足立慶友医療コラム

今回は、スポーツ中だけでなく、日常生活にも支障をきたしやすい反復性肩関節脱臼についてお伝えしていきます。

今回の10秒まとめ

脱臼が肩関節に反復して起こる病態を反復性肩関節脱臼といいます。

② 反復性肩関節脱臼は、脱臼に伴って関節の安定性に寄与する軟部組織が損傷し軽微な外力でも脱臼しやすくなる。

③ 反復性肩関節脱臼は、前下方方向に脱臼してしまうのがほとんどであり、その場合は肩関節外転外旋位の強制により発症しやすい。

④反復性肩関節脱臼の原因は、外傷に伴って起こることが多く、特にコンタクトスポーツでの受傷が多い。

④ 反復性肩関節脱臼の症状として、肩関節の痛みや腫れ、圧痛が認められます。肩関節外転外旋での前方への不安定感の訴えがあります。

⑥反復性肩関節脱臼の診断は、レントゲン検査で肩関節脱臼およびそれに伴う骨欠損の有無を確認します。MRIやCTを行い、関節唇や関節包靭帯などの軟部組織の損傷程度を評価します。

⑦反復性肩関節脱臼の治療は、日常生活あるいはスポーツ活動において脱臼を繰り返し、反復性脱臼に移行し、その度に活動が制限されるようならば手術適応です。術式としては、関節鏡視下バンカート病変修復術をや烏口突起移行術行います。

⑧反復性肩関節脱臼の術後の経過として、術後約3ヵ月までは再脱臼をきたすような動作は日常生活でも避けることが必要です。 また、スポーツ復帰は種目や個人の状態によりますが、コンタクトスポーツへの競技復帰までには約6ヵ月が必要です。 

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反復性肩関節脱臼とは

脱臼とは、関節を形成している骨が正しい位置から完全に離れた状態です。 関節の骨の位置が部分的にずれものを亜脱臼と言います。

脱臼が肩関節に反復して起こる病態を反復性肩関節脱臼といいます。スポーツ中などに肩が脱臼(亜脱臼)した時に、靭帯が痛んでしまい正常に機能しなくなると、肩が外れやすい状態が続いてしまいます。脱臼回数が増えるほど軽微な外力で脱臼が起こりやすく、スポーツ競技動作だけでなく日常生活の中でも脱臼が起こりやすくなります。

反復性肩関節脱臼の病態

肩関節が反復性脱臼しやすい理由は、肩関節の構造的な特徴にあります。

一般的に肩関節は、上腕骨と肩甲骨との間で形成されている関節で、上腕骨頭の丸い形状に対して肩甲骨側が受け皿のような形状をしています。肩関節、いわゆる腕の運動は上腕骨と肩甲骨が常に適合する向きを調整しながら行われています。

肩関節は動かしていただくとわかるように、前後左右さまざまな方向に動きやすいです。

上腕骨と肩甲骨の接触面が小さいため、可動性に富んだ関節になります。そのため、言い換えれば脱臼がしやすい関節とも捉えられます。

肩関節の安定性は関節を安定させる関節包や関節唇という軟部組織によって保たれています。

脱臼に伴って関節の安定性に寄与する軟部組織が損傷してしまいます。肩関節脱臼整復後に、安静にしていてもこれらの軟部組織が回復しないため、肩関節自体が不安定になり、軽微な外力でも脱臼しやすい反復性肩関節脱臼になってゆく大きな原因です。

反復性肩関節脱臼は、10歳代〜30歳代の人に多くみられます。

若年者は中高年、高齢者の大きな違いは、先ほど説明した関節や軟部組織の柔軟性にあります。

中高年は関節や軟部組織が硬くなりやすい一方で、若年者は関節や軟部組織の柔軟性があるため、関節の動き自体が大きくなるため脱臼が起こりやすくなります。

また大きな理由として、若年者はスポーツ競技などを含め活動性が高いため、一度肩関節脱臼を受傷した後もその競技を継続するのがほとんどです。それによって、再度肩関節脱臼を受賞するリスクが高まり、反復性肩関節脱臼になってしまいます。

肩関節の脱臼に伴い、関節窩から関節唇靭帯複合体が剥がれます。

関節唇が剥がれた病変を「バンカート病変」関節窩が骨折した病変を「骨性バンカート病変」と呼びます。

反復性肩関節脱臼の原因

反復性肩関節脱臼は多くの場合、外傷性の脱臼に続発して起こります。

外傷による肩関節脱臼は、ラグビーやアメフト、柔道などの相手との接触が多いコンタクトスポーツに多いです。

肩関節の構造上、前下方方向に脱臼してしまうのがほとんどです。動作としては肩関節の外転外旋位を強制される(ボールを上から投げるポジション)ことで発症します。 

したがって脱臼は通常、肩を挙げて転んだ際に地面に手をついたときや、大きな外力で上腕が後方にもっていかれた時などに起こりやすくなります。

外傷に由来しない場合の反復性肩関節脱臼の原因として、ルーズショルダー(肩関節不安定症、動揺肩)が挙げられます。

反復性肩関節脱臼の症状

反復性肩関節脱臼の症状は、以下の4つが挙げられます。

・肩関節の痛みや腫れ、変形
・肩関節の可動域制限
・神経の損傷が伴うとしびれや血行障害
・腕を使いづらくなる

反復性肩関節脱臼では、日常的に肩関節外転・外旋する動作肩関節前方の不安感が残ります。 

反復性肩関節脱臼の診断

レントゲン検査で、肩関節脱臼およびそれに伴う骨欠損の有無を確認します。

前述した症状である、肩関節外転外旋位での不安定感肩関節周囲の圧痛の有無上腕骨頭が前下方に偏位していないか確認します。

MRIやCTを行い、関節唇や関節包靭帯などの軟部組織の損傷程度を評価します。また脱臼時に上腕骨頭の後方にできる軟骨損傷であるHill Sachs病変を確認します。

反復性肩関節脱臼の治療

保存的治療の場合は脱臼を整復すれば、一定の固定期間の後、肩周囲の筋力強化、可動域訓練を行い肩関節を生活の中もしくはスポーツ競技で使えるようにリハビリを行います。

初回脱臼の整復後は、断裂した関節包などの軟部組織が修復するまで、約3週間程度の固定期間を要します。

しかし脱臼整復後も、日常生活あるいはスポーツ活動において脱臼を繰り返し、反復性脱臼に移行し、その度に活動が制限されるようならば手術が必要です。

術式としては、関節鏡視下バンカート病変修復術烏口突起移行術(Bristow法)を行います。

関節鏡視下バンカート病変修復術は、糸のついたビス(アンカー)を3-4本骨に打ち込み、ビスについている糸で関節包と関節唇を縫いつけて、肩関節の正常の構造に近づけるようにできるかぎり修復を行います。この術式は関節鏡で行うため傷も少ない術式となっています。

烏口突起移行術は、関節窩の骨欠損が大きな場合に選択され、烏口突起の先端に付着している筋ごと切り取り、烏口突起の先端を関節窩前方に位置させ、スクリューを用いて固定します。

術後の経過

手術後2〜3週間はは三角巾や装具で固定し安静を保ちます。

関節や筋肉の運動などの運動療法(リハビリテーション)が大切ですが、

術後約3ヵ月までは再脱臼をきたすような動作は日常生活でも避けることが必要です。 また、スポーツ復帰は種目や個人の状態によりますが、コンタクトスポーツへの競技復帰までには約6ヵ月が必要です。 

術後の日常生活の注意点

術後3ヵ月間まではしていけない動作は、

日常生活の中で肩甲骨のラインよりも後ろで手を使わないことです。

したがって、身体の後ろ側に手を動かすことは避けましょう。

特に注意すべき動作として、

・頭の後ろで手を組む
・仰向けでバンザイをする
・後ろのものを腕を後ろに回して取る
→身体の向きを変えて身体の前で取るようにして下さい。
・女性の下着のホックを後ろで引っ掛けない

反復性関節脱臼でお悩みの方は、是非一度当院を受診してください。

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整形外科の診療に必要な設備が整った診療所

当院は、各種専門領域を持った医師の診療に加え、大学病院と同様の医療機器を有し、かつ、理学療法士・作業療法士によりリハビリテーションも積極的におこなっている診療所です。また、併設の慶友整形外科脊椎関節病院では手術加療も行なっております。

そのため当院では、整形外科疾患におけるほぼ全ての治療を提供することができます。

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当院の『7つの特徴』や『ミッション』についてご案内いたします。

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当院は、一般的な関節の痛みや筋肉の痛みを診る整形外科の他に、「脊椎(首・腰)」、「肩関節」、「股関節」、「膝関節」、「手」、「足」とそれぞれの専門家が集まった専門外来を用意しております。

他院で診断がつかない症状に関して、各領域の専門家が診察をいたします。

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Author

高橋佳佑

理学療法士、ピラティスインストラクター

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