膝関節サプリメントの選び方 – 医師による解説
膝の痛みは、多くの方にとって活動的な日常を妨げるつらい悩みです。歩行や階段の上り下りといった基本的な動作でさえ、痛みを感じると生活の質は大きく低下します。
このような悩みを抱える中で、少しでも症状を和らげたいと願い、膝関節サプリメントに関心を持つ方は少なくありません。
市場には多種多様な製品があふれており、「どの成分が自分に必要なのか」「何を基準に選べば良いのか」と迷うこともあるでしょう。
この記事では、医師の視点から、膝関節サプリメントの成分に関する基本的な知識、ご自身に合った製品を選ぶための具体的なポイント、そして安全に利用するための注意点などを論理的に解説します。
目次
はじめに:膝の痛みとサプリメントへの期待
膝の不調は、年齢と共に多くの人が経験する身近な問題です。その原因はさまざまですが、多くの場合、関節軟骨のすり減りが関係しています。
ここでは、なぜ多くの方が膝の悩みを抱え、その解決策の一つとしてサプリメントに期待を寄せるのか、その背景から解説します。
多くの人が抱える膝の悩み
立ち上がる時、歩き始める時、または階段を使う時に膝に違和感や痛みを覚えることはありませんか。
このような症状は、加齢、体重の増加、運動による負担などが原因で、膝関節の軟骨がすり減ったり、関節を覆う組織に炎症が起きたりすることで発生します。
特に中高年以降になると、膝の悩みを抱える方の割合は増加する傾向にあります。
この悩みは単なる痛みにとどまらず、外出をためらったり、趣味を諦めたりするなど、精神的な側面にも影響を及ぼすことがあります。
そのため、多くの方が日々の生活の中で手軽に始められる対策を求めています。
サプリメントが注目される理由
医療機関での治療と並行して、あるいは治療を始める前の段階で、自分でできることとしてサプリメントの利用を検討する方が増えています。
ドラッグストアや通信販売で手軽に購入できること、そして医薬品に比べて副作用のリスクが低いというイメージがあることが、注目される大きな理由でしょう。
また、特定の成分を効率良く摂取できる点も魅力です。例えば、食事だけで十分な量のグルコサミンやコンドロイチンを摂ることは簡単ではありません。
サプリメントは、こうした膝の健康維持に役立つとされる成分を、手軽に補う手段として期待されています。
この記事でわかること
この記事を読むことで、膝関節サプリメントに関する正しい知識を体系的に得ることができます。まず、代表的な成分がそれぞれどのような役割を持つのかを理解します。
次に、数ある製品の中からご自身の目的や体の状態に合ったものを選ぶための具体的な基準を学びます。
さらに、サプリメントを効果的に、そして安全に利用するための摂取方法や注意点、医療機関との上手な付き合い方まで、幅広く解説します。
この記事が、あなたのサプリメント選びの一助となることを目指します。
膝関節サプリメントに含まれる代表的な成分
膝関節サプリメントの効果を理解するためには、まず主成分の役割を知ることが重要です。
ここでは、製品によく含まれている代表的な成分を取り上げ、それぞれが膝関節の中でどのような働きをするのかを詳しく見ていきます。
ご自身の膝の状態と照らし合わせながら、どの成分が必要かを考える参考にしてください。
軟骨成分を補うグルコサミン
グルコサミンは、アミノ糖の一種で、体内で軟骨や結合組織を作るための材料となる物質です。
軟骨は関節の骨と骨が直接ぶつからないようにするクッションの役割を果たしていますが、加齢とともにすり減っていきます。
グルコサミンは、この軟骨の主成分であるプロテオグリカンの生成をサポートする働きを持ちます。
サプリメントでグルコサミンを補うことは、すり減った軟骨の修復を助け、関節の健康を維持することにつながると期待されています。
特に、変形性膝関節症の初期段階において、痛みの緩和や関節機能の維持に役立つ可能性を示唆する研究報告があります。
主な軟骨構成成分とその働き
成分名 | 主な働き | 含まれる食品例 |
---|---|---|
グルコサミン | 軟骨の生成をサポートする材料となる | エビ・カニの殻、干しエビ |
コンドロイチン | 軟骨の保水性と弾力性を保つ | 納豆、オクラ、うなぎ |
ヒアルロン酸 | 関節液の主成分で、潤滑油の役割を果たす | 鶏の軟骨、フカヒレ |
保水性と弾力性を支えるコンドロイチン
コンドロイチン(コンドロイチン硫酸)も、軟骨を構成する重要な成分の一つです。ネバネバとした性質を持つムコ多糖類で、軟骨に水分を保持させ、弾力性と柔軟性を与える働きがあります。
この保水能力により、軟骨は衝撃を吸収するクッションとしての機能を果たすことができます。
また、コンドロイチンには軟骨を分解する酵素の働きを抑制する作用もあるとされ、軟骨がすり減るのを防ぐ効果も期待されています。
グルコサミンと一緒に摂取することで、相乗効果が得られると考えられており、多くのサプリメントでこの二つの成分が組み合わせて配合されています。
なめらかな動きを助けるヒアルロン酸
ヒアルロン酸は、関節を包む袋(関節包)の中を満たしている関節液の主成分です。関節液は、関節の動きを滑らかにする潤滑油の役割と、軟骨に栄養を届ける役割を担っています。
ヒアルロン酸は非常に高い保水力を持ち、関節液の粘性を保つことで、これらの機能を支えています。
年齢とともに体内のヒアルロン酸が減少すると、関節液の潤滑作用が低下し、膝の動きがぎこちなくなったり、痛みが生じやすくなったりします。
サプリメントとして経口摂取したヒアルロン酸が、どの程度膝関節に届くかについては様々な研究が行われていますが、皮膚の潤いを保つ効果とともに関節機能への貢献も期待されています。
その他の注目成分
グルコサミン、コンドロイチン、ヒアルロン酸の他にも、膝関節の健康をサポートする成分はいくつかあります。
それぞれの成分が持つ特徴を理解し、自分の目的に合わせて選ぶことが大切です。
Ⅱ型コラーゲン
コラーゲンは体の様々な部位に存在するタンパク質ですが、関節軟骨に多く含まれるのは「Ⅱ型コラーゲン」です。軟骨の構造を支える骨組みのような役割を果たしています。
特に「非変性Ⅱ型コラーゲン」は、元の構造を保ったまま抽出されたもので、免疫系に働きかけて関節の炎症を抑える作用が期待され、注目を集めています。
プロテオグリカン
プロテオグリカンは、グルコサミンやコンドロイチンが糖鎖として結合した複合体で、軟骨の主成分の一つです。ヒアルロン酸と同等以上の高い保水力を持ち、軟骨に弾力性を与えます。
かつては抽出が難しい高価な成分でしたが、近年、サケの鼻軟骨から効率的に抽出する技術が確立され、サプリメントにも利用されるようになりました。
注目の軟骨サポート成分比較
成分名 | 期待される主な役割 | 特徴 |
---|---|---|
Ⅱ型コラーゲン | 軟骨の構造維持、抗炎症作用 | 特に非変性Ⅱ型コラーゲンが注目されている |
プロテオグリカン | 高い保水力、軟骨の弾力性維持 | サケの鼻軟骨から抽出されることが多い |
MSM | 痛みの緩和、抗炎症作用 | 有機硫黄化合物の一つ |
サプリメントを選ぶ前の重要な注意点
有益な成分が含まれているサプリメントですが、利用を始める前にいくつか知っておくべき大切な点があります。
これらを理解しておくことで、サプリメントへの過度な期待を避け、安全かつ効果的に活用することにつながります。ここでは、基本的な心構えと確認事項を解説します。
サプリメントは医薬品ではない
最も重要な点は、サプリメントが「食品」であり、「医薬品」ではないという認識を持つことです。
医薬品は、病気の診断、治療、予防を目的として、国による厳格な審査を経て有効性や安全性が確認されたものです。
一方、サプリメント(健康食品)は、あくまで日々の食事で不足しがちな栄養素を補ったり、健康維持をサポートしたりすることを目的としています。
したがって、サプリメントに医薬品のような即効性や、病気を治す効果を期待してはいけません。
膝の痛みが強い場合や、症状が悪化している場合は、まず医療機関を受診し、医師の診断を受けることが大前提です。
医薬品とサプリメントの基本的な違い
項目 | 医薬品 | サプリメント(健康食品) |
---|---|---|
目的 | 病気の診断、治療、予防 | 健康維持、栄養補給 |
有効性の審査 | 国による厳格な審査あり | 一部を除き、義務付けられていない |
位置づけ | 治療の中心的役割 | あくまで食事の補助 |
すぐに効果が現れるわけではない
サプリメントは、体の中からゆっくりと働きかけるものです。医薬品の鎮痛剤のように、飲んで数時間で痛みが消えるといった即効性は期待できません。
多くの場合、効果を実感するまでには、少なくとも1か月から3か月程度の継続的な摂取が必要とされています。
軟骨成分が体内に補給され、関節の状態に変化が現れるまでには時間がかかります。
そのため、「数週間試して効果がないから」とすぐにやめてしまうのではなく、ある程度の期間、根気強く続けることが大切です。効果の現れ方には個人差があることも理解しておきましょう。
アレルギーや持病がある場合の確認事項
サプリメントを利用する前には、必ず原材料名を確認する習慣をつけましょう。
特に、グルコサミンはエビやカニなどの甲殻類を原料としている製品が多いため、甲殻類アレルギーのある方は摂取を避ける必要があります。
植物由来のグルコサミンを使用した製品もあるので、そちらを選ぶようにしましょう。
また、糖尿病や高血圧などの持病がある方、血液をサラサラにする薬(抗凝固薬)など、他の医薬品を服用している方は、自己判断でサプリメントを始める前に、必ず主治医や薬剤師に相談してください。
成分によっては、血糖値に影響を与えたり、薬の効果を強めたり弱めたりする可能性があるためです。
自分に合った膝関節サプリメントの選び方
市場には数多くの膝関節サプリメントが存在し、どれを選べば良いか迷ってしまうかもしれません。しかし、いくつかのポイントを押さえることで、自分に合った製品を見つけやすくなります。
ここでは、成分、品質、継続性、信頼性という4つの視点から、具体的な選び方を解説します。
目的に合わせた成分の選び方
まず、「なぜサプリメントを飲みたいのか」という目的を明確にすることが大切です。目的によって、重視すべき成分は異なります。
例えば、軟骨のすり減りが気になり、その材料を補給したいのであれば、グルコサミンやコンドロイチンが中心の製品が適しています。
一方、膝の動きの滑らかさを改善したい、きしむ感じを和らげたいという目的であれば、ヒアルロン酸やプロテオグリカンが豊富な製品が良いでしょう。
炎症による痛みが気になる場合は、非変性Ⅱ型コラーゲンやMSM(メチルスルフォニルメタン)といった成分に着目するのも一つの方法です。
膝の悩みに応じた成分選択の目安
主な悩み・目的 | 注目したい成分 | 期待される働き |
---|---|---|
軟骨のすり減りが気になる | グルコサミン、コンドロイチン | 軟骨の材料を補い、修復を助ける |
膝の動きを滑らかにしたい | ヒアルロン酸、プロテオグリカン | 関節の潤滑や保水性を高める |
炎症による痛みを和らげたい | 非変性Ⅱ型コラーゲン、MSM | 関節の炎症を抑える |
成分の含有量と品質のチェック
飲みたい成分が決まったら、次にその成分が製品にどれくらい含まれているかを確認します。成分の含有量は、製品パッケージの「栄養成分表示」に記載されています。
研究などで一定の効果が報告されている摂取目安量を参考に、十分な量が含まれているかを確認しましょう。
例えば、グルコサミンであれば1日あたり1,500mg、コンドロイチンであれば1,200mg程度が一般的な目安とされています。
また、品質を見極める指標として、「機能性表示食品」や「栄養機能食品」といった国の制度に基づいて表示が許可された製品を選ぶのも一つの方法です。
これらの製品は、科学的根拠に基づいて機能性が表示されていたり、国が定めた規格基準を満たしていたりします。
続けやすい価格と形状であるか
サプリメントは継続してこそ意味があります。そのため、経済的に負担なく続けられる価格帯であることは非常に重要な選択基準です。
1か月あたりのコストを計算し、無理なく続けられる製品を選びましょう。高価な製品が必ずしも優れているとは限りません。
また、毎日飲むものなので、錠剤、カプセル、粉末といった形状や、1日の摂取粒数も確認しましょう。
粒が大きいと飲みにくいと感じる方もいれば、粉末を飲み物に溶かすのが面倒だと感じる方もいます。ご自身のライフスタイルに合った、最も続けやすい形状の製品を選ぶことが継続の秘訣です。
サプリメントの形状別メリット・デメリット
形状 | メリット | デメリット |
---|---|---|
錠剤 | 持ち運びやすい、量を調整しやすい | 粒が大きいと飲みにくいことがある |
カプセル | 成分の味や匂いが気にならない | 錠剤同様、飲みにくさを感じる場合がある |
粉末 | 飲み物や食事に混ぜられる | 計量の手間がかかる、味が合わない場合がある |
信頼できるメーカーの製品か
口に入れるものだからこそ、製品を製造しているメーカーの信頼性も確認したいポイントです。
長年にわたり健康食品を製造・販売している実績のあるメーカーや、製品に関する問い合わせ窓口がしっかりしているメーカーは、一つの安心材料になります。
さらに、品質管理の指標として「GMP(Good Manufacturing Practice)マーク」の有無を確認するのも良いでしょう。
GMPは、原材料の受け入れから製造、出荷までの全工程において、製品が安全に作られ、一定の品質が保たれるようにするための製造工程管理基準です。
GMP認定工場で製造された製品は、品質管理が高いレベルで行われていることの証となります。
サプリメントの効果的な摂取方法とタイミング
自分に合ったサプリメントを選んだら、次はその効果を最大限に引き出すための飲み方が気になるところです。
基本的には製品に記載された指示に従うことが大切ですが、ここではより効果的な摂取のために知っておきたい一般的なポイントを解説します。
正しい摂取習慣が、実感への近道となります。
推奨される摂取量を守る
まず基本となるのが、製品のパッケージに記載されている「1日の摂取目安量」を守ることです。
早く効果を実感したいからといって、目安量を超えて過剰に摂取しても、効果が高まるわけではありません。
むしろ、成分によっては体に負担をかけたり、副作用のリスクを高めたりする可能性があります。逆に、目安量より少ない量しか摂取しないと、期待される効果が得られないこともあります。
メーカーが設定した摂取目安量は、製品に含まれる成分の量や特性を考慮して定められています。必ずこの量を守るようにしましょう。
飲むタイミングはいつが良いか
サプリメントは食品ですので、医薬品のように「食前」「食後」といった厳密な決まりはありません。
しかし、一般的には胃腸への負担を軽減し、吸収を助けるために、食事の後に飲むことが推奨されています。
空腹時に摂取すると、人によっては胃が荒れたり、不快感を覚えたりすることがあります。また、毎日決まった時間に飲む習慣をつけることで、飲み忘れを防ぐことができます。
例えば、「朝食後」や「夕食後」など、ご自身の生活リズムに合わせてタイミングを決めておくと良いでしょう。
摂取タイミングの例とポイント
タイミング | ポイント | おすすめの理由 |
---|---|---|
食後 | 胃腸への負担が少なく、吸収効率も良いとされる | 最も一般的で推奨されるタイミング |
複数回に分けて | 成分の血中濃度を一定に保ちやすい | 1日の目安量を朝晩などに分けて摂取する |
就寝前 | 成長ホルモンが分泌される時間帯に合わせる | 体の修復をサポートする目的で選ばれることもある |
継続して摂取することの重要性
前述の通り、膝関節サプリメントは即効性のあるものではありません。体の組織に成分が届き、その働きが実感できるようになるまでには、一定の時間が必要です。
そのため、最も重要なのは、毎日コツコツと摂取を続けることです。短期間で効果が出ないからと諦めずに、まずは3か月程度を目安に継続してみましょう。
日々の小さな積み重ねが、将来の膝の健康につながります。
飲み忘れを防ぐために、ピルケースを活用したり、スマートフォンのリマインダー機能を使ったりするなど、自分なりの工夫を見つけることも大切です。
- ピルケースの活用
- カレンダーへの記録
- リマインダー設定
- 目立つ場所への保管
サプリメント利用時の副作用とリスク管理
サプリメントは食品であり、医薬品に比べて安全性は高いとされていますが、体質や体調によっては予期せぬ反応が起こる可能性もゼロではありません。
安全に利用を続けるために、考えられる副作用やリスクについて正しく理解し、万が一の事態に備えておくことが重要です。
考えられる副作用や体調の変化
膝関節サプリメントの主成分であるグルコサミンやコンドロイチンは、比較的安全性の高い成分とされていますが、人によっては軽度な副作用が報告されています。
最も多いのは、胃の不快感、胸やけ、吐き気、下痢、便秘といった消化器系の症状です。また、まれに頭痛や眠気、皮膚の発疹などが現れることもあります。
これらの症状の多くは、摂取を中止すれば改善します。もしサプリメントを飲み始めてから、これまでになかった体調の変化を感じた場合は、一度摂取を中断し、様子を見るようにしてください。
主な成分で報告されている軽度な副作用
成分名 | 報告されている主な症状 | 注意点 |
---|---|---|
グルコサミン | 胃の不快感、胸やけ、下痢、便秘など | 甲殻類アレルギーの人は摂取を避ける |
コンドロイチン | 胃の不快感、吐き気など | 比較的報告は少ないとされる |
MSM | 消化器症状、皮膚の発疹など | 過剰摂取に注意する |
他の薬との飲み合わせ(相互作用)
特定の医薬品を服用している方がサプリメントを利用する場合、成分同士が影響し合う「相互作用」に注意が必要です。
特に注意したいのが、血液を固まりにくくする薬であるワルファリン(商品名:ワーファリンなど)です。グルコサミンやコンドロイチンは、ワルファリンの作用を強め、出血のリスクを高める可能性が指摘されています。
この薬を服用中の方は、自己判断で膝関節サプリメントを摂取することは絶対に避けてください。その他にも、糖尿病の薬など、相互作用の可能性が考えられる組み合わせは存在します。
何らかの薬を常用している方は、サプリメントを始める前に、必ず医師または薬剤師に相談することが大切です。
体調に異変を感じたときの対処法
サプリメントの摂取中に、明らかな体調の悪化やこれまで経験したことのない症状が現れた場合は、直ちに摂取を中止してください。
そして、購入した製品のパッケージや説明書を持参の上、医療機関を受診しましょう。
どの製品を、いつから、どのくらいの量飲んでいたのかを正確に医師に伝えることが、原因を特定し、適切な対処を受けるために重要です。
軽い症状だと思って自己判断で摂取を続けると、症状が悪化してしまう可能性もあります。自分の体のサインを見逃さず、慎重に対応することを心がけてください。
医療機関での膝関節治療との付き合い方
サプリメントは、膝の健康をサポートする上で一つの選択肢ですが、万能ではありません。
特に、すでに膝に強い痛みや機能の低下がある場合は、医療機関での専門的な診断と治療が基本となります。
サプリメントを上手に活用するためにも、医療との適切な関わり方を理解しておきましょう。
自己判断で治療を中断しない
現在、医療機関で変形性膝関節症などの治療を受けている方が、サプリメントを始めたからといって、自己判断で医師から処方された薬の服用をやめたり、通院を中断したりしてはいけません。
医師は、患者さん一人ひとりの症状や進行度に合わせて、最適な治療計画を立てています。処方薬には、痛みを抑えるだけでなく、炎症を鎮める重要な役割があります。
治療を中断することで、症状が急激に悪化する恐れもあります。サプリメントはあくまで治療の補助と捉え、必ず医師の指示に従い、治療を継続してください。
医師にサプリメントの使用を伝える
サプリメントを利用していること、あるいはこれから利用したいと考えていることを、診察の際に医師に伝えることは非常に重要です。
前述のように、サプリメントと医薬品の間には相互作用のリスクがあります。
また、医師が患者の全体的な健康状態を把握し、治療方針を決定する上でも、摂取しているサプリメントの情報は欠かせません。
何を、どのくらいの量、どのくらいの期間飲んでいるのかを正確に伝えましょう。「健康食品だから言わなくても大丈夫だろう」と遠慮する必要はありません。
安全な治療と健康管理のために、積極的に情報を共有してください。
サプリメントはあくまで補助的な役割
膝の痛みを改善し、進行を食い止めるためには、多角的なアプローチが必要です。
医療機関での治療(薬物療法、運動療法、物理療法など)を主軸とし、日常生活では体重管理や筋力トレーニング、生活習慣の見直しを行います。
サプリメントは、これらの一連の取り組みを「補助する」役割として位置づけるのが正しい理解です。
サプリメントだけに頼るのではなく、治療やセルフケアの土台がしっかりしている上で活用することで、その効果もより期待しやすくなります。
- 医療機関での治療
- 運動療法・筋力トレーニング
- 体重コントロール
- 生活習慣の見直し
膝関節サプリメントに関するよくある質問
最後に、膝関節サプリメントについて多くの方が疑問に思う点や、よく寄せられる質問にお答えします。サプリメント選びや利用を続ける上での参考にしてください。
Q. 効果はどれくらいで実感できますか?
A. 効果の現れ方には個人差が大きく、一概には言えません。一般的には、サプリメントの成分が体に行き渡り、軟骨などの組織に働きかけるまでには時間がかかるとされています。
多くの場合、早い方でも1か月、一般的には3か月程度の継続的な摂取が推奨されています。まずは3か月を目安に続けてみて、ご自身の膝の状態に変化があるかを見極めるのが良いでしょう。
すぐに効果が出ないからといって、焦る必要はありません。
Q. 複数のサプリメントを併用しても良いですか?
A. 基本的には、複数のサプリメントを併用すること自体が問題になることは少ないです。しかし、注意点もあります。
異なる製品を併用することで、特定の成分を過剰に摂取してしまう可能性があります。
例えば、AとBのサプリメントの両方にグルコサミンが含まれている場合、合計の摂取量が1日の目安を大きく超えてしまうかもしれません。
併用する場合は、それぞれの製品の成分表示をよく確認し、成分が重複していないか、過剰摂取にならないかをチェックすることが重要です。
不安な場合は、薬剤師や医師に相談することをお勧めします。
Q. 痛みがなくても予防のために飲んだ方が良いですか?
A. 現在、膝に全く痛みや違和感がなく、健康な状態であれば、必ずしもサプリメントを摂取する必要はありません。
バランスの取れた食事と適度な運動を心がけることが、最も基本的な膝の健康維持法です。
ただし、将来的な膝の健康が気になる方、例えば、スポーツで膝を酷使する方や、ご家族に変形性膝関節症の方がいる場合など、予防的な観点からサプリメントの利用を検討することは一つの選択肢です。
その場合も、まずは食生活や運動習慣を見直すことから始めるのが良いでしょう。
Q. やめると痛みは再発しますか?
A. サプリメントの摂取によって膝の調子が良くなっていた場合、摂取をやめると、しばらくして再び痛みや違和感が出てくる可能性はあります。
サプリメントは、体内で不足しがちな成分を継続的に補うことで、その効果を維持するものです。摂取を中止すれば、体内の成分濃度は徐々に元に戻っていきます。
もし、摂取を中止して症状が再発するようであれば、そのサプリメントがご自身の体にとって良い影響を与えていたと考えられます。
その場合は、摂取を再開するか、量を減らして続けてみるなどの方法を検討しても良いでしょう。
以上
参考文献
LIU, Xiaoqian, et al. Dietary supplements for treating osteoarthritis: a systematic review and meta-analysis. British journal of sports medicine, 2018, 52.3: 167-175.
PUIGDELLIVOL, Jordi, et al. Effectiveness of a dietary supplement containing hydrolyzed collagen, chondroitin sulfate, and glucosamine in pain reduction and functional capacity in osteoarthritis patients. Journal of dietary supplements, 2019, 16.4: 379-389.
GREGORY, Philip J.; SPERRY, Morgan; WILSON, Amy Friedman. Dietary supplements for osteoarthritis. American family physician, 2008, 77.2: 177-184.
VANGSNESS JR, C. Thomas; SPIKER, William; ERICKSON, Juliana. A review of evidence-based medicine for glucosamine and chondroitin sulfate use in knee osteoarthritis. Arthroscopy: The Journal of Arthroscopic & Related Surgery, 2009, 25.1: 86-94.
WANG, Shyu-Jye; WANG, Ya-Hui; HUANG, Liang-Chen. Liquid combination of hyaluronan, glucosamine, and chondroitin as a dietary supplement for knee osteoarthritis patients with moderate knee pain: A randomized controlled study. Medicine, 2021, 100.40: e27405.
DISTLER, John; ANGUELOUCH, Amanda. Evidence-based practice: review of clinical evidence on the efficacy of glucosamine and chondroitin in the treatment of osteoarthritis. Journal of the American Association of Nurse Practitioners, 2006, 18.10: 487-493.
BLACK, Corrinda, et al. The clinical effectiveness of glucosamine and chondroitin supplements in slowing or arresting progression of osteoarthritis of the knee: a systematic review and economic evaluation. Health Technology Assessment, 2009, 13.52: 1-148.
VASILIADIS, Haris S.; TSIKOPOULOS, Konstantinos. Glucosamine and chondroitin for the treatment of osteoarthritis. World journal of orthopedics, 2017, 8.1: 1.
SIMENTAL-MENDIA, Mario, et al. Effect of glucosamine and chondroitin sulfate in symptomatic knee osteoarthritis: a systematic review and meta-analysis of randomized placebo-controlled trials. Rheumatology international, 2018, 38.8: 1413-1428.
RICHY, Florent, et al. Structural and symptomatic efficacy of glucosamine and chondroitin in knee osteoarthritis: a comprehensive meta-analysis. Archives of internal medicine, 2003, 163.13: 1514-1522.
Symptoms 症状から探す
