足立慶友医療コラム

股関節が痛い症状が続くときの原因と治療法

2025.11.27

股関節が痛い症状が続くと、歩く、立つ、座るといった日常の基本動作が辛くなり、生活の質が大きく低下してしまいます。

痛みの原因は、加齢による関節の変形から、筋肉の炎症、あるいは腰など他の部位からの影響まで多岐にわたります。

この記事では、長引く股関節の痛みに不安を感じている方に向けて、痛みの背景にある病気や原因、自分でできるチェック方法、そして適切な治療の選択肢について、医学的な観点から詳しく丁寧に解説します。

正しい知識を持つことが、痛みのない生活を取り戻す第一歩となります。

股関節の構造と痛みが起こる仕組み

股関節の痛みは、体重を支える骨と骨の間のクッション機能が低下したり、関節を包む組織が炎症を起こしたりすることで発生します。

人間の体の中で最大級の関節である股関節は、大腿骨の骨頭という球状の部分が、骨盤の寛骨臼という受け皿にはまり込む構造をしています。

この精巧な作りが、歩行時のスムーズな動きと体重の支持を両立させます。

骨と軟骨の役割と痛みの発生源

正常な股関節では、骨の表面を弾力性のある軟骨が覆っています。この軟骨は水分を多く含み、関節が動く際の摩擦を限りなくゼロに近づけるとともに、歩行時の衝撃を吸収する役割を果たします。

しかし、長年の使用や過度な負担、怪我などがきっかけとなり、この軟骨がすり減ることがあります。

軟骨自体には痛みを感じる神経は通っていませんが、軟骨が摩耗して骨同士が直接ぶつかり合うようになると、骨膜にある神経が刺激され、激しい痛みを生じます。

また、すり減った軟骨の破片が関節内を刺激し、滑膜という組織に炎症(滑膜炎)を引き起こすことも、持続的な痛みの大きな原因となります。

股関節を構成する主要な組織とその機能

組織名主な機能痛みの要因
関節軟骨衝撃吸収と摩擦軽減摩耗による機能不全
関節包・滑膜関節を包み、潤滑液を分泌炎症(滑膜炎)による腫れと痛み
関節唇骨頭の安定性を高めるパッキン亀裂や損傷による引っかかり感

筋肉と靭帯の影響による痛み

骨や軟骨の問題だけでなく、股関節の周りを取り囲む筋肉や靭帯の状態も痛みに直結します。中殿筋や小殿筋といった筋肉は、歩行時に骨盤を安定させるために働きます。

運動不足や加齢でこれらの筋肉が衰えたり、逆に使いすぎて硬くなったりすると、股関節本来の動きが妨げられます。

筋肉が硬くなると血行が悪くなり、発痛物質が蓄積して鈍い痛みやだるさを引き起こします。また、関節を守る靭帯が損傷したり、石灰が沈着したりすることも、鋭い痛みの原因となり得ます。

このように、股関節が痛いという症状は、骨、軟骨、筋肉、神経が複雑に関係し合って生じます。

痛む場所による原因の違い

「股関節が痛い」と一口に言っても、患者さんが指し示す場所はさまざまです。鼠径部(脚の付け根の前側)が痛む場合は、股関節そのものの変形や炎症が疑われます。

一方で、お尻の外側や後ろ側が痛む場合は、腰の神経の圧迫や、お尻の筋肉のトラブルである可能性が高まります。

痛む場所を正確に把握することは、原因を特定するために極めて重要です。

股関節の痛みを引き起こす主要な病気

股関節が痛い症状が続く場合、変形性股関節症が最も疑われる原因ですが、他にも特発性大腿骨頭壊死症や関節リウマチなど、早急な対応が必要な疾患が隠れていることがあります。

それぞれの病気には特徴的な進行パターンと症状があります。

変形性股関節症の進行と症状

日本国内で股関節の痛みを訴える患者さんのうち、最も多くの割合を占めるのが変形性股関節症です。

この病気は、関節軟骨が少しずつ摩耗し、関節の隙間が狭くなり、最終的には骨そのものが変形してしまう進行性の疾患です。

初期段階では、動き始めや長時間歩いた後に軽い違和感や痛みを感じる程度ですが、進行期になると安静にしていても痛むようになります。

末期には関節の隙間が完全になくなり、脚の長さが変わったり、靴下を履く動作や爪切りが困難になったりするなど、日常生活に大きな支障をきたします。

大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI)

近年注目されているのが、大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI)です。

これは、大腿骨と骨盤の骨の形状が生まれつき、あるいは発育過程でわずかに適合せず、股関節を深く曲げたり捻ったりしたときに骨同士が衝突(インピンジメント)してしまう状態を指します。

この衝突が繰り返されることで、関節の縁にある関節唇という軟骨組織が傷つき、痛みが発生します。

スポーツをする若い世代や活動的な中高年に多く見られ、放置すると将来的に変形性股関節症へと進行するリスクがあります。

主要な股関節疾患の特徴比較

病名発症の特徴痛みの性質
変形性股関節症徐々に進行する動作時痛から安静時痛へ悪化
大腿骨頭壊死症突然発症することが多い急激な強い痛み
関節リウマチ全身の関節に起こりうる朝のこわばり、腫れ、熱感

特発性大腿骨頭壊死症のリスク

大腿骨頭への血液供給が何らかの原因で途絶え、骨の組織が壊死してしまう病気です。

ステロイド薬の大量投与を受けた経験がある方や、アルコールを多量に摂取する習慣がある方に発症リスクが高いことが知られています。

壊死した骨の部分が体重に耐えきれずに潰れてしまう(陥没する)瞬間に、激しい痛みを感じます。

初期の段階ではレントゲンに写りにくいため、MRI検査での早期発見が必要となります。国の指定難病にも認定されており、専門的な治療を要します。

感染性および炎症性疾患

細菌が股関節に入り込んで化膿する化膿性股関節炎や、免疫の異常によって関節が破壊される関節リウマチも痛みの原因となります。

これらは急速に関節を破壊する恐れがあるため、発熱や強い腫れを伴う場合は、一刻も早い医療機関への受診が必要です。

特に化膿性股関節炎は緊急手術が必要になるケースも少なくありません。

女性と思春期・更年期における股関節痛

股関節の痛みは男性よりも女性に多く見られ、その背景には骨盤の形状の違いやホルモンバランスの変化、そして日本人に多い臼蓋形成不全が深く関わっています。

ライフステージごとに注意すべきポイントが異なります。

臼蓋形成不全と女性の股関節痛

日本人の女性に特に多いのが、臼蓋形成不全(寛骨臼形成不全)です。これは骨盤側の受け皿(寛骨臼)が浅く、大腿骨頭を十分に覆えていない状態を指します。

受け皿が浅いため、接触面積が小さくなり、体重がかかる部分に圧力が集中してしまいます。

若い頃は筋肉で支えられて無症状で過ごせることも多いですが、30代、40代となり筋力が低下したり、体重が増加したりすると、軟骨への負担が限界を超えて痛みが表面化します。

これが、多くの日本人女性が変形性股関節症を発症する最大の要因です。

妊娠・出産と股関節への負担

妊娠中は、出産に備えて骨盤の関節や靭帯を緩めるホルモン(リラキシン)が分泌されます。このホルモンの作用で骨盤が不安定になりやすく、股関節周りの筋肉に過度な負担がかかります。

さらに、胎児の成長に伴う体重増加や重心の変化が加わることで、股関節やお尻、腰に痛みが生じやすくなります。

産後も、授乳や抱っこなどの育児動作が負担となり、痛みが続くケースがあります。多くは一時的なものですが、無理をすると慢性的な痛みに移行することもあります。

女性のライフステージと股関節リスク

時期主なリスク要因対策
思春期スポーツ障害、側弯症適切なフォーム習得
妊娠・産後ホルモン、体重増加骨盤ベルト、適度な休息
更年期以降骨密度低下、筋力低下筋トレ、骨粗鬆症対策

更年期と骨粗鬆症の影響

閉経を迎えると、骨の健康を守るエストロゲンというホルモンの分泌が急激に減少します。その結果、骨密度が低下し、骨粗鬆症のリスクが高まります。

骨が脆くなると、わずかな転倒や衝撃で大腿骨近位部骨折(足の付け根の骨折)を起こしやすくなります。

また、軟骨の代謝も変化し、変形性股関節症の進行が加速することもあります。この時期の女性にとって、骨密度の管理と転倒予防は、股関節の健康を守る上で極めて重要です。

急な痛みと慢性的な痛みの見分け方

急な激痛は外傷や炎症の可能性が高く、徐々に強くなる鈍い痛みは変性の可能性が高い傾向にあり、発症のタイミングと痛みの性質からある程度の原因を推測できます。

スポーツや事故による急性外傷

転倒したり、スポーツで強く足を捻ったりした直後から痛む場合は、骨折、脱臼、靭帯損傷、肉離れなどの急性外傷が疑われます。

特に高齢者の場合、転倒後に立てない、あるいは足の付け根が痛くて動かせないという場合は、大腿骨近位部骨折の可能性が極めて高いです。

これは寝たきりの原因となる重大な怪我であり、救急車を呼ぶなど即座の対応が必要です。

また、スポーツ選手における急な鼠径部痛は、股関節唇損傷や鼠径部痛症候群(グロインペイン症候群)などが考えられます。

使いすぎによるオーバーユース症候群

ランニングやウォーキングを習慣にしている人で、徐々に痛みが強くなってきた場合は、オーバーユース(使いすぎ)による炎症の可能性があります。

腸脛靱帯炎や大転子滑液包炎などが代表的です。これらは、休息を取らずに運動を続けたことによる組織の微細な損傷の蓄積が原因です。

初期段階であれば安静とアイシングで改善しますが、無理を続けると難治性の痛みに変わるため、練習量の調整が必要です。

痛みの性質による分類と対応

分類特徴的な症状推奨される対応
急性痛受傷機転がある、腫れ、熱感RICE処置、即時の受診
亜急性痛数日から数週間続く、負荷で悪化活動量制限、理学療法
慢性痛3ヶ月以上持続、日によって変動原因疾患の治療、運動療法

加齢に伴う慢性的な不調

特に思い当たる怪我がないのに、何ヶ月も、あるいは何年も痛みが続いている場合は、変形性股関節症などの慢性疾患が背景にあります。

この場合、痛みは「危険信号」というよりも、関節の構造的な変化や機能不全を知らせるサインです。

痛いからといって動かさないでいると、関節が固まり(拘縮)、筋力が落ちてさらに痛くなるという悪循環に陥ります。

慢性痛に対しては、安静にするよりも、適切な範囲で動かしていく積極的な保存療法が中心となります。

股関節以外に原因がある場合(関連痛)

股関節が痛いと感じていても、実はその痛みの発生源は腰椎や内臓にあり、神経を通じて股関節領域に痛みを感じている「関連痛」であるケースが少なくありません。

腰椎疾患による下肢への放散痛

腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症は、腰の神経を圧迫する病気ですが、その症状としてお尻や太もも、鼠径部に痛みやしびれが出ることがよくあります。

これを坐骨神経痛や大腿神経痛と呼びます。特徴としては、腰を反らしたり前屈したりすると足の痛みが強くなる、足の感覚が鈍い、力が入らないといった神経症状を伴うことが挙げられます。

股関節を動かしてもあまり痛くないのに、歩くと痛い、あるいは安静にしていてもジンジン痛むといった場合は、腰の検査を行うことが重要です。

鼠径ヘルニアや内臓疾患の影響

外科的な病気である鼠径ヘルニア(脱腸)も、足の付け根の痛みの原因となります。

腸などの臓器が腹壁の隙間から皮膚の下にはみ出してくる病気で、立った時やお腹に力を入れた時に鼠径部が膨らみ、痛みや違和感を生じます。

また、稀ではありますが、骨盤内の腫瘍や婦人科系の疾患、尿管結石などが、股関節周辺の痛みとして感じられることもあります。

内科的な症状(発熱、腹痛、血尿など)を伴う場合は、整形外科以外の専門科の受診を検討します。

股関節痛と間違えやすい他部位の疾患

発生源主な疾患名見分けるポイント
腰椎椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症しびれ、腰の動きで痛みが変化
腹壁鼠径ヘルニア鼠径部の膨らみ、押すと戻る
筋肉梨状筋症候群お尻の奥の痛み、座ると悪化

仙腸関節障害

骨盤の後ろにある仙腸関節という関節の動きが悪くなったり、炎症を起こしたりすると、お尻から鼠径部、太ももにかけて痛みが出ます。

これも股関節の痛みと非常に混同しやすい症状です。出産後の女性や、腰に負担のかかる重労働をしている人に多く見られます。

仙腸関節由来の痛みは、画像診断では異常が見つかりにくく、詳細な身体所見やブロック注射の効果判定によって診断をつけます。

病院での検査と自分で行うセルフチェック

正確な診断のためには専門医による画像検査が必要ですが、パトリックテストなどの簡易的なチェックを自宅で行うことで、股関節の異常をある程度推測できます。

パトリックテストと可動域確認

股関節の異常を調べる代表的な方法に「パトリックテスト」があります。仰向けに寝て、痛い方の足のくるぶしを反対側の膝の上に乗せ、膝を外側に開いて数字の「4」の字を作ります。

そして、開いた膝を床に向かってゆっくり押します。

この時、股関節や鼠径部に痛みが出たり、反対側に比べて開きが悪かったりする場合は、股関節に何らかの問題がある可能性が高いと言えます。

また、仰向けの状態で膝を胸に抱え込む動作ができるかどうかも確認します。股関節症が進んでいると、膝が胸まで届かず、痛みが生じます。

  • 靴下が履きにくくなった
  • 爪切りが苦痛に感じる
  • あぐらをかけなくなった
  • 階段の上り下りで手すりが必要になった

画像診断(レントゲン・MRI・CT)の重要性

医療機関では、まずレントゲン検査を行い、骨の形、関節の隙間の広さ、骨棘(骨のトゲ)の有無を確認します。変形性股関節症の多くはレントゲンで診断が可能です。

しかし、初期の軟骨損傷、骨頭壊死、関節唇損傷、筋肉や腱の炎症などはレントゲンには写りません。これらを詳しく調べるためにMRI検査が行われます。

MRIは骨以外の組織の状態を鮮明に映し出すため、痛みの原因を特定する上で非常に有力なツールです。手術を計画する際には、骨の3次元的な形状を把握するためにCT検査も併用されます。

受診すべき危険なサイン

「そのうち治るだろう」と放置してはいけない症状があります。以下の兆候がある場合は、ためらわずに整形外科を受診してください。

  • 安静にしていてもズキズキ痛む(夜間痛)
  • 発熱を伴う股関節の痛み
  • 転倒後に歩けなくなった
  • 足にしびれや麻痺がある
  • 痛みが日に日に強くなっている

保存療法から手術まで:段階的な治療の選択肢

股関節の痛みの治療は、基本的には体への負担が少ない保存療法から開始し、効果が不十分な場合や変形が重度な場合に手術療法を検討するという段階的なアプローチをとります。

薬物療法と注射による痛みの管理

痛みが強い時期には、消炎鎮痛剤(NSAIDs)を使用して炎症を抑え、痛みの悪循環を断ち切ります。長期間の服用は胃腸や腎臓への負担があるため、湿布や塗り薬などの外用薬も併用します。

痛みが局所的で強い場合には、関節内にヒアルロン酸やステロイド、局所麻酔薬を注射することもあります。

これらはあくまで一時的な痛みの緩和手段ですが、痛みを取り除くことでリハビリテーションに取り組みやすくするという重要な意義があります。

理学療法とリハビリテーション

保存療法の中心となるのが運動療法です。理学療法士の指導のもと、股関節の周りの筋肉を柔軟にし、筋力を強化します。

股関節にかかる負担を減らすには、体重のコントロールとともに、中殿筋や大腿四頭筋などの筋力が重要です。

また、水中ウォーキングは浮力を利用して関節への負荷を減らしつつ運動できるため、非常に効果的な方法です。

杖の使用や靴のインソールの調整を行い、歩行時の負担を物理的に軽減させる装具療法も併せて行います。

保存療法と手術療法の比較

治療法メリットデメリット・考慮点
保存療法体への侵襲がない、すぐ始められる変形そのものは治らない、継続が必要
骨切り術自分の関節を残せる、活動制限が少ないリハビリ期間が長い、適応年齢がある
人工股関節置換術除痛効果が高い、早期復帰が可能脱臼リスク、耐用年数、感染リスク

手術療法の種類と適応

保存療法を行っても痛みが改善せず、日常生活に大きな支障がある場合は手術を検討します。手術には大きく分けて「骨切り術」と「人工股関節置換術」があります。

骨切り術は、自分の骨を切って角度を変え、荷重がかかる位置を修正する手術で、比較的若く、軟骨がある程度残っている場合に選択されます。

一方、人工股関節置換術は、傷んだ関節を金属やセラミック、ポリエチレンでできた人工の関節に取り換える手術です。

近年の人工関節は性能が向上しており、手術翌日から立つ練習が可能で、劇的な痛みの改善が期待できます。

高齢者や変形が進行した患者さんにとって、生活の質を取り戻すための有力な選択肢となっています。

日常生活でできる対策と予防法

股関節の健康を維持し、痛みの再発や悪化を防ぐためには、体重管理、正しい姿勢、そして適切な運動を継続して、関節への負担を減らすことが最も効果的です。

体重コントロールの重要性

歩行時、股関節には体重の約3倍から4倍の力がかかると言われています。

つまり、体重が1kg増えると股関節への負担は3kgから4kg増え、逆に1kg減らせばそれだけの負担を減らすことができるのです。

過体重は変形性股関節症の進行を早める最大のリスク要因の一つです。BMI(体格指数)を適正範囲に保つよう、バランスの取れた食事と間食の制限を心がけます。

急激なダイエットは筋肉量を減らしてしまうため、タンパク質をしっかり摂りながら、月1kg程度の緩やかな減量を目指します。

股関節に優しい座り方と寝方

床に座る生活様式は、股関節を深く曲げる必要があるため負担がかかります。正座、あぐら、横座り(お姉さん座り)は避け、できるだけ椅子やソファを使用する洋式の生活に切り替えます。

椅子に座る際は、膝が股関節よりも低い位置にならないよう、座面の高さを調整します。

寝具については、体が沈み込みすぎる柔らかいマットレスは寝返りが打ちにくく、腰や股関節に負担をかけます。

適度な硬さがあり、スムーズに寝返りが打てる高反発のマットレスや敷布団を選ぶことが推奨されます。

日常生活で避けるべき動作と推奨動作

場面避けるべき動作推奨される動作
床座り横座り、あぐら、体育座り椅子座り、高座椅子の使用
持ち上げ動作中腰で重い物を持つ膝を使って持ち上げる、小分けにする
階段一段飛ばし、重い荷物を持っての上り下りエレベーター利用、手すりの使用

家庭でできる簡単なストレッチと筋トレ

痛みのない範囲で運動を続けることは、関節液の循環を良くし、軟骨に栄養を行き渡らせるために大切です。代表的な運動として「貧乏ゆすり(ジグリング)」があります。

行儀が悪いと言われますが、医学的には股関節の隙間を広げ、筋肉をリラックスさせる効果が認められており、推奨されることがあります。

また、仰向けで膝を立ててお尻を持ち上げる「ヒップリフト」や、横向きに寝て上の足をゆっくり持ち上げる「中殿筋トレーニング」も有効です。

ただし、運動後に痛みが強くなる場合は負荷が高すぎる可能性があるため、回数を減らすか、医師や理学療法士に相談してください。

股関節の痛みに関するよくある質問

ウォーキングは股関節痛に良いですか?

適度なウォーキングは筋力維持に役立ちますが、痛みを我慢して歩くのは逆効果です。痛みが強い時はプールでの水中歩行が推奨されます。

陸上で歩く場合は、クッション性の高い靴を選び、土の道や芝生など柔らかい地面を選んで、痛みが出ない範囲の距離にとどめてください。

患部を温めるのと冷やすのはどちらが良いですか?

急な怪我や、激しく動いた直後で熱を持っている場合は冷やして炎症を抑えます。

一方、慢性的な痛みや朝のこわばりがある場合は、お風呂などで温めて血行を良くする方が症状が和らぐことが多いです。

入浴後に痛みが楽になるなら温め、逆に痛むなら冷やすなど、自分の体の反応を見て判断します。

サプリメントは股関節痛に効きますか?

グルコサミンやコンドロイチンなどのサプリメントは広く販売されていますが、医学的なエビデンスとして、すり減った軟骨が再生する効果は確証されていません。

一部の方で痛みが和らぐという報告はありますが、あくまで補助的なものと考え、これだけに頼らず、運動療法や体重管理などの基本的な治療を優先してください。

整体やマッサージに行っても良いですか?

筋肉の緊張をほぐす目的であれば、一時的な除痛効果が期待できます。

しかし、強い力で関節を捻ったり、ボキボキと音を鳴らすような施術は、股関節の損傷を悪化させるリスクがあるため避けてください。

施術を受ける際は、必ず股関節に疾患があることを伝え、無理な可動域訓練を受けないように注意が必要です。

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Author

北城 雅照

医療法人社団円徳 理事長
医師・医学博士、経営心理士

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