足立慶友医療コラム

膝の関節が痛む原因|症状と受診のタイミング

2025.10.20

立ち上がる、歩く、階段を上り下りするなど、日常のあらゆる動作で重要な役割を担う膝。この膝の関節に痛みを感じると、生活の質が大きく低下してしまうことがあります。

多くの方が「年のせいだから」と諦めてしまうこともありますが、その痛みの背景には様々な原因が隠れている可能性があります。

痛みの原因を正しく理解し、ご自身の状態を知ることは、適切な対処への第一歩です。

この記事では、膝の関節がなぜ痛むのか、その原因から考えられる症状、そしてどのようなタイミングで医療機関を受診すべきかについて、分かりやすく解説していきます。

ご自身の膝と向き合い、健やかな毎日を取り戻すための一助となれば幸いです。

膝の関節の基本的な構造

私たちの体重を支え、スムーズな歩行を可能にする膝関節は、非常に精巧なつくりをしています。

この部分の構造を理解することは、なぜ痛みが生じるのかを知る上でとても重要です。骨や軟骨、靭帯などがそれぞれ協調して働くことで、膝は安定性と柔軟性を両立させています。

膝関節を構成する主な骨

膝関節は、主に3つの骨で構成されています。太ももの骨である「大腿骨(だいたいこつ)」、すねの骨である「脛骨(けいこつ)」、そしてお皿の骨として知られる「膝蓋骨(しつがいこつ)」です。

これらの骨が組み合わさり、蝶番(ちょうつがい)のような動きをすることで、膝の曲げ伸ばしが可能になります。

骨の表面は、次にご説明する関節軟骨で覆われており、骨同士が直接ぶつかるのを防いでいます。

衝撃を吸収する関節軟骨

関節軟骨は、大腿骨と脛骨の先端、そして膝蓋骨の裏側を覆っている、弾力性のある滑らかな組織です。厚さは3〜5ミリ程度で、ガラスのようにツルツルしています。

この軟骨がクッションの役割を果たし、歩行や走行時にかかる衝撃を和らげます。

また、関節が滑らかに動くための潤滑油のような役割も担っており、摩擦を減らすことでスムーズな動きを支えています。

軟骨には血管や神経がないため、一度すり減ると自然に元に戻ることは難しいという特徴があります。

膝関節を構成する組織と主な機能

組織名主な位置主な機能
大腿骨・脛骨・膝蓋骨太もも・すね・膝のお皿関節の基本的な骨格を形成
関節軟骨骨の表面衝撃吸収と関節の滑らかな動きを補助
半月板大腿骨と脛骨の間クッション機能と安定性の向上

関節を安定させる靭帯と半月板

膝関節の安定性は、骨だけでは保てません。骨と骨とをつなぎ、関節がグラグラしないように固定しているのが「靭帯(じんたい)」です。

膝には主に4つの主要な靭帯があり、前後左右の安定性を高めています。一方、「半月板(はんげつばん)」は、大腿骨と脛骨の間にあるC型をした軟骨組織で、内側と外側に1つずつあります。

これもまたクッションとしての役割を持ち、関節への負荷を分散させるとともに、関節の適合性を高めて安定させる働きをします。

膝を動かす筋肉の重要性

膝関節の動きと安定性には、周辺の筋肉も深く関わっています。

特に、太ももの前側にある「大腿四頭筋(だいたいしとうきん)」や、裏側にある「ハムストリングス」は、膝の曲げ伸ばしをコントロールし、関節にかかる負担を軽減する重要な筋肉です。

これらの筋肉が衰えると、関節軟骨や半月板への負担が増加し、痛みの原因となることがあります。日頃から適度な運動で筋力を維持することが、膝の健康を守る上で大切です。

膝の関節が痛む代表的な原因

膝の痛みを引き起こす原因は一つではありません。

加齢に伴う自然な変化から、日常生活の習慣、スポーツによる怪我、あるいは何らかの病気が潜んでいる場合まで、その背景は多岐にわたります。

ご自身の痛みが何に由来するのか、可能性を探ることが大切です。

加齢による関節組織の変化

年齢を重ねると、体の様々な部分に変化が現れます。膝関節も例外ではありません。

長年にわたって膝を使い続けることで、衝撃を吸収してきた関節軟骨が徐々に弾力性を失い、すり減っていきます。

また、関節の動きを滑らかにする関節液の分泌が減少したり、膝を支える筋力が低下したりすることも、痛みを引き起こす一因となります。

これらは誰にでも起こりうる自然な変化ですが、進行すると痛みが慢性化することがあります。

体重増加による膝への負担

膝関節は、立っているだけでも体重を支え続けています。歩くときには体重の約3倍、階段の上り下りでは約7倍もの負荷がかかるといわれています。

そのため、体重が増加すると、その分だけ膝への負担も大きくなります。過度な負荷は関節軟骨の摩耗を早め、炎症を引き起こす原因となります。

適正体重を維持することは、膝の健康にとって非常に重要です。

膝の痛みの原因となりうる病気

病名主な特徴好発年齢
変形性膝関節症軟骨がすり減り、骨が変形する中高年以降
関節リウマチ関節に炎症が起き、腫れや痛みが続く30代~50代の女性に多い
半月板損傷膝のひっかかり感や、動かせなくなるスポーツ選手や若年層

スポーツや事故による外傷

スポーツ活動中や交通事故などで膝に強い力が加わることで、靭帯や半月板、軟骨などを損傷することがあります。

例えば、急な方向転換やジャンプの着地時に靭帯を痛める「靭帯損傷」や、膝をひねることで「半月板損傷」が起こります。

これらの外傷は、強い痛みや腫れ、関節の不安定感を伴うことが多く、適切な処置をしないと後遺症が残る可能性もあります。

関節の炎症を引き起こす病気

膝の痛みは、関節そのものの病気が原因で生じることもあります。代表的なものが「変形性膝関節症」で、加齢や肥満などを背景に関節軟骨がすり減り、炎症や骨の変形を引き起こします。

また、免疫システムの異常によって関節に炎症が起こる「関節リウマチ」も、膝の痛みや腫れ、こわばりの原因となります。

その他、細菌感染による「化膿性関節炎」や、尿酸の結晶が関節にたまる「痛風」なども、激しい膝の痛みを引き起こすことがあります。

年代によって異なる膝の痛みの原因

膝の痛みを訴える理由は、年代によって一定の傾向が見られます。

若いうちはスポーツなどによる怪我が多く、年齢が上がるにつれて、長年の使用による摩耗や、関節の病気が主な原因となることが増えてきます。

ご自身の年代と照らし合わせて、痛みの原因を考えてみましょう。

10代~20代に多い膝の痛み

この年代では、部活動やスポーツでの過度な運動が原因となるケースが目立ちます。成長期特有の「オスグッド・シュラッター病」は、膝のお皿の下の骨が突き出て痛むのが特徴です。

また、ランニングやジャンプ動作の繰り返しによる「ジャンパー膝(膝蓋腱炎)」や、太ももの外側の靭帯が膝の外側で擦れることで炎症を起こす「腸脛靭帯炎(ランナー膝)」なども、この年代によく見られます。

スポーツ中の怪我による半月板損傷や靭帯損傷も少なくありません。

年代別の主な膝痛の原因

年代主な原因具体例
若年層(10~20代)スポーツ障害・外傷オスグッド病、ジャンパー膝、半月板損傷
中年層(30~50代)初期の変性、外傷、生活習慣変形性膝関節症(初期)、関節リウマチ
高齢層(60代以上)加齢に伴う変性疾患変形性膝関節症(進行期)

30代~50代に見られる膝の痛み

働き盛りのこの年代では、過去のスポーツ歴や体重増加、運動不足などが影響し始めます。初期の「変形性膝関節症」が始まる人もいます。

また、女性では30代以降に「関節リウマチ」を発症することがあります。

日常生活で特に無理をした覚えがなくても、階段の上り下りや長時間の立ち仕事で痛みを感じるようであれば、関節に何らかの変化が起きているサインかもしれません。

60代以降に特徴的な膝の痛み

この年代になると、多くの場合、痛みの主な原因は「変形性膝関節症」です。長年の負担によって関節軟骨がすり減り、骨が変形することで、慢性的な痛みや関節の動かしにくさが生じます。

初期は動き始めに痛む程度ですが、進行すると安静にしていても痛むようになり、歩行が困難になることもあります。

痛みのために活動量が減ると、筋力がさらに低下し、症状が悪化するという悪循環に陥りやすいのも特徴です。

注意すべき膝の痛み以外のサイン

膝の痛みだけでなく、同時に現れる他の症状にも注意を向けることが、膝の状態を正確に把握するために役立ちます。

腫れや動かしにくさ、特定の音など、痛み以外のサインは、原因を特定する上で重要な手がかりとなります。

膝の腫れや熱を持っている感覚

膝が腫れている、あるいは触ると熱い感じがする場合、関節の内部で炎症が起きている可能性が高いです。

炎症が起こると、関節を包む膜から関節液が過剰に分泌され、いわゆる「膝に水がたまる」状態(関節水腫)になります。

これは、変形性膝関節症の悪化や、関節リウマチ、靭帯損傷、感染症など、様々な原因で起こり得ます。痛みに加えて腫れや熱感が続く場合は、早めに専門医に相談することが望ましいです。

症状から推測される膝の状態

症状考えられる主な状態補足
腫れ・熱感関節内の炎症変形性膝関節症、関節リウマチ、外傷など
可動域制限関節の変形、組織の損傷正座ができない、膝が完全に伸びないなど
不安定感・膝折れ靭帯の損傷、筋力低下歩行中に急に膝がガクッとなる感覚

膝の曲げ伸ばしがしにくい

「正座ができない」「膝が最後まで伸びない」といった症状は、関節の可動域が制限されている状態です。

これは、変形性膝関節症の進行によって骨の形が変わったり(骨棘形成)、損傷した半月板が関節の間に挟まったりすることで生じます。

また、長期間痛みを避けるために膝を動かさないでいると、関節が固まって動きにくくなることもあります(拘縮)。

  • 急に膝が腫れてきた
  • 膝を完全に伸ばせない
  • 歩くと膝がグラグラする
  • 特定の動きで音が鳴る

歩行時のぐらつきや膝が抜ける感覚

歩いているときに、急に膝がガクッと折れるような感覚(膝折れ)や、自分の意思とは関係なく膝がぐらつく感じがする場合、関節を支える靭帯が損傷しているか、筋力が著しく低下している可能性があります。

特に前十字靭帯を損傷すると、この不安定感が顕著に現れます。このような症状は転倒のリスクを高め、さらなる怪我につながる危険性があるため、注意が必要です。

膝を動かしたときに聞こえる音

膝を曲げ伸ばししたときに、「ポキポキ」「ギシギシ」「ゴリゴリ」といった音がすることがあります。痛みを伴わない音の多くは、生理的なもので心配ないことが多いです。

しかし、痛みを伴う場合や、以前は鳴らなかった音がするようになった場合は、関節軟骨がすり減って骨同士がこすれていたり、半月板が傷ついていたりするサインかもしれません。

特に、ひっかかり感と共に音がする場合は注意が必要です。

自分でできる膝の痛みの初期対応

急な膝の痛みや、軽い痛みを感じ始めたとき、すぐに医療機関へ行けない場合もあるでしょう。

そのようなとき、ご自身でできる対処法を知っておくことは、症状の悪化を防ぎ、痛みを和らげる助けになります。

ただし、これらはあくまで一時的な対応であり、根本的な解決ではないことを理解しておくことが大切です。

安静にして冷やす(アイシング)

スポーツで膝を痛めた直後や、急に膝が腫れて熱を持っているような急性期の痛みには、まず安静を保ち、患部を冷やすことが基本です。

氷のうや保冷剤などをタオルで包み、15〜20分程度、痛む部分に当てます。これにより、炎症を抑え、腫れや痛みを軽減する効果が期待できます。

冷やしすぎると凍傷の恐れがあるので、感覚がなくなったら一度中断し、時間をおいてから再び冷やすようにしてください。

膝の痛みを和らげるセルフケアのポイント

対処法目的注意点
安静・アイシング炎症を抑え、痛みを軽減急性期(腫れ・熱がある場合)に有効
生活習慣の改善膝への負担を減らす体重管理、和式から洋式の生活へ
ストレッチ・筋トレ柔軟性と安定性の向上痛みが強いときは無理に行わない

膝に負担の少ない生活を心がける

日常生活の動作を見直すことも、膝の負担軽減につながります。できるだけ階段の使用を避け、エレベーターやエスカレーターを利用しましょう。

床に座る、正座をするといった和式の生活は膝に大きな負担をかけるため、椅子やベッドを使用する洋式の生活スタイルに切り替えることをお勧めします。

また、重い荷物を持つことは避け、荷物はカートを利用するなど工夫をしましょう。

サポーターや杖の利用

膝用のサポーターを装着すると、関節のぐらつきを抑え、安定感を高めることができます。このことにより、歩行時の安心感が得られ、痛みの軽減にもつながります。

様々な種類のサポーターがありますので、ご自身の症状に合ったものを選ぶと良いでしょう。また、痛みが強く歩行が不安定な場合は、杖を使用することも有効です。

痛い方の膝とは反対側の手で杖を持つと、患部への負担を大きく減らすことができます。

痛みのない範囲での運動

痛みが強い時期は安静が第一ですが、症状が落ち着いてきたら、痛みのない範囲で少しずつ膝を動かすことが大切です。

特に、膝を支える太ももの筋肉(大腿四頭筋)を鍛える運動は、膝の安定性を高め、再発予防に役立ちます。

椅子に座って膝をゆっくり伸ばす運動や、仰向けに寝て足を伸ばしたまま少し持ち上げる運動などが効果的です。

運動前には、筋肉の柔軟性を高めるストレッチを行うことも忘れないようにしましょう。

医療機関を受診すべきタイミング

膝の痛みを感じたとき、多くの人が「このくらいで病院に行くべきか」と迷うものです。しかし、受診が遅れることで症状が悪化してしまうケースも少なくありません。

ここでは、専門医への相談を検討すべき具体的なサインについて解説します。適切なタイミングで受診することが、早期回復への鍵となります。

市販の湿布や薬で痛みが改善しない

軽い痛みであれば、市販の湿布薬や鎮痛薬で一時的に症状が和らぐことがあります。

しかし、これらを数日間使用しても痛みが全く改善しない、あるいは使用をやめるとすぐに痛みがぶり返すような場合は、セルフケアで対応できる範囲を超えている可能性があります。

痛みの根本的な原因が解決されていないため、専門的な診断が必要です。

日常生活の動作に支障が出始めた

「階段の上り下りがつらい」「歩くのが億劫になった」「痛みで夜中に目が覚める」など、膝の痛みが原因で以前は普通にできていたことが困難になった場合、それは明確な受診のサインです。

生活の質(QOL)が低下している状態を放置すると、活動量が減り、全身の健康状態にも悪影響を及ぼす可能性があります。

受診を検討すべき症状のチェックリスト

項目受診の目安
痛みの強さ我慢できないほどの激しい痛みがある
見た目の変化明らかに腫れている、赤くなっている、変形している
機能的な問題体重をかけられない、膝が動かない、歩けない

明らかな怪我をした場合

スポーツ中や転倒など、はっきりとした原因で膝を痛めた場合は、すぐに整形外科を受診してください。

骨折や脱臼はもちろん、靭帯や半月板の損傷は、外見からは判断が難しく、放置すると後遺症につながることがあります。

特に、受傷直後に「ブチッ」という断裂音を感じた場合や、関節が明らかに不安定な場合は、重度の損傷が疑われます。

膝の変形や強い腫れが見られる

膝が目に見えて変形してきた(O脚やX脚が進行した)、あるいはパンパンに腫れて熱を持っている場合も、速やかな受診が必要です。

関節の変形は変形性膝関節症が進行しているサインであり、強い腫れは関節内部で強い炎症や出血が起きていることを示唆します。これらの症状は、専門的な治療を必要とする状態です。

整形外科で行われる主な診断と検査

整形外科を受診すると、医師は痛みの原因を正確に突き止めるために、いくつかの診察や検査を行います。

どのようなことが行われるのかを事前に知っておくことで、安心して診察に臨むことができるでしょう。ここでは、一般的に行われる診断の流れと検査内容について説明します。

問診と視診・触診

診察は、まず患者さんから詳しい話を聞く「問診」から始まります。

「いつから、どこが、どのように痛むのか」「どのような時に痛みが強くなるか」「過去に怪我をしたことがあるか」など、具体的な情報が診断の手がかりとなります。

次に、医師が膝の状態を直接見て、触って調べる「視診・触診」を行います。

腫れや熱感の有無、押して痛む場所、関節の可動域、ぐらつきがないかなどを丁寧に確認し、痛みの原因となっている部位を絞り込んでいきます。

膝の検査方法とその目的

検査方法主な目的この検査で分かること
レントゲン検査骨の状態を確認する骨折、骨の変形、軟骨のすり減り具合
MRI検査軟部組織(靭帯、半月板など)を詳しく見る靭帯損傷、半月板損傷、軟骨の状態
超音波(エコー)検査関節内の水や炎症の状態をリアルタイムで見る関節水腫の有無、靭帯や腱の炎症

骨の状態を確認するレントゲン(X線)検査

レントゲン検査は、骨の状態を調べるための基本的な画像検査です。

骨折の有無や、変形性膝関節症に特徴的な骨の変形(骨棘)、関節の隙間の狭小化(軟骨のすり減り具合)などを評価することができます。

通常、立った状態で体重をかけたときの膝の状態も撮影し、負荷がかかったときの関節の状態を詳しく調べます。

軟部組織を詳しく見るMRI検査

レントゲンでは写らない軟骨や半月板、靭帯、筋肉といった軟部組織の状態を詳しく調べるために、MRI検査が行われることがあります。

磁気と電波を使って体内の断面を撮影する検査で、特にスポーツ外傷による半月板損傷や靭帯損傷の診断に非常に有効です。

また、レントゲンでは分かりにくい初期の骨の変化を捉えることも可能です。

その他の検査(超音波、関節液検査など)

超音波(エコー)検査は、リアルタイムで関節内部の状態を観察できる手軽な検査です。膝に水がたまっているか(関節水腫)、滑膜という組織に炎症が起きていないかなどを確認できます。

また、関節に水がたまっている場合、原因を調べるために注射器で関節液を抜いて調べる「関節穿刺・関節液検査」を行うこともあります。

関節液の色や濁り、含まれる成分を調べることで、痛風や感染症などの診断に役立ちます。

膝の関節の痛みに関するよくある質問

ここでは、膝の痛みに関して多くの方が抱く疑問についてお答えします。セルフケアや日常生活での注意点など、日々の暮らしに役立つ情報として参考にしてください。

痛いときは温めるべきですか?冷やすべきですか?

どちらが良いかは、痛みの状態によって異なります。怪我の直後や、急に腫れて熱を持っているような「急性期」の痛みには、炎症を抑えるために冷やす(アイシング)のが基本です。

一方、腫れや熱がなく、動かすと痛むような慢性的な痛みには、血行を促進して筋肉の緊張を和らげるために温める(温熱療法)方が効果的な場合があります。

入浴などで温めると痛みが和らぐようであれば、温めてみると良いでしょう。

ただし、温めて痛みが強くなる場合は中止してください。判断に迷う場合は、自己判断せず専門医に相談することをお勧めします。

サプリメントは膝の痛みに効果がありますか?

グルコサミンやコンドロイチン、ヒアルロン酸といった成分を含むサプリメントが、膝の健康維持を目的として市販されています。

これらの成分はもともと体内に存在する軟骨の構成成分ですが、サプリメントとして摂取した場合の効果については、医学的にはまだ明確な結論が出ていないのが現状です。

一部の方で痛みが和らいだという報告もありますが、すべての人に同様の効果があるとは限りません。治療の基本は、適切な診断のもとで行う運動や生活習慣の改善です。

サプリメントはあくまで補助的なものと考え、過度な期待はせず、利用する場合は主治医に相談の上で検討するのが良いでしょう。

膝の痛みを予防するためにどんな運動が良いですか?

膝の痛みを予防・改善するためには、膝に過度な負担をかけずに周囲の筋力を強化することが重要です。特におすすめなのが、水中ウォーキングや水泳です。

水中では浮力によって膝への負担が大幅に軽減されるため、痛みがある方でも安全に筋力トレーニングや有酸素運動ができます。陸上で行う場合は、自転車こぎも膝への負担が少ない運動です。

また、太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)を鍛えることは、膝の安定性を高める上で非常に効果的です。

椅子に座って片脚をゆっくりと伸ばし、数秒間保持してから下ろす、といった簡単な運動を毎日続けることが大切です。

痛みがあっても少しは歩いた方が良いのでしょうか?

痛みの程度によります。強い痛みや腫れがあるときに無理に歩くと、症状を悪化させる可能性があります。そのような場合は、まず安静を優先してください。

痛みが少し落ち着いてきたら、痛みの出ない範囲で少しずつ歩くことは、筋力の低下を防ぎ、関節が固まるのを予防するために有益です。

ただし、長距離を歩いたり、痛みを我慢してまで歩き続けたりするのは避けるべきです。

杖を使用するなどして膝への負担を減らしながら、無理のない範囲で日常生活を送ることが、回復への近道となります。

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Author

北城 雅照

医療法人社団円徳 理事長
医師・医学博士、経営心理士

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