整形外科の外来には関節の痛みを主訴に多くの方が受診されます。
その中でも注意すべき疾患は関節リウマチとその鑑別疾患です。
目次
今回の10秒まとめ
① 早期に関節リウマチと診断し早期に治療介入を行うことで、関節の破壊を止めることができるようになった。
② 診断には早期関節リウマチ疑いの患者様を分類し、その上で鑑別診断を行う。
③ 診断には新関節リウマチ分類基準を用いる。
④ 検査は、身体所見・画像検査・血液検査を行い、関節リウマチ類縁疾患を除外する。
⑤ 診断後は、治療効果の判定のためにも疾患活動性の評価を行う。
⑥ 治療には、コントローラーとリリーバーと呼ばれる2種類の薬剤を用いる。
関節リウマチとは
関節リウマチとは、全身の関節に痛みや腫脹を認める多関節炎を引き起こす疾患の一つです。人体には、体外から体内に侵入してくる異物を排除するために存在する免疫機能が備わっていますが、この免疫機構が自分自身を攻撃してしまう場合があります。
このような状態(=疾患)を自己免疫疾患と呼びます。関節リウマチもこの自己免疫疾患の一つです。 関節リウマチの治療はこの20年で大きく変わった 以前の関節リウマチの治療は、「痛みをどうにかして抑える」ことしかできず、関節の破壊を防ぐことはできませんでした。そのため、罹病期間が長くなると関節の破壊が進行し手指の変形が起こり、日常生活能力の低下を防ぐことはできませんでした。
しかし、最近は早期にメトトレキサートを中心とした抗リウマチ薬(DMARDs)を投与することで、関節痛や腫脹を改善するだけでなく、「関節破壊の進行も抑制できる」ことが明らかになりました。 そのため現在では、関節リウマチと可能な限り早期に診断し、抗リウマチ薬を投与することが求められています。
診断
早期関節リウマチ疑いとは?
① 2つ以上の関節の腫脹を認める。
② 朝に手のこわばり感が30分以上持続する。
上記2つを認める患者様に関しては、早期関節リウマチ疑いの患者様と判断します。 早期関節リウマチ疑いの患者様は、下記のような関節リウマチ以外の多関節に炎症を引き起こす疾患と鑑別診断を行います。
鑑別診断
① 変形性関節症
特徴:関節面に骨刺(骨のでっぱり)形成、血液所見でリウマチが否定的、高齢者に多い
② SLE
特徴:抗核抗体陽性、光線過敏症・蝶形紅斑・脱毛などの特徴的な皮膚所見、移動性の関節炎
③ ウィルス性関節炎(肝炎・風疹・パルボウィスル・HIV)
特徴:ウィルス抗体検査陽性、肝機能障害
④ リウマチ性多発筋痛症
特徴:抗CCP抗体陰性かつ炎症反応の高値、近位筋の痛み・手の浮腫、高齢者に多い、寝返りするときの疼痛
⑤ 偽痛風
特徴:関節内結晶(レントゲンで関節内に石灰化所見あり)、高齢者の脱水、甲状腺機能異常・糖尿病などの背景、急性発症
⑥ 乾癬性関節炎
特徴:血液所見でリウマチが否定的、特徴的な皮疹、腱付着部炎
⑦ 反応性関節炎
特徴:血液所見でリウマチが否定的、若年男性多く、尿路感染症や消化器感染症の既往
⑧ 更年期
特徴:血液所見でリウマチが否定的、炎症反応も陰性、数ヶ月の経過観察で改善
新関節リウマチ分類基準(2010)
関節リウマチの診断に有効は分類基準が2010年に新たに発表されました。この分類基準の目的は「早期に抗リウマチ薬を投与するため」です。
① 前提条件
下記の2点を満たすことが分類基準の前提条件となります。
1)少なくとも1箇所の関節で滑膜炎(関節の腫脹)を認める。
2)関節炎の原因が他の疾患の可能性がない。
② 分類基準
下記の項目の合計点数が6点以上で関節リウマチと診断します。
1)腫脹または圧痛のある関節の数
大関節の1箇所 0点
大関節の2~10箇所 1点
小関節の1~3箇所 2点
小関節の4~10箇所 3点
最低1つの小関節を含む11箇所以上 5点
* 大関節:肩関節・肘関節・膝関節・股関節・足関節
* 変形性関節症の除外のために、DIP関節・第1CM関節・第MP関節は除き、顎関節・肩鎖関節・胸鎖関節は含める
2)血清反応
リウマチ因子・抗CCP抗体の両方が陰性 0点
リウマチ因子・抗CCP抗体のいずれかが低値陽性(正常上限の3倍以下) 2点
リウマチ因子・抗CCP抗体のいずれかが高値陽性(正常上限の3倍を超える) 3点
3)罹患期間
6週間未満 0点
6週間以上 1点
4)炎症反応
CRP、赤沈の両方が正常 0点
CRP、もしくは赤沈のいずれかが以上高値 1点
検査
上記の疾患を鑑別するために下記のような検査を行います。
① 画像検査
レントゲン検査
変形性関節症の除外、関節リウマチに特有の骨破壊の有無を確認します。
MRI
骨びらんなどの関節リウマチ早期に起こる変化の確認します。
エコー検査
関節内に滑膜炎の有無を確認します。
② 血液学的検査
末梢血検査、肝機能や腎機能の評価の他に、関節リウマチの確認のために、抗CCP抗体、MMP-3、CRP(炎症反応)など検査を行います。 また、鑑別診断のために抗核抗体、肝炎(HBs抗原、HCV抗体)、甲状腺機能(TSH,fT4)の検査を行います。 明らかに関節リウマチの可能性が臨床症状上高い場合は、今後の抗リウマチ薬投与のことも考えて、胸部レントゲン、QTf(結核の除外)、KL-3(間質性肺炎の除外)、β-Dグルカン(真菌感染症の除外)の検査も追加します。
活動性の評価
治療開始前の疾患活動性を知るために様々な指標が用いられていますが、外来で最も簡単に利用できるものでCDAIと呼ばれるものがあります。
CDAI=圧痛関節数(0~28)+腫脹関節数(0~28)+医師による疾患活動性全般評価(0~10)+患者による疾患活動性全般評価(0~10)
CDAIが22より高い場合は疾患活動性が高いと判断します。また、治療介入後にはCDAIが10以下になるようにコントロールを行います。
治療
関節リウマチの治療薬には
① 関節リウマチの病勢を抑えるコントローラー:抗リウマチ薬(DMARDs)
② 症状緩和に効果的なリリーバー:NSAIDs(痛み止め)、経口ステロイド
の2つをうまく利用します。
抗リウマチ薬(DMARDs)
抗リウマチ薬(DMARDs)の登場により関節リウマチの治療は大きく変わりました。 特にメトトレキサートは関節リウマチと診断した早期から導入すべきと言われている薬剤です。 また最近では生物学的製剤(biologic DMARDs)が登場し、メトトレキサートなどでコントロール不良は症例に用いられるようになってきました。
NSAIDs(痛み止め)、経口ステロイド
抗リウマチ薬が効果を発現するまでには一般的に1~3ヶ月ほどかかると言われており、この期間の疼痛をコントロールするために治療早期ではリリーバーを積極的に用います。また、リリーバーによって炎症を押さえておくことが抗リウマチ薬の効果発現に優位に働くと考えられています。
当院のご紹介
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