足立慶友医療コラム

スポーツによる膝の慢性的な痛み – 原因と対策

2025.10.09

ランニングやジャンプ、急な方向転換など、スポーツには膝へ負担のかかる動作が多く含まれます。

適度な運動は健康維持に大切ですが、時にその負荷が原因で、慢性的な膝の痛みに悩まされることがあります。

「スポーツを続けたいけれど、この痛みとどう付き合えばいいのか」と不安に思う方も少なくないでしょう。

この記事では、スポーツによってなぜ膝の痛みが起こるのか、その背景にある原因を詳しく探り、ご自身でできる具体的な対策まで、分かりやすく解説していきます。

痛みの根本的な理解を深め、再びスポーツを楽しむための一助となる情報を提供します。

スポーツで膝が痛む主な原因

スポーツを楽しんでいる最中やその後に感じる膝の痛みは、単一の原因で起こることは稀です。多くの場合、複数の要因が複雑に絡み合って発生します。

ここでは、スポーツ活動において膝の痛みを引き起こす主な原因について、掘り下げて見ていきましょう。

ご自身の状況と照らし合わせることで、痛みの背景を理解する手がかりが見つかるかもしれません。

オーバーユース(使いすぎ)

膝の痛みの原因として最も一般的なのが、オーバーユース、つまり「使いすぎ」です。

特定の動作を繰り返し長時間行うことで、膝関節やその周辺の組織に許容量を超える負担がかかり続けます。

この負荷が微細な損傷を蓄積させ、炎症や痛みを引き起こします。

特に、急に練習量を増やしたり、十分な休息を取らずにトレーニングを続けたりすると、組織が回復する時間がなく、オーバーユースに陥りやすくなります。

膝に負担がかかりやすい動作の繰り返し

スポーツには、膝に特に負担を集中させる動作があります。例えば、ランニングやジャンプの着地、急なストップや方向転換などです。

これらの動作は、体重の何倍もの衝撃を膝関節に与えます。

健康な状態であれば、筋肉や腱、靭帯などが衝撃を吸収・分散しますが、繰り返しによりこれらの組織が疲労すると、衝撃吸収能力が低下し、軟骨や骨にまでストレスが及ぶことがあります。

身体の使い方の癖やフォームの問題

自分では気づきにくい身体の使い方の癖や、非効率なランニング・ジャンプフォームも、膝の痛みに大きく関わります。

身体全体の連動性が低いと、本来であれば股関節や足首など他の関節と分散すべき負担が、膝に集中してしまうのです。

例えば、着地の際に膝が内側に入る「ニーイン」という動作は、膝の内側や膝蓋骨(お皿)の周辺に過度なストレスをかける原因として知られています。

アライメントの不均衡

アライメントとは、骨や関節の並びのことを指します。生まれつきの骨格、例えばO脚やX脚、あるいは扁平足なども、膝への負担を増大させる一因となります。

これらのアライメントの不均衡があると、立っているだけでも膝の特定の部分に負荷が偏りやすくなります。その状態でスポーツの動作が加わることで、痛みのリスクはさらに高まります。

筋力不足と柔軟性の低下

膝関節の安定性には、太もも周りの筋力が大きく影響します。特に、太もも前面の大腿四頭筋や、裏側のハムストリングスは、膝を支え、衝撃を吸収する重要な役割を担っています。

これらの筋力が不足していると、関節そのものへの負担が増えてしまいます。また、筋肉や腱の柔軟性が低いと、動きが硬くなり、衝撃をうまく逃がすことができません。

特に股関節やお尻、足首周りの柔軟性低下は、膝の動きに悪影響を与え、痛みの原因となります。

体幹の不安定性

体幹(胴体部分)の筋力が弱く、身体の軸が不安定な場合も、膝の痛みに繋がります。

体幹が不安定だと、手足の動きが大きくなる際に身体がぶれ、そのぶれを補うために膝周りの筋肉や靭帯に余計な負担がかかるからです。

安定したフォームを維持するためには、体幹の強さが重要です。

不適切なシューズや環境

スポーツを行う環境や使用する用具も、膝への負担を左右する重要な要素です。

例えば、クッション性の低いシューズや、すり減ったシューズを履き続けることは、地面からの衝撃を直接膝に伝えてしまいます。

また、硬いアスファルトの上での長距離ランニングや、凹凸の多い不整地でのトレーニングは、平坦で柔らかい地面に比べて膝への負担が大きくなります。

競技特性と練習環境のミスマッチ

バスケットボールやバレーボールのようにジャンプが多い競技を硬い体育館の床で行う場合や、サッカーやラグビーで荒れたグラウンドを使用する場合など、競技の特性と練習環境が膝に与える影響は大きいです。

適切な環境を選び、用具を正しく使用することが、膝を守る上で大切になります。

膝の痛みを引き起こす代表的なスポーツ障害

スポーツによる慢性的な膝の痛みは、特定の障害(病態)が原因となっている場合があります。痛む場所や痛みの出る動作から、ある程度原因を推測することが可能です。

ここでは、スポーツ愛好家によく見られる代表的な膝のスポーツ障害をいくつか紹介し、それぞれの特徴を解説します。

ランナー膝(腸脛靭帯炎)

ランナー膝は、その名の通りランニングなど長距離を走るスポーツで多く見られます。主な症状は、膝の外側の痛みです。

太ももの外側にある長い靭帯「腸脛靭帯」が、膝の曲げ伸ばしの際に骨と擦れて炎症を起こすことで発生します。特に、下り坂を走る時や、長時間走り続けた後に痛みが出やすいのが特徴です。

ランナー膝の主な原因

  • 長距離のランニング
  • 硬い路面での走行
  • O脚
  • 股関節外側の筋肉の柔軟性低下

ジャンパー膝(膝蓋腱炎)

ジャンパー膝は、バレーボールやバスケットボールなど、ジャンプ動作を繰り返す競技で多く発生します。痛みは膝のお皿の下にある「膝蓋腱」に生じます。

ジャンプや着地の衝撃が膝蓋腱に繰り返し加わることで、腱に微細な損傷が蓄積し、炎症を起こします。

運動開始時に痛み、身体が温まると楽になるものの、運動後に再び痛みが強くなる傾向があります。

代表的なスポーツ障害の比較

障害名主な症状(痛みの場所)原因となりやすいスポーツ
ランナー膝膝の外側ランニング、サイクリング
ジャンパー膝膝のお皿の下バレーボール、バスケットボール
鵞足炎膝の内側(すねの上部)ランニング、サッカー

鵞足炎

鵞足炎は、膝の内側、すねの骨の上あたりに痛みが生じる障害です。

この部分には、太ももの内側から伸びる3つの筋肉の腱が集中しており、その形状がガチョウの足に似ていることから「鵞足」と呼ばれます。

ランニングや水泳の平泳ぎなど、膝の曲げ伸ばしと捻りが加わる動作で、鵞足が骨と擦れて炎症を起こします。X脚の人や、急に走行距離を伸ばしたランナーに多く見られます。

半月板損傷や軟骨損傷

半月板は膝関節の中でクッションの役割を果たす軟骨組織で、軟骨は骨の表面を覆い、関節の滑らかな動きを助けます。

これらは急性のケガだけでなく、スポーツによる繰り返しの負担が蓄積して損傷することもあります。

症状としては、痛みだけでなく、膝の「ひっかかり感」や「ロッキング(膝が動かなくなる)」、水が溜まる(関節水腫)といった特徴的なものがあります。

これらの症状がある場合は、自己判断せずに専門家へ相談することが重要です。

自分でできる膝の痛みのチェック方法

膝に痛みや違和感を感じたとき、自分の状態を客観的に把握することは、その後の対策を考える上で非常に役立ちます。病院を受診する際にも、症状を具体的に伝えることができます。

ここでは、ご自身でできる簡単な膝の状態のチェック方法を紹介します。ただし、これはあくまで目安であり、正確な診断に代わるものではありません。

痛みの種類やタイミングを確認する

痛みを記録することは、状態を把握するための第一歩です。「いつ」「どこが」「どのように」痛むのかを整理してみましょう。

例えば、「ランニングを始めて20分経つと、膝の外側がズキズキ痛む」「階段を降りる時に、お皿の下が鋭く痛む」といった具体的な情報が、原因を探る上で重要な手がかりとなります。

痛みの記録シート例

項目記録内容の例ポイント
いつ運動中、運動後、朝起きた時痛むタイミングを特定する
どこが膝の外側、内側、お皿の下痛む場所を正確に指し示す
どのようにズキズキ、ジンジン、鋭い痛み痛みの性質を言葉で表現する

膝の可動域を確認する

膝がどこまでスムーズに曲げ伸ばしできるかを確認します。まず、床に足を伸ばして座り、かかとを床につけたまま、ゆっくりとお尻の方へ引き寄せ、膝を曲げていきます。

次に、うつ伏せになり、かかとをお尻に近づけるように膝を曲げます。

左右の足で比べてみて、痛みがあったり、明らかに可動域に差があったりする場合は、何らかの問題がある可能性があります。無理のない範囲で行いましょう。

腫れや熱感の有無をチェックする

痛む側の膝と、そうでない側の膝を見比べて、腫れがないかを確認します。膝のお皿の周りや、膝裏が腫れぼったくなっていないかを見て、触ってみましょう。

また、手の甲で左右の膝を交互に触り、熱感に差がないかも確認します。明らかな腫れや熱感がある場合は、関節の内部で炎症が起きているサインです。

膝のチェックポイント

  • 左右の膝を比較する
  • 痛みを感じない範囲で行う
  • 見た目と触った感覚の両方で確認する

膝の痛みを和らげるための初期対策(RICE処置)

スポーツ中や直後に膝に痛みを感じた場合、その後の悪化を防ぎ、回復を早めるために、すぐに行うべき基本的な応急処置があります。それが「RICE処置」です。

RICEとは、Rest(安静)、Icing(冷却)、Compression(圧迫)、Elevation(挙上)の4つの処置の頭文字をとったものです。

この初期対策を適切に行うことで、炎症や腫れを最小限に抑えることができます。

Rest(安静)

痛みを感じたら、まずは運動を中止し、患部に体重をかけないようにして安静にすることが最も重要です。痛みを我慢して運動を続けると、損傷を悪化させ、回復を遅らせる原因になります。

日常生活でも、痛みを誘発するような動作は避け、膝に負担をかけないように心がけましょう。

Icing(冷却)

患部を冷やすことで、炎症や内出血、腫れを抑え、痛みを軽減します。

ビニール袋に氷と少量の水を入れ、空気を抜いて口を縛ったもの(氷のう)や、市販のアイスパックなどをタオルで包み、痛む部分に当てます。

冷やしすぎによる凍傷を防ぐため、1回15分から20分程度を目安に行い、感覚がなくなったら一度中断し、時間を置いてから繰り返します。

RICE処置の各項目の目安

処置内容目安
Rest運動を中止し、安静にする痛みが続く限り
Icing患部を氷などで冷やす1回15-20分、1-2時間おき
Compression弾性包帯などで軽く圧迫する安静時や就寝時は緩める
Elevation患部を心臓より高く上げるできるだけ長時間

Compression(圧迫)

患部を弾性包帯やサポーターなどで軽く圧迫することで、腫れや内出血が広がるのを防ぎます。

ただし、強く巻きすぎると血行を妨げ、逆効果になることもあるので注意が必要です。

圧迫した部分がしびれたり、変色したりした場合は、すぐに緩めてください。就寝時も緩めるか、外すようにしましょう。

Elevation(挙上)

患部を心臓より高い位置に保つことで、重力を利用して腫れを軽減します。横になる際は、クッションや枕などを膝の下に入れ、足を高くして休みましょう。

椅子に座っている時も、別の椅子や台の上に足を乗せるなど、できるだけ患部を高い位置に保つ工夫が有効です。

慢性的な膝の痛みを改善するセルフケア

急な痛みに対する初期対策も重要ですが、長く続く慢性的な痛みに対しては、日々のセルフケアが改善の鍵を握ります。

筋力と柔軟性のバランスを整え、膝への負担を軽減することで、痛みの緩和と再発予防を目指します。ここでは、自宅で取り組める具体的なセルフケアの方法について解説します。

継続することが力になります。

ストレッチによる柔軟性の向上

膝周りの筋肉、特に太ももの前側(大腿四頭筋)、裏側(ハムストリングス)、お尻の筋肉(殿筋群)、そして膝の外側につながる腸脛靭帯の柔軟性を高めることは非常に重要です。

筋肉が硬いと、膝関節の動きが制限され、余計なストレスがかかります。ストレッチは、反動をつけず、ゆっくりと気持ちよく伸びを感じる程度で、20秒から30秒ほど保持するのがポイントです。

お風呂上がりの身体が温まっている時に行うと、より効果的です。

膝周りの柔軟性を高めるストレッチ例

対象の筋肉ストレッチの方法
大腿四頭筋(前もも)横向きに寝て、上側の足首を持ち、かかとをお尻に近づける
ハムストリングス(裏もも)仰向けになり、片膝を胸に抱え、そこからゆっくり膝を伸ばす
殿筋群(お尻)椅子に座り、片方の足首を反対側の膝の上に乗せ、上体を前に倒す

トレーニングによる筋力強化

膝関節を安定させるためには、筋力強化が欠かせません。特に、膝を伸ばす時に働く大腿四頭筋の内側の筋肉(内側広筋)や、お尻の横にある中殿筋を鍛えることが有効です。

これらの筋肉がしっかり働くことで、歩行時や運動時の膝のブレを防ぎ、関節への負担を減らします。トレーニングは、痛みが出ない範囲で、正しいフォームを意識しながら行いましょう。

膝の安定性を高めるトレーニング例

トレーニング名鍛える筋肉
レッグエクステンション大腿四頭筋
ヒップアブダクション中殿筋
スクワット(浅め)下半身全体

アイシングと温熱療法の使い分け

アイシング(冷却)と温熱療法(温めること)は、症状によって使い分けることが大切です。

一般的に、運動後や痛みを感じた直後など、熱感や腫れがある「急性期」にはアイシングが適しています。炎症を抑え、痛みを和らげます。

一方、熱感や腫れがなく、動かすと痛むような「慢性期」には、温めることで血行を促進し、筋肉の緊張を和らげ、回復を助けます。

どちらが適切か迷う場合は、心地よいと感じる方を選択するのも一つの方法です。

食事と栄養によるサポート

身体の組織を修復し、強くするためには、適切な栄養も重要です。

筋肉や腱、靭帯の主成分であるタンパク質をはじめ、骨の健康を支えるカルシウムやビタミンD、そして炎症を抑える働きが期待されるオメガ3脂肪酸などをバランス良く摂取することを心がけましょう。

特定の食品だけで痛みがなくなるわけではありませんが、身体の回復力を高める土台作りとして、日々の食生活を見直すことは大切です。

スポーツへの復帰と再発予防のために

痛みが和らいでくると、早くスポーツに復帰したいという気持ちが高まります。しかし、ここで焦りは禁物です。

不適切なタイミングや方法で復帰すると、痛みが再発し、さらに長い離脱を余儀なくされる可能性があります。

安全に復帰し、再び同じ痛みに悩まされないためのポイントをしっかりと押さえておきましょう。

段階的なトレーニングの再開

まずは、ウォーキングや軽いジョギングなど、膝への負担が少ない運動から始めます。痛みが出ないことを確認しながら、徐々に運動の時間や強度を上げていきます。

いきなり元の練習メニューに戻るのではなく、例えば「元の練習量の50%から始め、週に10%ずつ増やしていく」といったように、計画的に負荷を調整することが重要です。

復帰に向けた運動強度の上げ方

  • ウォーキング
  • ジョギング
  • 軽いランニング
  • ダッシュや方向転換を含む動き

ウォーミングアップとクールダウンの徹底

運動前のウォーミングアップと、運動後のクールダウンは、膝の障害予防において基本でありながら最も重要な習慣です。

ウォーミングアップは、血行を促進し、筋肉の温度を上げることで、関節の動きを滑らかにし、ケガをしにくい状態を作ります。

クールダウンは、使った筋肉をゆっくりとストレッチすることで、疲労の回復を早め、筋肉の柔軟性を保ちます。これらを省略せず、毎回丁寧に行いましょう。

ウォーミングアップとクールダウンのメニュー例

タイミングメニュー内容目的
ウォーミングアップ軽いジョギング、動的ストレッチ心拍数と筋温の上昇、関節可動域の確保
クールダウンウォーキング、静的ストレッチ疲労回復の促進、柔軟性の維持

自分に合った用具の選択

シューズは、膝への負担を軽減する上で非常に重要な役割を果たします。自分の足の形や、行うスポーツの特性に合ったシューズを選びましょう。

クッション性や安定性などを考慮し、専門店のスタッフに相談するのも良い方法です。また、シューズは消耗品です。

靴底がすり減ってクッション性が低下する前に、定期的に新しいものに交換することが、膝を守ることに繋がります。

専門家への相談が必要なケース

多くの膝の痛みはセルフケアやトレーニングの見直しで改善が見込めますが、中には専門的な診断や治療が必要な状態もあります。

自己判断で問題を長引かせたり、悪化させたりしないために、医療機関の受診を検討すべきサインを知っておくことは大切です。

ここでは、整形外科などの専門家へ相談することを強く推奨するケースについて解説します。

痛みが長期間続く、または悪化する場合

安静にしたり、セルフケアを試したりしても、2週間以上痛みが改善しない、あるいは日に日に痛みが強くなる場合は、専門家の診察を受けるべきです。

痛みの原因が、単純な使いすぎによる炎症ではなく、半月板や軟骨の損傷など、構造的な問題である可能性も考えられます。正確な原因を特定することが、適切な治療への第一歩となります。

専門家への相談を検討するサイン

症状考えられる状態
長引く痛み、悪化する痛み重度の炎症、構造的な損傷
膝の不安定感、膝崩れ靭帯損傷の可能性
日常生活への支障早期の治療が必要な状態

膝が不安定な感じがする

歩いている時や階段の上り下りの際に、膝がガクッと抜けるような感覚(膝崩れ)があったり、膝がぐらぐらして不安定に感じたりする場合、膝の安定性を保つ靭帯が損傷している可能性があります。

特に、前十字靭帯や後十字靭帯の損傷は、スポーツ活動中の急な方向転換やストップ動作で発生しやすく、放置すると関節軟骨の損傷など、二次的な問題を引き起こすことがあります。

日常生活に支障が出ている

スポーツ活動中だけでなく、「普通に歩くのがつらい」「階段の上り下りができない」「膝が曲がらなくて正座ができない」など、日常生活の動作にまで痛みや機能制限が及んでいる場合は、速やかに受診しましょう。

生活の質(QOL)を維持するためにも、早期に適切な対応をとることが重要です。

スポーツによる膝の痛みに関するよくある質問

最後に、スポーツによる膝の痛みについて、多くの方から寄せられる質問とその回答をまとめました。ご自身の疑問や不安を解消するための参考にしてください。

痛みがあってもスポーツを続けても良いですか?

基本的には、痛みを感じる場合は運動を休止、または痛みの出ない範囲に強度を落とすことが原則です。

痛みを我慢して続けると、症状が悪化し、回復が長引く可能性があります。特に、運動後に痛みが強くなる、腫れが出てくるなどの場合は、身体からの危険信号です。

まずは安静にして、痛みの原因を探ることが先決です。

サポーターは着けた方が良いですか?

サポーターには、保温効果や関節の安定性を高める効果、安心感を得る心理的な効果などがあります。痛みの軽減や再発予防のために、一時的に使用するのは有効な場合があります。

ただし、サポーターに頼りすぎると、本来の筋力が低下する可能性も指摘されています。

サポーターの使用と並行して、筋力トレーニングやストレッチなどの根本的な対策に取り組むことが重要です。

どのような病院を受診すれば良いですか?

回答:膝の痛み、特にスポーツが関連するものの場合は、整形外科の受診が第一選択となります。整形外科医は骨、関節、筋肉、靭帯などの運動器に関する専門家です。

中でも、スポーツ整形外科を専門とする医師であれば、競技の特性を理解した上で、スポーツ復帰までを見据えた診断やアドバイスが期待できます。

成長期の子供の膝の痛みで気をつけることは何ですか?

回答:成長期の子供の膝の痛みには、オスグッド・シュラッター病など、成長期特有の障害が多く見られます。これは、骨の成長に筋肉や腱の成長が追いつかないことで発生します。

大人のスポーツ障害とは異なる配慮が必要です。痛みを訴える場合は、単なる成長痛と自己判断せず、一度は整形外科で診てもらうことをお勧めします。

練習の休み方や、成長に合わせたケアについて指導を受けることが大切です。

参考文献

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Author

北城 雅照

医療法人社団円徳 理事長
医師・医学博士、経営心理士

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