皆様の中で、「肩が上がらない」という悩みを抱えている方が多いのではないでしょうか?
肩の悩みとして肩こりが多いですが、手が上に上がらなくなってきたり、生活の中で上の物に届かなくなってきたりと、
肩が上がらないことで、生活に支障が出てくることも多いと思います。
今回は、そんなお悩みの持つ方に、「なぜ、肩が上がらなくなるのか?」、「肩が上がるためにどうしたら良いのか?」をお伝えしていきます。
目次
今回の10秒まとめ
①一般的な肩といわれている肩関節は、肩甲骨と上腕骨によって構成される肩甲上腕関節です。様々な靭帯、関節包、関節唇といった構造があることで肩関節が安定して動くことができています。
②関節を安定させる機能として、回旋筋腱板があります。ローテーターカフとも言われ、棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋といった、肩甲上腕関節のインナーマッスルとして機能する4つの筋肉で構成されています。
③肩関節は広義では肩関節複合体と呼ばれ、4つの関節から構成されます。
④肩を上げるという動きは、上腕骨、肩甲骨、鎖骨、胸郭、脊柱と様々な部位の動きが必要になります。
⑤肩甲上腕関節での肩甲骨の関節窩と上腕骨頭の位置関係のバランスが崩れてしまうと、正しい関節運動ができなくなってしまい、可動域制限や痛みにつながります。
⑥猫背などの姿勢異常も肩をあげる動きに対しては負担になりやすく、肩が上がりづらくなります。
⑦肩関節複合体の中で、どの関節の機能が悪くなっても、肩の痛みや可動域の制限につながります。
⑧肩の動きをよくするためには、肩甲上腕関節に負担をかける要素を把握して、改善していく必要があります。
⑨大胸筋のストレッチやマッサージ、背骨や肩甲骨の運動を行い、動きの制限がないように動かしていきましょう。
肩はどんな関節になってるの?
一般的な肩といわれている肩関節は、肩甲骨と上腕骨によって構成される肩甲上腕関節と言われる関節になります。
肩甲上腕関節は、上腕骨頭の丸い形状と肩甲骨の関節窩の受け皿で構成されています。
上腕骨頭の大きさは、肩甲骨の関節窩の約2倍であり、受け皿が小さいため不安定な関節になります。
その不安定さを補うために、様々な靭帯、関節包、関節唇といった構造があります。これらがあることで肩甲上腕関節が安定して動くことができています。
そのため、靭帯損傷や関節唇損傷は、関節を安定させる機能が低下することに直結することになります。
関節を安定させる腱板機能
関節を安定させる構造として、回旋筋腱板と呼ばれる構造体が肩関節には存在しています。回旋筋腱板は、ローテーターカフとも言われ、肩甲上腕関節のインナーマッスルとして機能する筋肉になります。
回旋筋腱板は、棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋で構成されています。
ローテーターカフは、肩関節が動くときの安定化機構として、関節窩に上腕骨頭を押し付けて、関節を安定させる役割があります。このローテーターカフというインナーマッスルが機能することで、アウターマッスルが効率よく働くことができます。つまり、スムーズな関節運動につながります。
肩関節複合体
これまで肩甲上腕関節についてお伝えしてきましたが、肩関節は肩関節複合体と呼ばれ、複数の関節が関連して様々な方向へ動かすことができる構造になっています。肩関節複合体に含まれる関節は以下の通りです。
肩甲骨と上腕骨で構成される肩甲上腕関節
肩甲骨と鎖骨で構成される肩鎖関節
胸骨と鎖骨で構成される胸鎖関節
肩甲骨と胸郭で構成される肩甲胸郭関節
肩を上げる動き
肩を上げる動きは、肩関節の屈曲という動きになります。
身体の体側から天井まで上げるために肩関節が180度の可動域が必要になります。
肩甲上腕関節のみの動きでは180度まであげることができません。各関節の関与の割合を%にすると以下のようになります。
肩甲上腕関節40%
肩甲胸郭関節20%
肩鎖関節10%
胸鎖関節10%
脊柱や胸郭20%
この割合を見ても分かるように、
肩を上げるという動きは、上腕骨、肩甲骨、鎖骨、胸郭、脊柱と様々な部位の動きが必要になります。
肩を上げづらくなる理由
肩関節で負担がかかりやすいのは、肩甲上腕関節になります。肩甲骨の関節窩と上腕骨頭の位置関係のバランスが崩れてしまうと、正しい関節運動ができなくなってしまい、可動域制限や痛みにつながります。
肩が上がりづらくなる原因になりやすい姿勢が猫背の姿勢になります。
猫背に関しては以下の記事もお読みいただけたらと思います。
猫背になることで胸が開きづらくなります。胸を開く動きは、肩を上げるために必要な動きになります。
胸を開く動きは、脊柱が反ること、胸の前が伸びることによってできる動きです。
猫背は、胸の前にある大胸筋という筋肉が硬くなります。大胸筋は、鎖骨、胸骨、上腕骨に付着しており、硬くなることでそれぞれの関節の動きが制限されることになります。
また、猫背は、脊柱を反らす、背筋を伸ばす働きのある背部の筋肉が働きづらくなります。それに伴い、肩甲骨や脊柱の動きも制限されることになります。
猫背の姿勢で、肩を上げる動作を繰り返したり、カバンを持ったり、生活の中で肩を使いすぎることで、肩甲上腕関節への負担が大きくなり、関節が壊れてしまいます。つまり、肩関節複合体の中で、どの関節の機能が悪くなっても、肩の痛みや可動域の制限につながります。
肩を上げやすくするために
前述した通りに、肩を上げるためには上腕骨、肩甲骨、鎖骨、胸郭、脊柱と様々な部位の動きが必要になります。
肩が上がりづらくなる、肩甲上腕関節に負担をかける要素を把握して、改善していく必要があります。
ここでは3つの運動をご紹介したいと思います。
運動を行う前と行った後で、肩の上げやすさがどう変わるかを体感してみてください。
大胸筋のストレッチ
ベッドの上に、仰向けに寝ます。手のひらが上を向くようにして、腕は身体の横につけます。ベッドから腕が離れないようにして、横から肩を頭の方に向けて上げていきます。手で半円を描くような動きになります。胸の前の伸びを感じながら行ってみてください。
大胸筋のマッサージ
鎖骨の下あたりが硬くなりやすいので、気持ち良い程度の強さで20秒ほどマッサージしてみてください。
四つ這いでの背骨運動
四つ這いの姿勢で、背骨を丸めたり、反らしたりして、背骨を柔らかく動かせるようにして肩を上げやすくしましょう。
①背骨を丸くして、みぞおちを引き込みながら、肩甲骨を外側に開きます。
②背骨を反らせて、みぞおちを突き出しながら、肩甲骨を内側に寄せます。
①、②の動きを繰り返していきましょう。
こういった運動は、肩が上がりづらくなる前にも普段の生活で取り入れることで、肩への負担を減らすことができ、長期的な予防につながります。呼吸をとめずに、無理のない範囲で行ってみてください。
日常生活の中で、肩を上げる時のポイントとして、
必ず良い姿勢を意識して、胸を開くこと
手のひらが下を向かず、親指が上を向く向きであげるようにすること
が効果的です。肩に関して、お悩みの方は是非自分で行ってみてください。痛みが強い場合は、一度当院にご相談ください。
当院のご紹介
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