スポーツによる膝の痛み – 原因と予防法
ランニング、ジャンプ、切り返しなど、多くのスポーツで膝は重要な役割を担っています。しかし、その分、膝は負担がかかりやすく、痛みを発生しやすい部位でもあります。
スポーツを楽しむ多くの人が、一度は膝の痛みに悩んだ経験があるのではないでしょうか。
この痛みは、単にパフォーマンスを低下させるだけでなく、長期的にスポーツを続ける上での大きな障壁となり得ます。
この記事では、スポーツによってなぜ膝の痛みが起こるのか、その原因を深く掘り下げ、具体的なスポーツ障害の種類、そして最も重要な予防法について、分かりやすく解説していきます。
正しい知識を身につけ、大切な膝を守りながら、充実したスポーツライフを送りましょう。
目次
スポーツで膝が痛む主な原因
スポーツ活動中に膝の痛みが発生する背景には、様々な要因が関わっています。一つの原因だけでなく、複数の要因が絡み合って痛みにつながることが少なくありません。
ここでは、痛みの引き金となる代表的な原因について掘り下げていきます。
過度な負荷と使いすぎ(オーバーユース)
スポーツによる膝の痛みの最も一般的な原因の一つが、オーバーユース、つまり「使いすぎ」です。
特定の動作を繰り返し行うことで、膝の関節やその周辺の組織に微細な損傷が蓄積し、炎症や痛みを引き起こします。
特に、急に練習量を増やしたり、連日厳しいトレーニングを行ったりすると、体の回復が追いつかずに障害が発生しやすくなります。
膝は体重を支えながら複雑な動きをするため、ランニングやジャンプなどの動作は、想像以上に大きな負担を膝に与えています。
オーバーユースの主なサイン
サイン | 具体的な状態 | 対処の考え方 |
---|---|---|
練習中の痛み | 特定の動作で常に同じ場所が痛む | 練習内容の見直しやフォームの確認が必要 |
練習後の痛みや腫れ | 運動を終えると痛みが増し、熱感や腫れが見られる | アイシングや休息を取り入れる |
慢性的なくすぶる痛み | はっきりとした痛みではないが、常に違和感や重だるさがある | 一度トレーニングを休み、専門家への相談を検討 |
不適切なフォームや身体の使い方
同じ練習をしていても、痛める人とそうでない人がいます。その違いを生む大きな要因が、体の使い方、つまりフォームです。
例えば、ランニング時の着地方法、ジャンプからの着地姿勢、ボールを蹴る際の軸足の安定性など、非効率的で膝に負担のかかるフォームは、痛みの直接的な原因となります。
特に「Knee-in Toe-out(ニーイン・トゥーアウト)」と呼ばれる、着地時に膝が内側に入り、つま先が外側を向くような動きは、膝の靭帯や半月板に大きなストレスをかけるため注意が必要です。
準備運動不足とクールダウンの軽視
トレーニングの前後に行う体のケアも、膝の痛みを予防する上で非常に重要です。
準備運動(ウォーミングアップ)は、筋肉や関節を温めて動きやすくし、運動中の怪我のリスクを低減させます。
一方、クールダウンは、運動によって高まった心拍数や体温を徐々に平常時に戻し、筋肉に溜まった疲労物質の排出を促す役割があります。
これらのケアを怠ると、筋肉が硬いまま運動を始めることになったり、疲労が抜けきらないまま次の練習に臨むことになったりして、膝への負担が増加し、怪我につながりやすくなります。
筋力バランスの乱れ
膝関節の安定性は、太ももの前側にある大腿四頭筋と、裏側にあるハムストリングス、そしてお尻の筋肉(臀筋群)など、多くの筋肉によって支えられています。
これらの筋力のバランスが崩れると、膝関節の動きが不安定になり、特定の部位に負担が集中してしまいます。
例えば、太もも前側の筋肉ばかりが強く、裏側の筋肉が弱い場合、膝を曲げ伸ばしする際のブレーキがうまく効かず、膝蓋骨(お皿)やその下の靭帯にストレスがかかりやすくなります。
体の中心に近い体幹の筋力が弱い場合も、体のブレが大きくなり、結果として膝への負担が増加します。
スポーツ種目別にみる膝の痛みの特徴
行うスポーツによって、膝にかかる負担の種類や怪我の傾向は異なります。それぞれの競技特有の動きを理解することは、効果的な予防策を考える上で役立ちます。
ここでは、代表的なスポーツとそれに伴う膝の痛みの特徴を見ていきましょう。
ランニングやジャンプ系競技(陸上、バスケットボールなど)
ランニングやバスケットボール、バレーボールなどの競技は、着地時の衝撃を繰り返し膝で受け止めることが特徴です。
特に長距離走では、何千回、何万回と着地の衝撃が繰り返されるため、オーバーユースによる障害が発生しやすくなります。「ランナー膝(腸脛靭帯炎)」はその代表例です。
ジャンプ系競技では、高く跳ぶための踏み切りと、その後の着地動作で膝の靭帯や膝蓋骨周辺に大きな負荷がかかり、「ジャンパー膝(膝蓋腱炎)」を引き起こすことがあります。
競技動作と膝への主な負荷
競技の系統 | 代表的な競技 | 膝への主な負荷 |
---|---|---|
ランニング系 | 陸上(長距離)、マラソン | 着地衝撃の繰り返し |
ジャンプ系 | バスケットボール、バレーボール、走り高跳び | 踏み切りと着地時の高い衝撃 |
複合系 | トライアスロン | ランとバイクでの繰り返しの曲げ伸ばし |
急な方向転換や切り返しが多い競技(サッカー、テニスなど)
サッカー、テニス、スキーなどの競技では、急なストップや方向転換、ひねりの動作が頻繁に求められます。
このような動きは、膝の靭帯、特に前十字靭帯(ACL)や半月板に大きな負担をかけます。
相手選手との接触がない場面でも、踏み込んだ足が地面に固定された状態で体がひねられることで、これらの組織を損傷することがあります。
これを「非接触型損傷」と呼び、スポーツによる膝の重い怪我の多くがこのかたちで発生します。
コンタクトが多い競技(ラグビー、柔道など)
ラグビー、アメリカンフットボール、柔道、レスリングなどのコンタクトスポーツでは、相手選手との衝突によって膝に直接的な外力が加わることがあります。
タックルを受けた際に膝の外側から強い衝撃を受けると、内側側副靭帯(MCL)を損傷しやすくなります。
また、不自然な体勢で倒れたり、関節を極められたりすることで、複合的な靭帯損傷や半月板損傷など、重度の怪我につながる危険性も他の競技より高いと言えるでしょう。
長時間同じ姿勢を維持する競技(サイクリング、ウェイトリフティングなど)
一見、膝への負担が少なそうに見える競技でも、特有の痛みが発生することがあります。例えば、サイクリングでは、長時間にわたって膝の曲げ伸ばし運動を繰り返します。
このとき、サドルの高さやペダルの位置が体に合っていないと、膝蓋骨と大腿骨がこすれて痛みを生じる「膝蓋大腿関節痛」の原因となることがあります。
ウェイトリフティングのスクワット動作などでも、不適切なフォームで高重量を扱うと、膝の関節軟骨や半月板に過剰な圧力がかかり、痛みを引き起こす可能性があります。
膝の痛みを引き起こす代表的なスポーツ障害
「膝の痛み」と一言で言っても、その背景には特定の障害が隠れていることが少なくありません。痛みの場所や発生状況から、ある程度の推測が可能です。
ここでは、スポーツ選手によく見られる膝の障害について解説します。
膝蓋骨周囲の痛み(ジャンパー膝、ランナー膝)
膝のお皿(膝蓋骨)の周りには、痛みを発生しやすい障害がいくつかあります。
ジャンパー膝は、正式には「膝蓋腱炎」と呼び、ジャンプやダッシュを繰り返すことで膝蓋骨の下にある膝蓋腱に炎症が起こるものです。
膝のお皿のすぐ下が痛むのが特徴です。一方、ランナー膝は「腸脛靭帯炎」のことで、太ももの外側にある長い靭帯(腸脛靭帯)が、膝の外側の骨とこすれて炎症を起こします。
長距離ランナーに多く、膝の外側に痛みが出ます。
膝蓋骨周囲の主なスポーツ障害
通称 | 正式名称 | 主な症状(痛みの場所) |
---|---|---|
ジャンパー膝 | 膝蓋腱炎 | 膝のお皿のすぐ下 |
ランナー膝 | 腸脛靭帯炎 | 膝の外側 |
- | 膝蓋大腿関節痛 | 膝のお皿の裏側や周囲 |
靭帯の損傷(前十字靭帯損傷、内側側副靭帯損傷など)
膝関節は4本の主要な靭帯によって安定性が保たれています。スポーツで損傷しやすいのは、関節の中にある前十字靭帯(ACL)と、膝の内側にある内側側副靭帯(MCL)です。
前十字靭帯損傷は、ジャンプの着地や急な方向転換などで発生し、受傷時に「ブツッ」という断裂音を感じることがあります。
受傷直後は強い痛みと腫れが見られ、関節がグラグラするような不安定感が出現します。内側側副靭帯損傷は、膝の外側からの衝撃で発生することが多く、膝の内側に痛みと圧痛が見られます。
半月板の損傷
半月板は、膝関節の中でクッションの役割を果たしているC字型の軟骨組織です。スポーツ中のひねり動作や強い衝撃によって損傷することがあります。
損傷すると、膝の曲げ伸ばしの際に痛みや「ひっかかり感」を感じたり、急に膝が動かなくなる「ロッキング」という状態になったりすることがあります。
また、関節内に水がたまる(関節水腫)原因にもなります。靭帯損傷と合併して発生することも少なくありません。
成長期に特有の膝の痛み(オスグッド・シュラッター病など)
小学生から高校生にかけての成長期は、骨の成長に筋肉や腱の成長が追いつかず、アンバランスな状態になりやすい時期です。
この時期に活発にスポーツをすることで、特有の膝の痛みが発生することがあります。代表的なのが「オスグッド・シュラッター病」で、膝のお皿の下の骨(脛骨粗面)が突出して痛みます。
太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)が、成長期の弱い骨の付着部を繰り返し引っ張ることで炎症が起こります。
サッカーやバスケットボールなど、ボールを蹴る、ジャンプする動作の多いスポーツを行う少年に多く見られます。
膝の痛みのセルフチェックと受診の目安
膝に違和感を覚えたとき、それが休めば治るものなのか、あるいは専門的な対処が必要なものなのか、判断に迷うことがあるでしょう。
ここでは、自分で行える簡単なチェック方法と、医療機関を受診するべきタイミングについて説明します。
痛みを感じる場面とタイミングの確認
まずは、どのような時に痛みを感じるのかを整理してみましょう。
「走り始めだけ痛い」「階段を降りるときに痛い」「膝を完全に曲げると痛い」など、具体的な状況を把握することが大切です。痛みの強さも重要です。
スポーツはできるけれど違和感がある程度なのか、痛くて全くプレーができないのか。また、スポーツをしている時だけ痛いのか、日常生活でも痛みがあるのかによっても、緊急性が異なります。
痛みの状況整理
- いつから痛いか
- どこが痛いか(膝の内側、外側、お皿の周りなど)
- どんな動作で痛いか
- 痛みの強さ(10段階評価など)
腫れや熱感、可動域の制限のチェック
痛みのある膝と、そうでない方の膝を比較してみましょう。目で見て明らかに腫れていたり、手で触ってみて熱っぽさを感じたりする場合は、関節内部で炎症が起きているサインです。
また、膝の曲げ伸ばしをしてみて、左右で動きのスムーズさや動く範囲に差がないかも確認します。
「痛みで完全に伸ばせない」「正座ができない」といった可動域の制限は、半月板損傷や関節内の遊離体(関節ねずみ)などが原因となっている可能性も考えられます。
セルフチェック項目
チェック項目 | 確認する内容 | 異常のサイン |
---|---|---|
腫れ(腫脹) | 左右の膝を見比べる | 痛みのある側が明らかに腫れている |
熱感 | 手の甲で左右の膝を触り比べる | 痛みのある側が熱を持っている |
可動域 | ゆっくり膝を曲げ伸ばしする | 痛みで曲げられない、伸ばしきれない |
こんな症状は要注意!すぐに専門医へ相談を
ほとんどのスポーツによる膝の痛みは、安静やセルフケアで改善が期待できますが、中には早期に適切な診断と対処が必要な重篤な怪我もあります。
以下のような症状が見られる場合は、自己判断で様子を見ずに、速やかに整形外科などの医療機関を受診してください。
受診を強く推奨する症状
症状 | 考えられる状態 |
---|---|
怪我をした瞬間に「ブチッ」という音がした | 靭帯断裂(特に前十字靭帯)の可能性 |
膝がグラグラして力が入らない(膝くずれ) | 靭帯損傷による不安定性 |
急に膝が動かなくなり、伸ばせなくなった(ロッキング) | 半月板損傷や関節内遊離体の可能性 |
体重をかけることができないほどの激しい痛み | 骨折や重度の靭帯・半月板損傷 |
何科を受診すればよいか
スポーツによる膝の痛みや怪我を専門的に診るのは「整形外科」です。
特に、医師の専門分野として「スポーツ整形外科」や「膝関節外科」を標榜している医療機関であれば、より専門的な診断と、競技復帰を見据えたアドバイスが期待できるでしょう。
接骨院や整骨院も選択肢の一つですが、レントゲンやMRIなどの画像検査や、診断、薬の処方は医師にしかできません。
正確な診断を求める場合は、まず整形外科を受診することが重要です。
スポーツによる膝の痛みを予防する
膝の痛みを未然に防ぎ、長くスポーツを楽しむためには日頃のケアが重要です。怪我をしてから対処するのではなく、怪我をしない体づくりと習慣を身につけることが大切です。
ここでは、今日から始められる具体的な予防法を紹介します。
正しいウォーミングアップとクールダウンの実践
トレーニングの質を高め、怪我を予防するために、ウォーミングアップとクールダウンは欠かせません。
ウォーミングアップは、軽いジョギングなどで体を温めた後、関節の可動域を広げる動的なストレッチを中心に行います。
クールダウンでは、使った筋肉をゆっくり伸ばす静的なストレッチを取り入れ、疲労回復を促します。
ウォーミングアップの構成要素
- 全身の体温を上げる軽い有酸素運動(ジョギングなど)
- 関節の可動域を広げる動的ストレッチ
- 行うスポーツの特有の動きを取り入れた運動
膝周りの筋力を強化するトレーニング
膝関節を安定させるためには、周辺の筋肉をバランス良く鍛えることが重要です。
特に、太ももの前後(大腿四頭筋、ハムストリングス)とお尻(臀筋群)、体幹の筋肉は、膝への負担を軽減する上で中心的な役割を果たします。
自宅で簡単に行えるトレーニングでも、継続することで大きな効果が期待できます。
自宅でできる膝の安定化トレーニング
トレーニング名 | 鍛える主な筋肉 | 簡単な方法 |
---|---|---|
スクワット | 大腿四頭筋、ハムストリングス、臀筋群 | 肩幅に足を開き、椅子に座るようにお尻を落とす。膝がつま先より前に出ないように注意。 |
ランジ | 大腿四頭筋、臀筋群 | 片足を大きく前に踏み出し、両膝を90度に曲げる。上体はまっすぐに保つ。 |
ヒップリフト | 臀筋群、ハムストリングス | 仰向けに寝て膝を立て、お尻をゆっくり持ち上げる。肩から膝までが一直線になるように。 |
柔軟性を高めるストレッチング
筋肉の柔軟性が低いと、関節の動きが硬くなり、衝撃をうまく吸収できずに膝への負担が増加します。
特に、太ももの前後の筋肉、股関節周りの筋肉、ふくらはぎの筋肉は、膝の動きと密接に関係しているため、日頃からストレッチを行い、柔軟性を保つことが大切です。
お風呂上がりなど、体が温まっている時に行うとより効果的です。
適切な用具選びと環境整備
自分の足に合ったシューズを選ぶことは、膝の痛みを予防する基本です。クッション性が高く、足の形にフィットしたシューズは、着地時の衝撃を和らげてくれます。
競技の特性に合わせたシューズを選ぶことも重要です。また、練習を行うグラウンドや床の状態にも注意を払いましょう。
硬すぎる、あるいは凹凸のあるサーフェスでのトレーニングは、膝への負担を増大させる可能性があります。
シューズ選びのポイント
- かかとのフィット感
- つま先の適度な余裕
- 土踏まずのアーチサポート
膝の痛みがあるときの応急処置と対処法
予防を心がけていても、スポーツ中に膝を痛めてしまうことはあります。もし痛めてしまった場合、その後の対応が回復を大きく左右します。
パニックにならず、基本的な処置を冷静に行うことが重要です。ここでは、基本的な応急処置と考え方について解説します。
基本的な応急処置「RICE処置」
怪我をした直後の対応として、RICE処置が基本となります。これは、Rest(安静)、Ice(冷却)、Compression(圧迫)、Elevation(挙上)の4つの処置の頭文字をとったものです。
これらの処置を速やかに行うことで、内出血や腫れ、痛みを最小限に抑え、その後の回復を早める効果が期待できます。
RICE処置の具体的な内容
項目 | 英語 | 具体的な処置 |
---|---|---|
安静 | Rest | プレーを中止し、患部を動かさないようにする。 |
冷却 | Ice | 氷のうなどで患部を15~20分冷やす。感覚がなくなったら一度外し、繰り返す。 |
圧迫 | Compression | 弾性包帯などで患部を軽く圧迫し、腫れを抑える。 |
挙上 | Elevation | 患部を心臓より高い位置に保ち、腫れを軽減させる。 |
痛みが引かない場合の対応
RICE処置を行っても痛みが改善しない、あるいは腫れがひどくなる場合は、靭帯損傷や骨折などの可能性があるため、医療機関を受診しましょう。
特に、数日経っても体重をかけられない、関節が不安定な感じが続く、といった場合は自己判断で放置せず、専門医の診察を受けることが大切です。
適切な診断に基づいた対処が、後遺症を防ぎ、確実な競技復帰への第一歩となります。
トレーニング再開の判断基準
痛みが和らいできたからといって、焦ってトレーニングを再開するのは禁物です。再発のリスクを高めるだけでなく、怪我を悪化させる可能性もあります。
トレーニングを再開する前には、いくつかの基準をクリアしているかを確認することが重要です。最終的な判断は医師やトレーナーのアドバイスを仰ぐのが最も安全です。
競技復帰に向けたチェックリスト
- 日常生活で痛みがない
- 左右差なく膝の曲げ伸ばしができる
- 軽いジョギングやサイドステップで痛みが出ない
- 怪我をした膝で片足立ちが安定してできる
スポーツによる膝の痛みに関するよくある質問
ここでは、スポーツによる膝の痛みについて、多くの方が抱く疑問にお答えします。個々の状況によって答えは異なりますが、一般的な考え方として参考にしてください。
サポーターは使った方が良いですか?
膝のサポーターには、保温、圧迫、関節の固定や動きの補助など、様々な目的のものがあります。
痛みの軽減や、膝の不安定感を補う効果が期待できるため、プレー中の安心感につながることもあります。
しかし、サポーターに頼りすぎると、膝周りの筋力が低下する可能性も指摘されています。根本的な原因解決には、筋力トレーニングやフォーム改善が必要です。
サポーターはあくまで補助的なものと考え、どのようなタイプが自分の状態に合っているか、専門家に相談の上で使用するのが良いでしょう。
サポーターの種類と主な役割
サポーターのタイプ | 主な役割 | 適した場面 |
---|---|---|
スリーブタイプ | 圧迫・保温 | 軽い痛み、予防目的 |
ストラップタイプ | 特定の部位(膝蓋腱など)を圧迫 | ジャンパー膝など |
支柱付きタイプ | 関節の動きを制限・補助 | 靭帯損傷後の復帰期など |
痛みがあるときもトレーニングを続けて良いですか?
基本的には、「痛みを感じたら休む」が原則です。
痛みを我慢してトレーニングを続けると、炎症が悪化したり、回復が遅れたりするだけでなく、痛みをかばうことで他の部位に新たな問題を引き起こす可能性もあります。
ただし、膝に負担のかからない上半身のトレーニングや、プールでの歩行など、できる範囲の運動を続けることは、全身のコンディションを維持する上で有効な場合もあります。
どのような運動なら行っても良いかについては、医師や理学療法士のアドバイスを求めるのが安全です。
食事で膝の痛みを予防できますか?
特定の食品を食べれば膝の痛みが治る、ということはありませんが、体を作る基本は日々の食事です。バランスの取れた食事は、強い体を作り、怪我からの回復を助けます。
筋肉や腱、靭帯の材料となるタンパク質、骨を強くするカルシウムとビタミンD、体の調子を整えるビタミンやミネラルを十分に摂取することが大切です。
また、関節軟骨の成分であるグルコサミンやコンドロイチン、炎症を抑える効果が期待されるオメガ3脂肪酸なども、補助的に意識すると良いかもしれません。
子どもの膝の痛みで気をつけることは何ですか?
成長期の子どもは、体がまだ発達段階にあるため、大人とは異なる視点での配慮が必要です。
特にオスグッド・シュラッター病などの成長期特有の障害は、無理をすると症状が長引いたり、後遺症が残ったりすることもあります。
子どもが膝の痛みを訴えた場合は、「成長痛だろう」と軽視せず、まずは練習を休ませて様子を見ることが大切です。
痛みが続く、腫れがある、歩き方がおかしいなどの場合は、整形外科を受診してください。指導者とも連携し、練習量や内容を調整することも重要です。
参考文献
THACKER, S. B., et al. Prevention of knee injuries in sports. Journal of Sports Medicine and Physical Fitness, 2003, 43.165-179.
PRIETO-GONZÁLEZ, Pablo, et al. Epidemiology of sports-related injuries and associated risk factors in adolescent athletes: an injury surveillance. International journal of environmental research and public health, 2021, 18.9: 4857.
KERR, Zachary Y., et al. Prevention and management of physical and social environment risk factors for sports-related injuries. American Journal of Lifestyle Medicine, 2013, 7.2: 138-153.
TAKEDA, Hideki, et al. Prevention and management of knee osteoarthritis and knee cartilage injury in sports. British journal of sports medicine, 2011, 45.4: 304-309.
FRISCH, Anne, et al. Injuries, risk factors and prevention initiatives in youth sport. British medical bulletin, 2009, 92.1: 95-121.
TER STEGE, Marloes HP, et al. Effect of interventions on potential, modifiable risk factors for knee injury in team ball sports: a systematic review. Sports medicine, 2014, 44.10: 1403-1426.
OSTI, L.; MAFFULLI, N. Prevention in sports-related injuries. In: Orthopedic Sports Medicine: Principles and Practice. Milano: Springer Milan, 2011. p. 59-71.
BAHR, Roald; KROSSHAUG, Tron. Understanding injury mechanisms: a key component of preventing injuries in sport. British journal of sports medicine, 2005, 39.6: 324-329.
THEISEN, D., et al. Injuries in youth sports: Epidemiology, risk factors and prevention. Deutsche Zeitschrift für Sportmedizin, 2014, 65.9: 248-252.
BUTLER, Lauren S.; JANOSKY, Joseph J.; SUGIMOTO, Dai. Pediatric and adolescent knee injuries: Risk factors and preventive strategies. Clinics in sports medicine, 2022, 41.4: 799-820.
Symptoms 症状から探す
