股関節の障害による日常生活への影響と対処法
股関節は、私たちの体を支え、歩く、座る、立つといった基本的な動作を可能にする重要な関節です。
しかし、この部分に障害が生じると、痛みや可動域の制限によって、これまで当たり前にできていた日常生活の動作が困難になることがあります。
着替えや入浴、階段の上り下り、あるいは長時間の歩行など、生活のさまざまな場面で支障を感じるようになるかもしれません。
この記事では、股関節の障害が具体的に日常生活へどのような影響を及ぼすのか、そしてその痛みや不便さとどのように向き合い、対処していけばよいのかについて、基本的な知識からご自身でできるケアまで詳しく解説します。
目次
股関節の障害とは? まず知っておきたい基本
股関節に何らかの問題が生じると、私たちの活動性は大きく制限されます。股関節は体重を支え、足をさまざまな方向に動かすという重要な役割を担っているためです。
この大切な関節に障害が起こる原因は一つではありません。
ここでは、股関節の構造と機能、そしてどのような障害が起こり得るのか、その基本的な知識を整理します。
股関節の役割と構造
股関節は、太ももの骨(大腿骨)の先端にある球状の「大腿骨頭」が、骨盤のくぼみである「寛骨臼」にはまり込む形をしています。
この形状は「球関節」と呼ばれ、非常に広い可動域を可能にしています。
立つ、歩く、走る、座るといった動作はもちろん、足を組む、あぐらをかくといった複雑な動きも、この股関節の働きによるものです。
関節の表面は滑らかな「関節軟骨」で覆われており、これがクッションの役割を果たし、スムーズな動きを助けています。
また、関節の周囲は強靭な「関節包」という袋で包まれ、多くの筋肉や靭帯によって支えられています。この複雑な構造が連動することで、体重を支えながら滑らかに動くことができるのです。
股関節の主な機能
- 体重の支持
- 歩行・走行動作
- 関節の屈曲・伸展
- 関節の内転・外転
- 関節の内旋・外旋
よく見られる股関節の障害
股関節の障害と一口に言っても、その種類はさまざまです。最も代表的なものに「変形性股関節症」があります。
これは、主に関節軟骨がすり減ることにより、骨の変形や痛みが生じる状態です。初期は立ち上がりや歩き始めに痛みを感じる程度ですが、進行すると安静時にも痛むようになります。
ほかにも、大腿骨頭の一部が壊死してしまう「大腿骨頭壊死症」や、関節リウマチによる関節炎、スポーツや事故による「股関節唇損傷」などがあります。
また、乳幼児期の発育過程での問題(発育性股関節形成不全)が、成人になってから変形性股関節症の原因となることも少なくありません。
代表的な股関節の障害
| 障害の名称 | 主な特徴 | 症状の例 |
|---|---|---|
| 変形性股関節症 | 関節軟骨の摩耗と骨の変形 | 歩き始めの痛み、可動域制限 |
| 大腿骨頭壊死症 | 大腿骨頭への血流障害による壊死 | 急激な強い痛み、歩行困難 |
| 股関節唇損傷 | 関節の縁にある軟骨の損傷 | 特定の動作での鋭い痛み、引っかかり感 |
障害を引き起こす主な原因
股関節障害の原因は、先天的なものと後天的なものに大別できます。日本では、生まれつき股関節の屋根(寛骨臼)の被りが浅い「臼蓋形成不全」が背景にある場合が多く見られます。
これが長年の負担によって、中年以降に変形性股関節症を発症する主な原因の一つと考えられています。
後天的な原因としては、加齢による関節軟骨の質の変化、過度なスポーツや重労働による負担の蓄積、肥満による体重の負荷が挙げられます。
また、特定の薬剤(ステロイドなど)の使用やアルコールの多飲が、大腿骨頭壊死症のリスクを高めることも知られています。
日常生活で感じる「サイン」 股関節障害の初期症状
股関節の障害は、多くの場合、日常生活の中でのささいな違和感や軽い痛みから始まります。初期のサインを見逃さず、早期に対処することが、その後の進行を遅らせるために重要です。
ここでは、股関節障害の初期によく見られる症状を、具体的な日常の動作とともに紹介します。
歩行時の違和感や痛み
最も気づきやすい初期症状の一つが、歩行時の違和感です。特に「歩き始め」に股関節の付け根(鼠径部)あたりに痛みやこわばりを感じることがあります。
しばらく歩いていると痛みが和らぐことも多いため、見過ごされがちです。また、長時間歩いた後や、坂道・階段を上った後に痛みが増す場合もあります。
無意識のうちに痛い方の足をかばい、歩き方が不自然になる(跛行)こともあります。
立ち上がり・座り動作の困難
椅子から立ち上がる時や、床から立ち上がる際に「よっこいしょ」と手をついたり、何かに掴まったりしないと辛くなるのも特徴的なサインです。
股関節を曲げた状態から伸ばす動作で痛みや力が入りにくさを感じます。
逆に、椅子に深く腰かける時や、車に乗り込むために股関節を深く曲げる動作で、詰まるような感覚や痛みが出ることもあります。
初期症状のセルフチェック
| 動作 | 感じる症状 | 当てはまるか |
|---|---|---|
| 椅子から立ち上がる | 付け根に痛みやこわばりを感じる | (はい・いいえ) |
| 歩き始め | 数歩の間、痛みや違和感がある | (はい・いいえ) |
| 長時間歩いた後 | 股関節や太もも、お尻がだるくなる | (はい・いいえ) |
階段の上り下りでの不安
階段の上り下りは、平地を歩く時よりも股関節に大きな負担がかかります。
特に階段を「上る」動作は、股関節を深く曲げ、そこから体重を支えながら体を持ち上げるため、痛みが出やすい場面です。
手すりを持たないと不安を感じたり、一段ずつしか上れなくなったりした場合、股関節の機能が低下している可能性があります。下りる際にも、着地の衝撃で痛みを感じることがあります。
靴下を履く、爪を切る動作の制限
股関節の可動域が制限されてくると、日常生活の細かな動作に支障が出始めます。代表的なのが、靴下を履く動作や足の爪を切る動作です。
これらの動作は、股関節を深く曲げ、さらに外側に開く(あぐらをかくような)動きを必要とします。この動きができなくなると、片足立ちで不安定になったり、誰かの助けが必要になったりします。
和式トイレの使用や、床に落ちたものを拾う動作も同様に困難になることがあります。
股関節の障害が日常生活に及ぼす具体的な影響
股関節の障害が進行すると、初期のささいな違和感は、やがて日常生活のさまざまな場面での具体的な「困難」へと変わっていきます。
活動が制限されることで、身体的な問題だけでなく、精神的な側面にも影響が及ぶことがあります。ここでは、股関節の障害が生活の質(QOL)に与える影響について掘り下げます。
活動範囲の縮小と外出の減少
歩行時の痛みや疲労感が増すことで、長距離の移動が億劫になります。以前は楽しめていた散歩や買い物、旅行といった活動を避けるようになるかもしれません。
バスや電車での移動も、駅の階段や乗り降りの動作、立っている時間の辛さから、次第に自家用車での移動や、近場での用事のみで済ませるようになりがちです。
このように活動範囲が狭まることは、社会的な交流の機会減少にもつながります。
家事や仕事への支障
日常生活において股関節は休む暇なく働いています。立っているだけでも体重を支えており、掃除機をかける、洗濯物を干す、料理をするといった家事全般で負担がかかります。
特に、床の拭き掃除や布団の上げ下ろし、お風呂掃除などの中腰やしゃがむ動作は、強い痛みを引き起こす原因となります。
仕事においても、立ち仕事や重いものを運ぶ作業はもちろん、デスクワークであっても長時間の座位が苦痛になることがあります。
集中力の低下や作業効率の悪化を招き、場合によっては仕事を続けることが難しくなるケースもあります。
日常生活動作(ADL)への影響
| 動作カテゴリ | 具体的な動作例 | 生じる困難 |
|---|---|---|
| 身の回り動作 | 着替え、入浴、爪切り | 股関節が曲がらず手が届かない |
| 移動動作 | 歩行、階段昇降、乗り物 | 痛み、不安定感、長距離不可 |
| 家事動作 | 掃除、料理、洗濯 | 中腰や立位保持が辛い |
睡眠の質の低下と精神的ストレス
障害が進行し、安静にしていても痛みが出るようになると、睡眠にも影響が出始めます。夜間に痛みで目が覚めたり、寝返りを打つ際に痛みを感じたりすることで、熟睡できなくなります。
良質な睡眠が取れないと、日中の疲労感が抜けず、痛みをさらに感じやすくなるという悪循環に陥ることもあります。
また、「また痛むのではないか」という不安や、思うように動けないことへの焦り、周囲に迷惑をかけているのではないかという罪悪感など、精神的なストレスも増大します。
気分の落ち込みや意欲の低下を招き、社会的な孤立感を深める一因ともなり得ます。
なぜ股関節の障害が起こるのか? 主な要因
股関節の障害は、単一の原因ではなく、複数の要因が絡み合って発症することが多いです。
生まれ持った骨格の特徴から、長年の生活習慣、そして加齢による体の変化まで、さまざまな要因が関わっています。
どのような背景が股関節への負担につながるのかを理解することは、予防や対処法の第一歩となります。
加齢による変化(変形性股関節症など)
年齢を重ねるとともに、関節軟骨の水分は減少し、弾力性が失われていきます。これにより、長年の歩行や体重負荷によるすり減りが起こりやすくなります。
これが変形性股関節症の基本的な背景です。特に女性は、閉経後のホルモンバランスの変化が骨や軟骨の健康に影響を与える可能性も指摘されています。
加齢は誰にでも起こる変化ですが、股関節への負担が蓄積しやすい要因の一つです。
特定の病気との関連
股関節の痛みは、股関節そのものの問題だけでなく、他の病気が原因で引き起こされることもあります。
例えば、関節リウマチは、自己免疫の異常により全身の関節に炎症が起こる病気であり、股関節もその例外ではありません。
また、前述した大腿骨頭壊死症は、ステロイド剤の長期使用や過度の飲酒習慣と関連が深いことが知られています。
腰の病気(腰椎椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症など)が、股関節周辺の痛みとして感じられることもあります。
股関節障害の主なリスク要因
| 要因カテゴリ | 具体的な内容 | 関連する障害 |
|---|---|---|
| 身体的特徴 | 臼蓋形成不全、女性 | 変形性股関節症 |
| 生活習慣 | 過度の飲酒、ステロイド使用 | 大腿骨頭壊死症 |
| 動作・環境 | 重量物の運搬、中腰作業 | 変形性股関節症、関節唇損傷 |
日常の姿勢や動作の癖
日々の何気ない姿勢や動作の癖も、股関節への負担を蓄積させる要因となります。
例えば、いつも同じ側でカバンを持つ、足を組む癖がある、片足に体重をかけて立つことが多い、といった習慣は、骨盤の歪みや左右の筋力バランスの不均衡を招きます。
このアンバランスが、特定の側の股関節に過剰なストレスをかけ続けることにつながります。
過度な運動や体重の負荷
適度な運動は股関節周囲の筋力を維持し、関節を保護するために重要です。
しかし、ジャンプや急な方向転換を繰り返す激しいスポーツや、長時間のランニングなどは、股関節に大きな衝撃を与え、軟骨や関節唇を傷める原因となり得ます。
また、体重の管理も非常に重要です。歩行時、股関節には体重の約3〜5倍の負荷がかかると言われています。
体重が数キログラム増えるだけでも、股関節への負担は大きく増加します。肥満は、変形性股関節症の発症および進行の大きなリスク要因です。
自分でできる股関節のケアと日常生活の工夫
股関節の障害による痛みや不便さを感じ始めた場合、専門機関での診断と並行して、日常生活の中でご自身でできるケアや工夫を取り入れることが大切です。
股関節への負担を減らし、残っている機能を維持することが、症状の進行を和らげ、より良い生活を続けるための鍵となります。
負担を減らす動作のポイント
日常生活の動作を見直すだけでも、股関節への負担は大きく減らせます。痛みを感じる動作は、できるだけ避けるか、やり方を工夫することが必要です。
生活動作の工夫
- 床での生活(正座、あぐら)を避け、椅子やベッドを使用する。
- 重いものは持たず、カートや台車を利用する。
- 和式トイレを避け、洋式トイレを使用する。
- 入浴時は、浴槽の縁に腰掛けたり、手すりを使ったりして安全に出入りする。
また、靴下を履く際には「リーチャー」と呼ばれる補助具を使ったり、低い場所の物を取る際には膝をついたりするなど、股関節を深く曲げない工夫も有効です。
自宅でできる簡単なストレッチと筋力維持
痛みが強い時期は安静が必要ですが、症状が落ち着いている時は、無理のない範囲で関節を動かし、周囲の筋肉を保つことが重要です。
筋肉が衰えると、さらに関節が不安定になり、負担が増加してしまいます。
特に鍛えたいのは、お尻の筋肉(中殿筋)や太ももの筋肉(大腿四頭筋)です。これらは股関節を安定させ、体重を支える上で重要な役割を果たします。
ただし、自己流の運動はかえって痛みを悪化させることもあるため、専門家の指導のもとで行うのが最も安全です。
まずは、入浴後の体が温まった時に、痛みのない範囲でゆっくりと股関節を曲げ伸ばしするような軽いストレッチから始めると良いでしょう。
セルフケアの分類
| ケアの種類 | 目的 | 具体例 |
|---|---|---|
| 動作の工夫 | 関節への負担軽減 | 椅子・ベッドの使用、補助具の活用 |
| 運動 | 筋力維持、可動域維持 | 水中ウォーキング、お尻の筋トレ |
| 体重管理 | 関節への負荷軽減 | 食事内容の見直し、適度な運動 |
適切な靴選びと補助具の検討
歩行は日常生活の基本です。その歩行を支える靴選びは非常に重要です。かかとが安定し、靴底に十分なクッション性がある靴を選びましょう。
ハイヒールや底が硬く薄い靴は、股関節への衝撃を強めるため避けるのが賢明です。必要に応じて、インソール(中敷き)で足のバランスを調整することも助けになります。
痛みが強い場合や、長距離を歩く必要がある場合には、杖(T字杖)の使用を検討しましょう。杖は、痛い方の「反対側」の手で持つのが基本です。
杖を使うことで股関節にかかる体重負荷を分散させ、歩行の安定性を高めることができます。
体重管理と食生活の見直し
前述の通り、体重の増加は股関節への負担を直接的に増やします。もし体重が標準を上回っている場合は、適正体重に近づける努力が必要です。
ただし、急激なダイエットは筋肉量まで減らしてしまうため、バランスの取れた食事と適度な運動を組み合わせ、時間をかけて行うことが大切です。
食生活においては、骨や軟骨の健康をサポートする栄養素を意識して摂ることも良いでしょう。
カルシウム(乳製品、小魚など)、ビタミンD(きのこ類、魚類など)、ビタミンK(納豆、緑黄色野菜など)は骨の健康に、良質なたんぱく質(肉、魚、大豆製品など)は筋肉の維持に役立ちます。
専門家によるサポートと選択肢
セルフケアや生活の工夫を試みても、痛みが続く、あるいは悪化する場合には、専門の医療機関に相談することが必要です。
股関節の障害は、放置すると進行してしまうことが多いため、専門家による正確な診断と、個々の状態に合わせた適切な対処法の指導を受けることが重要です。
専門機関に相談するタイミング
「このくらいの痛みで病院に行くのは大げさかもしれない」とためらう方もいるかもしれません。
しかし、以下のようなサインが見られたら、一度整形外科などの専門機関を受診することを推奨します。
受診を推奨するサイン
- 安静にしていても痛む
- 痛みで夜、目が覚める
- 歩行時に杖が必要になってきた
- 靴下や爪切りが自分でできなくなった
- 痛みが2週間以上続いている
これらの症状は、関節の状態が進行している可能性を示しています。早期に現状を把握することで、選択できる対処法の幅も広がります。
医療機関での一般的な検査
医療機関では、まず問診(いつから、どのような時に痛むか、など)と診察(股関節の動き、痛みの場所、歩き方の確認)を行います。
その上で、股関節の状態を正確に把握するために画像検査を行います。
最も基本となるのが「レントゲン(X線)検査」です。これにより、骨の変形や、骨と骨の隙間(関節軟骨の厚み)の状態を確認します。
変形性股関節症の診断や進行度の評価に中心的な役割を果たします。さらに詳しい情報が必要な場合、例えば大腿骨頭壊死症や関節唇損傷が疑われる場合には、「MRI検査」が行われます。
MRIは、軟骨や筋肉、靭帯といったレントゲンには映らない組織の状態を詳細に映し出すことができます。
主な画像検査
| 検査名 | 主な目的 | 確認できること |
|---|---|---|
| レントゲン検査 | 骨の状態の確認 | 骨の変形、関節の隙間の狭小化 |
| MRI検査 | 軟部組織や骨内部の確認 | 軟骨損傷、壊死、炎症の有無 |
| CT検査 | 骨の立体的な形態の確認 | 骨折、骨の微細な変化 |
保存療法(運動療法・物理療法など)
検査の結果、手術がすぐに必要でないと判断された場合、まずは「保存療法」が行われます。これは、手術以外の方法で症状の緩和と進行の予防を目指すものです。
中心となるのは「運動療法」です。
理学療法士などの専門家の指導のもと、股関節周囲の筋力(特にお尻の筋肉)を強化する訓練や、関節の可動域を維持・改善するためのストレッチを行います。
筋肉のバランスを整え、股関節を安定させることが目的です。
痛みを和らげるために、鎮痛薬(内服薬や外用薬)を使用することもあります。
また、温熱療法(患部を温める)や低周波治療といった「物理療法」を併用し、血行を改善し痛みを緩和することもあります。
手術療法という選択肢
保存療法を続けても痛みが改善せず、日常生活への支障が非常に大きい場合、また、変形が高度に進行している場合や大腿骨頭壊死症などで骨の変形が進んだ場合には、「手術療法」が検討されます。
代表的な手術には「人工股関節置換術」があります。これは、損傷した股関節の表面を取り除き、金属やセラミック、ポリエチレンなどでできた人工の関節に置き換える手術です。
痛みの原因を根本的に取り除くため、多くの場合、痛みの劇的な改善と関節機能の回復が期待できます。近年は手術技術も進歩しており、より小さな切開で行う方法も普及しています。
ほかにも、ご自身の骨を温存する「骨切り術」など、年齢や活動度、関節の状態に応じたさまざまな手術方法があります。
どの方法を選択するかは、専門医と十分に話し合い、ご自身のライフスタイルや希望を伝えた上で決定することが大切です。
主な治療法の比較
| 治療法 | 主な目的 | 対象となる状態 |
|---|---|---|
| 保存療法 | 症状緩和、進行予防 | 初期~中期の障害 |
| 手術療法 | 痛みの根本的除去、機能回復 | 末期の障害、保存療法で改善しない場合 |
股関節の障害に関するよくある質問
股関節に痛みや違和感を抱えていると、さまざまな疑問や不安が浮かんでくることでしょう。ここでは、股関節の障害に関して多く寄せられる質問について、一般的な考え方をお答えします。
ただし、個々の症状や状態によって異なる場合があるため、最終的な判断は専門医にご相談ください。
Q 痛みがある場合、安静にした方が良いですか?
痛みが急に強くなった時や、動かすと激痛が走るような「急性期」には、安静が必要です。無理に動かすと炎症を悪化させる可能性があります。
しかし、痛みが慢性的に続いている場合や、症状が落ち着いている「慢性期」においては、過度な安静は逆効果になることがあります。
動かさないことで筋力が低下し、関節の動きも硬くなってしまう(拘縮)ためです。
痛みのない範囲で、あるいは少し痛くても我慢できる範囲で、適度に動かすことが機能の維持につながります。
Q どのような運動が股関節に良いですか?
股関節に負担をかけずに筋力を維持・強化できる運動が推奨されます。最も良いとされる運動の一つが「水中ウォーキング」や「水泳(クロール、背泳ぎ)」です。
水中では浮力が働くため、股関節に体重の負荷をかけることなく、筋肉を安全に鍛えることができます。
陸上で行う場合は、自転車(エアロバイク)も、体重の負荷がかかりにくいため適しています。
ウォーキングは手軽ですが、痛みが出る場合は距離を短くしたり、杖を使ったりする工夫が必要です。
Q サプリメントは効果がありますか?
股関節の健康に関連して、グルコサミンやコンドロイチン、ヒアルロン酸などのサプリメントがよく知られています。
これらは関節軟骨の成分であり、その補給を目的としていますが、摂取したサプリメントが直接股関節の軟骨として再生されるかについては、科学的な証拠がまだ十分とは言えません。
痛みが和らいだと感じる人もいますが、効果には個人差が大きいのが実情です。
あくまで食事の補助として考え、過度な期待はせず、基本となるバランスの良い食事を心がけることが重要です。
Q 痛み止めを使い続けても大丈夫ですか?
痛み止め(非ステロイド性抗炎症薬など)は、痛みを和らげ、日常生活を送りやすくするために有効な手段です。
痛みを我慢しすぎて活動量が極端に減ってしまうよりも、薬を使って痛みをコントロールしながら適度な運動(リハビリ)を行う方が、長期的に見て良い結果につながることがあります。
ただし、長期間の使用は、胃腸障害や腎機能への影響など、副作用のリスクも伴います。自己判断で使い続けるのではなく、必ず医師の管理のもとで、必要最小限の量と期間で使用することが大切です。
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