今回は、高齢者の転倒で手を突いたときに、手首の痛みが強くなる橈骨遠位端骨折についてお伝えしていきます。
(文章中に、日本整形外科学会が配布しているパンフレット手外科シリーズ『橈骨遠位端骨折』の図を利用させていただきました。ぜひこちらもご活用下さい。)
目次
今回の10秒まとめ
①橈骨遠位端骨折は高齢者で多い骨折の一つで、橈骨の手首側が骨折した状態をいいます。
②橈骨遠位端骨折の主な受傷機転は、転倒で手を強くついてしまうことです。
③橈骨遠位端骨折でも、受傷のしかたと手首側の骨片の違いによって、コレス骨折とスミス骨折に分けられます。
④橈骨遠位端骨折の症状は、手首の強い痛みと、橈骨の掌側を通っている正中神経が障害されれば、母指から薬指の感覚が障害されます。
⑤橈骨遠位端骨折の診断は、痛みや手首の状態と、レントゲン検査で骨の連続性を確認して行います。
⑥橈骨遠位端骨折の治療は、ギプス固定やプレートなどを用いた手術を行い、骨折部の整復、安静をはかります。
⑦橈骨遠位端骨折後のリハビリでは、ギプス固定が外れてから、少しずつ手関節を動かしていきます。
橈骨遠位端骨折とは
橈骨遠位端骨折は、高齢者の転倒で多い骨折の一つになります。前腕には、橈骨と尺骨という2本の骨があります。手の平を上下に向ける動きやドアノブを回す動作は、橈骨と尺骨が連動して前腕の回内、回外という動きとなり、動作が行われています。橈骨と尺骨は「肘と手首をつなぐ前腕の骨」なので、橈骨の遠位は手首側になります。だから、橈骨の手首側が骨折した状態を橈骨遠位端骨折をいいます。
橈骨遠位端骨折になってしまうと、図のように食器のフォークを伏せて置いたような変形が見られます。
橈骨遠位端骨折の原因
橈骨遠位端骨折の主な受傷機転は、転倒で手を強くついてしまうことです。高齢になってくると、全身の筋力やバランス能力が低下し、転倒しやすくなります。不意に転んでしまった場合に、頭や顔を打たないように必ずと言っていいほど手をついてしまいます。そのような場合に、橈骨遠位端骨折を受傷してしまいます。
橈骨遠位端骨折に限ったことではないですが、骨粗鬆症になってしまうと、軽微な転倒でも骨折がしやすくなります。高齢者で多い骨折として、脊椎圧迫骨折や大腿骨頸部骨折と同様に橈骨遠位端骨折も起こりやすくなります。
橈骨遠位端骨折でも、受傷のしかたと手首側の骨片の違いによって、コレス骨折とスミス骨折に分けられます。
コレス骨折は、「手のひら」を地面について骨折すると、手首側の骨片は手の甲(背側)の方向にズレます。
スミス骨折は、「手の甲」を地面について骨折すると、骨折部は手のひら(掌側)の方向にズレます。
橈骨遠位端骨折の症状
橈骨遠位端骨折は、「手首に強い痛み」の訴えが出現します。骨折部に、炎症が生じ、腫脹や熱感が強く起こります。当然、手には力が入らなくなります。骨折の状態や炎症によっては、神経が圧迫されて指がしびれることもあります。橈骨の掌側を通っている正中神経が障害されることも多く、その場合は、母指から薬指の感覚が障害されます。
橈骨遠位端骨折の診断
レントゲン検査で骨の連続性(つながり)が保たれているかを確認します。
橈骨遠位端骨折では、橈骨の手首側で骨折が認められます。前述したコレス骨折やスミス骨折等、骨折の様式も様々なので、手首側の骨片の位置を確認します。骨折の状態、症状にそれに応じて治療方法が異なります。
橈骨遠位端骨折の治療
橈骨遠位端骨折では、骨折の状態に応じて治療方法が異なります。骨折した「骨片がずれているか」どうかがポイントです。骨片がずれた状態を「転位」があるといいます。骨片の転位がほとんどない場合は、ギプス固定を行います。骨片の転位がある場合は、徒手整復をします。それで整復位が保つことができれば、そのままギプス固定を行います。それ以外に、整復位が取れない場合や、関節内に骨折が及んでいる場合には、手術療法を選択し、プレートやスクリューと使い固定します。
ギプス固定にて骨折部の安静を保ちながら、骨折部の回復を図りますが、リハビリにおいては、骨折部以外の手指や肩関節等に関しては、硬くならないように動かしていくことが重要になります。特に手指に関しては、上肢の末端でむくみやすいので、自分で繰り返し動かしましょう。ギプス固定が外れれば、手関節を動かすリハビリを進めていきます。それで、最終的には日常生活で不自由がないように動かせるようにリハビリを行っていきます。
また、橈骨遠位端骨折は転倒で受傷しやすいため、全身の筋力、体力が低下しないように運動を欠かさずに行っていきましょう。骨折した後の治療ももちろん重要ですが、骨折しないことが一番重要ですので、転倒しないように気を付けて生活していきましょう。
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