足立慶友医療コラム

活動報告(天皇杯 第48回日本車いすバスケットボール選手権大会)

2023.03.14

2023年1月20日~1月21日の2日間、天皇杯 第48回日本車いすバスケットボール選手権大会が東京体育館で行われました。今回は職場の協力もあり、社会人車いすバスケットボールクラブチームNO EXCUSEの選手兼トレーナーとして参加する機会をいただきました。そこに至るまでの経緯と帯同の活動内容、そして当院スポーツのサポート体制についてお伝えします。

天皇杯出場までの経緯

◎車いすバスケットボールに携わるきっかけ

私が入学した茨城県立医療大学には「障がい者スポーツ研究会」というサークルがあり、そこで車いすバスケットボールに出会いました。大学に在学中の健常者(男女)と他大学の障害のある選手の混合チームで、リーグ戦や大学選手権への参加や、障害のある子どもたちに対して車いすバスケ教室を開催する活動を主に行っていました。

就職後は理学療法士として病院で働く傍ら、大学での経験を活かしながらスポーツの現場に関わりたいという想いがあり、社会人車いすバスケットボールクラブチーム NO EXCUSE にトレーナーとして関わり始めました。取り組み内容としては、主に①テーピング対応や急性の怪我への応急対応、②怪我や疲労に対するケアやコンディショニング、③フォーム改善のためのアドバイスやトレーニング指導、④車いすのセッティングの見直しなど多岐に渡って活動してきました。

◎選手として

トレーナーとしてチームに関わる中で、自分は本当に選手と同じ目線で物事を考えられているのか疑問に思う場面が多くありました。さらに大学生の頃の経験では、語れない部分の多さを感じました。高いレベルで自分自身が車いすバスケットボールをプレーすることで選手と同じ目線に立ち本当の要求を捉えにいきたい。さらに自分自身の挑戦として自分がプレーすることで、1人でも多くの方に車いすバスケの面白さや健常者も一緒に本気になってプレーできることが伝わり、それが障害のある子どもたちのスポーツをするきっかけになってくれれば良いと考えました。そこで、2022年3月から選手登録をして活動していくことを決意しました。※現在は健常者も障がい者チームへの選手登録が認められています

◎天皇杯出場まで

コロナの影響もあり約3年半ぶりに開催される天皇杯出場をかけ、全国10ブロックで行われた第1次予選会を経て、東西を分けて行われた第2次予選会を勝ち抜き、東日本1位通過で出場を決めました。

活動内容

◎大会前の活動

・コンディショニング
平日の練習前に本人の身体の感覚を聞き取りながら関節可動域や筋出力をチェックし、アプローチしていきました。障がい者スポーツでは、元々の障がいによって残存機能の差異や身体感覚が個人間で大きく違うためコミュニケーションを深め選手を詳しく知ることが、より良いコンディショニングに繋がると考えています。

雑誌の「理学療法」の特集で 障がい者スポーツにおける理学療法士の関わりと役割 と題して、車いすバスケットボールにおけるコンディショニングに関して執筆する機会があったため、是非ご覧ください。

https://www.fujisan.co.jp/product/1281690930/b/2110180/

普段当院でもスポーツに携わる方のリハビリを担当しているので、双方の場での経験が自分の活動に活かせていると思っています。

車いすセッティング
競技用車いすは日常用車いすに比べて、回転性能が高いことや、後方に転倒防止キャスターが1つまたは2つ付いていることなどの違いがあります。車いすは選手1人ひとりの障がいの程度や体格、プレースタイルに応じてオーダーメイドで作っていきます。例えば、片脚切断や人工関節など体幹機能が残存している障害の程度が軽い選手(ハイポインター)は、体幹出力をどう車いすへ波及させるかが競技では大切です。今回は座った状態での自分の前屈機能を評価した上で、身体を車いすに固定する役目のビンディングの位置を変え、漕いだ時の骨盤前傾が出やすいように調整しました。

新たに前側にネジ穴を作ってもらいビンディングの位置を調整しました

・ドーピング
天皇杯はドーピング検査対象大会となり、事前に使用薬物の書類記載やアンチドーピングの講義受講の修了が大会参加資格として規定されていました。選手によっては、内科疾患のコントロールのためなどで禁止薬物と見なされている薬を使用しなくてはいけないケースがあるため、事前にTUE申請を行う必要があります。

・栄養
バスケットボールにおいて試合後半でバテないで最後まで戦い切るためには、栄養面での準備も必要です。そのため、大会1週間前から「炭水化物増量、油控えめ、タンパク質そのまま」の食事を行う プチ・グリコーゲンローディング を実践していきました。

また、試合当日には血糖のコントロールも重要になります。血糖値が高い状態では乳酸が溜まりやすくなり、身体のダルさが生じます。胃に食べ物があるとプレー中に糖をうまく利用することができないという観点からも、3,4時間前には食事を済ませるのが理想です。どうしても試合前に食欲を抑えきれない選手は野菜から摂取し、摂食中枢を抑制させるというのも有効的です。

天皇杯の様子

◎試合当日

当日は試合前後の選手のケアと自分自身のウォーミングアップを並行して行っていきました。クールダウンでは、乳酸が体内に溜まったままだと、身体は酸性に傾いて次の日に思ったように身体が動かなくなることことがあるため、軽い車いす駆動を行います。軽運動は乳酸をエネルギー源として再利用し、乳酸の分解を早めることができます。連戦が続く場合は運動生理学的な視点からもコンディショニングを考えていくとよりよい状態を維持することにつながります。さらに、リカバリーを促進するために、筋損傷や主観的疲労感の軽減に効果があるとされるマッサージや冷水浴を実施しています。

◎大会結果

NO EXCUSEは天皇杯準優勝という成績で大会を終えました。去年はコロナ感染者が激増して止むを得なく中止となった大会でしたが、未だコロナの感染対策が求められる中で、沢山の方の活躍があったからこそ実行された大会だったと思います。

当院のスポーツサポート体制

足立慶友整形外科/慶友整形外科脊椎関節病院ではスポーツの怪我に対する手術やその後のリハビリテーションを提供しております。またスポーツ外来(HP:https://clinic.adachikeiyu.com/news/4719)も2021年12月より開始されています。

外来では野球班を設立して投球障害に対する取り組みを強化しています。さらに当院のマスコットキャラのゴリラマークでおなじみの認高喜笑助くん(みとめだかきしょうすけくん)と同じゴリラマークを持つ下町ゴリラズ(HP:https://shitamachi-gorillas.tokyo)というアメリカンフットボールのチームサポートを行っており、医師・トレーナースタッフが試合時のサポートを行っています。

アスリートサポートシステムの案内

2023年1月から、スポーツを行う中で前十字靭帯断裂や半月板損傷を患い、手術をされた方に対してスポーツ復帰に向けたリハビリテーションをより一層強化する取り組みとして「アスリートサポート」が始まりました。詳しい情報に関しては、こちらの記事に記載してありますのでご覧ください。https://clinic.adachikeiyu.com/5972
今後の当院のスポーツ支援の取り組みにも、ぜひご期待ください。地域の方々に貢献できるよう鋭意努めて参ります。

オンライン予約はこちら


当院のご紹介

整形外科の診療に必要な『すべて』が揃った診療所

当院は、各種専門領域を持った医師の診療に加え、大学病院と同様の医療機器を有し、かつ、理学療法士・作業療法士によりリハビリテーションも積極的におこなっている診療所です。また、併設の慶友整形外科脊椎関節病院では手術加療も行なっております。

そのため当院では、整形外科疾患におけるほぼ全ての治療を提供することができます。

初めての患者さまへ当院のご紹介

当院の『7つの特徴』や『ミッション』についてご案内いたします。

各部門の専門家が集まった特殊外来を設置

当院は、一般的な関節の痛みや筋肉の痛みを診る整形外科の他に、「脊椎(首・腰)」、「肩関節」、「股関節」、「膝関節」、「手」、「足」とそれぞれの専門家が集まった専門外来を用意しております。

他院で診断がつかない症状に関して、各領域の専門家が診察をいたします。

整形外科のご案内

手や足が痺れる、膝や股関節は痛い、背中が曲がってきたなどの症状でお困りの方へ。

都内最大級のリハビリ室を完備

患者様の健康を取り戻すため、当院ではリハビリテーションに力を入れております。

国家資格を有するセラピスト達が、責任を持って治療を行います。

リハビリテーション科のご案内

腰が痛い、姿勢が悪い、歩くとふらつくなどの症状でお困りの方へ。

交通事故診療に強い整形外科専門医が診察

不幸にも交通事故に遭われた患者様の多くは、「事故のことは保険屋さんに聞けば良いが、体の不調をどこに相談すれば良いのかわからない」という悩みを抱えていらっしゃいます。

当院では交通事故診療に強い整形外科専門医が治療を行います。ぜひ一度ご相談ください。

交通事故にあわれた方へ

当院は、整形外科専門医が交通事故治療を行う医療機関です。

Author

高橋 智哉

理学療法士

公認障がい者スポーツ指導者

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