足立慶友医療コラム

膝の軟骨に起きる異常とすり減りの予防方法

2025.03.10

日頃の生活で立ち上がり時や歩行時に膝が痛む方は少なくありません。特に膝軟骨がすり減ることで強い痛みや変形が生じ、日常動作に大きな制限が及ぶ場合があります。

この記事では、膝軟骨の役割や膝軟骨すり減り原因、膝軟骨損傷症状をはじめ、膝の使い方や予防策、そして治療法を詳しく解説します。

適度な運動や生活習慣の見直しなど、日常の少しの心がけが膝の健康を大きく支えます。膝に関する知識を深めて、快適に動ける身体づくりを目指しましょう。

膝軟骨の役割と特徴

膝は全身の関節の中でも特に大きな負荷がかかる部位です。大腿骨と脛骨の間にある膝軟骨が衝撃を吸収し、スムーズな動作を可能にしています。

膝軟骨が健康な状態を維持することは、痛みなく動ける生活を続けるうえで重要です。

膝軟骨の基礎知識

膝軟骨は関節軟骨とも呼ばれ、人体の関節部分を覆う軟骨組織の総称です。関節を摩耗から守り、荷重がかかったときの衝撃を和らげます。

体重を支えながら自由に足を曲げ伸ばしするうえで、非常に大切な働きを担います。

一般的に軟骨は血管が通っていないため、自己修復能力が低い傾向があります。したがって一度損傷すると回復に時間がかかり、進行すると膝軟骨損傷症状が出やすくなります。

膝の関節構造

膝は大腿骨・脛骨・膝蓋骨の3つの骨から構成されています。膝関節内には半月板や滑膜と呼ばれる組織があり、それぞれが安定性や動きのスムーズさを保つ働きをしています。

膝軟骨は主に大腿骨と脛骨、そして大腿骨と膝蓋骨の接触面を覆うように分布しています。

軟骨組織の仕組み

膝軟骨はコラーゲン繊維とプロテオグリカンからなるマトリックスで構成され、水分を多く含むことで衝撃吸収を行います。

軟骨の表面は滑らかで、骨同士がこすれ合わないようにする潤滑液の役割も果たします。加齢や負荷の蓄積で変性しやすいので、定期的なケアが大切です。

膝の構造を知るための概要

主な構成要素位置主な役割
大腿骨ももの骨膝関節の上側を形成し体重を支える
脛骨すねの骨膝関節の下側を構成
膝蓋骨膝のお皿関節前面の保護と動作の安定
半月板関節内のC字形組織クッション機能と関節の安定
滑膜関節内を覆う膜関節液を分泌し潤滑を行う

膝軟骨すり減り原因と初期変化

膝軟骨がすり減る背景には、加齢以外にも多くの要因があります。痛みが始まる初期段階では、靭帯や筋肉が微妙に膝を支えきれず、軟骨に余計な負荷がかかることが少なくありません。

日常生活に支障をきたす前に原因を把握し、予防につなげる視点が重要です。

加齢の影響

人間の身体は年齢とともに変化します。軟骨組織は加齢によって水分量が減少し、弾力が失われて硬くなりやすくなります。

若い頃は多少の衝撃でも問題にならないことが、中年以降になると膝軟骨すり減り原因となる場合が多々あります。

加齢自体を止めることはできませんが、生活習慣を工夫して進行を遅らせることは可能です。

日常生活の負担

重い荷物を運ぶ、長時間の立ち仕事、急なスポーツ動作など、日常の中でも膝には大きな負荷がかかります。

特に高いヒールの靴で長時間歩くと膝への衝撃が増し、女性にとって膝軟骨すり減り原因となるリスクが高まります。

また、急に激しい運動を始める場合も注意が必要です。身体が十分に慣れないまま急激に運動量を増やすと、軟骨だけでなく靭帯などの組織にも大きなストレスがかかります。

肥満や運動不足の関連

膝は上半身の体重を直接受け止めます。体重が増えるほど膝軟骨に加わる負荷が大きくなり、その負担が蓄積するとすり減りが進行しやすくなります。

運動不足により太ももやお尻の筋力が低下すると、衝撃吸収機能が弱まって膝軟骨を守りにくくなります。定期的な運動と体重管理が膝の健康を守るうえで大切です。

膝軟骨すり減り原因に関連する主な要素

要素具体例影響
年齢加齢による水分減少軟骨の弾力低下
生活習慣長時間の立ち仕事膝への負担蓄積
歩行習慣ハイヒール・重い荷物衝撃吸収の低下
肥満体重増加膝軟骨への負荷増大
運動不足筋力低下膝の安定性低下

膝軟骨損傷症状を知る

膝軟骨損傷症状は軽度の違和感から始まり、進行すると痛みが激しくなることがあります。傷みの程度や持続時間が変化し、悪化すると歩行困難を引き起こすリスクもあります。

自分の症状がどの段階かを知り、早めにケアすることが大切です。

急性期と慢性期の違い

急性期の損傷は突然の衝撃や捻りなど、事故やスポーツ動作による外傷で起こることが多いです。この場合、強い痛みや腫れを伴い、赤みが出たり熱感が現れたりします。

慢性期の損傷は日常生活のなかで少しずつ軟骨に負荷がかかり、徐々に進行するのが特徴です。気づかないうちに膝軟骨損傷症状が悪化し、後になって痛みやこわばりを強く感じる場合もあります。

階段昇降時の痛み

膝の痛みを感じやすい動作の代表例が階段昇降です。階段を上るときは太ももの前側の筋肉で体重を支え、階段を下りるときには膝全体に大きな負荷がかかります。

階段の上り下りで膝がズキッと痛む場合、すでに膝軟骨がダメージを受けている可能性があります。

痛みのメカニズム

膝軟骨に傷や変形があると、骨同士が直接こすれ合い痛みが生じやすくなります。痛覚を感じる組織は骨や骨膜、半月板などに集中しており、軟骨自体は痛みを感じにくいとされます。

しかし軟骨が減少すると、関節内に炎症が起こりやすくなり、滑膜など痛覚を持つ組織が刺激を受けて痛みが強まるのです。

代表的な膝軟骨損傷症状と経過

主な症状初期進行期重症期
膝の違和感立ち上がり時に軽い痛み長時間歩行で痛み増幅ほとんど常時痛み
腫れや熱感ごく軽度の腫れ目視でわかる腫れ日常動作も困難
関節音軽いパキパキ音頻繁な軋む音痛みとともにゴリゴリ音
変形変形は少ないO脚・X脚の兆候顕著な変形と可動域制限

膝の痛みに関連する検査と診断方法

膝軟骨がどの程度すり減っているのか、損傷があるのかなどを確認するには検査が不可欠ではなく、医師の総合的な判断が大切です。

適切な検査を受けることで、治療方針の決定がしやすくなります。

レントゲンとMRIの違い

レントゲンは骨の状態を把握するのに優れており、骨の変形や隙間の狭まりがわかります。しかし軟骨自体は映りにくいため、損傷の詳細を直接見るのは難しいことがあります。

MRIは軟骨や半月板などの軟部組織を鮮明に見ることができ、膝軟骨損傷症状が疑われる場合に重要な情報を提供します。

関節液の検査

膝が腫れているときや滑膜炎が疑われるとき、医師が関節液を抜いて検査することがあります。

関節液の状態を調べることで炎症の程度や原因が特定しやすくなり、細菌感染やリウマチなどの他の病気を区別するのにも役立ちます。

医師の視点で見る所見

触診や膝の曲げ伸ばしを通じて、医師が膝関節の状態を評価します。

痛む部位や膝を動かしたときの音、関節の安定性など複数の要素を組み合わせることで、おおまかな診断を行います。

膝軟骨がどの程度損傷しているかは、画像検査や関節液検査の情報も総合しながら判断していきます。

主な検査方法と特徴

検査手法特徴得られる情報
レントゲン骨の状態を可視化骨の変形や関節の隙間
MRI軟部組織を詳細に映し出す膝軟骨や半月板、靭帯の状態
超音波検査簡易的に関節を観察水腫や炎症の有無
関節液検査膝から液を採取感染やリウマチとの鑑別
触診と視診医師の経験による確認痛みの部位や動作時の異常

膝軟骨のすり減りを防ぐ方法

膝軟骨すり減り原因に対処するためには、普段の動作を見直すだけでなく、適切な運動と筋力維持を心がけることが大切です。

体重管理や生活リズムの改善など、長期的な視野で取り組む姿勢が効果を高めます。

適度な運動とストレッチ

日常的に動くことが少ないと、膝を支える筋肉が弱って軟骨に負担が集中します。

ウォーキングや軽いジョギング、水中歩行など、継続しやすい運動を定期的に行うと筋力維持につながり、膝軟骨の保護に役立ちます。

運動前後には太もも裏やふくらはぎのストレッチを行い、柔軟性を高めておくことが望ましいです。

体重管理の重要性

肥満は膝にかかる負担を増やします。体重が1kg増えると、それ以上の負荷が膝軟骨にかかるといわれます。健康的な食生活を送り、適度な運動で体重をコントロールすることが予防に直結します。

食事の見直しとあわせて、継続可能な有酸素運動を取り入れると効果を実感しやすくなるでしょう。

筋力強化の必要性

太ももの前側(大腿四頭筋)やお尻(臀筋)など、膝関節を支える筋肉を鍛えると、衝撃が直接膝軟骨に伝わるのを緩和しやすくなります。

特に片脚立ちやスクワットなど、正しいフォームで筋力トレーニングを行うことが重要です。回数を増やすよりも、痛みを感じない範囲で正確に行うことを意識しましょう。

膝を保護する運動の例とメリット

運動種目概要期待できる効果
ウォーキング適度な速度で歩く有酸素能力向上と脚筋力の維持
水中歩行プール内で歩行膝への負荷軽減と筋力強化
スクワット膝を曲げ伸ばしする筋トレ太もも前・お尻の筋力アップ
レッグレイズ寝た状態で脚を上げる腹筋や股関節周囲筋の強化
ストレッチ太もも裏やふくらはぎを伸ばす関節可動域の維持と柔軟性向上

日常生活で意識したい膝の使い方

膝軟骨は日々の立ち方、歩き方、座り方などの動作によって大きく消耗度合いが変わります。

特別な道具や高強度の運動を行わなくても、普段の動きを少し工夫するだけで膝の負担が軽減する場合があります。

正しい歩行姿勢

歩くときは目線をやや遠くに置いて、背筋を伸ばします。

かかとから地面に着地し、つま先へ重心を移動させる一連の動作を安定させると、太ももやふくらはぎの筋肉がうまく働き、膝軟骨への負担が減少します。

歩幅を広げすぎると膝に余計な負担がかかるので、自分の身長や筋力に合わせて自然な歩幅を保つことが大切です。

椅子の選び方と座り方

膝や腰に優しい椅子の高さは、座ったときに膝が90度程度に曲がる高さだといわれます。座った状態でつま先が床に軽く触れる程度を目安にするとよいでしょう。

深く腰掛け、背もたれに背中をつけて座ると姿勢が安定し、膝軟骨への負担が軽減しやすくなります。

立ち上がりとしゃがみ動作

立ち上がるときに無意識に膝をねじると、軟骨を傷める原因になります。椅子や机に手を添えて体重をしっかり腕でもサポートしながら立ち上がると、膝への負荷を分散できます。

しゃがむときにも、背筋を伸ばしてお尻を後方に引くように動くと、大腿筋やお尻の筋肉を使いやすくなり、膝だけに負担がかからない姿勢を維持しやすくなります。

立ち座りのポイントをまとめた一覧

動作意識する点期待される効果
立ち上がり机や肘掛けをつかむ膝への負担が減る
座る深く腰掛ける姿勢が安定して背筋が伸びる
しゃがむ膝とつま先の方向を揃えるねじれによる軟骨損傷回避
歩くかかとから着地衝撃を効果的に吸収

膝に優しい姿勢の基本

  • 背筋を伸ばし、骨盤を立てるように意識する
  • 体重はできるだけ左右均等にかける
  • 立ち上がる際には勢いに頼らず、ゆっくりと動作する
  • 椅子に座る際もドスンと落ちないように注意する

治療法とセルフケア

すでに痛みが生じている場合でも、膝軟骨損傷症状が軽度の段階なら保存的治療やセルフケアで症状が改善することがあります。

進行状態や個人の体質によって治療方法は異なるので、専門医の指導を受けると同時に自分でもケアを継続することが重要です。

保存的治療とリハビリ

痛みが強い場合や炎症がある場合、まずは薬物療法やヒアルロン酸注射などを用いて炎症を緩和し、痛みを抑える場合があります。

そのうえで筋力強化や柔軟性を高めるリハビリを行うと、関節の負担を軽減しやすくなります。膝の使い方を見直す指導を受けることも多いため、日頃から学んだ内容を積極的に応用してください。

サポーターの活用

膝に不安がある方やスポーツ時に痛みを感じる方は、サポーターを使って関節を補強すると安心です。

適度な圧迫により関節を安定させ、動きをサポートしながら痛みを緩和することが期待できます。

ただし締め付けが強すぎるものを長時間使うと、血行が妨げられて逆効果になる恐れもあるので注意してください。

予防に役立つセルフケア

軽い痛みが続いている段階から、自宅で簡単に実践できるエクササイズを取り入れると大きな予防効果が得られます。

脚の筋肉を鍛えるだけでなく、日々の姿勢や動作のクセを見直し、膝にかかる負担を抑えることを意識しましょう。

自宅でできる簡単な運動とケア

運動・ケア方法方法目的
片脚立ち壁や椅子に手をついて片脚で立つバランス能力向上と大腿筋強化
かかと上げ下げつま先を支点にかかとを上げ下げふくらはぎ筋力アップと血行促進
お尻歩き床に座り、両脚を伸ばしてお尻だけで前進・後退骨盤周りの筋力強化
足首回し座った状態で足首を回転させる足関節の柔軟性向上と血流改善

膝へのセルフケアを行う上で意識したい点

  • 痛みが強いときは無理をせず休む
  • 適度なアイシングや温めを組み合わせる
  • 体重計に乗る習慣をつける
  • こまめなストレッチを生活に取り入れる

よくある質問

膝が痛いときに運動しても大丈夫?

強い痛みがあるときに無理に動きすぎると、膝軟骨にさらなる負荷がかかる可能性があります。ただし、安静にしすぎて筋肉が衰えると、かえって痛みが長引くこともあります。

痛みの程度と相談しながら、膝に優しい運動を少しずつ取り入れることをおすすめします。

サプリは効果がある?

栄養補給の一環としてグルコサミンやコンドロイチンなどの成分を含む製品が知られています。食事から摂りにくい成分を補う点では一理ありますが、効果には個人差が大きいとされています。

サプリに頼るだけでなく、バランスの良い食事と運動を組み合わせる姿勢が大切です。

痛みが良くならないときはどうする?

保存的治療やセルフケアを行っても痛みが続く場合は、他の病気や進行度の高い損傷が隠れている可能性があります。専門医の診察や精密検査を早めに受けることをおすすめします。

手術が必要になるケースもあるため、症状を放置しないことが重要です。

病院へ行くタイミングは?

歩くのが困難になるほどの痛みや、1週間以上続く強い痛みがある場合は早めの受診を推奨します。

軽度の痛みでも、安静やセルフケアで改善が見られない場合には、専門的な検査と治療を検討してください。早期に原因を特定し、適切な対処を行うと予後が良くなりやすいです。

以上

参考文献

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Author

北城 雅照

医療法人社団円徳 理事長
医師・医学博士、経営心理士

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