変形性膝関節症の原因と治療対策 – 専門医の見解
膝が痛むと日常動作が制限され、外出を控えるようになる方も少なくありません。
加齢や生活習慣に深く関係し、進行すると膝の変形を招く変形性膝関節症は、早期に原因を知り適切な治療を行うことが重要です。
痛みのメカニズムや治療の選択肢を理解し、より良い生活の質を保つための参考としてご覧ください。
目次
変形性膝関節症とは
膝の軟骨がすり減り、骨同士がぶつかることで炎症や変形を起こす疾患です。
加齢とともに進行することが多いですが、膝への負担が大きい運動や立ち仕事などを続ける場合にも発症しやすくなります。
軽度の段階では痛みが少なく歩行に支障がないこともありますが、変形が進むと日常生活に多大な影響を及ぼします。
気になる違和感や痛みがあるときは、早めに専門医へ相談することが大切です。
変形性膝関節症の概要
変形性膝関節症は、膝の関節を構成する軟骨や半月板が加齢や摩耗によって損傷し、関節内で炎症が起きることが発端です。
初期段階では膝のこわばりや軽度の痛みしか感じないことが多いですが、進行すると変形が顕著になり、膝の内側や外側に大きな荷重がかかることで痛みが増大します。
主な症状の種類
- 歩き始めの痛みやこわばり
- 長時間の歩行後や階段昇降時の痛み
- 膝の腫れや違和感
- 安静にしていても痛みを感じる場合がある
進行度と日常生活の変化
初期段階では、休息を取れば痛みが軽減することもあります。しかし変形が進むと、安静にしていても痛むようになり、歩行距離が短くなったり、膝が伸ばしづらくなったりします。
そのため、少しの外出でも大きな負担を感じるようになり、活動量が大きく低下します。
受診のタイミング
軽い痛みだからと放置せず、変形膝関節症原因に思い当たる生活習慣がある場合には早めに受診してください。
変形性膝関節症原因は多岐にわたり、早期発見と適切なケアが治療の効果を高めます。
変形性膝関節症の主な特徴一覧
特徴 | 内容 |
---|---|
軟骨のすり減り | 膝のクッションである軟骨が摩耗し、関節内に炎症や痛みが起こりやすくなる |
骨の変形 | 長期の摩耗で骨がトゲ状に変化し、神経を刺激して痛みが強くなる |
筋力低下 | 痛みに伴って運動量が減り、太ももの筋肉が弱ることで関節への負担が増す |
疼痛の増加 | 変形進行により炎症が増し、持続的な痛みが生じて歩行や階段昇降が困難になる |
日常動作の制限 | 膝の曲げ伸ばしが困難になり、買い物や外出などの行動が制限される |
変形膝関節症原因とリスクファクター
変形膝関節症原因は多岐にわたりますが、加齢や体重増加などの要素が大きく影響します。
日常的に膝を酷使するような仕事やスポーツ、筋力の低下や関節のアライメント異常(O脚・X脚など)も発症を後押しします。
リスクとなる要素を理解することで、予防や早期対処に役立てることができます。
加齢による変化
加齢は変形性膝関節症原因の代表的な要因です。加齢に伴い軟骨の弾力性が失われ、摩耗が進みます。
体内の水分量が減少して軟骨が乾燥し、関節のクッション機能が十分に働かなくなることで、負荷が膝に集中しやすくなります。
体重と肥満の影響
体重が増えるほど膝への負担は大きくなります。特に肥満体型の方は、歩行や階段昇降などの日常動作だけでも大きな重量が膝を圧迫し、軟骨の摩耗が加速することがあります。
体重管理を行うことは変形性膝関節症の進行予防において重要です。
筋力低下と運動不足
膝を安定させる太ももの前側の大腿四頭筋や、後側のハムストリングスが弱ると、関節を安定させる力が低下して膝への負担が増します。
運動不足の方や長期にわたる安静状態を経験した方は、筋力が低下しやすく、変形膝関節症原因を抱えるリスクが高まります。
運動や仕事による負担
スポーツで激しい走行・ジャンプを繰り返す場合や、仕事で重い物を頻繁に持ち運ぶ場合、膝への反復負荷が大きくなります。
着地や体重移動が適切でない場合は関節に歪みが生じ、長期的に損傷を蓄積させやすくなります。
膝に負担をかける主な要因
要因 | 詳細 |
---|---|
過度な体重 | 膝関節への圧力が増し、軟骨の摩耗が加速しやすい |
大腿四頭筋の弱さ | 膝を支える力が低下して負担が集中しやすい |
O脚やX脚 | 関節のアライメントが乱れ、特定の部位に過度な圧力がかかる |
長時間の立ち仕事 | 同じ姿勢で負荷がかかり続けるため、軟骨への負担が蓄積する |
ジャンプや激しい動き | 着地時の衝撃が膝に集中し、軟骨や靭帯にダメージが蓄積する |
主な注意点
- 体重コントロール
- 適度な筋力トレーニング
- 正しい姿勢や動作の習得
- 長時間の膝負担を回避
症状の特徴と進行度
変形性膝関節症の痛みや変形は段階的に進みます。初期は違和感や軽い痛みだけで気付きにくい場合がありますが、中期から後期にかけては歩行などの日常動作に明らかな制限が生じます。
症状を把握し、早期にケアできるかどうかでその後の生活の質に大きな差が出ることが多いです。
初期段階の症状
朝起きたときや長時間座った後に、膝がこわばったり少し痛んだりする程度の症状が見られます。動き始めると痛みが和らぐことも多いので、「年だから仕方ない」と放置しがちです。
しかし、この段階で医療機関に相談すると比較的軽い治療で痛みを抑えられる可能性があります。
中期から後期への進行
変形が進むと、階段の昇り降りや立ち上がり時に鋭い痛みを感じるようになります。
膝の水(関節液)が増えて腫れたり、関節内で骨が変形し関節に負担が集中する形になると、痛みはさらに強くなります。安静にしていても痛みが治まらない状態に陥ることもあります。
変形による外観の変化
O脚やX脚が目立つようになり、脚のラインが大きく歪んで見える場合があります。
変形によって膝が左右に傾くと、痛みが増すばかりでなく歩行にも支障が出ます。転倒しやすくなることで、別の怪我を引き起こすリスクも高くなります。
変形の程度を自己チェックする視点
- 膝の隙間が広がったり、逆に狭くなったりしていないか
- 太ももやふくらはぎの筋力が低下していないか
- 外出するとき、以前より距離が歩けなくなっていないか
- 階段の上り下りで膝がぐらつきやすくなっていないか
進行度に応じた変化のまとめ
進行度 | 痛みの程度 | 日常生活への影響 |
---|---|---|
初期 | こわばりや軽度の痛み | 歩行は問題なく行えるが、立ち上がり時に違和感が出る |
中期 | 運動や長時間歩行後に強い痛みを感じやすい | 階段昇降や買い物などの日常行動が負担に感じる |
後期 | 安静時にも痛むことがある | 変形が目立ち、歩行困難や杖などの補助が必要になる |
診断の流れと検査方法
変形性膝関節症は問診・視診・触診に加え、画像検査で軟骨や骨の状態を正確に確認することが大切です。
医師は膝の痛みの原因が変形膝関節症原因に該当するかどうかを判断し、正確な診断を下して治療方針を立てます。
問診と視診
医師は患者が自覚している症状や生活背景を詳細に聞き、痛みの程度や発症時期、生活習慣を把握します。膝周囲の腫れや熱感の有無を視覚的に確認し、変形の程度を大まかにチェックします。
歩行の仕方や姿勢から膝にかかる負担を推測することも多いです。
触診による痛みの確認
実際に膝周辺を触れ、痛みが強い部位や押すと痛む場所を確認します。また、膝を曲げ伸ばしして軟骨のすり減り状態や、引っかかり感などを調べ、関節内の異常を推測します。
症状の程度を知るために、両膝を比較して差異をチェックすることもあります。
画像検査
X線撮影で軟骨がすり減った程度や変形の進行度を判断する方法はよく用いられます。MRI検査を行うことで、軟骨や半月板などの軟部組織の詳しい状態も把握しやすくなります。
症状が複雑な場合はCT検査を活用し、骨の形状や変形の程度をより詳細に確認することがあります。
その他の検査
膝に水が溜まっている場合は、関節液を採取して炎症の有無や種類を確認することがあります。血液検査によってリウマチなどの自己免疫疾患との鑑別を行うケースもあります。
総合的に結果を踏まえ、変形性膝関節症と確定できれば、治療の選択肢を話し合います。
主な画像検査の特徴
検査方法 | 特徴 |
---|---|
X線撮影 | 骨の変形や関節隙の狭まりの確認に適する |
MRI検査 | 軟骨や半月板などの軟部組織の状態を詳細に把握できる |
CT検査 | 骨形状を3次元的に捉え、微細な変形や骨折をより正確に見る |
関節液検査 | 水が溜まっている場合に行い、炎症の程度や性質を調べる |
保存的な治療の選択肢
変形性膝関節症の治療は、まず保存的な方法から始めることが多いです。痛み止めや注射、リハビリテーションなど、手術以外で痛みの軽減や進行抑制を図る方法を検討します。
状態やライフスタイルに応じて複数の方法を組み合わせると良い結果が得られやすいです。
薬物療法
痛みや炎症が強い場合、消炎鎮痛薬を使用することがあります。内服薬や湿布・塗り薬など、症状に合わせて処方を受けることが一般的です。
胃や腎臓への負担を考慮しながら適切な用量を守る必要があります。痛みが落ち着くと日常生活での動きがスムーズになり、リハビリもしやすくなります。
関節内注射
ヒアルロン酸製剤やステロイド製剤などを関節内に注射して、関節の摩擦を軽減したり炎症を抑えたりします。
注射を続けることで軟骨の保護効果や痛みの軽減が期待できますが、症状が重い場合には効果が持続しにくいこともあるため、専門医との相談が必要です。
物理療法とリハビリテーション
温熱療法や電気刺激を用いて血行を促進し、筋力や関節可動域の改善を図る方法です。筋力強化訓練やストレッチを適切に行うことで、膝関節を安定させる筋群を鍛え、痛みの緩和を目指します。
日常生活動作の指導や、歩行を補助する杖などの使用方法を学ぶ場合もあります。
生活習慣の見直し
体重管理や姿勢の改善、適度な運動で膝への負担を減らすことが重要です。歩き方や立ち方に癖があると、特定の部位に負担が集中しやすくなります。
医師や理学療法士のアドバイスに沿って、正しいフォームや歩行を身につけると、症状悪化の予防に役立ちます。
保存的治療を続ける際のポイント
ポイント | 具体例 |
---|---|
無理をしない | 痛みが強い日は安静を心がけ、余裕がある日はリハビリや運動を適度に行う |
根気よく継続 | 薬や注射の効果は徐々に表れる場合があり、数回で効果が感じにくいときも続ける |
自分に合った方法 | 人によって体質や症状は異なるため、医師や理学療法士に相談しながら調整する |
家庭での工夫 | 低い椅子や硬い寝具は膝に負担がかかりやすいため、必要に応じた道具を活用する |
保存的治療のメリット
- 手術を回避できる場合がある
- 痛みが軽減すると行動範囲が広がる
- リハビリを通じて再発予防や筋力維持が期待できる
手術によるアプローチ
保存的治療で十分な改善が得られない場合、手術を検討することがあります。
変形が強く日常生活に支障が大きいとき、関節そのものを再建する手術や関節機能を維持するための方法を選択します。
医師は患者の年齢や活動レベル、変形の種類を考慮しながら手術の種類を提案します。
人工関節置換術
大きく摩耗した軟骨や変形した骨を削り、金属やプラスチックでできた人工関節に置き換える手術です。
特に変形が進行していて痛みが強く、日常的な動作が大きく制限されるケースで考慮されることが多いです。
術後のリハビリテーションをしっかり行うと、膝の可動域が改善し、痛みが軽減する可能性があります。
高位骨切り術
O脚やX脚などのアライメント異常によって膝への片寄った負担が原因となっている場合に行います。脛骨や大腿骨の一部を切って角度を変え、膝への荷重がより均等にかかるように整えます。
変形を直接的に改善するため、患者の年齢や骨の状態などが手術の適応判断に大きく影響します。
関節鏡視下手術
内視鏡を用いて小さな切開で関節内部の軟骨や半月板、骨の状態を確認しながら処置を行う方法です。
半月板の部分切除や軟骨の損傷部分の清掃(デブリードマン)など、比較的軽度の損傷に対して行う場合が多いです。大きな変形がある場合は効果が限定的になるケースもあります。
術後リハビリテーションの重要性
手術後は、痛みの軽減や可動域の確保に加え、筋力の回復を目指すためのリハビリが必須です。リハビリ内容には専門家の指導が欠かせません。
正しい方法で適切に続けると、術後の回復度が大きく変わります。焦らず段階的に行いながら、痛みの状況や患部の状態を医師や理学療法士と共有してください。
主な手術方法の比較
手術名 | 特徴 | 適応例 |
---|---|---|
人工関節置換術 | 大きく摩耗した関節を人工物に置き換えて痛みを軽減する | 重度の変形と痛み、活動が制限される場合 |
高位骨切り術 | 骨を切って角度を補正し、膝への荷重バランスを整える | O脚やX脚が原因の片寄った負担が強い場合 |
関節鏡視下手術 | 小さな切開で関節内を確認しながら損傷部位を処置 | 軽度~中度の損傷、部分的な半月板断裂など |
予防とセルフケア
変形性膝関節症が進行すると、痛みの軽減や歩行機能の回復に多くの時間と努力を要します。
日頃から膝を守る工夫や生活習慣の改善を続けることで、膝に加わる負担を減らし、症状の悪化を遅らせることができます。
正しい姿勢や歩行の習慣化
膝に余計な負担をかけないために、猫背や骨盤の歪みに気を付けながら姿勢を維持することが大切です。
歩行時は重心のブレを最小限に抑え、親指の付け根でしっかり地面を踏みながら歩くと膝への衝撃が緩和しやすくなります。靴はクッション性やフィット感の良いものを選ぶと快適です。
適度な運動と筋力強化
大腿四頭筋やハムストリングス、股関節周りの筋肉を中心に鍛えると、膝の安定性が高まります。ウォーキングやスイミングなどの関節への負担が少ない有酸素運動も有効です。
無理のないペースで継続すると、体重管理にも役立ちます。
体重コントロール
肥満があると膝への負荷が大きくなり、変形膝関節症原因が進行しやすくなります。バランスの良い食事や適度な運動を取り入れることは膝の健康を守るうえで重要です。
炭水化物や脂質の過剰摂取を控え、野菜やたんぱく質を意識して摂取するなど、食習慣を見直してください。
日常動作の工夫
立ち上がるときは両膝や手すりを使い、片方の膝だけに過度な負担がかからないようにします。階段はできるだけ手すりに手を添え、ゆっくり昇り降りを行うと安全性が高まります。
座る椅子の高さや寝具の硬さを調整することも日常動作を楽にするうえで大切です。
膝を守るための実践例
実践内容 | ポイント |
---|---|
定期的な運動 | 筋力強化や体重維持のために軽い運動を続ける |
食事管理 | 食物繊維やミネラルを含む野菜を意識して摂取 |
サポーター | 膝への負担が強い日には膝サポーターで安定性を高める |
休憩の取り方 | 同じ姿勢で過ごさないように適宜立ち上がって身体を動かす |
推奨したい運動の例
膝周りの筋肉を鍛える運動
- 太ももの前側を伸ばすストレッチ
- 椅子に腰かけた状態でのレッグエクステンション
- 壁に手をついてのスクワット(深くしゃがみこまない程度)
- 歩幅を小さくしたウォーキング
よくある質問
Q1: 変形性膝関節症と診断されたら必ず手術が必要ですか?
症状が軽度~中度の場合、薬物療法やリハビリテーションなどの保存的治療で痛みが改善するケースが多いです。
手術を受けるかどうかは、変形の進行度や痛みの程度、日常生活での制限の大きさなどを総合的に判断して決めます。
Q2: ヒアルロン酸注射だけで完治することはありますか?
ヒアルロン酸注射は痛みの軽減や関節の滑りを良くする効果が期待できますが、変形した骨や軟骨を根本的に再生させるわけではありません。
注射と併せて、リハビリや生活習慣の見直しを行うと痛みの軽減を維持しやすくなります。
Q3: 運動はどのくらいの頻度で行えばいいですか?
運動は週3~4回を目安に、無理のない範囲で続けると効果を感じやすくなります。
一度に長時間の運動をするより、こまめに身体を動かすほうが膝への負担が少なく、筋力アップや体重管理に役立ちます。
Q4: 膝の痛みが強いときでも動かしたほうがいいですか?
痛みが激しいときは、まずは医師や理学療法士に相談しながら無理のない範囲で動かすことを心がけましょう。完全に動かさないと筋力が低下し、変形膝関節症原因を助長する場合があります。
痛みが和らいだときに軽いストレッチや筋力トレーニングを継続することが大切です。
以上
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