今回は、腰痛や下肢の痛み、しびれを引き起こす腰部脊柱管狭窄症についてお伝えしていきます。
目次
今回の10秒まとめ
①脊柱管とは、脳と身体をつなぐ神経の束である脊髄が通る空間のことです。
②脊柱管が狭くなり脊髄を圧迫している状態を脊柱管狭窄症です。
③腰部脊柱管狭窄症の症状には、腰部から下肢にかけての痛みやしびれ、下肢の筋力低下、歩行障害(間欠性跛行)、膀胱直腸障害が挙げられます。
④腰部脊柱管狭窄症は、脊柱管が狭くなることで、神経が圧迫を受け、神経の血流が低下することで発症します。
⑤腰部脊柱管狭窄症は、脊柱管の狭窄の程度や脊髄の圧迫の状況を把握する必要があるため、MRIを用いることが重要です。
⑤保存的治療では、手術をせず、薬物療法や神経ブロック、装着療法(コルセット)、リハビリテーションを行っていきます。
⑥外科的治療では、狭くなった脊柱管を広げることで、神経の圧迫を取り、症状の改善を図ります。
腰部脊柱管狭窄症とは
脊柱管とは、背骨(脊椎)の穴(椎孔)が連なってできた空間であり、そこを脳と身体をつなぐ神経の束である脊髄が通る空間のことです。
その脊柱管に変形が生じ、神経の通り道が狭くなり脊髄が圧迫される疾患を脊柱管狭窄症といいます。この狭窄が腰部で生じ症状を引き起こしている場合、腰部脊柱管狭窄症と診断されます。
腰部脊柱管狭窄症は、加齢による変化として生じることが多く、中年以降に多発します。
また神経は、木のように幹から枝葉が分かれていくように、脊髄から神経が手足へ伸びていきます。そのため、腰部脊柱管狭窄症では、腰から下の神経に関連する症状が出てきます。
腰部脊柱管狭窄症の原因
腰部脊柱管狭窄症は、脊柱管が狭くなることが原因になります。特に、加齢による腰椎の変形によって脊柱管は狭くなっていきます。
脊柱管が狭くなることで、神経が圧迫を受け、神経の血流が低下し腰部脊柱管狭窄症が発症します。
脊柱管とは、脊椎の椎孔の連なりで作られた、脊髄という神経が入る空間です。この空間は脊椎骨以外にも椎間板や靭帯によって構成され、これらの組織の変化の影響を影響も大きく受けます。
例えば、椎間板、脊椎同士で構成される椎間関節、脊椎を補強する黄色靱帯などが変形もしくは変性を起こすことで、脊柱管が狭くなります。また、腰椎椎間板ヘルニアや腰椎変性すべり症などの疾患も腰部脊柱管狭窄症を併発する原因となります。
腰部脊柱管狭窄症の症状
腰部脊柱管狭窄症の症状は、腰より下の神経に関連する症状が出てきます。
具体的な症状として、
① 腰部から下肢にかけての痛みやしびれ
② 下肢の筋力低下・歩行障害
③ 膀胱直腸障害(尿や便が漏れる・出なくなる)
④ 歩いていると足が痛くなり、座って休む(間欠性跛行)
が挙げられます。
下肢のしびれや痛み
腰部脊柱管狭窄症では、腰部から下肢にかけての痛みやしびれを生じます。
しびれや痛みを感じる部位は、圧迫を受けている神経によって異なります。
症状の強さは、重症度や姿勢により変化します。
日常生活の中の症状の変化は、特に姿勢による影響を受けます。
背筋を伸ばして立ったり、歩いたりすると、症状が出現したり、強くなることが多いです。
反対に、少し背中を丸めたり、座って休んだりすると症状が軽減してきます。
間欠性跛行(かんけつせいはこう)
間欠性跛行とは、「下肢のしびれや痛みで長時間連続で歩けなくなりますが、しばらく休むとまた歩けるようになる」という腰部脊柱管狭窄症に特徴的な症状になります。
症状の悪化とともに、連続して歩ける時間、距離が短くなっていきます。しかし、背中が丸まった姿勢や自転車等の腰が曲がっている状態では、症状が増悪しにくいことも特徴です。
膀胱直腸障害
腰部脊柱管狭窄症では、症状が進行していくと、排尿障害や排便障害の膀胱直腸障害を生じます。症状として、頻尿、夜間尿から残尿感、尿失禁、便失禁へと進行していきます。膀胱直腸障害が見られている場合は、重症化していると捉えられます。
腰部脊柱管狭窄症の検査および診断
腰部脊柱管狭窄症は、単純X線(レントゲン)写真やMRIでの画像検査が重要です。
レントゲン写真では、腰椎の変形の有無や腰椎すべり症の有無を確認していきます。
腰部脊柱管狭窄症の診断のためには、脊柱管の狭窄の程度や脊髄の圧迫の状況を把握する必要があるので、MRIを用いることが重要です。狭窄の程度と臨床症状の重症度とは必ずしも一致するわけではないため、さまざまな所見を併せて診断を受けることが重要です。
腰部脊柱管狭窄症の治療
腰部脊柱管狭窄症では、保存的治療と外科的治療を経過に合わせて適宜選択することで治療を行います。
保存的治療
保存的治療では、手術をせず、薬物療法や神経ブロック、装着療法(コルセット)、リハビリテーションを行っていきます。
リハビリテーションでは、ストレッチや筋力強化、基本動作練習などを行います。
腰部脊柱管狭窄症では、腰を反る筋肉が過度に働くことで、反り腰になりやすいです。そのため、腰を反る筋肉に対して、ストレッチやマッサージを行い、働きを抑えることも重要です。腰部を安定させるための腰部や腹部の筋力強化も必要になります。
腰部脊柱管狭窄症は、歩行や姿勢によって痛みやしびれ等の症状の変化が現れやすいので注意が必要です。
痛みやしびれが出現する距離や時間を把握しながら歩行練習を行います。また、背筋を伸ばしたり、腰を反らしたりすることで症状が増悪しやすいため、少し背中を丸めた姿勢を取ったり、症状が増悪しない姿勢を取ったりすることで、症状が出現しない、増悪しないように生活していくことが重要です。
さらに、腰部脊柱管狭窄症が進行すると、しびれや痛みが影響して、歩かなくなったり、運動することが少なくなってしまいます。そこから全身的に筋力低下、体力低下を起こしてしまいます。
整形外科で診察を受け、身体の状況を診てもらい、意見を聞きながら、適度な運動、リハビリテーションにより、症状の改善や症状の悪化予防を行うことが重要です。
外科的治療
腰部脊柱管狭窄症の症状の重症度によって、手術療法が選択されます。
狭くなった脊柱管を広げることで、神経の圧迫を取り、症状の改善を図ります。主に除圧術が行われますが、背骨の状態を見て、腰椎すべり症などがある場合には腰椎の不安定があるので、除圧固定術を選択して、除圧と同時に腰椎を安定させるような治療を行います。
上記のような症状を認める方は、当院の脊椎外来までご相談ください。
当院のご紹介
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当院の『7つの特徴』や『ミッション』についてご案内いたします。
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