今回は、腰椎椎間板ヘルニア・腰部脊柱管狭窄症などの腰椎疾患に対する手術後の日常生活での注意点についてお伝えしていきます。
目次
今回の10秒まとめ
① ヘルニア摘出術後の再手術率は5年後で4〜15%であると言われています。また、術直後に無理をすると再発率が高まります。
② 腰部脊柱管狭窄症の術後成績は70%以上の方で良好です。ただし、10年以上の長期では症状再発の可能性もあります。
③ 脊椎の手術が行うべき時期・取りきれない症状が存在します。こちらを適切に説明してくれる医師のものとで手術を受けることをお勧めします。
④ 体を『丸める』・『捻る』という動きは、腰部に負担がかかる動作のため腰椎の術後には注意すべき動作です。
⑤ そのため、『下の物を拾う』・『洗顔や頭を洗う』・『掃除をする』などの動作は下記の様に気をつけましょう。
⑥ 体重を減らすことは、腰部への負荷を減らすことになる為、体重管理を心がけて生活していきましょう。
⑦ 腰椎疾患では筋肉へ指令を送る神経が痛んでいるため、筋力低下を起こしており、これが腰部の不安定を助長します。
⑧ 元の生活に復帰するためにも、腰部の安静を保ちながら、体幹の筋力を強化と股関節の可動域を改善する必要があります。
ヘルニア摘出術後の再発率について
ヘルニア摘出術後の再手術率は、5年後で4〜15%であると言われています。
腰椎椎間板ヘルニア摘出手術は根治的な治療法ではないため,再発の可能性を常に有しているとも言えます。
特に術直後にしびれや痛みがなくなったからといって無理に動いてしまうと、状態が悪化する可能性があります。
医師の指示に従い、徐々に活動性をあげていくようにしましょう。
腰部脊柱管狭窄症の手術後の成績
長期成績について
腰部脊柱管狭窄症に対する手術治療の長期成績は,4〜5年の経過では70〜80%の患者様において良好ですが、10年目などの長期経過になると低下することがあるとも言われています。
術後の不良例の背景
脊椎の手術を受けた方で、術後の経過に満足できず、手術を受けたことを後悔される方がいらっしゃいます。
なぜ、このような後悔が生まれるのでしょうか?
その理由には以下の点が挙がられます。
①手術を行うべき時期を逃してしまう
脊椎疾患には手術を行うべき時期が存在します。
それは『5分程度の歩行(500mほど)で下肢の痛みや痺れが出現し休んでしまう』です。
このような症状が出現したときに、患者様は「まだ歩ける」や「手術が怖い」という理由でなかなか手術に踏み切ることができません。
しかし、このような症状が出現しているとき、すでに神経はかなりの損傷を受けているのです。
この時期を逃してしまい、これ以上に症状が進んでしまうと、手術後もなかなか満足いただける結果にはなりません。
繰り返しますが、手術をするべき時期を見逃さないようにしましょう。
②手術でも取りきれない症状がある
どんなに手術がうまくいっても、足の裏の違和感やちょっとした痺れは取りきれないことが多いです。
手術前にしっかりと主治医と話し合い、どのような症状が改善し、どのような症状は取りきれないのか、術前に理解を深めておく必要があります。
③術者のスキル不足
上記の2つをしっかり理解していないで、手術を勧めている医師も残念ながら多く存在していることも事実としてあります。
「手術を行うべき時期でないのに手術をする」や「手術についてちゃんと説明してくれない」と言った後悔の声をお聞きするたびに、手術を行う医師を再度検討するべきだと心を痛めます。
当院では脊椎専門医が手術を行っております。
脊椎の手術をお考えの方は、一度当院までご相談ください。
手術後は、「身体を丸める・捻る動き」を控える
腰に負担がかかる動作は、身体を丸める、捻る動きは、腰部に負担がかかる動作になります。術後の回復過程を阻害することになりかねます。手術直後等は特に注意が必要で、しびれや痛みがとれて、ついついやってしまいがちな動きに注意です。
日常生活の中で起こりうる身体を丸める動きと腰に負担を掛けない動作を解説していきます。
下の物を拾う、取る
✖ 前かがみになり腰に負担がかかる動き
つい中腰で物を拾ってしまいがちですが、腰に負担がかかります。
○ 下半身を曲げ、腰に負担がかからない動き
どうしても重い物を持つ場合は、身体に引き寄せて抱えてから立ち上がりましょう。
洗顔や頭を洗う
✖ 前かがみになり腰に負担がかかる動き
中腰は、腰に負担がかかる姿勢の代表例です。
○ 腰に負担がかからない動き
股関節・膝関節を曲げ、スクワットの様な姿勢で腰から曲げないようにしましょう。
◎ 台に足をのせ、より負担がかからない動き
この時に「肘」や「膝」を洗面台につけると、身体を支持する箇所が多くなり楽になります。
掃除(掃除機や水拭き)
✖掃除機の柄が短く、中腰で腰に負担がかかる
○掃除機の柄を長くし、負担をかけない様に
そんな動きの中で、腰に負担をかけないための意識は、以下の通りになります。
・身体の伸びた姿勢を保つ
・身体を丸太用のイメージで動く
こういった意識をすることで、手術部の安静を保つことにつながり、再発のリスクを減らすことにもつながります。
痛みがなくなったからといって無理な動きをしていると、再手術のリスクも高まりますので気を付けましょう。
手術後は、適正体重を維持する
日常生活では、腰に大きな負担がかかります。
体重70kgの人の場合を想定すると、座っている姿勢で腰にかかる負担は、100kgにもなると言われています。
体重を減らすことは、腰への負荷を減らすことに繋がります。
適正な体重管理を心がけて生活しましょう。
筋力低下していた下半身や体幹の安定性を高める
腰椎椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症では、筋肉に指令を出す神経根の障害によって筋力低下を起こしていると考えられています。
よって術前に痛みがあって力が出しづらかった下半身の筋力増強や、腰部を安定させるために体幹筋群に対し介入を行っていきます。また腰部が過剰に動いてしまわないように、しっかりと股関節の可動性を出していくことも重要になります。
元の生活に復帰するためにも、腰部の安静を保ちながら、体幹の筋力を強化や股関節の可動域を改善する必要があります。術後のリハビリテーションに関しては以下の記事をご覧ください。
腰部脊柱管狭窄症の術後リハビリテーション【外来リハ編】
退院後も痛みやしびれがなくなったからといって、何もすることなく筋力が低下しないように定期的な運動を行うように心がけていきましょう。
当院には、脊椎脊髄外科指導医がおります。充分にお話を聞き診察を行った上で最も適切な治療法をお薦めさせて頂きます。腰でお悩みの方は、是非ご相談ください。
当院のご紹介
整形外科の診療に必要な設備が整った診療所
当院は、各種専門領域を持った医師の診療に加え、大学病院と同様の医療機器を有し、かつ、理学療法士・作業療法士によりリハビリテーションも積極的におこなっている診療所です。また、併設の慶友整形外科脊椎関節病院では手術加療も行なっております。
そのため当院では、整形外科疾患におけるほぼ全ての治療を提供することができます。
当院の『7つの特徴』や『ミッション』についてご案内いたします。
各部門の専門家が集まった特殊外来を設置
当院は、一般的な関節の痛みや筋肉の痛みを診る整形外科の他に、「脊椎(首・腰)」、「肩関節」、「股関節」、「膝関節」、「手」、「足」とそれぞれの専門家が集まった専門外来を用意しております。
他院で診断がつかない症状に関して、各領域の専門家が診察をいたします。
手や足が痺れる、膝や股関節は痛い、背中が曲がってきたなどの症状でお困りの方へ。
都内最大級のリハビリ室を完備
患者様の健康を取り戻すため、当院ではリハビリテーションに力を入れております。
国家資格を有するセラピスト達が、責任を持って治療を行います。
腰が痛い、姿勢が悪い、歩くとふらつくなどの症状でお困りの方へ。
交通事故診療に強い整形外科専門医が診察
不幸にも交通事故に遭われた患者様の多くは、「事故のことは保険屋さんに聞けば良いが、体の不調をどこに相談すれば良いのかわからない」という悩みを抱えていらっしゃいます。
当院では交通事故診療に強い整形外科専門医が治療を行います。ぜひ一度ご相談ください。
当院は、整形外科専門医が交通事故治療を行う医療機関です。