくい性質があるため、体温が低めの足先や膝などの関節で結晶化しやすいのです。
また、膝関節は体重を支える大きな関節であり、日常的に大きな負担がかかっています。
この物理的な刺激が、関節内に蓄積した尿酸塩結晶を剥がれ落とすきっかけとなり、痛風発作を引き起こす一因になると考えられています。
膝関節と他の関節の発症頻度
発症部位 | 特徴 | 発症頻度の目安 |
---|---|---|
足の親指の付け根 | 最も代表的な部位。靴を履くだけで痛む。 | 非常に高い |
膝関節 | 大きく腫れ上がり、歩行困難になることがある。 | 比較的高い |
足首・足の甲 | 足全体の腫れや痛みを伴うことがある。 | やや高い |
痛風発作と高尿酸血症の違い
「高尿酸血症」と「痛風発作」は、しばしば混同されますが、意味は異なります。
高尿酸血症は、単に血液中の尿酸値が高い状態(血清尿酸値が7.0mg/dLを超える状態)を指し、この段階では自覚症状はほとんどありません。いわば、痛風の"予備軍"です。
一方、痛風発作は、高尿酸血症が続いた結果、関節内で尿酸塩結晶による炎症が実際に起きた状態を指します。
つまり、尿酸値が高いだけでは痛風とは言えず、激しい関節炎の症状が出て初めて痛風と診断されます。
しかし、症状がないからといって高尿酸血症を放置すると、痛風発作だけでなく、腎障害や尿路結石、さらには動脈硬化を進行させるリスクも高まるため、早期の対策が重要です。
痛風だけじゃない膝の痛みを引き起こす主な病気
膝に痛みや腫れが生じた場合、痛風の可能性を疑うことは大切ですが、原因はそれだけではありません。特に中高年の方の膝の痛みでは、他の病気の可能性も十分に考えられます。
ここでは、痛風と症状が似ていて間違われやすい、代表的な膝の病気を紹介します。
変形性膝関節症
変形性膝関節症は、加齢や肥満、筋力低下などにより、膝関節の軟骨がすり減って骨が変形し、痛みや炎症が起こる病気です。中高年の膝の痛みの原因として最も多く見られます。
痛風のような突然の激痛ではなく、動き始めや階段の上り下り、長時間の歩行後などに、鈍い痛みとして現れるのが特徴です。
進行すると、膝に水が溜まったり(関節水腫)、歩行が困難になったりすることもあります。
関節リウマチ
関節リウマチは、免疫システムの異常により、自分自身の関節を攻撃してしまう自己免疫疾患の一種です。
手や足の指の関節から症状が出始めることが多いですが、膝関節にも炎症が起こることがあります。
痛風との違いは、一度に複数の関節が対称的に腫れて痛むことが多い点や、朝起きた時に関節がこわばる「朝のこわばり」が特徴的な症状として挙げられます。
痛みは痛風発作ほど急激ではありませんが、持続的に続く傾向があります。
膝の痛みを引き起こす主な病気の比較
病名 | 主な原因 | 特徴的な症状 |
---|---|---|
痛風 | 尿酸塩結晶の沈着 | 突然の激痛、一度に一つの関節(単関節炎) |
変形性膝関節症 | 軟骨のすり減り | 動作開始時の痛み、慢性的な鈍い痛み |
関節リウマチ | 自己免疫異常 | 複数の関節の腫れ、朝のこわばり |
偽痛風(ピロリン酸カルシウム結晶沈着症)
偽痛風は、その名の通り痛風によく似た症状を引き起こす病気です。
痛風が尿酸塩の結晶によって起こるのに対し、偽痛風は「ピロリン酸カルシウム」という別の物質の結晶が関節に沈着することで炎症が起こります。
高齢者、特に80歳以上の方に多く見られ、膝関節や手首、肩関節などに発症しやすいのが特徴です。
症状は痛風発作と同様に、突然の激しい痛み、腫れ、熱感を伴いますが、痛みのピークは痛風よりはやや緩やかで、持続期間も長い傾向があります。
痛風による膝の痛みの特徴的な症状
痛風が膝に発症した場合、他の原因による膝の痛みとは異なる、いくつかの特徴的な症状が現れます。
これらの症状を知ることは、ご自身の状態を把握し、早期に適切な対応をとる上で役立ちます。ここでは、痛風による膝の痛みに見られる具体的な症状について詳しく見ていきましょう。
突然始まる激しい痛み
痛風による膝の痛みの最大の特徴は、「何の前触れもなく、突然始まる激しい痛み」です。
多くの人が「風が当たっただけでも痛い」と表現するほどの耐えがたい痛みで、夜中から明け方にかけて発症することが多い傾向にあります。
痛みは非常に強く、膝を少し動かすことも、体重をかけることも困難になります。この痛みは発症から24時間以内にピークに達し、日常生活に大きな支障をきたします。
膝の腫れ、熱感、赤み
激しい痛みと同時に、膝関節が大きく腫れ上がります。これは、関節内で強い炎症が起きているサインです。
患部を触ると熱っぽく感じられ(熱感)、皮膚が赤みを帯びる(発赤)のも典型的な症状です。これらの炎症症状は、膝関節全体に広がり、見た目にも明らかに異常がわかるほどになります。
痛風発作時の膝の状態
症状 | 具体的な状態 |
---|---|
疼痛(痛み) | 突発的で耐えがたい激痛 |
腫脹(腫れ) | 関節がパンパンに腫れ上がる |
熱感 | 患部が熱を持つ |
発赤 | 皮膚が赤くなる |
症状が現れやすい時間帯と期間
前述の通り、痛風発作は夜間から早朝にかけての時間帯に起こりやすいとされています。
これは、就寝中は水分が不足しがちで血液が濃縮され、尿酸値が一時的に上昇することや、体温の低下などが関係していると考えられています。
発作による激しい症状は、通常1週間から10日ほどで自然に軽快していきます。
しかし、これは炎症が一時的に治まっただけであり、根本的な原因である高尿酸血症が改善されたわけではありません。
放置すると、発作を繰り返す間隔が短くなり、症状も重くなっていく可能性があります。
痛風結節が膝にできる場合
高尿酸血症の状態が長期間続くと、関節内だけでなく、皮下組織にも尿酸塩の結晶が沈着し、「痛風結節」と呼ばれるコブのようなものができることがあります。
膝の周辺では、膝蓋骨(お皿の骨)の上や、アキレス腱の付け根などにできやすいです。
痛風結節自体には通常痛みはありませんが、大きくなると関節の動きを妨げたり、皮膚を破って白いチョーク状の尿酸塩が出てきたりすることもあります。
痛風結節の存在は、病気が慢性化している証拠です。
膝の痛み「痛風」と「変形性膝関節症」の症状比較
膝の痛みを訴える方の中で、特に鑑別が重要になるのが「痛風」と「変形性膝関節症」です。この二つの病気は、症状の現れ方や痛みの性質に違いがあります。
その違いを理解することで、ご自身の症状がどちらに近いのかを考える手がかりになります。ここでは、両者の症状を項目ごとに比較し、その違いを明確にします。
痛みの始まり方の違い
最も大きな違いは、痛みの始まり方です。痛風は、前述の通り「ある日突然」激痛が襲ってくるのが特徴です。
昨日まで何ともなかったのに、朝起きたら歩けないほどの痛みが出ている、というケースが典型的です。
一方、変形性膝関節症の痛みは、もっと緩やかに始まります。
初期の段階では、「立ち上がる時に少し痛む」「階段を下りる時だけ違和感がある」といった軽い症状から始まり、数ヶ月から数年という長い時間をかけて徐々に痛みが強くなっていくのが一般的です。
痛みの発生様式の比較
項目 | 痛風 | 変形性膝関節症 |
---|---|---|
発生 | 急激・突発的 | 緩徐・慢性的 |
きっかけ | 明確なきっかけがないことが多い | 特定の動作(歩行、階段など) |
痛みの性質と持続期間
痛みの性質も異なります。痛風の痛みは、炎症による「燃えるような」「刺すような」鋭い痛みです。安静にしていてもズキズキと痛み、夜も眠れないほどの激痛が続きます。
この激しい痛みは数日間続き、その後1〜2週間で嘘のように消えていく(寛解する)のが特徴です。
変形性膝関節症の痛みは、「重だるい」「鈍い」と表現されることが多く、主に膝を動かした時に感じます。
安静にしていると痛みは和らぎますが、再び動き出すと痛むという状態を繰り返します。痛みが完全に消えることは少なく、天候や体調によって痛みの強さが変動しながら、慢性的に持続します。
腫れや赤みの現れ方
痛風発作では、激しい痛みとともに、膝がパンパンに腫れ上がり、赤みと熱感を伴います。これは急性の強い炎症反応の現れです。
一方、変形性膝関節症でも膝が腫れることはありますが、これは「水が溜まる」状態(関節水腫)が主で、痛風ほどの強い赤みや熱感を伴うことは稀です。
腫れの程度も、痛風の方がより顕著である場合が多いです。
- 痛風:腫れ(強)、赤み(有)、熱感(有)
- 変形性膝関節症:腫れ(水腫)、赤み(稀)、熱感(軽度または無)
レントゲン検査でわかること
レントゲン(X線)検査でも、両者には違いが見られます。
変形性膝関節症では、関節の隙間が狭くなっている(軟骨の摩耗)、骨の棘(骨棘)ができている、骨が硬くなっている(骨硬化)といった、加齢に伴う典型的な変化が確認できます。
一方、痛風の場合、発作を繰り返していない初期の段階では、レントゲン検査で異常が見られないことがほとんどです。
しかし、病気が進行し、慢性化すると、尿酸塩結晶によって骨が侵食され、「骨びらん」と呼ばれる、骨の一部が削り取られたような特徴的な像が見られることがあります。
医療機関で行う膝の痛みの診断方法
膝の痛みの原因を正確に特定し、適切な治療を開始するためには、医療機関での正しい診断が必要です。
自己判断で市販の鎮痛薬を使い続けると、根本的な原因の解決にならなかったり、病状を悪化させてしまったりする可能性があります。
ここでは、整形外科などの医療機関で一般的に行われる診断の流れを紹介します。
問診と身体診察
診断の第一歩は、医師による問診と身体診察です。問診では、以下のような内容を詳しく伝えると、診断の助けになります。
- いつから、どのように痛み始めたか
- 痛みの強さや性質(ズキズキ、ジンジンなど)
- どのような時に痛みが強くなるか
- 過去に同じような症状があったか
- 健康診断での尿酸値の指摘の有無
- 食生活や飲酒の習慣
身体診察では、医師が膝を直接見て、触れて、動かして、腫れや熱感、赤みの有無、痛みの場所、関節の動きの範囲などを確認します。
これらの情報から、痛風、変形性膝関節症、関節リウマチなど、考えられる病気を絞り込んでいきます。
血液検査による尿酸値の測定
痛風が疑われる場合、血液検査で血清尿酸値を測定します。一般的に、血清尿酸値が7.0mg/dLを超えていると「高尿酸血症」と判断され、痛風である可能性が高まります。
ただし、注意が必要なのは、痛風発作の真っ最中には、炎症反応の影響で一時的に尿酸値が正常範囲内に下がることがある点です。
そのため、発作時の尿酸値だけで痛風を否定することはできません。症状が治まってから再度測定することが重要です。
血液検査の主な項目
検査項目 | 目的 | 痛風が疑われる場合の所見 |
---|---|---|
血清尿酸値 | 高尿酸血症の有無を確認 | 7.0mg/dLを超えることが多い |
CRP、白血球数 | 炎症の程度を確認 | 発作時に上昇する |
関節液検査の重要性
痛風の確定診断において最も重要なのが、関節液検査です。これは、腫れている膝関節に注射針を刺して関節液を少量採取し、それを顕微鏡で観察する検査です。
この検査で、関節液の中に特徴的な針状の尿酸塩結晶が確認されれば、痛風であると確定できます。
また、この検査は偽痛風との鑑別にも極めて有用です。
偽痛風の場合は、ピロリン酸カルシウムの結晶(長方形や菱形)が観察されます。
痛みが強く、検査に不安を感じる方もいるかもしれませんが、診断を確定し、最適な治療法を選択するために非常に価値のある検査です。
画像検査(レントゲン・超音波)
画像検査も診断の補助として行われます。レントゲン検査は、前述の通り、骨の変形や骨びらんの有無を確認し、変形性膝関節症など他の病気との鑑別に役立ちます。
また、近年では超音波(エコー)検査の有用性が注目されています。
超音波検査では、レントゲンには映らない軟骨の表面に付着した尿酸塩結晶(double contour sign)や、関節内の炎症の程度をリアルタイムで観察することができ、痛風の早期診断に貢献します。
膝の痛みに対する治療法の違い
膝の痛みの原因が異なれば、当然ながら治療法も変わってきます。痛風、変形性膝関節症、偽痛風では、それぞれ治療の目標と用いる薬が異なります。
原因に合った適切な治療を受けることが、症状の改善と再発予防への近道です。ここでは、それぞれの病気に対する主な治療法について解説します。
痛風発作時の薬物療法
痛風発作による激しい膝の痛みに対しては、まず炎症を強力に抑え、痛みを取り除くことが最優先されます。
この時期に尿酸値を下げる薬を始めると、かえって痛みを悪化させることがあるため使用しません。
- 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs):炎症と痛みを抑える基本の薬です。
- コルヒチン:白血球の働きを抑えて炎症を防ぐ薬。発作のごく初期や予兆期に有効です。
- ステロイド:炎症を抑える作用が非常に強力です。NSAIDsが使えない場合や、効果が不十分な場合に内服や関節内注射で用います。
痛風発作治療薬の選択
薬剤の種類 | 主な作用 | 使用のタイミング |
---|---|---|
NSAIDs | 炎症・痛みを抑える | 発作中 |
コルヒチン | 炎症反応を抑制 | 発作の予兆期・ごく初期 |
ステロイド | 強力な抗炎症作用 | NSAIDsが禁忌・無効の場合 |
痛風の根本治療(尿酸値を下げる治療)
痛風発作の痛みが治まった後、再発を防ぐための根本的な治療を開始します。これが尿酸降下薬による薬物療法です。
高尿酸血症を放置すると、関節の破壊や腎機能の低下につながるため、継続的な治療が重要です。
薬には、尿酸の生成を抑える薬と、尿酸の排泄を促す薬の2種類があり、患者さんの状態に合わせて選択します。治療の目標は、血清尿酸値を6.0mg/dL以下にコントロールすることです。
この治療は、生活習慣の改善と並行して行います。
変形性膝関節症の治療
変形性膝関節症の治療は、痛みのコントロールと機能改善が中心となります。
治療の基本は、運動療法(筋力トレーニングやストレッチ)と体重管理です。
薬物療法としては、痛みや炎症を和らげるために、湿布や塗り薬、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の内服薬、ヒアルロン酸の関節内注射などが行われます。
これらの保存的治療で改善が見られない場合には、手術(骨切り術や人工膝関節置換術)が検討されることもあります。
偽痛風の治療
偽痛風の急性関節炎に対する治療は、痛風発作の治療と似ています。非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を用いて痛みと炎症を抑えます。
痛みが強い場合や、関節に水がたくさん溜まっている場合には、関節液を抜いた後、ステロイドを関節内に注射すると劇的に症状が改善することがあります。
残念ながら、現在のところ、偽痛風の原因であるピロリン酸カルシウム結晶を溶かしたり、沈着を予防したりする根本的な治療薬はありません。
そのため、治療は症状が現れた時に炎症を抑える対症療法が中心となります。
痛風による膝の痛みを予防・改善する生活習慣
痛風による膝の痛みの治療において、薬物療法と並行して非常に重要なのが生活習慣の見直しです。
日々の暮らしの中の少しの心がけが、尿酸値をコントロールし、痛風発作の再発を予防することにつながります。ここでは、今日から始められる具体的な生活習慣の改善点について紹介します。
食生活の見直しとプリン体の摂取
尿酸はプリン体から作られるため、プリン体を多く含む食品の過剰な摂取は避ける必要があります。
ただし、食事から摂取されるプリン体よりも体内で作られるプリン体の方が多いため、過度に神経質になる必要はありません。バランスの良い食事を心がけることが基本です。
プリン体を多く含む食品の例
分類 | 具体的な食品名 |
---|---|
肉類 | レバー類(鶏・豚・牛)、白子 |
魚介類 | 干物(マイワシ、アジ)、エビ、イワシ、カツオ |
その他 | ビール、干し椎茸 |
また、野菜や海藻類は尿をアルカリ性に傾け、尿酸を尿に溶けやすくして排泄を助ける働きがあります。これらの食品を積極的に食事に取り入れることも大切です。
適度な水分補給の重要性
尿酸は尿と一緒に排出されるため、尿の量を増やすことが尿酸値の低下につながります。そのためには、十分な水分補給が重要です。
1日あたり2リットルを目安に、水やお茶(糖分の入っていないもの)をこまめに飲むように心がけましょう。
特に、汗をかきやすい夏場や運動時は、意識して水分を摂ることが必要です。このことにより、尿路結石の予防にもなります。
運動習慣と肥満の解消
肥満、特に内臓脂肪の増加は、尿酸の産生を促進し、排泄を低下させることがわかっています。肥満を解消することは、尿酸値を改善する上で非常に効果的です。
ただし、急激な減量や激しい無酸素運動は、かえって尿酸値を上昇させ、痛風発作の引き金になることがあるため注意が必要です。
推奨されるのは、ウォーキングやジョギング、水泳などの軽めの有酸素運動です。少し汗ばむ程度の運動を、1日30分程度、週に3回以上続けることを目標にしましょう。
継続的な運動は、肥満解消だけでなく、ストレス軽減や全体的な健康増進にもつながります。
アルコール摂取に関する注意点
アルコールは、それ自体が尿酸値を上げる作用を持っています。アルコールが体内で分解される際に尿酸が作られるだけでなく、腎臓からの尿酸の排泄を妨げる働きもあるためです。
特にビールはプリン体を多く含むため注意が必要ですが、プリン体の含有量が少ない焼酎やウイスキーなどであっても、アルコールである以上は飲み過ぎれば尿酸値を上昇させます。
休肝日を設け、適量を守ることが大切です。
膝の痛みと痛風に関するよくある質問
最後に、膝の痛みと痛風に関して、多くの方が疑問に思う点についてお答えします。ご自身の状況と照らし合わせながら、理解を深めるためにお役立てください。
膝の痛風は足の指の痛風と何が違いますか?
痛風が起こる根本的な原因(尿酸塩結晶の沈着)は、膝でも足の指でも同じです。したがって、治療の基本方針も変わりません。
ただし、膝は足の指に比べて大きな関節であるため、腫れや痛みの範囲がより広範囲に及ぶことがあります。
このため、歩行など日常生活への影響がより大きくなる傾向があります。また、変形性膝関節症など、他の膝の病気との区別がより重要になる点も特徴と言えます。
尿酸値が高ければ必ず膝が痛くなりますか?
いいえ、必ずしもそうではありません。血液中の尿酸値が高い「高尿酸血症」の状態であっても、痛みなどの自覚症状が全くない人はたくさんいます。
痛風発作は、高尿酸血症が続いた結果として起こる関節の炎症です。しかし、症状がないからといって高尿酸血症を放置して良いわけではありません。
症状がなくても、尿酸値が高い状態は腎臓や血管に負担をかけ続けるため、将来の痛風発作や他の生活習慣病を予防するためにも、医師の指導のもとで適切な管理を行うことが重要です。
膝の痛風は自然に治りますか?
痛風発作による膝の激しい痛みや腫れは、治療をしなくても1週間から10日ほどで自然に軽快することが多いです。
しかし、これはあくまで一時的に炎症が治まっただけで、病気の根本原因である高尿酸血症が治ったわけではありません。
適切な治療や生活習慣の改善を行わずに放置すると、ほぼ確実に発作を繰り返します。
発作を繰り返すうちに、関節の破壊が進んだり、腎機能が悪化したりするリスクが高まるため、「痛みが引いたから治った」と自己判断せず、必ず医療機関を受診してください。
鎮痛薬を飲んでも膝の痛みが治まりません。どうすれば良いですか?
市販の鎮痛薬を服用しても痛みが改善しない場合、いくつかの可能性が考えられます。まず、痛風発作の炎症が非常に強く、市販薬では効果が不十分な場合があります。
また、痛みの原因が痛風ではなく、変形性膝関節症や偽痛風、あるいは感染症など他の病気である可能性も考えなくてはなりません。
いずれにせよ、痛みが続く場合は自己判断で様子を見ず、できるだけ早く整形外科などの専門医を受診し、正確な診断と原因に応じた適切な治療を受けることを強く推奨します。
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