股関節の鈍痛が続く場合の原因究明と対策
股関節のあたりがなんとなく重い、ズキズキする、奥の方が痛む。そのような「鈍痛」が続くと、日常生活で不安を感じるものです。
「そのうち治るだろう」と思っていても、痛みが引かずに慢性化すると、歩くことや立つことさえつらくなるかもしれません。
この記事では、股関節の鈍痛がなぜ続くのか、その原因として考えられること、そしてご自身でできる対策や医療機関を受診する目安について、詳しく解説していきます。
目次
股関節の鈍痛とはどのような痛みか
股関節の鈍痛とは、「ズキズキ」「じんじん」「重だるい」といった、鋭い痛みとは異なる持続的で不快な感覚を指します。
痛みの境界がはっきりせず、股関節の奥深い部分や、お尻、太ももの付け根あたりに漠然とした痛みを感じることが多いのが特徴です。
鈍痛の具体的な感覚
鈍痛の感じ方には個人差がありますが、多くの場合「重苦しい」「圧迫されるような感じ」「じわじわと痛む」と表現されます。
鋭い痛みのように一瞬で走るものではなく、長時間にわたって持続する、あるいは特定の動作をきっかけに現れては消えることを繰り返します。
このはっきりしない痛みが、日常生活での不安感やストレスの原因にもなります。
痛みを感じやすい状況や時間帯
股関節の鈍痛は、特定の状況や時間帯に現れやすい傾向があります。例えば、長時間座った後や寝て起きた朝に、動き始めの第一歩で痛みを感じる「始動時痛」はその典型です。
また、たくさん歩いた後や運動した後など、股関節に負担がかかった日の夜に痛みが増すこともあります。天気が悪い日や体が冷えた時に痛みが強くなると感じる人もいます。
痛みが出やすい主なシチュエーション
| シチュエーション | 特徴 | 補足 |
|---|---|---|
| 動き始め(朝、長時間の座位後) | こわばりと共に鈍い痛みが出る | 少し動くと和らぐこともある |
| 長距離の歩行後 | 疲労と共にじわじわ痛む | 股関節への負荷が蓄積した結果 |
| 階段の上り下り | 特定の角度で痛みを感じる | 特に下りよりも上りで負担がかかる |
鈍痛以外の随伴症状
股関節の鈍痛には、他の症状が伴うことが少なくありません。代表的なものに「可動域制限」があります。
これは、股関節が動く範囲が狭くなることで、靴下を履く、足の爪を切る、あぐらをかくといった動作がしにくくなります。
また、股関節周りの筋肉がこわばる感じや、動かした時に「ゴリゴリ」「ポキポキ」といった音が鳴る(クリック音)場合もあります。
症状が進行すると、痛みをかばうために歩き方が不自然になる「跛行(はこう)」が見られることもあります。
なぜ痛みを放置してはいけないのか
「鈍痛だからまだ大丈夫」と考えるのは注意が必要です。鈍痛は、股関節の軟骨がすり減り始めたり、周囲の組織に炎症が起きていたりする初期のサインである可能性が高いからです。
この段階で放置すると、股関節の状態は徐々に悪化する一方です。痛みをかばうことで膝や腰など他の部位にも負担がかかり、新たな痛みの原因を生む悪循環に陥ることもあります。
早期に原因を突き止め、適切な対策を講じることが、将来的な機能低下を防ぐ上で非常に重要です。
股関節に鈍痛が起こる主な原因
股関節の鈍痛は、単一の原因ではなく、複数の要因が絡み合って発生することが多いです。
原因は大きく分けて、日常生活の習慣によるものと、何らかの病気や怪我によるものに分類できます。
日常生活に潜む原因
普段の何気ない動作や習慣が、知らず知らずのうちに股関節への負担を蓄積させ、鈍痛を引き起こすことがあります。
悪い姿勢と座り方
猫背や反り腰、あるいは椅子に浅く腰掛けて背もたれに寄りかかるような姿勢は、骨盤のバランスを崩します。
骨盤が傾くと、股関節が正しい位置からずれ、特定の場所に継続的なストレスがかかり、筋肉の緊張や関節への負担となって鈍痛を招きます。
特に「脚を組む」癖は、左右のバランスを著しく崩すため注意が必要です。
過度な運動または運動不足
ランニングやジャンプを多用するスポーツなど、股関節に繰り返し強い衝撃が加わる運動は、軟骨や周囲の組織を傷める原因となります。
一方で、運動不足も問題です。股関節周りの筋力が低下すると、関節を支える力が弱まり、わずかな動作でも関節自体への負担が大きくなります。
また、筋肉が硬くなることで血流が悪くなり、痛みを引き起こす物質が蓄積しやすくなります。
体重の増加による負荷
股関節は、体重を支える重要な役割を担っています。歩行時には体重の3〜4倍、階段の上り下りではそれ以上の負荷がかかると言われています。
体重が1kg増えるだけでも、股関節にはその数倍の負担増となります。この持続的な過剰負荷が、軟骨のすり減りを早めたり、炎症を引き起こしたりして、鈍痛の原因となります。
病気や怪我が関係する原因
鈍痛の背景には、股関節そのものの病気や、過去の怪我が隠れている場合があります。
変形性股関節症
日本において股関節の痛みの原因として最も多い病気の一つです。関節の軟骨がすり減り、骨が変形していくことで痛みや可動域制限が生じます。
初期段階では、動き始めの鈍痛や重だるさが主な症状です。進行すると痛みが強くなり、安静時にも痛むようになります。
臼蓋形成不全
股関節の受け皿である「臼蓋(きゅうがい)」の発育が不十分で浅いため、大腿骨頭(太ももの骨の先端)を十分に覆えていない状態を指します。
このため、関節が不安定になりやすく、狭い範囲に体重が集中してかかるため、軟骨がすり減りやすい素因となります。
若い頃は無症状でも、年齢とともに鈍痛が現れ、変形性股関節症に移行することが多いとされています。
股関節唇損傷
臼蓋の縁を取り巻く「関節唇(かんせつしん)」という軟骨組織が損傷する状態です。スポーツや日常生活の動作で股関節を深く曲げたりひねったりすることで傷つくことがあります。
股関節の奥の方の痛みや、特定の動作での引っかかり感、鈍痛の原因となります。
その他の関節炎や筋肉の問題
関節リウマチなどの自己免疫疾患による関節炎、あるいは股関節周辺の筋肉(臀部や太ももの筋肉)の過度な緊張や炎症、腱の炎症(腱炎)なども、股関節周辺の鈍痛を引き起こすことがあります。
鈍痛が続く場合に考えられる股関節の病気
一時的な筋肉痛や疲労であれば数日で改善しますが、股関節の鈍痛が何週間も続く、あるいは徐々に強くなる場合は、単なる使い過ぎではなく、特定の病気が進行している可能性があります。
変形性股関節症の進行
初期の変形性股関節症は、休めば治まる程度の鈍痛ですが、放置すると軟骨のすり減りが進み、骨の変形(骨棘:こつきょく)が起こります。
この段階になると、鈍痛はより持続的になり、夜間に痛む(夜間痛)ことや、安静にしていても痛む(安静時痛)ことが増えてきます。
歩行能力も徐々に低下し、生活の質に大きく影響します。
変形性股関節症の進行段階と主な症状
| 進行段階 | 主な症状 | 特徴 |
|---|---|---|
| 初期 | 始動時痛、疲労時の鈍痛 | 休むと改善することが多い |
| 進行期 | 持続的な鈍痛、可動域制限 | 靴下履きや爪切りが困難になる |
| 末期 | 安静時痛、夜間痛、強い跛行 | 日常生活に大きな支障が出る |
関節リウマチの可能性
関節リウマチは、免疫の異常により全身の関節に炎症が起こる病気です。股関節に発症すると、鈍痛やこわばりを引き起こします。
変形性股関節症との違いは、朝のこわばりが強いことや、手足の指など他の関節にも同時に症状が出ることが多い点です。
血液検査などで診断を行いますが、股関節の痛みが初発症状となることもあります。
大腿骨頭壊死症とは
大腿骨頭(太ももの骨の先端)への血流が何らかの原因で途絶え、骨の組織が死んでしまう(壊死する)病気です。壊死した部分は体重を支えきれず、やがて潰れて(陥没して)しまいます。
原因不明の特発性のほか、ステロイド薬の多用やアルコールの多飲と関連があるとも言われています。
初期は無症状のこともありますが、壊死が進行し陥没が始まると、急激な痛みや持続的な鈍痛が現れます。
疲労骨折や筋肉・腱の損傷
マラソン選手やスポーツ愛好家など、繰り返し股関節に負荷をかける人は、骨に微細なヒビが入る「疲労骨折」を起こすことがあります。
場所によっては(大腿骨頸部など)、安静にしても治まらない鈍痛が続くことがあります。
また、股関節周辺の筋肉や腱を部分的に損傷(肉離れや腱炎)し、その修復がうまくいかずに慢性的な鈍痛として残るケースもあります。
股関節の鈍痛を感じた時の初期対応
股関節に鈍痛を感じ始めたら、まずは無理をせず、症状を悪化させないための対応をとることが大切です。
ただし、これらは一時的な対処であり、痛みが続く場合は原因究明が必要なことを念頭に置いてください。
まずは安静にする
痛みを感じる動作を避けることが基本です。ウォーキングやスポーツなど、股関節に負担をかける活動は一時的に中止するか、強度を大幅に落とす必要があります。
日常生活でも、重いものを持つ、長距離を歩く、階段を頻繁に使うといった行動は極力控えます。痛みを我慢して動かし続けると、炎症が悪化し、回復が遅れる可能性があります。
痛む部分を冷やすか温めるか
この判断はしばしば迷う点ですが、症状によって使い分けるのが一般的です。
運動直後や、特定の動作で強く痛んだ直後など、熱感や腫れを感じる場合は「急性期」と考え、炎症を抑えるために冷やす(アイシング)のが適切です。
一方、慢性的な鈍痛で、熱感はなく、動かすとこわばるような場合は、温める(温熱)ことで血流を促進し、筋肉の緊張を和らげ、痛みを軽減できることがあります。
冷却と温熱の使い分け目安
| 対応 | 適した症状 | 目的 |
|---|---|---|
| 冷やす(冷却) | 熱感がある、腫れている、運動直後 | 炎症を抑える、痛みを鎮める |
| 温める(温熱) | 慢性的な鈍痛、こわばり、冷えを感じる | 血流促進、筋肉の緊張緩和 |
市販薬(湿布や鎮痛薬)の使用
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を含む湿布薬や塗り薬は、皮膚から薬剤が浸透し、局所の炎症や痛みを和らげる効果が期待できます。
飲み薬の鎮痛薬も痛みを一時的に抑えるのには役立ちますが、胃腸への負担なども考慮し、説明書をよく読んで使用期間を守る必要があります。
これらは根本的な原因を治すものではなく、あくまで「痛みを緩和する」ための対症療法であると理解しておくことが重要です。
やってはいけないこと
痛みを早く治したい一心で、自己流の強いマッサージやストレッチを行うことは逆効果になる場合があります。
特に炎症が起きている時期に強く揉んだり、無理に関節をひねったりすると、組織の損傷を悪化させる危険があります。
また、「痛みを我慢して動かせば治る」という考え方も危険です。痛みは体からの危険信号であり、それを無視して負荷をかけ続けると、症状は確実に進行します。
医療機関を受診する目安
股関節の鈍痛は、休息によって改善することもありますが、特定のサインが見られた場合は、自己判断で様子を見続けず、専門家である医師の診断を受けるべきです。
早期受診が、重症化を防ぐ鍵となります。
どのタイミングで病院へ行くべきか
以下のような症状が続く場合は、医療機関の受診を強く推奨します。
これらのサインは、単なる筋肉疲労ではなく、関節や骨に何らかの異常が起きている可能性を示唆しています。
- 安静にしていても痛みが治まらない、または夜間に痛みで目が覚める。
- 2週間以上、鈍痛が断続的または持続的に続いている。
- 痛みが徐々に強くなっている。
- 足の爪切りや靴下履きなど、股関節の動きが明らかに悪くなった。
- 痛みをかばって歩き方がおかしくなった(跛行)。
何科を受診すればよいか
股関節の痛みや機能障害を専門とするのは「整形外科」です。整形外科では、骨、関節、筋肉、神経など運動器全般の診断と治療を行います。
まずは近くの整形外科クリニックを受診し、必要に応じて股関節を専門とする医師や、より高度な検査が可能な総合病院を紹介してもらうのが一般的な流れです。
医師に伝えるべき情報
正確な診断のためには、医師に具体的な情報を提供することが大切です。受診前に以下の点を整理しておくとスムーズです。
受診時に整理しておきたい情報
| 項目 | 具体的な内容(例) |
|---|---|
| いつから痛むか | 約1ヶ月前から、3日前に急に |
| 痛みのきっかけ | たくさん歩いた翌日から、特にきっかけはない |
| どんな痛みか | 奥の方が重だるい、ズキッと走る時もある |
| どんな時に痛むか | 歩き始め、階段の上り、長時間座った後 |
| 困っている動作 | 靴下が履きにくい、あぐらがかけない |
病院で行う検査の流れ
整形外科では、まず問診(上記のような情報提供)と診察(視診、触診、可動域の確認)を行います。医師が股関節を実際に動かしながら、痛みの出る角度や動きの制限をチェックします。
その上で、画像検査に進むのが一般的です。
最も基本となるのは「レントゲン(X線)検査」です。この検査によって、骨の形状、関節の隙間(軟骨の厚さ)、骨の変形(骨棘)の有無、臼蓋形成不全の程度などを評価します。
多くの股関節疾患の診断に有用です。
レントゲンで明らかな異常がなくても痛みが強い場合や、関節唇損傷、大腿骨頭壊死症の初期、筋肉や腱の問題が疑われる場合は、「MRI検査」が非常に有効です。
MRIは磁力を利用して体の断面を撮影するため、レントゲンでは見えない軟骨、関節唇、筋肉、腱、骨内部の状態(壊死や炎症など)を詳細に調べることが可能です。
股関節の鈍痛に対する専門的な対策と治療
医療機関では、検査結果に基づいて診断を確定し、その原因と症状の進行度に応じた治療計画を立てます。
治療の基本は、痛みをコントロールし、股関節の機能を維持・改善することにあります。
保存療法(運動療法・物理療法)
手術以外の方法を総称して「保存療法」と呼びます。
特に変形性股関節症の初期から進行期においては、保存療法が治療の中心となります。これには運動療法や物理療法が含まれます。
筋力トレーニング
股関節の安定性を高めるために、お尻周りの筋肉(中殿筋など)や太ももの筋肉(大腿四頭筋)を鍛えることは非常に重要です。
筋力がつくことで、関節にかかる衝撃を筋肉が吸収・分散し、負担を軽減します。
ただし、自己流で行うと逆に痛めることもあるため、理学療法士などの専門家の指導のもと、正しい方法で負荷の少ない運動から始めることが推奨されます。
ストレッチング
股関節周りの筋肉が硬くなると、関節の動きが制限され、痛みも感じやすくなります。
特に股関節の内側(内転筋)や前側(腸腰筋)の筋肉は硬くなりやすいため、無理のない範囲でゆっくりとストレッチを行い、柔軟性を保つことが大切です。
これも痛みが出ない範囲で行うのが原則です。
日常生活動作の指導
理学療法士は、股関節に負担をかけない体の使い方を指導します。例えば、床からの立ち座り、階段の上り下り、入浴動作など、日常の具体的な場面での工夫を学びます。
杖の使用も有効な手段の一つで、痛む股関節と反対側の手で杖を持つことで、股関節への負荷を大幅に減らすことができます。
薬物療法
痛みが強い時期には、薬物療法を併用します。非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の飲み薬や貼り薬で炎症と痛みを抑えます。
ただし、これらは対症療法であり、長期的な使用は胃腸障害などの副作用も考慮する必要があります。痛みを薬で抑えている間に、上記の運動療法や生活改善を進めることが理想的です。
主な保存療法の比較
| 治療法 | 目的 | 主な内容 |
|---|---|---|
| 運動療法 | 筋力強化、安定性向上 | 中殿筋トレーニング、水中ウォーキング |
| 物理療法 | 疼痛緩和、血流改善 | 温熱療法、低周波治療 |
| 薬物療法 | 炎症鎮静、疼痛緩和 | 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs) |
手術療法(どのような場合に検討するか)
保存療法を数ヶ月続けても痛みが改善しない場合、日常生活に大きな支障が出ている場合、あるいは画像検査で軟骨のすり減りや骨の変形が著しく進行している(末期)場合には、手術療法が検討されます。
代表的な手術には「人工股関節置換術」があります。これは、損傷した股関節の表面を取り除き、金属やセラミックなどでできた人工の関節に置き換える手術です。
除痛効果が非常に高く、多くの場合で歩行能力が劇的に改善します。
その他、比較的若年者で骨の変形が軽度な場合には、自分の骨を利用して関節の適合性を改善する「骨切り術」などが選択されることもあります。
日常生活でできる股関節の鈍痛セルフケア
股関節の鈍痛を管理し、悪化を防ぐためには、医療機関での治療と並行して、日常生活でのセルフケアを継続することが極めて重要です。
股関節への負担を減らす「守り」と、関節を支える力をつける「攻め」の両面から取り組みます。
股関節に負担をかけない生活習慣
日々の動作を見直すことで、股関節への余計なストレスを減らすことができます。特に日本の生活様式は股関節に負担をかけやすいため、意識的な改善が必要です。
正しい座り方・立ち方
椅子に座る際は、深く腰掛け、骨盤を立てる(背筋を軽く伸ばす)ことを意識します。足は組まず、両足の裏が床にしっかり着く高さの椅子を選びます。
ソファなど柔らかすぎて沈み込む椅子は、立ち上がりにくく股関節に負担がかかるため避けた方が賢明です。
床に座る(あぐら、横座り、正座)のは、股関節を深く曲げるため、できるだけ避けて椅子中心の生活に切り替えることを推奨します。
靴の選び方
歩行時の衝撃は、足裏から股関節に伝わります。クッション性が高く、足にフィットした靴(スニーカーなど)を選ぶことで、この衝撃を和らげることができます。
ハイヒールや底の硬い靴は、不安定で股関節への負担が増えるため、長距離歩く際には避けるべきです。
体重管理の重要性
前述の通り、体重は股関節の負荷に直結します。もし体重が標準を上回っている場合、適正体重に近づける努力(食事の見直しや低負荷の運動)は、最も効果的なセルフケアの一つです。
体重が減ることで、股関節の痛みが軽減することは多くの研究で示されています。
生活動作の工夫
| 避けるべき動作 | 推奨される動作 |
|---|---|
| 床からの立ち座り | 椅子やベッドを利用する |
| 重い荷物を持つ | カートを利用する、小分けにする |
| 長時間の立ち仕事 | 時々座って休む、台に片足を乗せる |
股関節周りの筋肉をほぐすストレッチ
痛みがあるときは無理禁物ですが、お風呂上がりなどで体が温まっている時に、痛みが出ない範囲でゆっくりと筋肉を伸ばすことは有効です。
特にお尻(殿筋群)や太ももの裏側(ハムストリングス)、内側(内転筋)の柔軟性を保つことで、股関節の動きがスムーズになります。
簡単なストレッチの例
- お尻のストレッチ(仰向けで片膝を胸に抱える)
- 太もも裏のストレッチ(椅子に浅く座り片足を伸ばす)
股関節を支える筋力トレーニング
股関節の鈍痛を抱えている場合、負荷の大きいスクワットなどは避けるべきです。関節に体重をかけない状態(非荷重位)で行うトレーニングから始めます。
代表的な運動は「お尻上げ(ヒップリフト)」です。仰向けに寝て両膝を立て、お尻をゆっくり持ち上げて数秒キープし、ゆっくり下ろします。
この運動は、股関節を支える中殿筋や大殿筋を安全に鍛えることができます。また、横向きに寝て、上側の脚をゆっくり開閉する運動(クラムシェル)も中殿筋強化に有効です。
非荷重での筋力トレーニング
| 運動名 | 鍛えられる主な筋肉 | ポイント |
|---|---|---|
| ヒップリフト(お尻上げ) | 大殿筋、ハムストリングス | 腰を反らさずお尻を締める |
| クラムシェル | 中殿筋(お尻の横) | 体幹が動かないように固定する |
股関節の鈍痛に関するよくある質問
鈍痛はどれくらい続いたら受診すべきですか?
明らかな原因(激しい運動など)がなく、休息しても2週間以上痛みが続く場合や、痛みが徐々に強くなる場合、日常生活の動作(靴下履きなど)に支障が出始めた場合は、一度整形外科を受診することをお勧めします。
湿布は貼り続けても大丈夫ですか?
湿布は炎症や痛みを一時的に抑えるものですが、根本的な原因を治しているわけではありません。
漫然と使い続けるのではなく、5〜7日程度使用しても痛みが変わらない、あるいは悪化する場合は使用を中止し、医師の診察を受けてください。
運動は一切しない方が良いのでしょうか?
痛みが出ている最中に、ランニングやジャンプなど股関節に衝撃がかかる運動をするのは避けるべきです。
しかし、痛みのない範囲での運動(筋力トレーニングやストレッチ)、特にプールでの水中ウォーキングなどは、関節に負担をかけずに筋力を維持・向上できるため推奨されることが多いです。
どのような運動が適切かは、ご自身の状態によって異なるため、医師や理学療法士に相談するのが最も安全です。
痛み止めを飲み続けることに問題はありますか?
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などの痛み止めは、長期間服用すると胃腸障害や腎機能への影響など、副作用のリスクがあります。
痛み止めが必要な状態が続くということは、それだけ股関節の状態が良くないというサインでもあります。
薬で痛みを抑えるだけでなく、痛みの根本原因に対する治療(運動療法や生活改善など)に取り組むことが重要です。
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